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しおりを挟む要の兄の判断は、迅速だった。
『油処理の会社に、至急連絡しよう。オイルフェンスや、オイルマット。油吸着分解材を準備できる』
「お願いします!」
ああ。
ここでも私は、無力だ。
宇実に、何もしてあげられない。
動くのは、お兄様なんだ。
歯噛みする要に、兄は言った。
『要。君には何より大事な役割がある』
「えっ? それは、何でしょうか」
『宇実くんを、支えてあげることだ。それは、私にはできない』
「はい!」
通話を終え、要は宇実を抱き寄せた。
あまりの惨事に、唇を青くして震わせている宇実を、抱きしめた。
「しっかりするんだ、宇実。この海の未来は、君が担っていくんだから」
「うん……うん!」
私が、ついてる。
要の言葉に、宇実は踏みとどまった。
崩れそうな心を、保った。
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