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卑しい水

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 弐式文珠で作りたいものを考える。

【転移】。言うまでもなく最高に便利だ。【転】は手に入ると思う。木材で回転するおもちゃでも作れば少しずつ集まるだろう。しかし【移】は全く心当たりが無い。移動などが頭に浮かぶが、人形からも動詞は抜けなかった。保留だ。

【自動車】。三文字である。論外。【馬車】ならありか?馬さんが可愛そうなので止めとこう。【車】から自動車をイメージならどうか?ちょっと出来る気がしない。せめて翠の次にレベルアップしてからかな。

【冷蔵】。これはよいように思えるが、以前布に熱を加えてもすぐに失われた経験がある。文珠はエネルギーを保有しているので色々な事象を起こせるが、エネルギーを消費してしまえば終わるのだ。

 面白いものは浮かぶが作る手段が分からん。既存の、もしくは簡単に手に入る文珠で組み合わせないと意味がないか。


 そうだ、【癒水】とかいいんじゃないか?要するにポーションだ。俺は薬師を騙っていることだし、両方簡単に手に入る物で作れる。
 試しにこれを作ってみよう、いい物なら売っぱらえばいいしな!
 一番安い物でも銀貨1枚で売っていた。高いので使ったことは無いが、見た目だけでも似せておこう。

【癒】と【水】を握り、飲んだり傷口に掛けると癒やし効果のある水をイメージしてくっつける。
 そして生まれる【癒水】。これは物体をイメージしているので、何か入れ物を使って売買が可能だ。
 効果を確かめたいな。人形を使ってもいいが、怪我人病人くらい街に転がってるだろう。

【器】から薬瓶を作り出し、とりあえず灰珠1つ分の癒水を詰めた偽ポーションを5つ、青珠を1つ、翠珠を自分達用に5つ作った。分かりやすく青と翠には色を付ける。
 売るなら錬金ギルドか冒険者ギルドだな。どっちの窓口嬢も俺に気がある感じだからなぁ迷うなぁ。

 でもポーションと言えばトトリさんな気がする。こう、しっくり来るんだよな。
 錬金ギルドの嬢ちゃんは名前聞いてなかったな。マリーとかソフィーとかイリスとかいっぱいあるからヒットする可能性もあるぞ……、でもライザって感じでは無かった、何がとは言わないがライザでは無いな。間違いなくライザさんではない。
 決めた。早速冒険者ギルドへポーションを試し売りに行こう。


「暫くは色々やりたいから自由にしてていいぞ。俺はギルドへポーションを売りに行く。暇だったらシャルリンに竹材か木材を作ってもらって、何か作ってろ」
「何かって?」
「何でもいいぞ、輪っかでも、皿でも、棒でも構わん。あればあるだけいい」
「?」
「何が役に立つか分からんからな。すぐに使いそうなのは器かな?ノアは外で奴隷を探してもいいぞ」
「あぁ。しばらく閉めてるらしいけど、近い内に代替わりして再開するって噂だよ」
「ふーん、お前は書類上正式な奴隷だからな。大丈夫だと思うが、厄介事は起こすなよ」
「大丈夫さ」
 駄目っぽいな。こいつ捕まったら切り捨ても考えるぞマジで。



 冒険者ギルドへやってきた。汚れた冒険者共がうようよいるぜ、夕方に来たのは失敗だったな。
「トトリさん、ちょっと独自のポーションを作ったんですけど。買取ってやってます?」
「ポーションですか。錬金ギルドから購入しているのでちょっと問題があるかもしれません」
 やはり商売の義理があるか。

「じゃあちょっと怪我人とかいません?病人でもいいんですけど」
「ぴったりすぎて怖いんですが。実は、ポーターの子が2人大怪我をしていまして」
「え?」
「治療費も払えないんですが、放りだしてもそのままになるのは目に見えているので、とりあえず奥で寝かしているんです」
「見せてください!」


 奥の部屋へと案内される。嫌だなぁ、胸の奥がざわざわする。別に特別な感情なんて無いはずなんだが。
「ここです」
 宿直室か治療室だろうか、中から弱々しいうめき声が漏れている。あぁいやだやだ。


 中の光景は想像以上に悲惨だった。ベッドなど無く、薄汚れた床に伏しているのは、かつて同じスラムで生き抜いてきた仲間たちだった。
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