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美細剣「白鷺」

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「おめぇよぉ、種渡しておくから適当に畑使って育ててくれ。収穫したのは横に詰んどいてくれたらいいから」
「ふぅ、わかった。しかしこの小さな花壇では我の力が長くは保たぬのだ」
「そうか、もう面倒くせぇからこれ渡しとくわ」
 今日取ってきた【土】を渡す。こいつ人間じゃないしもういいわ。

「これには少量で栄養がクッソ濃い土を念じてるから、試しに握って『つち』と唱えてみろ」
「ふむ、『つち』」

 どしゃどしゃ。

「ほぅ、これはよいものだ!」
「あぁ。これを渡すのはお前が初めてだ。問題があったら言え。水は井戸から出せるだろ、一応【水】もいくつか渡しとくから勝手に使え」
「ふぅ、主は特別な力を持っておるのだな」
「俺はお前をずっとさっきの姿にする力が欲しいよ」
「ふぅ、あの様な軟弱な姿を好むとは、主は変わっておるな。これらは任された、朝日と共に芽を出すだろう」
「明日は野菜パーティだな」

 もう畑はこいつに任せよう。どうせすぐ育つだろうから、明日は野菜を売りに行くぞ。



 気を取り直して新しい文珠を使ってみよう。

 まずは【剣】からだ。
 剣とはなんぞや?青珠を使って試してみようか。
「剣よ出ろ」
 念じるが何も起こらない。まぁ、予想はしてた。お人形を使って【視】の実験をした時も同じだった。【剣】はこれだけでは作用しない、あくまで剣に備わった機能なんだ。

「鉄剣」
【鉄】を使って鉄剣を生み出した。ノアに見せたら文句を垂れそうな不格好な剣だ。そこに【剣】を埋め込んでみる。イメージは、折れず、曲がらず、よく切れる。

 ギ…ギギ…ギ…。

 おぉっ!少しずつ形を変えているぞ!
 俺にはよくわからないが、きっと剣としての機能が改良されたはずだ。
 ノアに見せて見ようかな?でもどうせならもっとすごい剣を作ってから「流石ポール様!すごい!」って言わせたい。


 ノアの使うのは細剣。レイピアと呼んでもいい。
 名前の通り見た目は細いが、刀身は長い。長い刀身を支えるために根元部分はそれなりに分厚く、全体的に重くて取り回しが悪い武器だ。本来魔物と戦う様な武器じゃない。
 バランスを取るために柄の部分には無駄な装飾を入れたりするんだよな。言っちゃ悪いが武器としての機能美からはかけ離れてるぜ。

 だが俺の能力なら、きっと通常の鍛冶とは違った物が出来るはずだ!

 まずは【鉄】翠珠を複数使って剣の形を作るぞ。見本がないからよくわからんがきっと大丈夫だろう。
 えーと、柄部分がごちゃっと装飾があって、刀身は……長い。どれくらい長いかって言われると分からんが、まぁ、長い。軽いんだし長めでもいいよな、2mくらいでいいか。
 素材は鉄、硬くて、柔軟で、とびきり軽いやつだ。よし、出ろ!

 文珠が混ざり合い、長い刀身を持つ鉄の細剣が作り出された。本当に長い、実物を見ると長すぎて笑えて来た。
 柄の部分はごちゃごちゃしてて形容しがたいな。まぁたぶん【剣】の方で調整してくれるさ。

「最高の細剣だ、折れず、曲がらず、よく切れる。そして軽く、重心も完璧、柄の装飾も、全体の美しさも最高の細剣を創造しろ!」
【剣】翠珠を埋め込む。1つ2つ3つ4つ5つ、デスナイトの持つ剣の25倍だ!

 ギギ!……ガギギギギギ!………

「おぉっ!さっきより激しく変化しているぞ!」

 ギギギ!……ガギャァァン!

「素晴らしい!」
 生み出されたのは溜息が出るような美しい細剣だった。
 刀身は2mもあり、中央にまっすぐ白いラインが入っている。柄には絡み合う双頭の蛇、柄の中心には大きな宝石が埋め込まれ、「美」の一文字が赤くギラギラと輝いている。

「すげぇ、すげぇよ。早くノアにも見せてやろう。そうだ鞘も作っておかないとな」

 鞘も作ったが、刀身が長すぎて手に持ったままでは鞘に納められない。斜めに立掛けてなんとか収めることが出来た。
 剣士ってすげぇな、こんなのをどうやって扱ってるんだ?やっぱり俺は簡単な文珠でいいよ。


「ノアー!ノアー!凄い剣が出来たぞ!お前が使え!」
「な、なにそれ?」
「何ってお前の新しい剣だよ!かなり力を籠めた自信作だ!さあ、抜いてみてくれよ」
「ぬ、抜い?」

 どうやって抜刀するんだろう!剣士ってすげぇな!
「ほら!抜いてみろって!刀身も綺麗だしバランスも最高な筈なんだ!」
「くっ!………いくよっ!」

 ノアは地面に膝が付くような低い体勢を取った。表情は真剣そのものだ。ヘラヘラしないで真面目な顔をしていれば綺麗なもんじゃないか。
「セヤーー!」
 疾風のような踏み込みからの逆袈裟!すごい!いつ抜いたんだ!?

「すげぇぇ!やっぱり剣士ってのはよい剣を持ってこそだな!明日からはそれを使ってくれ!」

「え?あの、凄くいい剣なんだけど、ちょっと目立ち過ぎるから長さは半分くらいでいいかな?」


 削るのが嫌で断った。目立ってもいいじゃねぇか。
 温かい風呂に入り、とてもいい気分で寝た。明日は街で野菜売りだ!
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