17 / 20
第17話 デイジー、最古の魔法使いに遭う
しおりを挟む
客足も落ち着いてきて、デイジーたちも接客が板についてきた頃だった。
それは急に現れた。
「失礼」
漆黒のローブと帽子に身を包み、いかにも魔法使い然とした白ひげを足まで伸ばした老人だった。
「師匠…」ルーファスはその老人を見てつぶやいた。
老人はニッコリと微笑んだ。その笑顔は粘っこかった。
「ほほ、ワシの顔をわすれてはいないようじゃの…」
口調まで粘っこい。なにやらルーファスに含むところがあるようだった。
デイジーはこの老人を知っていた。
過去、戦ったことがある。
たしか、最古の魔法使いの一人と呼ばれる爺さんだった。
デイジーが自分の技を“理合”と呼ぶのだと知ったのは、この老人がそう言ったからだった。
それにしてもルーファスの師匠だったとは。
特にルーファスから恨み節も聞いた覚えはないし、どうやら今のルーファスの表情を見ても、関係が良好とは言えなさそうだ。
「…どうしてここに?」ルーファスが問う。まったく歓迎している雰囲気ではない。
「ほほ、サボり癖のある弟子に師匠が直接会いに来たんじゃ。なにか悪いことがあるかの?」
ルーファスが何も答えないでいると、老人はデイジーを見た。
「可愛らしいお嬢さんじゃの。お嬢さんが、ルーファスの新しい師匠というわけかの?」
「…だとしたらなにか?」デイジーは警戒して問うた。
なぜなら、この爺さんはすでに大魔法を展開済みなことに気づいたからだ。
うかつだった。
仕事に夢中で気づかなかったが、家のまわりに大規模な術式が張られている。
今目の前にいる爺さんはいわば起爆剤だった。あとは爺さんが発動すると念じれば、大魔法は大惨事を引き起こすだろう。
デイジーとクロとルーファスは無事に済むだろうが、残りの患者やアレキサンダーもただでは済むまい。
老人はデイジーを見ているが、返答はあくまでルーファスに期待しているようだった。
「…ちがいます」
「ほ、おかしいのう。お主が新しい師を得てずいぶん生き生きと暮らしとると聞いたんじゃがのう」
「ここにはバイトに来ているだけです」
「ほほ、相も変わらずの勤労少年じゃのう。じゃが、そんな時こそ師を頼ればいいんじゃよ。そうじゃろう?」
「…そうですね」
デイジーを置いてきぼりにして話が進行していく。
気に食わない。
なにが気に食わないって、デイジーを脅迫の材料にしていることだ。それでルーファスは嘘をつかされている。
「おい、爺、ウチのかわいい弟子を脅してるんじゃねーぞ」
だからデイジーはつい口を挟んだ。
「ああ?」
「ああ?じゃねえよ。人の家に勝手にあがりこんで挨拶もなしか?何年生きてるか知らねえが、ボケて礼儀も忘れちまったか?」
「…ほほほっ!こりゃたまげた。なかなか元気のよいお嬢さんじゃわい。いやいや、失礼した。儂の名前はセイフリッド・アームストロング。〈ユグドラシル〉の名誉教授であり、最古の魔法使いの一人じゃ。だから、少々礼儀を忘れても目を瞑って欲しいのう。して、お嬢さんの名前は?」
「わたしの名前は」
デイジーが名前を言おうとした瞬間、ルーファスがふたりの間に割って入った。
「師匠、わざわざご足労頂いたということはなにか火急のご要件でしょう。こんなところで時間を浪費するのは、師匠の研究のためになりません。すぐに出ましょう」
「ちょっとルーファス君。邪魔しないでよ」
「…あなたとはここで、金輪際お別れです。我が師に害なすものは許せませんから」
デイジーは息を呑んだ。
「ほほ、師匠孝行な弟子じゃわい。さて、弟子に免じて退散するとするかの」
満足げにセイフリッドは杖をとりだして、くるんと回した。
すると、セイフリッドのみならずルーファスも宙に浮かんだ。
ルーファスは慣れているようで、宙で慌てることなく方向転換した。
ルーファスは、デイジーのほうを見もせずに「さようなら」と言った。
デイジーは悪いけど客たちに帰ってもらった。客たちもただならぬ雰囲気に素直に従ってくれた。なかには「“凶兆のセイフリッド・アームストロング”を見ちゃった。今日は速く帰らなきゃ!」と自ら急ぎ足で帰る貴婦人もいた。
「デイジー」クロが肩の上から話しかける。「ルーファスのやつ泣いてたな」
「うん」
よほど辛かったのだろう。デイジーにひどい言葉を向ける時、ルーファスの目には光るものがあるどころか声を震わせてすらいた。
はっきり言って、嘘をついているのはバレバレだった。
そして、セイフリッドはその声を聞きながら、ルーファスの背後で邪悪な笑みを浮かべていたのだ。
許せるわけがない。
デイジーはドンッ!と床を踏みぬいた。
セイフリッドは空からデイジーの家を見下ろしていた。
脳裏にデイジーの生命力にあふれた言葉がよみがえる。セイフリッドは不気味な笑みを浮かべた。
セイフリッドは子供が嫌いだった。生命力を感じさせるものが嫌いだった。
しかし、子供が苦しむのは大好きだった。子供の死は大好きだった。
だから、起動させた。
術式・忌蛇穴(キダナ)。
生きたままの巨大な蛇をゆっくりと縦に割いていき、時間を置いて熟成させる。長く生かせば生かすほど強力な威力を発揮する媒体となる。
セイフリッドは媒体を昨夜のうちに湖に沈め、デイジーの家にすべての力が向かうよう経路を作っておいた。
地下水脈を通じて、大蛇がのたうちまわるように呪いがデイジーの家を下から粉砕する。
そのはずだった。
「む?おかしいのう?」
セイフリッドは頭をかいた。
術はうんともすんとも発動しなかった。
いや…!
セイフリッドの足元、湖の中心が渦を巻いていた。
巨大な蛇状の黒い影が、真下からセイフリッドをかみ砕かんと伸びてきた。蛇からしたら、本懐であったはずだ。
「ほ」
しかし、セイフリッドの足にその顎が届く直前、黒い影は弾けるように霧消した。
「いかんのう。主様に牙を剥くとは…」
いや、それより儂としたことが術式をしくじり、呪詛返しを受けるとは…。これは研究を急がねばならんのう。
「行くぞ」
セイフリッドは師の危機を冷たく見守っていた弟子を伴い、魔法学園〈ユグドラシル〉にある自身の研究棟に向かったのだった。
セイフリッドは自身のミスだと思っていたが、実際にはデイジーが呪いの経路を理合で歪めたのだった。すべての力の流れが見えるデイジーにはお手のものだった。ひと踏みで済んだ。
しかし、セイフリッドが最古の魔法使いの一人で、恐ろしい敵であるということには代わりがなかった。
デイジーが最古の魔法使いたちに殺されたのは一度や二度ではない。
常識で考えれば、まったく手を出す相手ではない。
たとえ、大事なものを目の前で奪われたとしてもだ。
クロがデイジーの肩でささやく。
「どうするの?」
デイジーはしばらく目を閉じて考えていた。
はっきり言ってデイジーは頭が悪い。判断が遅い。
どうしたら良いのか?あるいは善いのか?
自分のために?ルーファスのために?
わからなくなって、ぐちゃぐちゃになる。
なんでみんなこんな難しいことが出来るのかわからない。
でも、決めた。
「奪い返してやるわ。“家族”を捨てた時、決めたもの。わたしは自由に生きるって」
デイジーは宣言するように笑った。
「ルーファス君をアイスクリーム屋さんにしてやるわ」
それは急に現れた。
「失礼」
漆黒のローブと帽子に身を包み、いかにも魔法使い然とした白ひげを足まで伸ばした老人だった。
「師匠…」ルーファスはその老人を見てつぶやいた。
老人はニッコリと微笑んだ。その笑顔は粘っこかった。
「ほほ、ワシの顔をわすれてはいないようじゃの…」
口調まで粘っこい。なにやらルーファスに含むところがあるようだった。
デイジーはこの老人を知っていた。
過去、戦ったことがある。
たしか、最古の魔法使いの一人と呼ばれる爺さんだった。
デイジーが自分の技を“理合”と呼ぶのだと知ったのは、この老人がそう言ったからだった。
それにしてもルーファスの師匠だったとは。
特にルーファスから恨み節も聞いた覚えはないし、どうやら今のルーファスの表情を見ても、関係が良好とは言えなさそうだ。
「…どうしてここに?」ルーファスが問う。まったく歓迎している雰囲気ではない。
「ほほ、サボり癖のある弟子に師匠が直接会いに来たんじゃ。なにか悪いことがあるかの?」
ルーファスが何も答えないでいると、老人はデイジーを見た。
「可愛らしいお嬢さんじゃの。お嬢さんが、ルーファスの新しい師匠というわけかの?」
「…だとしたらなにか?」デイジーは警戒して問うた。
なぜなら、この爺さんはすでに大魔法を展開済みなことに気づいたからだ。
うかつだった。
仕事に夢中で気づかなかったが、家のまわりに大規模な術式が張られている。
今目の前にいる爺さんはいわば起爆剤だった。あとは爺さんが発動すると念じれば、大魔法は大惨事を引き起こすだろう。
デイジーとクロとルーファスは無事に済むだろうが、残りの患者やアレキサンダーもただでは済むまい。
老人はデイジーを見ているが、返答はあくまでルーファスに期待しているようだった。
「…ちがいます」
「ほ、おかしいのう。お主が新しい師を得てずいぶん生き生きと暮らしとると聞いたんじゃがのう」
「ここにはバイトに来ているだけです」
「ほほ、相も変わらずの勤労少年じゃのう。じゃが、そんな時こそ師を頼ればいいんじゃよ。そうじゃろう?」
「…そうですね」
デイジーを置いてきぼりにして話が進行していく。
気に食わない。
なにが気に食わないって、デイジーを脅迫の材料にしていることだ。それでルーファスは嘘をつかされている。
「おい、爺、ウチのかわいい弟子を脅してるんじゃねーぞ」
だからデイジーはつい口を挟んだ。
「ああ?」
「ああ?じゃねえよ。人の家に勝手にあがりこんで挨拶もなしか?何年生きてるか知らねえが、ボケて礼儀も忘れちまったか?」
「…ほほほっ!こりゃたまげた。なかなか元気のよいお嬢さんじゃわい。いやいや、失礼した。儂の名前はセイフリッド・アームストロング。〈ユグドラシル〉の名誉教授であり、最古の魔法使いの一人じゃ。だから、少々礼儀を忘れても目を瞑って欲しいのう。して、お嬢さんの名前は?」
「わたしの名前は」
デイジーが名前を言おうとした瞬間、ルーファスがふたりの間に割って入った。
「師匠、わざわざご足労頂いたということはなにか火急のご要件でしょう。こんなところで時間を浪費するのは、師匠の研究のためになりません。すぐに出ましょう」
「ちょっとルーファス君。邪魔しないでよ」
「…あなたとはここで、金輪際お別れです。我が師に害なすものは許せませんから」
デイジーは息を呑んだ。
「ほほ、師匠孝行な弟子じゃわい。さて、弟子に免じて退散するとするかの」
満足げにセイフリッドは杖をとりだして、くるんと回した。
すると、セイフリッドのみならずルーファスも宙に浮かんだ。
ルーファスは慣れているようで、宙で慌てることなく方向転換した。
ルーファスは、デイジーのほうを見もせずに「さようなら」と言った。
デイジーは悪いけど客たちに帰ってもらった。客たちもただならぬ雰囲気に素直に従ってくれた。なかには「“凶兆のセイフリッド・アームストロング”を見ちゃった。今日は速く帰らなきゃ!」と自ら急ぎ足で帰る貴婦人もいた。
「デイジー」クロが肩の上から話しかける。「ルーファスのやつ泣いてたな」
「うん」
よほど辛かったのだろう。デイジーにひどい言葉を向ける時、ルーファスの目には光るものがあるどころか声を震わせてすらいた。
はっきり言って、嘘をついているのはバレバレだった。
そして、セイフリッドはその声を聞きながら、ルーファスの背後で邪悪な笑みを浮かべていたのだ。
許せるわけがない。
デイジーはドンッ!と床を踏みぬいた。
セイフリッドは空からデイジーの家を見下ろしていた。
脳裏にデイジーの生命力にあふれた言葉がよみがえる。セイフリッドは不気味な笑みを浮かべた。
セイフリッドは子供が嫌いだった。生命力を感じさせるものが嫌いだった。
しかし、子供が苦しむのは大好きだった。子供の死は大好きだった。
だから、起動させた。
術式・忌蛇穴(キダナ)。
生きたままの巨大な蛇をゆっくりと縦に割いていき、時間を置いて熟成させる。長く生かせば生かすほど強力な威力を発揮する媒体となる。
セイフリッドは媒体を昨夜のうちに湖に沈め、デイジーの家にすべての力が向かうよう経路を作っておいた。
地下水脈を通じて、大蛇がのたうちまわるように呪いがデイジーの家を下から粉砕する。
そのはずだった。
「む?おかしいのう?」
セイフリッドは頭をかいた。
術はうんともすんとも発動しなかった。
いや…!
セイフリッドの足元、湖の中心が渦を巻いていた。
巨大な蛇状の黒い影が、真下からセイフリッドをかみ砕かんと伸びてきた。蛇からしたら、本懐であったはずだ。
「ほ」
しかし、セイフリッドの足にその顎が届く直前、黒い影は弾けるように霧消した。
「いかんのう。主様に牙を剥くとは…」
いや、それより儂としたことが術式をしくじり、呪詛返しを受けるとは…。これは研究を急がねばならんのう。
「行くぞ」
セイフリッドは師の危機を冷たく見守っていた弟子を伴い、魔法学園〈ユグドラシル〉にある自身の研究棟に向かったのだった。
セイフリッドは自身のミスだと思っていたが、実際にはデイジーが呪いの経路を理合で歪めたのだった。すべての力の流れが見えるデイジーにはお手のものだった。ひと踏みで済んだ。
しかし、セイフリッドが最古の魔法使いの一人で、恐ろしい敵であるということには代わりがなかった。
デイジーが最古の魔法使いたちに殺されたのは一度や二度ではない。
常識で考えれば、まったく手を出す相手ではない。
たとえ、大事なものを目の前で奪われたとしてもだ。
クロがデイジーの肩でささやく。
「どうするの?」
デイジーはしばらく目を閉じて考えていた。
はっきり言ってデイジーは頭が悪い。判断が遅い。
どうしたら良いのか?あるいは善いのか?
自分のために?ルーファスのために?
わからなくなって、ぐちゃぐちゃになる。
なんでみんなこんな難しいことが出来るのかわからない。
でも、決めた。
「奪い返してやるわ。“家族”を捨てた時、決めたもの。わたしは自由に生きるって」
デイジーは宣言するように笑った。
「ルーファス君をアイスクリーム屋さんにしてやるわ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔法を使わない魔術師を切り捨てた国は、取り返しのつかない後悔をする
藤原遊
ファンタジー
魔法を使わない魔術師は、役に立たない。
そう判断した王国は、彼女を「不要」と切り捨てた。
派手な魔法も、奇跡も起こさない。
彼女がしていたのは、魔力の流れを整え、結界を維持し、
魔法事故が起きないよう“何も起こらない状態”を保つことだけだった。
代わりはいくらでもいる。
そう思われていた仕事は、彼女がいなくなった途端に破綻する。
魔法は暴走し、結界は歪み、
国は自分たちが何に守られていたのかを知る。
これは、
魔法を使わなかった魔術師が、
最後まで何もせずに証明した話。
※主人公は一切振り返りません。
役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く
腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。
居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。
しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。
小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる