闇の者

広之新

文字の大きさ
86 / 90
第14章 駆け落ちの行方

吉報

しおりを挟む
 総督府のリカード管理官のもとにサンキン局長がユーナン星に関する調査結果を持ってきた。
「ユーナン星は王制を敷いており、その王族は星中の人々に尊敬されているようです。ただそれが行きすぎるあまり、王族にふさわしくない行いをする者は糾弾されることがあります。」
「ふむ。そうか。」リカード管理官はうなずいた。
「その中でもカンナン党という組織が過激なことを行っているようです。今までふさわしくないと思った王族を脅迫するばかりか、誘拐してある場所に幽閉したり、また殺害したうわさもあります。彼らはユーナン星では大きな力を持っているようです。王ですら反対できないこともあるようで。」
「その組織の者が地球に入っているのだな?」リカード管理官の目が光った。
「はい。調べたところ数名の者が確認されました。」
「それはまずい。王女の身に危険が及ぶ前に保護しなくては。」
「それは全力を挙げて捜索しております。」
「それにしては王女は可哀そうだな。父であるユーナン星の王はカズン王女が平民と結婚することを許したそうだのにな。」
「はい。王である前に一人の父親として愛する娘の結婚を認めたようです。」
「それも王族から抜けたうえで平民として。それが王として精一杯なのだったのだろう。しかしそれでもユーナンの人民の多くは許さなかった。もし我らが2人を保護してユーナン星に送り届けたら2人はもう結ばれまい・・・」リカード管理官は調査ファイルを閉じて机に置くと椅子から立った。そして何かを考えながら窓の外をじっと見ていた。


 その日の夜、地球代表部の執務室に半蔵は姿を現した。それを予見していたかのように大山参事は机に座って彼を待っていた。
「そろそろ姿を現す頃と思っていた。」
「頼みがある。」半蔵はいきなり話を切り出した。
「わかっている。カズン王女のことだろう。もう手は打っておいた。」大山参事はファイルを半蔵に投げて寄越した。
「それは?」
「ジコウ星がカズン王女たちの受け入れを認めてくれた。そこで2人は無事に暮らせるだろう。ほとぼりが冷めればユーナン星にも戻れるかもしれない。」
「そうか。それはありがたい。」半蔵は喜ぶ気持ちを押さえられなかった。
「お前のためではない。こうしてユーナン星の王に恩を売っておくと後々、役に立つかもしれないからな。」
「とにかくこれで2人は安心だ。礼を言う。」
「ジコウ星の外交官が護衛を連れて明日、迎えに行く。王女たちに伝えておいてくれ。場所はあそこだな。」
「ああ、そうだ。では待っている。」半蔵はそう言って姿を消した。


 次の日の朝、カズン王女たちが部屋で目覚めると人の気配を感じた。
「誰?」起き上がって辺りを見渡したが人影はなかった。しかし声だけが聞こえてきた。それはあの黒装束の男のものだった。
「驚かしてすまぬ。いい知らせを持ってきた。」
「いい知らせ?」
「お2人をジコウ星で預かってくれるそうだ。地球代表部が話しをつけた。これで安全に暮らせるだろう。」
「えっ! 本当に?」2人の顔がぱっと明るくなった。
「ああ、本当だ。今日、ジコウ星の外交官が護衛をつけて迎えに来る。彼らに連れられてジコウ星に渡るのだ。そうすれば2人を引き離す者はない。」
「ありがとう。」カズン王女とソランはそう言って頭を下げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

廃城の泣き虫アデリー

今野綾
ファンタジー
領主の娘だったアデリーはある日家族を殺され育った領地から命からがら逃げ出した。辿り着いた先は廃城。ひとり、ふたりと住人が増える中、問題が次々とおこって… 表紙はフリー素材です

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...