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第7章 ダーゼン寺院
魔法使いの誘惑
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魔騎士トンダは道を急いでいた。マールの町でヤニマたちやくざ者をとらえて牢に入れた後、すぐにそこを出発してマークスたちに合流しようとしていた。
(ここで手柄を立ててやる!)
彼はそう思って焦っていた。魔騎士の中では経験が浅く、まだ下位に甘んじていた。だがリーカー追討という重要な任務につくことができ、その立場から脱出できるチャンスが回ってきたように思えた。
彼は魔法の黒カラスからの情報を得て、ベークの村に向かっていた。そこでリーカーを追ってきたマークスたちと合流できるはずだった。だが彼の前に思わぬ獲物が姿を現していた。
それはリーカーとエミリーだった。トンダはすぐに草むらに隠れて彼らの動きを見ていた。
(こっちにやって来る。奴ら、ベークの村に行くと見せかけて裏街道からダーゼン寺院に向かおうとしていたのか・・・)
トンダは魔法の黒カラスを呼び寄せた。そして
「リーカーはダーゼン寺院に向かっております」
と伝言を与え、飛び立たせた。
(これでマークス様はこちらに向かわれる。しかしこのまま黙って奴が通り過ぎるのを見ているだけでいいのか。今の状況ならリーカーの前に出て戦いを挑める・・・)
だがトンダにははっきりした自信がなかった。なにせ、相手は幾人もの魔騎士を倒したリーカー、果たして自分が敵うのか・・・
(それならマークス様と合流するまで遠くから監視するにとどめるか。その方が勝てる可能性が高い、いやそうしたら必ず勝てる!)
トンダはそう思った。しかしその心の中を見透かしたかのように、
「そんな臆病なことでどうします?」
という声が背後から聞こえてきた。振り返ると黒マントでトンガリ帽の魔法使いの男が立っていた。
「何者だ!」
トンダは振り返って剣の柄に手をかけた。
「おっと。私はあなたの敵ではない。味方だ。ウイッテという魔法使いだ」
「魔法使いが何の用だ?」
トンダは剣の柄を握ったまま言った。
「私もさる方からリーカーを倒すように命じられている。ここは協力するのはいかがかな?」
ウイッテはニヤリと笑った。
「もうすぐマークス様が追い付いてこられるはずだ。合流してともに戦えば・・・」
トンダはそう言いかけたが、それをウイッテは遮った。
「それでいいのですか? これはチャンスですよ。マークスなしであなたがリーカーを倒したならザウス隊長、いやワーロン将軍の覚えがどれほどよくなるか。副隊長も夢ではない」
「だが・・・」
「私が力貸すというのです。それなら奴に負けるはずはない。それにリーカーを倒してしまえば、マークスから怒られるどころか褒められることは確かでしょう」
ウイッテは不気味な笑いを浮かべていた。トンダはそれに引き込まれるように、
「うむ、そうだ。そうしなければならん! ここでリーカーを迎え討つ!」
と言い放った。
◇◇◇◇
リーカーはマークスたちの裏をかこうとダーゼン寺院に向かっていた。ベークの村に向かうように上空にいた魔法の黒カラスに姿をさらしたので、よもやリーカーたちがダーゼン寺院に向かっているとは思わないであろう。今頃は、マークスたちはベークの村に向かっているに違いない。
(ダーゼン寺院なら以前に剣術の修行をしたところだ。かくまってくれるかもしれない。そうなら追っ手の心配はしばらくない)
リーカーはそう思っていた。だがエミリーの足取りは重かった。彼女はこの先に嫌な予感を覚えているようだった。
やがて上空に白フクロウが現れた。それは誰だかわからないが、彼の身を案じている人が送ってきてくれているものだった。リーカーが腕を伸ばすと白フクロウは止まった。
「リーカー様。エミリー様。ご無事でしょうか? 女王様はショックを受けて寝込まれております。なんとかご無事であることを伝えられたらいいのですが」
白フクロウは言葉を伝えた。
(多分、ワーロンが女王様に悪いことを吹き込んだに違いない)
リーカーはそう考えるとエミリーのそばに白フクロウを下ろした。そしてリーカーはエミリーに言った。
、
「女王様に言葉をお伝えするのだ。」
エミリーはうなずくと白フクロウに言葉を伝えた。
「伝えて。エミリーは大丈夫です。女王様、お元気になられてください」
白フクロウはそれを聞きとって上空に飛んでいった。
リーカーはエリザリー女王が心配であったが、マークスたち追われている状況で王宮に駆け付けるわけにいかなかった。彼にできるのはただエリザリー女王の健康を祈ることだけだった。
◇◇◇◇
トンダは街道を先回りして小高い丘の上に立った。ここならリーカーを待ち受けられるはずだった。ウイッテはその作戦をトンダに伝えた。
「よいですかな。あなたはここでリーカーと戦うのですよ。儂は後ろから攻め立てる」
「攻めるも何も、一体、お前はどうやって戦う気だ?」
トンダは尋ねた。ウイッテは魔法の杖以外、武器は何も持っていなかった。
「ふふふ。魔法使いの武器と言えば魔法しかないではないか。この杖1本、そこからは恐るべき攻撃ができる。まあ、見ておれ」
ウイッテはそう言うと姿を消した。多分、リーカーの背後に回り込みに向かったのだろう。トンダは剣を抜いてみた。その剣はいつものように曇りなく光を放っていた。
「さあ、来い! リーカー!」
トンダは大声を上げた。
◇◇◇◇
マークスはミラウスと魔兵とともにベークの村を目指して急いでいた。すると上空から魔法の黒カラスが現れ、マークスの肩にとまった。
「なに! リーカーはダーゼン寺院か!」
マークスは思わず大声を上げた。
「リーカーがベークの村ではなく、ダーゼン寺院に向かっているのですか?」
ミラウスはそう尋ねるとマークスが答えた。
「ああ、そうだ。トンダが知らせてくれた。すぐに向かうぞ」
「それは好都合です。我らの到着とともにトンダも討ちかかれば、挟み討ちすることができます。リーカーは逃げられますまい」
「ならばよいが・・・」
ミラウスはそう言ったが、マークスは不安を感じていた。トンダが功名心にはやり、目の前に来たリーカーに戦いを挑んでいないかということに・・・。
(トンダは経験は浅いが、剣の腕はなかなかのものだ。しかしリーカーは思わぬ力で歴戦の魔騎士を破っている。その力を見極めねば危ない・・・)
マークスはそう思っていた。
(ここで手柄を立ててやる!)
彼はそう思って焦っていた。魔騎士の中では経験が浅く、まだ下位に甘んじていた。だがリーカー追討という重要な任務につくことができ、その立場から脱出できるチャンスが回ってきたように思えた。
彼は魔法の黒カラスからの情報を得て、ベークの村に向かっていた。そこでリーカーを追ってきたマークスたちと合流できるはずだった。だが彼の前に思わぬ獲物が姿を現していた。
それはリーカーとエミリーだった。トンダはすぐに草むらに隠れて彼らの動きを見ていた。
(こっちにやって来る。奴ら、ベークの村に行くと見せかけて裏街道からダーゼン寺院に向かおうとしていたのか・・・)
トンダは魔法の黒カラスを呼び寄せた。そして
「リーカーはダーゼン寺院に向かっております」
と伝言を与え、飛び立たせた。
(これでマークス様はこちらに向かわれる。しかしこのまま黙って奴が通り過ぎるのを見ているだけでいいのか。今の状況ならリーカーの前に出て戦いを挑める・・・)
だがトンダにははっきりした自信がなかった。なにせ、相手は幾人もの魔騎士を倒したリーカー、果たして自分が敵うのか・・・
(それならマークス様と合流するまで遠くから監視するにとどめるか。その方が勝てる可能性が高い、いやそうしたら必ず勝てる!)
トンダはそう思った。しかしその心の中を見透かしたかのように、
「そんな臆病なことでどうします?」
という声が背後から聞こえてきた。振り返ると黒マントでトンガリ帽の魔法使いの男が立っていた。
「何者だ!」
トンダは振り返って剣の柄に手をかけた。
「おっと。私はあなたの敵ではない。味方だ。ウイッテという魔法使いだ」
「魔法使いが何の用だ?」
トンダは剣の柄を握ったまま言った。
「私もさる方からリーカーを倒すように命じられている。ここは協力するのはいかがかな?」
ウイッテはニヤリと笑った。
「もうすぐマークス様が追い付いてこられるはずだ。合流してともに戦えば・・・」
トンダはそう言いかけたが、それをウイッテは遮った。
「それでいいのですか? これはチャンスですよ。マークスなしであなたがリーカーを倒したならザウス隊長、いやワーロン将軍の覚えがどれほどよくなるか。副隊長も夢ではない」
「だが・・・」
「私が力貸すというのです。それなら奴に負けるはずはない。それにリーカーを倒してしまえば、マークスから怒られるどころか褒められることは確かでしょう」
ウイッテは不気味な笑いを浮かべていた。トンダはそれに引き込まれるように、
「うむ、そうだ。そうしなければならん! ここでリーカーを迎え討つ!」
と言い放った。
◇◇◇◇
リーカーはマークスたちの裏をかこうとダーゼン寺院に向かっていた。ベークの村に向かうように上空にいた魔法の黒カラスに姿をさらしたので、よもやリーカーたちがダーゼン寺院に向かっているとは思わないであろう。今頃は、マークスたちはベークの村に向かっているに違いない。
(ダーゼン寺院なら以前に剣術の修行をしたところだ。かくまってくれるかもしれない。そうなら追っ手の心配はしばらくない)
リーカーはそう思っていた。だがエミリーの足取りは重かった。彼女はこの先に嫌な予感を覚えているようだった。
やがて上空に白フクロウが現れた。それは誰だかわからないが、彼の身を案じている人が送ってきてくれているものだった。リーカーが腕を伸ばすと白フクロウは止まった。
「リーカー様。エミリー様。ご無事でしょうか? 女王様はショックを受けて寝込まれております。なんとかご無事であることを伝えられたらいいのですが」
白フクロウは言葉を伝えた。
(多分、ワーロンが女王様に悪いことを吹き込んだに違いない)
リーカーはそう考えるとエミリーのそばに白フクロウを下ろした。そしてリーカーはエミリーに言った。
、
「女王様に言葉をお伝えするのだ。」
エミリーはうなずくと白フクロウに言葉を伝えた。
「伝えて。エミリーは大丈夫です。女王様、お元気になられてください」
白フクロウはそれを聞きとって上空に飛んでいった。
リーカーはエリザリー女王が心配であったが、マークスたち追われている状況で王宮に駆け付けるわけにいかなかった。彼にできるのはただエリザリー女王の健康を祈ることだけだった。
◇◇◇◇
トンダは街道を先回りして小高い丘の上に立った。ここならリーカーを待ち受けられるはずだった。ウイッテはその作戦をトンダに伝えた。
「よいですかな。あなたはここでリーカーと戦うのですよ。儂は後ろから攻め立てる」
「攻めるも何も、一体、お前はどうやって戦う気だ?」
トンダは尋ねた。ウイッテは魔法の杖以外、武器は何も持っていなかった。
「ふふふ。魔法使いの武器と言えば魔法しかないではないか。この杖1本、そこからは恐るべき攻撃ができる。まあ、見ておれ」
ウイッテはそう言うと姿を消した。多分、リーカーの背後に回り込みに向かったのだろう。トンダは剣を抜いてみた。その剣はいつものように曇りなく光を放っていた。
「さあ、来い! リーカー!」
トンダは大声を上げた。
◇◇◇◇
マークスはミラウスと魔兵とともにベークの村を目指して急いでいた。すると上空から魔法の黒カラスが現れ、マークスの肩にとまった。
「なに! リーカーはダーゼン寺院か!」
マークスは思わず大声を上げた。
「リーカーがベークの村ではなく、ダーゼン寺院に向かっているのですか?」
ミラウスはそう尋ねるとマークスが答えた。
「ああ、そうだ。トンダが知らせてくれた。すぐに向かうぞ」
「それは好都合です。我らの到着とともにトンダも討ちかかれば、挟み討ちすることができます。リーカーは逃げられますまい」
「ならばよいが・・・」
ミラウスはそう言ったが、マークスは不安を感じていた。トンダが功名心にはやり、目の前に来たリーカーに戦いを挑んでいないかということに・・・。
(トンダは経験は浅いが、剣の腕はなかなかのものだ。しかしリーカーは思わぬ力で歴戦の魔騎士を破っている。その力を見極めねば危ない・・・)
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