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第一村獣人

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 翌日。朝から獣人の里に向かって出発した。
 もう解決したも同然だ、要するに獣人と話をつけてから街を襲ってりゃくだ…解放するだけだろう?前回はチビチビやったが、俺はあの頃より強くなった。今回は町ごと破壊してでも奪ってくればいいんだから簡単だぜ。他所の街のことなんか知らん。

「2号を連れてくればよかったなぁ、凄く似合うのに」
「え?何をさせるつもりなの?」
「第三次大戦だ」
 何故攫われた側の獣人が我慢する必要があるんだ。戦って勝てばよかろうなのだ。


 森の中の頼りない道を進む。無数の枝葉が絡み合って陽光を遮り、昼間なのに薄暗い。道と呼ぶには粗末な、僅かな往来によって自然と形作られたものだ。
 幅も狭いため、歩くたびに枝が服や荷物に引っかかり、先を進むたびに疲労が募る。
「デイガン、ミミナ、焦らずに後ろを歩け」
「はい…、ごめんなさい」

 突然、前方の茂みがざわめいた。
「何かいる…」
 ノアが囁いて足を止めた。俺には全然わからん。
「鉄陣」
 とりあえず防御しておく。全員を包むようにハニカム構造の鉄の陣が展開、矢が通らない程度に穴を狭める。

 ガン!

「射って来た!?」
「思った以上に切羽詰まってるようだな。デイガン、どこからか分かるか」
「あ、あそこです。こ、ころさないでください!」
「心配するな、相手はちゃんと覚悟があるから射ったんだ。死ね、スターライトシュート!」

 チュン!

「うぐあっ!」
 木の幹に身を隠している敵を見つけて、幹を貫通させて攻撃した。スターライトシュートは姿さえ見えていれば必中だ。しかも鉄陣の隙間から攻撃できて隙がない。

「わぁぁぁぁぁ!やっちゃった!」
「やってない、ケツをぶち抜いただけだ」
 脚は二股なので当てにくいからな。それより上だとショック死の可能性が高まる。

 ガンガン!
「ほら、さっさと治療するために索敵をしろ」
「はい、でも殺さないでください!」
「たぶんな」
 時の運でござる。


 数分後。獣人たちには運があったようだ。
「オッサンにケモミミって誰得なんだよ。これなんだ?鹿の獣人か?のこのこ現れたか?」
(ぶくぶくぶくぶく……)
「うわぁ…、股間を貫通してるんじゃない?泡吹いてるんだけど」
「ハルクおじさん!?おじさんしっかりして!」
「なむ」
「お前らまだ文珠を使ってないだろ、いい機会だから使ってみろ」
「あ、癒やしの光!でしたっけ?」

 言葉にした途端、デイガンのポケットの中で文珠が強い光を放つ。慌てて取り出すと、光は怪我をした獣人を包み込み、あっと言う前に治してしまった。

「す、すごい!」
「慣れておけ、惜しむなよ」


 残りも治してやった。全員股間を貫通していた。我ながら恐ろしいぜ。
「オラァ!起きろこらぁ!ワレどういうつもりじゃい!」
 スラム式目覚めの尋問だ!
「うぼぉぉぉぉ!はっ!俺は!?……ちくしょう!人間め!絶対に許さんぞ!必殺ガゼルパンチ!」
「ぐあぁぁぁぁぁ!」
 ショートレンジから繰り出されるアッパーカット!柔軟な膝から生み出される力が俺の顎を跳ね飛ばす!

「しゃあ!どうだ!」
「あがががががが!おのれ獣人風情が!よくもこの俺様を!」
「ハルクおじさん待って!だめだよ!」
「デイガン!?生きていたのか!人間め!デイガンを攫ったのはおまえだな!俺のデンプシーロールでトドメだ!」
 獣人の男が拳を構えて頭を左右に振り始める。は、はやい!

「いい加減にしなさい」
 男の太腿を白鷺の刀身が容赦なく貫いた。
「うぎゃあああああ!」
「おじさぁぁん!」
 脚を抑えてゴロゴロ転がっているが、まだミミナが文珠持ってるし大丈夫だろう。

「助かったぜ」
「君は何でも出来そうなのに意外と弱点が多いよね」
「弱点があるからお前らを連れてるんだよ」
「そっか」
 そこで笑うんじゃねぇよ怖いだろうが。



 再び治療してやっと事態が落ち着いた。
「そうか、デイガン達を助けてくれたのか!早とちりしてすまんかった!」
「それはいいから里へ案内してくれ。お前たちの問題を片付けて事態を収拾するためにきたんだ」
「む、デイガン達の事で恩はあるが、攫われた者たちを見捨てる事はできんぞ」
「誰がそんな事を言った。街を攻撃して落とし前を付けるんだよ」
「そうか!それなら話が速い!」
「ええ!?僕らの依頼は戦争しないための仲介だよ!?」
「知らん、依頼受けてないし、報酬より略奪品の方が多そうだし」
「もっと悪いこと考えてた!」

「いいから里に行くぞ。襲うにしても相手がはっきりしないと手間取るからな」
「相手が分からない状態で攻撃しようとしないで!」
 うるせぇなイケメン様はよぉ、誰かを攻撃したら攻撃し返されるなんて当たり前だろうが。


 さっさと話を付けて無料で大量の奴隷ゲットだぜ!
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