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第五章 〜ゲーム開始『君に捧ぐ愛奏曲〜精霊と女神の愛し子〜』
126. ブラックリスト④ side ノア
しおりを挟む「毒殺……? なぜそんなことがわかる?」
「私は王族の専属侍医なので、歴代の王族のカルテを閲覧できるんです。その時に側妃様のカルテを見て死因と病名に違和感があり、当時の様子を調べました。そして明らかに情報操作されていることに気づいたので、それでいろいろ察しました」
情報操作したのは先代国王。
「つまり、犯人は王太后か──」
「あくまで想像です。王宮はいろいろな噂が飛び交いますから、真実は当事者にしかわかりません」
「なるほどな。それだけの背景があればアイザックがデンゼルを要注意人物としてマークするのも頷ける。自分を矢面に立たせず、戦争を引き起こして国王と王太子にその責任を取らせるのが一番効率がいいからな」
ついでに自分の母親を殺した王太后のことも、無能な国王を生み出した元凶として一緒に葬れる。
「前国王は賢王と名高いが、夫婦関係はいろいろありそうだな。情報操作は貴族が王子たちを担いで王位継承争いを起こさせないためだろう」
(まあ結局、孫の代で争いが起きそうなんだが……。エイダン殿の話が真実ならどこの国でも女の悋気ってのは怖いな)
自身も庶子で、皇后から何度も殺されそうになった経験があるため、デンゼルの気持ちは分からないでもない。
ノアには味方になり、守ってくれる兄がいた。デンゼルにはそういう存在がいなかったのだろうか──
だが事情はどうであれ、もしデンゼルが両国の戦争を引き起こそうとしている黒幕なら、王族としては失格だ。
民を犠牲にする者が王になどなれるわけがない。
「これ……僕が聞いていい内容なの? 出来ることなら巻き込まないでほしいなぁ」
クリスフォードがげっそりした表情で呟く。
「残念ながら、あちらのボスを封じるのが俺たちの役目だからな。自ずと向こうから寄ってくることになるだろうな」
「はあ~……ホント、普通の人生が良かったのに、なんでこうなったかなぁ……。まあ、ヴィオを守るために頑張るけどさ──」
テーブルに両肘をつき、組んだ手の上に額を乗せて顔を隠したまま、疲れたようにクリスフォードが愚痴をこぼす。
「……クリス」
女神と精霊の加護を持つ双子の肩に、計り知れない重圧がかかっていることを大人たちは知っている。
出来れば自分が変わってやりたいと、何度思ったかわからない。きっと父親のエイダンの方が何度もそう思っているのだろう。
それでも双子に縋るしかない現実が酷くもどかしい。
「とにかく、舞踏会当日はこのブラックリストを元に厳戒態勢で挑む。無事にヴィオラがデビュタントを迎えられるよう精一杯働かせてもらうよ」
「私は引き続き王太子殿下のところで働きます」
「ああ。頼んだぞ、マルク。それからルカディオをヴィオラのエスコート役から外す理由を作るよう頼んでおいてくれ」
「御意」
恐らく、誰かしらヴィオラたちに接触してくるだろう。
もし悪意を持って近づくならば返り討ちにするまで。
特に偽聖女とルカディオ。
(お前たちに関しては容赦しない──)
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
グレンハーベル帝国、謁見の間──
「────ほう。ノアは随分とあの双子に入れ込んでるようだな。裏皇家の仕事より報告書の内容が充実してるんじゃないか? たまにはこっちに帰ってくるかと思いきや、全然帰ってこないし」
「マルクの話によると、ヴィオラ嬢に懸想しているらしいですよ」
「何!? それは誠か!?」
「ジルは近くで見てたんだろ? どんな感じだった?」
「あー……言われてみればノア様が異性に対して感情見せて接していたのは珍しいかも? でも僕、バレンシアでは医療鑑定の魔法陣開発で部屋に篭ることが多かったから、あまり二人の様子見てないんだよねぇ」
「なに~!? ノアの恋バナなんて上級精霊に出会うくらい希少だろう! もっとよく観察しておけよ!」
「団長の口から恋バナの単語が出るとか、気持ち悪いんですけど」
豪華絢爛の謁見の間に似つかない騒がしい声の主は、帝国魔法士団の団長──レオンハルト・ブラナ。隣には同じく魔法士団幹部のジル・コーレリアン。
そして玉座に座るのは、皇帝ジェフリー・グレンハーベル。
「双子は順調に魔法を習得しているようだな」
「そうですね。二人とも地頭がいいから飲み込みが早かったですよ。さすがエイダン殿のお子さんですね」
「ジルはまたバレンシアに行くんだろ?」
「はい。クリスに魔力増幅の訓練をしないといけないんで、スケジュール調整してまた行くつもりです。精霊と契約してるから召喚して訓練するのが一番早いんですけどねぇ。精霊との相性もあるし」
「また最高位の精霊に会いたいなぁ」
「だが、あの者たちの力は膨大だったぞ。召喚したら邪神に気づかれるんじゃないか?」
「それなんですよねぇ。僕と契約しているグラディスにも聞いてみたんですけど、神のことはわからないらしくて。召喚していいかどうか女神に聞くのが一番でしょうね。バレンシアに行った時に双子たちに聞いてみます」
「それにしても──デンゼル・フォン・バレンシアか。野心に溺れるような人間ではないと思ったんだがなぁ」
ノアの報告書を見ながら皇帝は顎に手を当て、思案する。
「どうりでマッケンリー公爵の足取りが掴めないはずだ。まさか王弟が後ろ盾になっていたとはな」
「仕事熱心な愛国心のある男だと思ってたんですけどねぇ」
「まだ王太子の勘ですよね」
「そうだな。だが動機は揃ってる。これは本腰入れて戦に備える必要がありそうだな──」
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