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しおりを挟むカフェのバイトを終え、家路につく樹里の足取りは重かった。
家庭は、彼にとって居づらい場所なのだ。
父と母、そして浪人1年生の弟。
三人とも第二性はアルファの人間なのに、樹里だけがオメガだ。
そのため、ファミリーカーストの底辺にいた。
父親は、しばしば樹里に暴力をふるう。
母親は、それを見て見ぬふり。
そして、弟は。
「兄さん、小遣いくれよ」
帰宅した樹里に、開口一番そう言ってきた。
「そんな余裕、ないよ」
高校を出て、アルバイトを始めた樹里。
正社員としての仕事を探す間、収入が無いと困るからだ。
しかし父親は、彼をもう一人前と見なして、家に生活費を入れるように言いつけた。
それはバイト代の10万円の半分、5万円だった。
交通費で月に1万は飛んでいくし、携帯の使用料や発情抑制剤の購入、そのほか雑費でぎりぎりの生活だった。
樹里には、弟にお小遣いをあげる分のお金など、無いのだ。
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