「婚約破棄」ですか?私はかまいませんが本気ですか?

ヤバたん

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『婚約破棄』に伴って

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 陛下のもとにロザリアとジョシュアの『魔導契約』変更にかかわる連絡が到着したころ。アイビー辺境伯とワーズ伯のもとにも連絡は届いていた。

 二人の「婚約契約」が、国王陛下と宰相閣下によって『魔導契約』にグレードアップが決まったとき。各種内容変更時の対応各種が想定されたため。
 そこそこの時間にわたり四人の話し合いが持たれた。
 普通の伯爵家の「婚約契約」ならここまで大事にはならない。
 アイビー辺境伯は、ほぼ建国と変わらぬ長年にわたり国の東側を魔物のスタンビートから守り続けている。
 その次期当主予定の令嬢が「婚約契約」は大事に他ならぬ。
 それもあってロザリア嬢の『魔導契約書』の変更は、おどろくほどスムーズに進められた。

 陛下がサフィア殿下・クリスタ殿下他。当事者三人への手紙をしたためている最中。次々とアイビー辺境伯・ワーズ伯爵から伝書魔鳥が自分の子らへの更新された手紙(指示書)が届き。それらを受け取りつつ、立ったままトーイ男爵が娘ビアナへの手紙を書き記す。

 それを傍目にオニキス宰相閣下が、ロザリア嬢の婚約契約解消手続きとジョシュアと借財返還手続きにビアナと共にのロザリア嬢への婚約破棄賠償手続き。ジョシュアとビアナの騎士団所属手続きに貴族席解消手続きと忙しく働いている。
 未だかつてない高額な騎士団所属者の借財と賠償金に、騎士団事務所から苦情が来ることだろう。

 オニキス宰相は口元に微笑みを浮かべる。

 陛下が記した手紙その他は、王室宮内庁執事室はえぬきの執事数名がうやうやしく銀盆に乗せて王立学園卒業パーティーへと運んでいった。

 陛下の執務室から王宮離れの王立学園卒業パーティー会場がどれだけ離れていようと、できる執事達には関係ないのだ。
 主人の望みをいちはやく叶えるのが重要なのである。
 彼ら執事の足は速い。背を正し各人銀盆に手紙と陛下からことづかった品をのせて進む姿は水面を行く水鳥のよう。
 とても数人の集団が移動しているとは思えないほど。あっという間に通り過ぎて行く姿は瞬間移動のよう。
 通常は王宮の陛下執務室の控室から王宮離れの王立学園卒業パーティー会場までは、馬車移動で10分強かかる距離を徒歩で10分弱で走破する。
 そして驚くべきは銀盆に乗せた手紙どころか髪も乱さず。汗もかいていない。
 プロという名の化け物集団である。

「アシェルいつもの覇気がいささか陰っているがどうした」

 移動しながら執務室次席シアンが、自分の後につづく中堅の執事に声をかける。当然ながら移動は続いたままだ。

「昨日の午後。三の回廊の階段脇で黒ずくめの者に銀盆に乗った書状を奪われそうになり、拘束して回廊の鎧に繋いできました。
 護衛の騎士には連絡しましたが、銀盆と靴の踵にクモリを付けてしまったのが歯痒くてなりません」

「まだまだ伸びしろがあると言うことだ良いことよ」

 シアンの労いの言葉にアシェルは無言で頷きほのかに唇を綻ばせた。

 そんなやりとりをしていると程なく卒業パーティー会場へ到着する。
 会場警備責任者に身分証を掲示してサフィア殿下の元へ誘導してもらう。
 このままいけば陛下執務室からサフィア殿下の元へ目標の10分以内に到着できそうだ。

 卒業パーティー会場に到着したシアン次席執事長につづき、中堅・若手の執事に見習い全部で五人が続いて入場してきたのには卒業生だけでなく会場スタッフ達も驚いたもよう。
 これだけの数の執事たちがそろうのは公式行事や叙爵などのとき以外では珍しいから。

 シアンはサフィア殿下とクリスタ殿下のもとに向かうと銀盆に乗せた陛下の手紙とペーパーナイフを指し示す。

「陛下からサフィア殿下とクリスタ殿下に、祝辞だと」

 次席執事が来るとはと思いながらサフィア殿下は手紙の封を開け、サッと眼を通すと隣に来ていたクリスタ殿下へと手渡す。

 生徒の卒業パーティー会場にスタッフとして参加している執行部の生徒たちは、卒業生に気をつかい認識阻害の魔道具をつけている。
 執行部には王族や高位貴族の子息令嬢もいる訳だが、卒業生は王族から平民までイロイロだったりする。
 他国の留学生や遊学生までいる中。主役であゆ卒業生たちが家格とかの面倒ごとを気にしては心から楽しめない。
 だからこその魔道具使用だった。

 だからこそサフィア殿下が陛下の『祝辞』に眼を通し、となりのクリスタ殿下へと手渡すまで一部の卒業生たち以外は、事情を知っていても第四王子がスタッフスタイルなのに気づかなかったのだ。

 そんな中。サフィア殿下がロザリアに声をかけてくる。

「ロザリア嬢に聞きたいのだが、西のリリーナとはよくお茶をするのかい?」

 ロザリアは言葉にせず扇で口もとを隠し微笑む。
 陛下の手紙の内容どうり次代王国最強の女性布陣が敷かれつつあることが知れた。

 そんなやりとりの中普段から表情のとぼしいクリスタ殿下が、あからさまに口もとをゆるめ。眼もとが優しい。

 次いで執事シアンは、自分の後ろに控える若手執事二人に視線を向ける。
 進み出た一人は、銀盆に王の封蝋をした手紙とロザリアの父アイビー辺境伯の封蝋をした手紙が乗せられていた。
 とうぜん読む順番は決まっている。陛下の手紙に眼を通し父親の手紙を読み終えると執事シアンに軽く笑む。
 次の執事が差し出してきた書類を眼にして、軽く首を傾げる。

「婚約破棄に伴う目録です。後ほど宰相室で手続きをお願いします」

 ロザリアが受け取るジョシュアの借財返済手続きなのだが、なぜか勘違いしているジョシュアはしてやったりと誇らしげにしている。

「承りました」
「私が付きそおう」

 クリスタ殿下が嬉しそうです。
 ロザリアは何となく外堀が埋められてきている気がしますが、ぞんがい悪い気がしないので良いかと思っていたりします。
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