「婚約破棄」ですか?私はかまいませんが本気ですか?

ヤバたん

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父親たち

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 トーイ男爵家の長男はロザリア嬢に、長女はエメラルダ王女のもと王女の子らの乳母兼教育係を務め。次女は南の港を治める伯爵家に嫁いで辣腕を振るっているとか。その上で次男が第一王子に仕えてくれるとわ。

 王が歓迎したトーイ男爵家は古く特殊な家だ。今は文官や各種教師として活躍している。

 件のトーイ男爵家長男は、王立学園卒業後見聞を広めるべくアイビー辺境領で冒険者登録をしてダンジョンにチャレンジしただが、領都で辺境伯夫人が営む鍛冶師たち職人の子らが集まる場で見かけたロザリアを眼にし、彼女こそは自分が仕える主人だと確信した。
 卒業までに父や弟妹たちが云うような主人に出会えなかったアルファルファは絶望しかけていた。いざとなったら修道院に行くよりも、上級ダンジョンで果てた方が良いかとも思いかけた中での出会い。
 急ぎ辺境伯邸宅の門番に身分証を掲示して、辺境伯に面談を願い出た。
 当時トーイ男爵家長男アルファルファ19歳。辺境伯令嬢ロザリア5歳の盛春だったりする。

 通常なら、大事なあと取りに成人した男性を近づけたりしない。
 だが、この頃アイビー辺境伯の元には前辺境伯からの相談に上級ダンジョンのスタンビートの兆し。ぐうぜんとは言え子供の好奇心から発生したロザリアが開発した数種類の品に、利用方法込みの利益登録と狂いそうになるほど忙しかった。
 相手の出自が、トーイ男爵家直系の長男と知り辺境伯は夫人に相談の上。弟夫婦同席の上でアルファルファとロザリアを面談させたところ。
 ロザリアが気に入ったのだ。

「お父様と領の書類仕事も手伝ってくれる?」
「ご主人様の望みなれば如何様でも」
「お母様のアトリエのも?」
「はい。ご主人様」

 アルファルファの言葉にロザリアは頬を膨らませ、口を尖らせこぼす。

「ロザリアて呼んで、ご主人様ではお父様と同じだもの」
「ロザリア様」
「あのね。わたし商会の会頭なんだって、成人するまで代わりしてくれる人探してるの。アルファルファわたしのお友だちになって手伝ってくれる?」
「よろこんで務めさせていただきます」

 頭を悩ましてた書類仕事は、彼がロザリアに仕えるようになり。魔法の杖を振られたように消化されていく。

 すさまじい速度で王都の役所に提出されたロザリア関連の特許利益や特別利用基準や税金関係の見積もりなどの複数書類と辺境伯領に造られたロザリア関連のアトリエに関わる書類に、登録職人確保と守秘義務の神殿契約書類に自らの責任者代理登録まで済ましていた。
 気がついたら職人街の外れ辺境伯邸宅よりにロザリアの商会専用アトリエが建設され。商談用の見本が用意されていたほどなのだ。
 トーイ男爵家直系は人脈も実力もアタリを引けば凄いとの噂を耳にするが、ここまでとは目の当たりにしなければ誰も思うまい。

 昔を懐かしみながらアイビー辺境伯クローブディオは明日の朝。自らのタウンハウスにもどり、王都から領地に向かう予定のワーズ伯爵と杯を交わしながら会談していた。
 そんな二人のもとへ唐突に、王印の押された書簡が同時に出現する。
 王印が押されている以上は緊急のモノであろう。該当者が手に取れば自然開封されるソレを二人はそれぞれ手にする。

「「すまない」」

 アイビー辺境伯は友の息子を救えなかったコトに対し。
 ワーズ伯爵は友の娘にかけた迷惑へと息子の至らなさを詫びた。

 ジョシュアは妻の命と引き換えて産まれてきた。上二人の息子と娘と分け隔てなく育ててきたつもりだが、違いがあるとすれば母を知らずに育ったことか。
 何かと上の三人と自分をくらべ、苦情を言って来ていた。
 長兄は伯爵家を継がせ。次兄は王都のタウンハウスを管理する将来を見越し教育してきた。娘は隣領の伯爵家望まれ嫁ぎ、三男のジョシュアには希望があれば、他家への婿入りや騎士団などへの未来をいくらでも助力するつもりだった。
 だが、そんなおり続けざまの天災が領地を見まい。ジョシュアの望みを叶えるのが経済的に難しい状態が続く。
 兄達のときと違い自分の望みが叶え難いことを感じジョシュアは荒れた。
 領主か父親かで悩みワーズ伯爵は、隠居していた父に相談した。話してどうにかなるモノでないが、今思えば心を整理したかったのかもしれない。

 しばらくしてワーズ伯爵は、父親の友人で前アイビー辺境を通じ現アイビー辺境伯から会談を申し込まれたのだ。

 荒れているジョシュアを同行させず、自分だけでの面談を望むワーズ伯爵にアイビー辺境伯グローブディオは快諾してくれた。
 辺境を守る忙しい身であろうに、中継地の街に必要な物の買い出しがあるからと訪れるとのこと。
 驚くべきは5才の長女ロザリアを同行しており、その娘と後ろに控える男の存在を知れば、傑物だと言われるアイビー辺境伯や西の辺境伯たちすら多少優秀程度で、自分など凡才としか思えない。
 そんな令嬢に見合う人物へ、ジョシュアが自分磨きをできるか不安はあった。だからといって領地を統べる領主でもある自分が息子一人だけに気を取られてなどいられない。

 自分の息子の凡庸さを心配するワーズ伯に、アイビー辺境伯は全ては娘の意思だといい。ロザリア嬢は「背をあずけれる夫が望ましいけど、一緒に領地を楽しめれば良いかなぁ」と言ってきた。ジョシュアは余程の覚悟なしにこの令嬢に敵うまい。

 予想通りになったか!

 貴族ではなくなっても騎士として職が決まり。衣食住に困ることはないようだし。想う相手と同じ職場ですごせるのはジョシュアなりの幸せやも知れん。
 今後ロザリア嬢へ返却する借財と婚約破棄の賠償金も。王が立て替えるとかで、ジョシュアとビアナは王に返済する義務があろうとも。
 これはこれで息子の選んだ人生と言えるかも知れぬ。

 ワーズ伯爵は、一人の父である前に伯爵家の当主で領主なのだ。
 領主というのは王へ頭をたれ仕えるのが第一。国益を担う次代の重要度は国・領地・領民・その次が、他家との関わりと夫婦関係や次代の教育となろう。
 彼は正しく貴族なのだ。
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