死んだと思ったら異世界に

トワイライト

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兵士達に話を聞かれない様にと移動する事数分、俺達は教国軍からある程度離れた場所にやって来た。

「…ここまでくれば誰かに話を聞かれる事はないだろう、それで?戦争を止めるのに協力してほしいってのはどういう事だ?」

周囲を見渡して人の姿がない事を確認した彼は俺に戦争を止める作戦について聞いてくる

「ちょっと待ってくれ、先に自己紹介をさせてくれ」

作戦の説明をする前に俺は彼にそう提案をした。

自己紹介で同じ俺が日本人で転生者だって事を伝えれば彼が作戦に協力してくれる可能性が高くなる筈だからな。

大体の日本人は自分と似ている境遇の人に親近感を感じるからな、自己紹介をする事で少しでも彼の俺に対する印象を良くしておきたい。

「俺の名前は五十嵐祐也だ、同じ日本人同士、よろしく頼むよ」

俺は簡潔に自分の名前と俺が日本人だという事を伝える。

「日本人!?君は本当に日本人なのか!?」

すると彼は凄く驚いた様で俺に向かってそう言って詰め寄って来る。

「ああ、そうだが…」

俺が彼の質問に答えると彼は下を向きながらフルフルと震え始めた。

俺が日本人だって伝えたのは失敗だったか?

俺は彼の様子を見てそう考える。

彼に自分が日本人だと伝えた時に驚かれるだろうとは予想していたが、まさかこんな反応をされるとは予想できなかった。

と、そんな事を考えながら俺は彼を見ていると下を向いている彼の顔から水滴が…って!?

「おい!?どうしたんだ!?」

彼が泣いている事に気付いた俺は慌てて声を掛ける…が俺が声を掛けた程度では意味がなく、彼は数分間涙を零し続けた。

そして数分後、泣き止んだ彼は口を開いた。

「…いやすみません、まさかこんな所で日本人に会えるなんて思っていなかったから感動してしまって…僕の名前は山寺隼人です、よろしくお願いします」

彼はさっきまでの険しい表情とは一転し、笑顔でそう言いながら俺に向かって手を差し出した。

「ああ、こちらこそ、よろしくな」

う~ん、まさか日本人だって伝えただけで泣くとは…

俺は彼の手を握り返し、握手をしながらそんな事を考えていた。

こうして、俺の予想を遥かに裏切った自己紹介が終了した。

「…」

「…」

現在、俺と彼は向かい合って立ちながら一切しゃべる事もなく無言を貫いていた。

というのも彼は俺の目の前で泣いてしまい、俺は彼が泣いているのを目の前で見てしまったから非常に気まずい状況になっている。

彼の年齢は見た目からして高校生位、異世界で同郷の人物に会えたとはいえ殆ど他人の俺に泣いているところを見られたのが恥ずかしいのだろう。

かくいう俺も彼に何と言って話しかければ良いのか分からないという状況だ。

まぁこの場合、どちらかが話しかけない事には状況は変わらない…という事で俺はとある秘策を使うことにした。

「…さて、自己紹介も終わったところで早速話し合いを始めよう」

という事で俺が使った秘策というのは先程までの事をスルーして話し合いを始めると言うものだ。

「あ、はい、分かりました」

彼も俺の意図が分かったのだろう、話し合いをする事に賛成をする。

よし、これで気まずくてなにも話せないという状況は脱したな。

ここからは彼に戦争を止めるための作戦の内容を話して協力を頼むだけだ。

「じゃあまずは俺から話すぞ」

俺の発言に彼は頷いた。

「といっても話す事は最初に言った通りだ、俺はこの戦争を止めようとしているから隼人にはそれに協力をしてほしいってだけだ」

隼人も戦争を止めようとしている事はテントでの様子で分かってる、あちらとしても俺と協力するという選択は悪くない筈だ。

「それに隼人もこの戦争を止めようとしてるんだろ?目的は一緒なんだし、協力した方が被害も少なくできるし、成功率も上がる筈だ」

さて、ひとまず俺のターンはこんな感じで良いか

俺は先ず初めに協力するメリットについて話した。

所詮は俺達は異国の地で出会った同郷のというだけ、隼人も俺が同じ日本人だからと言って直ぐに話を信じて協力に応じる訳にもいかないだろうし、先ずは双方にメリットがあるという事を伝えるべきだからな。

さて、彼はどう出るか見ものだな
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