フラン

大波小波

文字の大きさ
33 / 149

7

しおりを挟む

「秀実、私の背中を、もう一度見て」
 士郎は、秀実に背を向けた。
 そこには、極彩色の竜の彫り物が荒ぶっている。
「大丈夫か? 平気か? この竜が、今から秀実の中に挿入るんだぞ?」
「士郎さん」
 涙を、唾液をぐしゅぐしゅと拭い、秀実は腕を伸ばした。
「僕は、士郎さんが好きなんです。ヤクザとか堅気とか、関係なくって」
 士郎さんだから、好きになったんです。
「……想像を超える返事だ」
 もう、迷うことはない。
 この子なら、事後に後悔して泣くことはないだろう。
「じゃあ、挿れるよ?」
「はい……」
 ぐッ、と入り口が広がる気配がした。
(もしかして、士郎さんのすごく太い、とか!?)
 指でよく慣らし、ローションの助けもある。
 オメガの体液も、手伝ってくれる。
 それでも、士郎のペニスは秀実を引き攣らせた。
「あ、あぁ! っく、あ! はぁ、あぁ!」
 じりじりと、熱杭が秀実の体内を焼いてくる。
 その圧迫感は苦しかったが、ようやく士郎と一つになれたという幸福も運んできた。
「全部、挿入ったよ」
「あ……」
 目じりの涙を指で拭ってくれる士郎が、優しい。
 秀実は自分の白い腹に手を乗せ、そっとさすった。
「あぁ……」
 熱い夜は、始まったばかりだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サクラメント300

朝顔
BL
アルファの佐倉は、過去に恋人を傷つけたことで、贖罪のための人生を送ってきた。 ある日不運な偶然が重なって、勤務先のビルのエレベーターに閉じ込められてしまった。 そこで一緒に閉じ込められたアルファの男と仲良くなる。 お互い複雑なバース性であったため、事故のように体を重ねてしまう。 ただの偶然の出会いのように見えたが、それぞれが赦しを求めて生きてきた。 贖罪の人生を選んだ佐倉が、その先に見つける幸せとは…… 春らしく桜が思い浮かぶようなお話を目指して、赦しをテーマに書いてみました。 全28話 完結済み ⭐︎規格外フェロモンα×元攻めα ⭐︎主人公受けですが、攻め視点もあり。 ※オメガバースの設定をお借りして、オリジナル要素を入れています。

真柴さんちの野菜は美味い

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。 そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。 オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。 ※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。 ※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。

〔完結済〕この腕が届く距離

麻路なぎ
BL
気まぐれに未来が見える代わりに眠くなってしまう能力を持つ俺、戸上朱里は、クラスメイトであるアルファ、夏目飛衣(とい)をその能力で助けたことから、少しずつ彼に囲い込まれてしまう。 アルファとかベータとか、俺には関係ないと思っていたのに。 なぜか夏目は、俺に執着を見せるようになる。 ※ムーンライトノベルズなどに載せているものの改稿版になります。  ふたりがくっつくまで時間がかかります。

被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

かとらり。
BL
 セシリオ・ド・ジューンはこの国で一番尊いとされる公爵家の末っ子だ。  オメガなのもあり、蝶よ花よと育てられ、何不自由なく育ったセシリオには悩みがあった。  それは……重度の被虐趣味だ。  虐げられたい、手ひどく抱かれたい…そう思うのに、自分の身分が高いのといつのまにかついてしまった高潔なイメージのせいで、被虐心を満たすことができない。  だれか、だれか僕を虐げてくれるドSはいないの…?  そう悩んでいたある日、セシリオは学舎の隅で見つけてしまった。  ご主人様と呼ぶべき、最高のドSを…

ビジネスの番なのに運命の番よりも愛してしまったからどうすればいい

子犬一 はぁて
BL
欠陥品のα(狼上司)×完全無欠のΩ(大型犬部下) その行為は同情からくるものか、あるいは羨望からくるものか。 産まれつき種を持たないアルファである小鳥遊駿輔は住販会社で働いている。己の欠陥をひた隠し「普通」のアルファとして生きてきた。  新年度、新しく入社してきた岸本雄馬は上司にも物怖じせず意見を言ってくる新進気鋭の新入社員だった。彼を部下に据え一から営業を叩き込むことを指示された小鳥遊は厳しく指導をする。そんな小鳥遊に一切音を上げず一ヶ月働き続けた岸本に、ひょんなことから小鳥遊の秘密を知られてしまう。それ以来岸本はたびたび小鳥遊を脅すようになる。  お互いの秘密を共有したとき、二人は共犯者になった。両者の欠陥を補うように二人の関係は変わっていく。  「欠陥品のアルファ」として私生活及び性生活に多大なるコンプレックスを持つ狼上司である小鳥遊駿輔。それとは反対に「完全無欠のオメガ」として自らがオメガであることを心底恥じ、常に有能なアルファの新入社員を演じる大型犬部下の岸本雄馬。 「互いの秘密を守り、共犯者になる」という大人の契約に則った駆け引きの行方は──。 「……運命の番とかそういうの信じてませんから、俺」  自己を否定し未来さえも捨て去ったかのような岸本の掠れた言葉に触れたら、小鳥遊の微弱な母心が疼いた。そうして、岸本の「ビジネスの番になりませんか?」という提案に従うように、うなじを噛んだ。彼が望むような、1番幸せな噛み方で。  ビジネスの番の先にある未来ははたして空虚か、虚構か、虚楽か。あるいは、おとぎ話のような幸せな未来へと導かれるのか。その導きは誰も知らない結末へと終結していく。 自己の肯定を刻むセラピーオメガバース。 (旧タイトル)ACCOMPLICE──共犯── ┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈ ※この作品はフィクションです。オメガバースの世界観をベースにしていますが、一部独自の設定があり作中で説明を加えております。 読んでくださってありがとうございます。よろしければ感想やコメントも聞かせてもらえると嬉しいです。 ※誤字 横溝課長 ⇒ 正 横溝本部長 (現在修正中です) ※誤字 百田部長⇒ 正 百田先輩 (現在修正中です)

あまく、とろけて、開くオメガ

藍沢真啓/庚あき
BL
オメガの市居憂璃は同じオメガの実母に売られた。 北関東圏を支配するアルファの男、玉之浦椿に。 ガリガリに痩せた子は売れないと、男の眼で商品として価値があがるように教育される。 出会ってから三年。その流れゆく時間の中で、男の態度が商品と管理する関係とは違うと感じるようになる憂璃。 優しく、大切に扱ってくれるのは、自分が商品だから。 勘違いしてはいけないと律する憂璃の前に、自分を売った母が現れ── はぴまり~薄幸オメガは溺愛アルファ~等のオメガバースシリーズと同じ世界線。 秘密のあるスパダリ若頭アルファ×不憫アルビノオメガの両片想いラブ。

オメガ転生。

BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。 そして………… 気がつけば、男児の姿に… 双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね! 破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!

そうだ課長、俺と結婚してください

藤吉めぐみ
BL
運命の番を信じるアルファ×運命なんか信じないアルファスペックのオメガ 社内、社外問わずモテるアルファの匡史は、一見遊んでいるように見えるが、運命の番を信じ、その相手に自分を見つけて欲しいという理由から、目立つように心がけ、色々な出会いの場にも顔を出している。 そんな匡史の働く職場に課長として赴任してきた池上。彼もアルファで、匡史よりもスペックが高いとすぐに噂になり、自分の存在が霞むことに不安を覚える匡史。 気に入らないという理由で池上に近づくが、なぜか池上から香りを感じて惹かれてしまい―― 運命の番を信じるアルファと運命なんか信じないアルファ嫌いのオメガのオフィスラブです。

処理中です...