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日常編 キマイラ討伐へ
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キマイラの待つ部屋の前に到着すると、討伐手順を確認していく。
「眠り粉の準備はいいか?」
「おっけー。私が袋ごと投げて散布するわ」
眠り粉が入った皮袋を手にしたメリーが俺の問いに答える。
先制攻撃で眠り粉を投げ込み、眠らせて一気に攻撃を仕掛け安全に戦いを終わらせる予定をしていた。
「粉が口や鼻に入らないように布で覆っているな?」
後衛は眠り粉の影響を受けない場所で戦う予定をしていため、口元を覆っていないが、近接攻撃を行う前衛陣やジェネシスには眠り粉の効果が出ないように水で濡らした布で覆わせた。
「はーい。ちゃんとハクちゃんも私も覆った」
「わふぅ(鼻が布に覆われて、利かないんですが……)」
「妾には通じぬとは思うが、メラニアがどうしてもしろというので、ちゃんとしたぞ」
「マジっすかー。オレまで覆うんすか? グレイズさん覆ってないし」
「俺は眠り粉効かない身体だしな」
「そうなんすか!? マジすげー、さすがグレイズさんっす!!」
ジェネシスが俺を尊敬の眼差しで見つめてくるが、神器の力のおかげなので、俺の真似をしてはいけないのだ。
「よし、準備はできたな。後衛は眠ったキマイラが起きるまでに蝙蝠頭を集中的に狙ってくれ」
「「はい」」
カーラとアウリースが元気よく返事する。
蝙蝠頭さえ倒せば、空中に浮遊されずに戦えるため、前衛の攻撃負担が劇的に改善し倒しやすくなるのだ。
最終確認を終えると、俺はキマイラのいる部屋の扉を開けた。
中は千人が余裕で入れる広さと、天井が見えないほど高くなっており、物理的な空間が歪んだ部屋であり、祭壇のようなもの前にキマイラが伏せていた。
ガオオオオっ!!!
扉を開けて入ってきた俺たちに気付き、キマイラの獅子の頭が咆哮をあげ飛び上がろうとしていた。
「みんな、眠り粉を投げるからねっ!!」
メリーが警告を発し、手にしていた眠り粉入りの皮袋をキマイラに向けて投げつけていく。
万が一を想定し、一袋ではなく、二袋目も投入し、キマイラの周辺には眠り粉の粉末が大量に漂い白く煙っている。
「効いてるよー。キマイラに眠り粉効いてる。足元がふらついてるよー」
最前線にいるファーマが煙に沈んだキマイラの様子を伝えてくる。
すでに大量の眠り粉を吸い込み、キマイラは眠りに落ちる寸前のようだ。
「アウリース、クイーン、魔法準備! カーラは支援魔法ーーってもう発動してるか。仕事が早いな」
すでに部屋に突入した時点でカーラは自分の仕事である、味方へのバフ掛けを終えていた。
効果時間の兼ね合いもあり、事前に掛けられない魔法もあったが、カーラの詠唱速度はとんでもなく早いのですでに仕事が終わっている。
「私、有能。仕事も早い」
「わふぅうう!! (敵、キマイラが寝落ちします)」
ファーマとともに最前列にいたハクがキマイラの様子を伝えると同時に白く煙っている祭壇からズシンという音が聞こえてきた。
「メラニア、ちょっと魔力を多めに使うから気を付けておいてくれなのじゃ!」
「え!? あ、はい」
「クイーン、メラニアが昏倒したら私がすぐに魔力を分けるから安心しろ」
「りょーかいなのじゃ。では、いくのじゃ!」
「私はクイーンちゃんに合わせますっ!!」
魔法を詠唱し終えたクイーンとアウリースから風属性の魔法が発動していた。
一つは上級風魔法の疾風、烈旋風だ。
前者はクイーン、後者はアウリースが放った魔法だが、効果が合わさってとんでもない威力の風魔法になっているのが見えた。
魔法の障壁を持つキマイラもあの威力の風魔法は防ぎ切れないと思われる。
放たれた魔法が眠り粉の煙を吹き飛ばし、眠っていたキマイラの魔法障壁をぶち破ると、蝙蝠頭を一気に吹き飛ばしていた。
「おっと、これは予想以上に魔法の威力高かったな。メラニア、魔力は大丈夫か?」
「カーラさんに分けてもらいながらで何とか……」
振り返ると、クイーンの放った魔法分の魔力を供給したメラニアが蒼い顔をしている。
カーラが発動前から魔力を分け与えてきたようで、昏倒こそしていないもののかなりギリギリだったようだ。
「そうか。だが、助かった。あとは俺の隣で休んでていいぞ。カーラは回復用意、アウリースは引き続き魔法で援護」
「え!? あ、はい。そうさせてもらいます!!」
「メラニア仕事した。あとはお任せでよい」
「私はもう少し前に出ます」
俺は後衛陣が各々位置を替え始めたのを確認し、前衛陣に攻撃命令を出そうと前を向いた。
「さて、お待たせしたな。攻撃開始ーーってもう始めてるか。そう言えば、みんなももう駆け出しじゃないしな」
敵の隙を突いて先制攻撃を果たしたことで、前衛を務めるファーマ、ハク、メリー、クイーンは残りの頭を潰しに入っている。
「オ、オレも行っていいっすかね。いいっすか?」
唯一、攻撃を控えていたのはジェネシス一人であった。
「毒霧と火の吐息、雷があるから、カーラの支援魔法がかかっているとはいえ油断するなよ」
「は、はいっ!! 行ってきます!!」
前回の探索で手に入れた炎帝の剣を抜いたジェネシスが、皆に遅れた形であったがキマイラ戦に参戦していった。
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本日も更新分を読んで頂きありがとうございます。皆様方の応援のおかげをもちまして『おっさん商人』第二巻の制作に入りましたことをお伝えいたします。発売日等は未定ですが、第二巻刊行に向けて原稿作りに頑張りまーす。
これからも、おっさん商人をよろしくお願いいたします。
「眠り粉の準備はいいか?」
「おっけー。私が袋ごと投げて散布するわ」
眠り粉が入った皮袋を手にしたメリーが俺の問いに答える。
先制攻撃で眠り粉を投げ込み、眠らせて一気に攻撃を仕掛け安全に戦いを終わらせる予定をしていた。
「粉が口や鼻に入らないように布で覆っているな?」
後衛は眠り粉の影響を受けない場所で戦う予定をしていため、口元を覆っていないが、近接攻撃を行う前衛陣やジェネシスには眠り粉の効果が出ないように水で濡らした布で覆わせた。
「はーい。ちゃんとハクちゃんも私も覆った」
「わふぅ(鼻が布に覆われて、利かないんですが……)」
「妾には通じぬとは思うが、メラニアがどうしてもしろというので、ちゃんとしたぞ」
「マジっすかー。オレまで覆うんすか? グレイズさん覆ってないし」
「俺は眠り粉効かない身体だしな」
「そうなんすか!? マジすげー、さすがグレイズさんっす!!」
ジェネシスが俺を尊敬の眼差しで見つめてくるが、神器の力のおかげなので、俺の真似をしてはいけないのだ。
「よし、準備はできたな。後衛は眠ったキマイラが起きるまでに蝙蝠頭を集中的に狙ってくれ」
「「はい」」
カーラとアウリースが元気よく返事する。
蝙蝠頭さえ倒せば、空中に浮遊されずに戦えるため、前衛の攻撃負担が劇的に改善し倒しやすくなるのだ。
最終確認を終えると、俺はキマイラのいる部屋の扉を開けた。
中は千人が余裕で入れる広さと、天井が見えないほど高くなっており、物理的な空間が歪んだ部屋であり、祭壇のようなもの前にキマイラが伏せていた。
ガオオオオっ!!!
扉を開けて入ってきた俺たちに気付き、キマイラの獅子の頭が咆哮をあげ飛び上がろうとしていた。
「みんな、眠り粉を投げるからねっ!!」
メリーが警告を発し、手にしていた眠り粉入りの皮袋をキマイラに向けて投げつけていく。
万が一を想定し、一袋ではなく、二袋目も投入し、キマイラの周辺には眠り粉の粉末が大量に漂い白く煙っている。
「効いてるよー。キマイラに眠り粉効いてる。足元がふらついてるよー」
最前線にいるファーマが煙に沈んだキマイラの様子を伝えてくる。
すでに大量の眠り粉を吸い込み、キマイラは眠りに落ちる寸前のようだ。
「アウリース、クイーン、魔法準備! カーラは支援魔法ーーってもう発動してるか。仕事が早いな」
すでに部屋に突入した時点でカーラは自分の仕事である、味方へのバフ掛けを終えていた。
効果時間の兼ね合いもあり、事前に掛けられない魔法もあったが、カーラの詠唱速度はとんでもなく早いのですでに仕事が終わっている。
「私、有能。仕事も早い」
「わふぅうう!! (敵、キマイラが寝落ちします)」
ファーマとともに最前列にいたハクがキマイラの様子を伝えると同時に白く煙っている祭壇からズシンという音が聞こえてきた。
「メラニア、ちょっと魔力を多めに使うから気を付けておいてくれなのじゃ!」
「え!? あ、はい」
「クイーン、メラニアが昏倒したら私がすぐに魔力を分けるから安心しろ」
「りょーかいなのじゃ。では、いくのじゃ!」
「私はクイーンちゃんに合わせますっ!!」
魔法を詠唱し終えたクイーンとアウリースから風属性の魔法が発動していた。
一つは上級風魔法の疾風、烈旋風だ。
前者はクイーン、後者はアウリースが放った魔法だが、効果が合わさってとんでもない威力の風魔法になっているのが見えた。
魔法の障壁を持つキマイラもあの威力の風魔法は防ぎ切れないと思われる。
放たれた魔法が眠り粉の煙を吹き飛ばし、眠っていたキマイラの魔法障壁をぶち破ると、蝙蝠頭を一気に吹き飛ばしていた。
「おっと、これは予想以上に魔法の威力高かったな。メラニア、魔力は大丈夫か?」
「カーラさんに分けてもらいながらで何とか……」
振り返ると、クイーンの放った魔法分の魔力を供給したメラニアが蒼い顔をしている。
カーラが発動前から魔力を分け与えてきたようで、昏倒こそしていないもののかなりギリギリだったようだ。
「そうか。だが、助かった。あとは俺の隣で休んでていいぞ。カーラは回復用意、アウリースは引き続き魔法で援護」
「え!? あ、はい。そうさせてもらいます!!」
「メラニア仕事した。あとはお任せでよい」
「私はもう少し前に出ます」
俺は後衛陣が各々位置を替え始めたのを確認し、前衛陣に攻撃命令を出そうと前を向いた。
「さて、お待たせしたな。攻撃開始ーーってもう始めてるか。そう言えば、みんなももう駆け出しじゃないしな」
敵の隙を突いて先制攻撃を果たしたことで、前衛を務めるファーマ、ハク、メリー、クイーンは残りの頭を潰しに入っている。
「オ、オレも行っていいっすかね。いいっすか?」
唯一、攻撃を控えていたのはジェネシス一人であった。
「毒霧と火の吐息、雷があるから、カーラの支援魔法がかかっているとはいえ油断するなよ」
「は、はいっ!! 行ってきます!!」
前回の探索で手に入れた炎帝の剣を抜いたジェネシスが、皆に遅れた形であったがキマイラ戦に参戦していった。
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本日も更新分を読んで頂きありがとうございます。皆様方の応援のおかげをもちまして『おっさん商人』第二巻の制作に入りましたことをお伝えいたします。発売日等は未定ですが、第二巻刊行に向けて原稿作りに頑張りまーす。
これからも、おっさん商人をよろしくお願いいたします。
応援ありがとうございます!
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