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第1話 ゲンマ・クズキリ
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「お前はクビだ!」
厳めしい顔をしてパーティ名“玄武の理”のリーダー、ゴーゾー・ミナモトは言った。
ダンジョンに潜る冒険者たちに労働保障などない。
パーティリーダーがクビだと言えばクビである。
なので、このような突然の解雇宣言も珍しくなく、日常茶飯事の光景だった。
多くのパーティでも似たような光景が繰り返され、クビを宣告された方は負け犬よろしくすごすごと退散するのが通例だった。
だが、今回クビを言い渡されたゲンマ・クズキリは様子がちがった。
「はあ?いきなり『お前はクビだ!』とかお前人として大丈夫か?社会常識疑うわ」
ゴーゾーは最近広がってきたおでこに青筋を立てながらも深呼吸して続けた。
「レアな“天職”持ちだというから雇ったら、能力名〈ワールドイーツ〉ってなんだ!?デリバリー業者じゃねえか!」
ワールドイーツ。この世界のあらゆるところ、たとえダンジョンのなかにでも注文さえあれば出前を届けるプロフェッショナル集団である。
ダンジョン内の急な食糧事情は彼らに支えられていると言っても過言ではない。
しかし、その内実は過酷な労働条件、使い捨て、冒険者の日銭稼ぎ、低報酬によって成り立っていると言ってよく、近年社会問題化している。
ゲンマはそのデリバリーサービスが“天職”だった。“天職”は転職できない。ゲンマのようなハズレ天職だと祝福ではなく途端に“呪い”になってしまう。
ゴーゾーは(どうだ?いくら減らず口でもぐうの音も出まい!)と意地悪く笑った。
後ろに控えていた他のパーティメンバーたちは顔をしかめる。
この能力がものを言う時代、いくら努力してもジョブチェンジできることもない“呪い”持ちに対してあまりにひどい言い草ではないか。人としてどうなのか?とリーダーのゴーゾーに非難の目が集まる。
しかし、ゲンマはまったくへこたれなかった。
「はあ?メシを安全に運べるなんて最高だろうが。兵站の重要度を理解できねえお前がリーダー失格だろ。大体ダンジョンなんてポッと出のバブルに乗っかってお前ら脳筋能力者共はハシャイじゃいるが、ダンジョン消えたらお前らの能力と俺の能力一体どっちが将来性あると思ってんだよ」
それどころか憐れんだ他の団員ごと焼き尽くしたのであった。
「ぐぬぬ…!うるせえ!お前だけ世界観違うんだよ!お前はクビだ!」
ゴーゾーは吠えた。負け犬の遠吠えよろしく。
かくして、ゲンマ・クズキリはクビになったのだった。
厳めしい顔をしてパーティ名“玄武の理”のリーダー、ゴーゾー・ミナモトは言った。
ダンジョンに潜る冒険者たちに労働保障などない。
パーティリーダーがクビだと言えばクビである。
なので、このような突然の解雇宣言も珍しくなく、日常茶飯事の光景だった。
多くのパーティでも似たような光景が繰り返され、クビを宣告された方は負け犬よろしくすごすごと退散するのが通例だった。
だが、今回クビを言い渡されたゲンマ・クズキリは様子がちがった。
「はあ?いきなり『お前はクビだ!』とかお前人として大丈夫か?社会常識疑うわ」
ゴーゾーは最近広がってきたおでこに青筋を立てながらも深呼吸して続けた。
「レアな“天職”持ちだというから雇ったら、能力名〈ワールドイーツ〉ってなんだ!?デリバリー業者じゃねえか!」
ワールドイーツ。この世界のあらゆるところ、たとえダンジョンのなかにでも注文さえあれば出前を届けるプロフェッショナル集団である。
ダンジョン内の急な食糧事情は彼らに支えられていると言っても過言ではない。
しかし、その内実は過酷な労働条件、使い捨て、冒険者の日銭稼ぎ、低報酬によって成り立っていると言ってよく、近年社会問題化している。
ゲンマはそのデリバリーサービスが“天職”だった。“天職”は転職できない。ゲンマのようなハズレ天職だと祝福ではなく途端に“呪い”になってしまう。
ゴーゾーは(どうだ?いくら減らず口でもぐうの音も出まい!)と意地悪く笑った。
後ろに控えていた他のパーティメンバーたちは顔をしかめる。
この能力がものを言う時代、いくら努力してもジョブチェンジできることもない“呪い”持ちに対してあまりにひどい言い草ではないか。人としてどうなのか?とリーダーのゴーゾーに非難の目が集まる。
しかし、ゲンマはまったくへこたれなかった。
「はあ?メシを安全に運べるなんて最高だろうが。兵站の重要度を理解できねえお前がリーダー失格だろ。大体ダンジョンなんてポッと出のバブルに乗っかってお前ら脳筋能力者共はハシャイじゃいるが、ダンジョン消えたらお前らの能力と俺の能力一体どっちが将来性あると思ってんだよ」
それどころか憐れんだ他の団員ごと焼き尽くしたのであった。
「ぐぬぬ…!うるせえ!お前だけ世界観違うんだよ!お前はクビだ!」
ゴーゾーは吠えた。負け犬の遠吠えよろしく。
かくして、ゲンマ・クズキリはクビになったのだった。
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