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「相良さんのお友達、三嶋さん。彼が七瀬にドラッグを飲ませました。紅茶に忍ばせて」
「み、三嶋? 何で?」
「逆恨み、ですよ。相良さんに捨てられた三嶋さんは、七瀬に逆恨みしたのです」
 全て、因果応報。
 丈士の悪事は、そのまま自分に降ってかかったのだ。
 愕然とした丈士の思考を引き戻したのは、七瀬のか細い声だった。

「……丈士、さん」
「七瀬、しっかりしろ」
「僕、死んじゃうみたい」
「バカなこと、言うな」
「短い間だったけど、楽しかった」
「これからも、ずっと楽しくやっていこう。な?」
「丈士さん、大、好き……」
「七瀬。おい、七瀬。七瀬!」

 最期に、七瀬は笑った。
 ぽろりと一粒涙をこぼし、笑顔のまま動かなくなった。

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