悪役令嬢は主人公に告白されました?!

たいやき さとかず

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お願いさせていただきます?!

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「偶然だったんです……」
 エリノアは俯いたまま話し出した。
 数日前、エリノアは裏庭で友人たちと授業前の一休みをしていた。その時に忘れた筆入れを次の休み時間に取りに向かうと、兄とマキアを見かけた。エリノアは兄が彼女に熱を入れているという噂を何度も耳にしていたため、心配になり二人の後をつけたのだという。
「その時に、兄が……マキア様に……」
「エリノアさん?」
 徐々に青くなってくエリノアが心配になってリリィーアルは声をかける。しかし聞こえていないのか、エリノアは話を続けた。
「……兄が、マキア様にプロポーズを、していました」
 エリノアが膝に置いた拳をぎゅっと握る。
「ルリーシャ姉様にもまだしていないのに、私、兄があんなことをするなんて、私、信じられなくて…………わけもわからずに、逃げ出したんです」
 顔を上げたエリノアと目が合った。
 エリノアは大きく目を見開くと、勢いよく頭を下げた。
「お願い致します、リリィーアル様! どうか、どうかこのことを、両親に告げないでいただけないでしょうか!?」
「ちょっと、エリノアさ……」
「我がアストロッテ家には、兄以外の男子がおりません。しかし両親が知れば、兄は相続権を無くすでしょう。兄がそれほどの無礼をしたことは確かです。けれど! けれどこのままでは、アストロッテ家がなくなってしまう……!」
「エリノアさん、落ち着きなさい!」
 リリィーアルは珍しく声を荒げた。ハッとしたようにエリノアが顔を上げる。
 エリノアが「申し訳ありません」と姿勢を正すのを見届けると、リリィーアルは一度座りなおして深くため息をついた。
「まず、エリノアさん。わたくしはあなた方のご両親に、このことを告げる気はありませんわ」
「……へ?」
「そんなことをしてしまっては、エリノアさんやルリーシャさん……マキアさんが迷惑を被ってしまいますもの」
「え、でも…………リリィーアル様……?」
 困惑して目を泳がすエリノア。そんな彼女の様子に苦笑が漏れる。
「エリノアさんがわたくしのことをどの様に思っているのかは分かりませんが、この件についてお教えする理由は、わたくしにはありませんの」
 リリィーアルは微笑みを浮かべてカップに口を付けた。
 深い茶葉の香りが鼻を抜け、心地よい気分になる。この紅茶は、リリィーアルが一番好きな茶葉だった。
 こくりと喉を鳴らして、笑みをたたえたままディアゴを見る。
「さて、ディアゴ様。妹さんがこんなにもお家のことを憚っているのに、あなたは何もお話になりませんわね」
 ディアゴは肩がびくりと跳ねる。
 青ざめた顔の伯爵家の嫡子に向かって、リリィーアルは「まあ、いいです」と呆れを交じえて続けた。
「あなたがこの件についてどのような思いを抱いているのかは存じませんが、そのご様子だと、大変なことをしたとご理解いただけたようですわね」
 真っ直ぐ見つめても、俯くディアゴとは目線は噛み合わない。
「ディアゴ様、今後一切……」
 そこまで言ってリリィーアルは思わず言葉を止めた。何故かは分からないが、カッとなった自分がいる。脳裏によぎったマキアの顔に、一瞬思考が停止する。
 震えるようにか細く息を吐いて、リリィーアルは立ち上がった。
「マキアさんへの、プロポーズは取り消してください。それと……今後一切、マキアさんには近づかないでくださいな」
 品質の良い絨毯の上をゆっくりと歩き、ドアノブに手を掛ける。
 くるりと回してからリリィーアルは思い出したように振り向いた。
「エリノアさん」
「は、はい!」
「あなたは素敵な方ですわね。いつでもご相談にいらして。歓迎いたします」
「え、あの……!」
 エリノアを無視して、リリィーアルはドアを開けた。豪華な装飾のされたドアは音を立てて締まっていく。
 ガチャリと音が鳴って完全に閉まったのを確認してから、リリィーアルはその場にへたり込んだ。
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