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第3章 命を賭けた村の直訴 ーバイワン国ー
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バイワン国は収穫の時期を迎えていた。温暖な気候と雨に恵まれ、今年は豊作と思われていた。だが今年もユエス村だけは小麦をはじめ穀物の出来は良くなかった。
畑を次々に回りながら村長はため息をついた。
「毎年毎年、作物の出来が悪くなる・・・」
一緒に見回る村人の顔は暗かった。
「村長。これじゃあ、やっていけねえ。」
「もうここから逃げ出すしかねえ。」村人は口々に村長に訴えた。
「どうしたらいいか・・・」村長は暗い顔をしてつぶやいた。すると
「村長。わかっているじゃないですか!原因はあの川の水です。上流の山で鉱物採掘してから汚れちまったんだ。」若いシェーンが声を上げた。
「そうだ!そうだ!」周りの村人たちも口々に大声を上げ、その場は騒然とした。
「滅多なことを言うもんじゃねえ。お前たちは罰を受けたいのか!」年輩の村人が言うと周りの村人は静かになった。
「お前たちはあのアーシーの事を忘れたのか!そんなことをあちこち言いふらして王城の牢屋に入れられ、そこで死んだのだぞ!」年輩の村人は悔しそうに言った。村長は、
(確かにあの川のせいだ。あの上流の山で鉱物を掘っているからだ。だからと言って王城の執行官も誰もそれを聞いてくれぬ。一体どうしたらいいのか・・・)と思っていた。
「でもこのままじゃあ生きていけねえ。こうなったら王様に直訴だ!」シェーンが立ち上がった。
「そうだ!直訴だ!」多くの村人も立ち上がって騒いだ。
「待て!直訴は御法度。皆、死罪になってしまうぞ。ここは私に任せてくれ。今一度、王城の執行官にかけ合ってみる。」村長は言った。
一人の旅の老人がユエス村を訪れた。手入れされていない白髪と白いひげを生やし、みすぼらしい身なりをしていた。老人は喉が渇いているようで村人に、
「一杯、水をめぐんでいただけないかな。」と頼んだ。
「ああ、いいよ。川から汲んできたところだ。」村人はカップに水を入れて老人に渡した。
「すまんことで・・・」老人は水を口に含んだ。
(この水は・・・)老人は眉間にしわを寄せた。しかしそのそぶりを村人に見せず、
「ありがとう。生き返りました。ところでこの水は近くの川で汲んでいらっしゃったとか。」老人は言った。
「ああ、そこの川だ。昔は川の水も澄んでうまかったけど、今じゃあこの通りさ。」村人が言った。
「ほう。それはどうしてですかな?何かあったのですかな?」老人は尋ねた。
「それがあったんだ!この上流で鉱物を掘り始めたらしい。それで川の水がおかしくなった。そのために・・・」
「ちょっと、やめなされ!」年輩の村人がその村人の話を止めた。
「あっ。そうだった。この話、忘れてくれ。」村人はそのまま立ち去ってしまった。老人は年配の村人に尋ねた。
「一体、どうしてですかな?言ってはいけぬわけがあるのですかな?」
「知らない方がいい。知ったところでどうにもならないこともある。こんな話をしていたら牢屋に入れられてしまうからな。」年輩の老人も老人から離れるように行ってしまった。
(この水は確かにおかしい。それにこの作物の出来はどうじゃ・・・そして村人も・・・)老人はこの地に何かおかしな気配を感じていた。
村長は王城に出向いていた。そこで村を監督する執行官に村の実情を訴えた。
「今年も村の作物の出来は悪く、献上する品の方を何とかしていただきたく思いまして・・・」
だが執行官はすべてを聞かずに、
「それはならぬ。毎年決まった分を差し出すようにとジャカン大臣からきつく言われておる。」と言った。
「それはそうですが・・・作物の出来が悪いのは川のせいかと存じます。川の上流の山から鉱物を掘るようになってからです。できましたらその辺をお汲み取り頂き・・・」
「だまれ!作物の出来が悪いのは村の者の怠慢ではないのか。それを鉱物採掘のせいにしよって!けしからん!お前も牢屋に入りたいのか!」執行官は怒って言った。
「申し訳ありません。お許しを。」村長はあわてて手をついて頭を深く下げた。
「わかっているならよい。ではこの話はここまでだ。変なことを言うと村の者すべて罪に問われるぞ。さよう心得えよ!」そう言って執行官は行ってしまった。村長はやっと頭を上げた。そこに執行官の下役人のジュドーがそっとそばに寄った。彼は村の者に同情していた。
「つらいことよな。今はこらえよ。」ジュドーはひそめた声で言った。
「はい。ジュドー様。」
「新しくいらしたジェームズ王はお若いが、ハークレイ法師様が王に推挙なさったほど永明なお方と聞く。きっと村のことを考えてくださるだろう。だが今はジャカン大臣の思うがままだ。執行官は大臣の顔色ばかり見ている。皆に伝えよ。決して短気を起こすのではないぞと。」それだけ言うとジュドーは行ってしまった。
村にはもう一人、作物の出来を見ている男がいた。彼は村長の屋敷にたまに顔を出すジョンという若者だった。彼は役人の子弟らしいのだが、なぜか国のあちこちを調べて回っていた。この村の村人とも顔なじみで、
「おう、久しぶり。おふくろさんは元気か?」などと会う村人一人一人に声をかけていた。
ジョンはこの村の今年の作物の出来が気になっていた。畑を見て回っては、
「ちょっと、今年の麦の出来はどうだ?」と村人に尋ねていた。
「よくはないよ。毎年毎年悪くなる一方だ。」村人の答えは同じだった。ジョンはその度に懐から手帳を出して何やら書きつけた。辺りを見渡しても確かに村の畑の実りは良くなかった。
「そうか・・・この村だけはよくないか・・・」とつぶやいた。そして
「もう少し、調べてみるか。川の方も。」ジョンは歩いて行った。
畑を次々に回りながら村長はため息をついた。
「毎年毎年、作物の出来が悪くなる・・・」
一緒に見回る村人の顔は暗かった。
「村長。これじゃあ、やっていけねえ。」
「もうここから逃げ出すしかねえ。」村人は口々に村長に訴えた。
「どうしたらいいか・・・」村長は暗い顔をしてつぶやいた。すると
「村長。わかっているじゃないですか!原因はあの川の水です。上流の山で鉱物採掘してから汚れちまったんだ。」若いシェーンが声を上げた。
「そうだ!そうだ!」周りの村人たちも口々に大声を上げ、その場は騒然とした。
「滅多なことを言うもんじゃねえ。お前たちは罰を受けたいのか!」年輩の村人が言うと周りの村人は静かになった。
「お前たちはあのアーシーの事を忘れたのか!そんなことをあちこち言いふらして王城の牢屋に入れられ、そこで死んだのだぞ!」年輩の村人は悔しそうに言った。村長は、
(確かにあの川のせいだ。あの上流の山で鉱物を掘っているからだ。だからと言って王城の執行官も誰もそれを聞いてくれぬ。一体どうしたらいいのか・・・)と思っていた。
「でもこのままじゃあ生きていけねえ。こうなったら王様に直訴だ!」シェーンが立ち上がった。
「そうだ!直訴だ!」多くの村人も立ち上がって騒いだ。
「待て!直訴は御法度。皆、死罪になってしまうぞ。ここは私に任せてくれ。今一度、王城の執行官にかけ合ってみる。」村長は言った。
一人の旅の老人がユエス村を訪れた。手入れされていない白髪と白いひげを生やし、みすぼらしい身なりをしていた。老人は喉が渇いているようで村人に、
「一杯、水をめぐんでいただけないかな。」と頼んだ。
「ああ、いいよ。川から汲んできたところだ。」村人はカップに水を入れて老人に渡した。
「すまんことで・・・」老人は水を口に含んだ。
(この水は・・・)老人は眉間にしわを寄せた。しかしそのそぶりを村人に見せず、
「ありがとう。生き返りました。ところでこの水は近くの川で汲んでいらっしゃったとか。」老人は言った。
「ああ、そこの川だ。昔は川の水も澄んでうまかったけど、今じゃあこの通りさ。」村人が言った。
「ほう。それはどうしてですかな?何かあったのですかな?」老人は尋ねた。
「それがあったんだ!この上流で鉱物を掘り始めたらしい。それで川の水がおかしくなった。そのために・・・」
「ちょっと、やめなされ!」年輩の村人がその村人の話を止めた。
「あっ。そうだった。この話、忘れてくれ。」村人はそのまま立ち去ってしまった。老人は年配の村人に尋ねた。
「一体、どうしてですかな?言ってはいけぬわけがあるのですかな?」
「知らない方がいい。知ったところでどうにもならないこともある。こんな話をしていたら牢屋に入れられてしまうからな。」年輩の老人も老人から離れるように行ってしまった。
(この水は確かにおかしい。それにこの作物の出来はどうじゃ・・・そして村人も・・・)老人はこの地に何かおかしな気配を感じていた。
村長は王城に出向いていた。そこで村を監督する執行官に村の実情を訴えた。
「今年も村の作物の出来は悪く、献上する品の方を何とかしていただきたく思いまして・・・」
だが執行官はすべてを聞かずに、
「それはならぬ。毎年決まった分を差し出すようにとジャカン大臣からきつく言われておる。」と言った。
「それはそうですが・・・作物の出来が悪いのは川のせいかと存じます。川の上流の山から鉱物を掘るようになってからです。できましたらその辺をお汲み取り頂き・・・」
「だまれ!作物の出来が悪いのは村の者の怠慢ではないのか。それを鉱物採掘のせいにしよって!けしからん!お前も牢屋に入りたいのか!」執行官は怒って言った。
「申し訳ありません。お許しを。」村長はあわてて手をついて頭を深く下げた。
「わかっているならよい。ではこの話はここまでだ。変なことを言うと村の者すべて罪に問われるぞ。さよう心得えよ!」そう言って執行官は行ってしまった。村長はやっと頭を上げた。そこに執行官の下役人のジュドーがそっとそばに寄った。彼は村の者に同情していた。
「つらいことよな。今はこらえよ。」ジュドーはひそめた声で言った。
「はい。ジュドー様。」
「新しくいらしたジェームズ王はお若いが、ハークレイ法師様が王に推挙なさったほど永明なお方と聞く。きっと村のことを考えてくださるだろう。だが今はジャカン大臣の思うがままだ。執行官は大臣の顔色ばかり見ている。皆に伝えよ。決して短気を起こすのではないぞと。」それだけ言うとジュドーは行ってしまった。
村にはもう一人、作物の出来を見ている男がいた。彼は村長の屋敷にたまに顔を出すジョンという若者だった。彼は役人の子弟らしいのだが、なぜか国のあちこちを調べて回っていた。この村の村人とも顔なじみで、
「おう、久しぶり。おふくろさんは元気か?」などと会う村人一人一人に声をかけていた。
ジョンはこの村の今年の作物の出来が気になっていた。畑を見て回っては、
「ちょっと、今年の麦の出来はどうだ?」と村人に尋ねていた。
「よくはないよ。毎年毎年悪くなる一方だ。」村人の答えは同じだった。ジョンはその度に懐から手帳を出して何やら書きつけた。辺りを見渡しても確かに村の畑の実りは良くなかった。
「そうか・・・この村だけはよくないか・・・」とつぶやいた。そして
「もう少し、調べてみるか。川の方も。」ジョンは歩いて行った。
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本当に、ありがとうございます。
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