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しおりを挟む「美味い……これは、実に美味い……」
翌日の昼休み、涼真は瑞のチェリーパイを噛みしめた。
さくさくの生地の中に、甘酸っぱいチェリーが詰まった、逸品だ。
何より、塩っぱくない。
ちゃんと、甘い。
怒りや悲しみに任せて作った、お菓子じゃない。
涼真は、笑顔を瑞に向けた。
「今までで、一番おいしいよ。ありがとう」
「どういたしまして」
それからの会話も、明るいものばかりだった。
新参者の困惑も、オメガの悲哀も無い、健全な話題だ。
早く、武藤さんとこういう話をすればよかった。
そうすれば、僕はもう少し余裕のある毎日が送れていたはずだ。
そんな風に、瑞は考えていた。
そして、考えていることがもう一つ。
いや、実は早くそれを言いたくって仕方がないのだが。
言うには、少し勇気が必要だった。
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