【完結】惚れ薬の調合に失敗したので、何故か花嫁のフリして白銀王子に溺愛された魔女の話。

ゆいレギナ

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主人のいない間の出来事⑧

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「わたくしの友人としても、とても誇らしい行動でしたわ」

 この方に認めてもらえるだけで、どうしてこんなにも自信が出てくるのだろう。
 胸に色々な感情がこみ上げてくるけれど、言葉と共に涙も出てきてしまいそうだから、口が開かない。
 そんな私に、スカーレット様は気まずそうに顔をそらす。

「な、なによ……と、友達と言われたのが不本意なら、きちんとおっしゃいなさい……!」
「いえいえ! 滅相もございません!」

 私は照れたスカーレット様を、慌てて抱き上げる。

「友人だなんて光栄すぎて、なんて言葉を返したらいいのか」
「お、大袈裟ねっ!」

 もう、だから私はこの人が――。
 潰さないようにそっと、その小さなぬくもりを抱きしめる。なお気恥ずかしそうに悶えるお姿が可愛くて可愛くて。
 だからこそ、やっぱり罪悪感が拭えない。

「でも、クルトさんに疑われてしまいましたね……」
「明日には殿下も帰ってくるんですし。あと二日です。なんとか押し通せますわ」
「でも、元に戻ったあともスカーレットが――」

 気まずかったり、やりにくいことがあるのでは?
 それを問おうとするも、調子を戻したスカーレット様は「くどいですわよ」と鼻で笑う。

「姿さえ元に戻れば、あとはわたくしがどうとでもしますわ。まあ……何かでどうとならなかったとしても……わたくしに任せておいてちょうだい。処刑にさえならなければ大丈夫です。二人で海外に出て、商売するとかどう? あなたの薬学の知識と技術、わたくしがフル活用してみせますわ」

 語学や交渉術には自信がありますの、と私の手の上で胸を張る小さくたくましい淑女に、思わず吹き出す。

「頼もしい限りです」

 この任務が終わったあとも、末永く、この傲慢で大好きなご令嬢と共に。

 二人でこの国を捨てて、あちこち飛び回すのもいいかもしれない。魔女としてはしょぼいものだけど、二人で多くの人の役に立つのだ。落ち着けそうな拠点があれば、そこで小さな薬局でも作って。行動派のスカーレット様があちこちから仕事をもらってきそうな気がする。そんな暮らしは少し大変そうだけど……きっと楽しい。


 そんな未来も……いいかもな。
 その後、私たちは夜通し夢を馳せる。スカーレット様は結局、私がクルトさんの手によって見せた痴態について、何も言わなかった。そんな、やっぱり優しいスカーレット様と……女ふたりで語り尽くす夜は、私にとって星あかりよりもきらめいて。
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