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しおりを挟む大小さまざまな、色とりどりの水槽を巡り、竜也と朋はイルカの前で足を止めた。
イルカプールには、深さが必要だ。
二階と一階を打ち抜いて作られた水槽の一階に、二人はいた。
ここからは、自在に泳ぐ水中でのイルカの姿を眺めることができる。
周囲には、愛らしいイルカにはしゃぐ他の客がいたが、朋はなぜか浮かない顔だった。
「どうしたの? イルカは嫌い?」
竜也は軽くそう訊ねたが、返ってきた答えは重かった。
「この子たち、自由が無いですよね」
「え? ああ、まあ。そうだね」
「快適な環境で過ごせて、食べ物にも困らない。でも、自由が無い」
そうかと言って、たとえ外に放したとしても、自然の荒海では生きられない。
つぶやくような朋の声は、まるで自分に言い聞かせているかのようだった。
「……僕と同じだ」
その言葉に、竜也は気づいた。
(この子は、イルカと自分を重ねているんだ)
快適なマンションを与えられ、食べるに困らないお金を与えられている。
だが、愛人である限り、パトロンの手からは離れられない。
竜也は言葉を探したが、いい考えが浮かんでこない。
そこで、朋の手をそっと握った。
「竜也さん?」
「いいから」
朋も、何も言わずに竜也の手を握り返した。
ただ、それだけ。
互いのぬくもりを感じ合い、過ごした。
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