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王太子妃候補のコーデリアが、グスタフ王太子から婚約破棄されたという事実が王都を賑わして早くも数週間。
王と王妃は真相を聞き出すためにグスタフ王太子を呼び出して事実を確認しようとしたら、新たな婚約者としてモールバラ子爵令嬢バーバラを紹介され、すぐに挙式を行いたいと申し出られたとのことだ。
そのため、王は心労で倒れ、王妃もその看護で事態の収拾を図ることができないまま、なし崩し的にグスタフ王太子が政務の代行を行う体制が固められていった。
そんな王都の喧騒とは隔絶されたコーデリアは幽閉された邸宅の離れで誰が着るとも分からぬ編み物をしていた。
すでに家の者からは完全に腫れ物扱い。
外に出ることも叶わず、会話を交わすこともなく、日がな一日編み物を編むことくらいしかすることがなかったのだ。
「ふぅ、暇ですね。あれだけ辛かった王太子妃教育も今となっては懐かしいわ」
誰に聞かれることもないコーデリアの独白。
当主に逆らったことで、彼女の自由は完全にすべて剥奪されてしまい、今は籠の中の鳥である。
そんな、暇を持て余すコーデリアのもとへ不意の来訪者が現れた。
「これはご機嫌麗しゅうございます。レンフォード公爵令嬢様ぁ~。いや『元』レンフォード公爵令嬢とお呼びした方がよろしくて?」
不意に幽閉先の離れに現れた来訪者は、王太子妃となったバーバラである。
贅沢の限りを尽くした派手な衣装と化粧は相変わらずのようで、女性としての色気を最大限に発揮していた。
そして、勝ち誇ったような目で婚約破棄されたコーデリアを見下している。
「バーバラ王太子妃様、ご機嫌麗しゅうございます。身分を失ったわたくしに何か用事がありまして?」
予想外の来訪者に少し戸惑いながらもコーデリアは表情を崩さないように気を引き締めて答えていた。
「今日はとても面白いお話をコーデリア様にお聞かせせよとグスタフ様より言付かりましたので、レンフォード公爵様に許可を頂きまかり越しましたのよ」
バーバラは妖しい笑みを浮かべ、手にしていた書類をめくっている。
その様子を見たコーデリアは不意に嫌な予感に襲われていた。
自分の生殺与奪の権限は異母兄やグスタフ王太子に握られているからである。
「グスタフ様からの言付けですか……。わたくしは婚約破棄された身。いまさらそのわたくしに……」
「まぁ、そのように焦らなくてもよろしくてよ。グスタフ様からの言付けは二つあり、ありがたいことにどちらかを選ばせてもらえるそうですわ。さすが、グスタフ様は婚約破棄をした女性にさえお優しい」
バーバラの顔を見るに、あの人の好悪の激しいグスタフ王太子が、諫言をして不興を買った自分を許すとはコーデリアはまったく思えずにいる。
現在、アルガン王国の政務を代行しているグスタフ王太子は実質的最高権力者であった。
王も病に倒れ、王妃もその看護に忙しいとなれば、彼を諫められる者はアルガン王国に誰一人もいなかったのだ。
王と王妃は真相を聞き出すためにグスタフ王太子を呼び出して事実を確認しようとしたら、新たな婚約者としてモールバラ子爵令嬢バーバラを紹介され、すぐに挙式を行いたいと申し出られたとのことだ。
そのため、王は心労で倒れ、王妃もその看護で事態の収拾を図ることができないまま、なし崩し的にグスタフ王太子が政務の代行を行う体制が固められていった。
そんな王都の喧騒とは隔絶されたコーデリアは幽閉された邸宅の離れで誰が着るとも分からぬ編み物をしていた。
すでに家の者からは完全に腫れ物扱い。
外に出ることも叶わず、会話を交わすこともなく、日がな一日編み物を編むことくらいしかすることがなかったのだ。
「ふぅ、暇ですね。あれだけ辛かった王太子妃教育も今となっては懐かしいわ」
誰に聞かれることもないコーデリアの独白。
当主に逆らったことで、彼女の自由は完全にすべて剥奪されてしまい、今は籠の中の鳥である。
そんな、暇を持て余すコーデリアのもとへ不意の来訪者が現れた。
「これはご機嫌麗しゅうございます。レンフォード公爵令嬢様ぁ~。いや『元』レンフォード公爵令嬢とお呼びした方がよろしくて?」
不意に幽閉先の離れに現れた来訪者は、王太子妃となったバーバラである。
贅沢の限りを尽くした派手な衣装と化粧は相変わらずのようで、女性としての色気を最大限に発揮していた。
そして、勝ち誇ったような目で婚約破棄されたコーデリアを見下している。
「バーバラ王太子妃様、ご機嫌麗しゅうございます。身分を失ったわたくしに何か用事がありまして?」
予想外の来訪者に少し戸惑いながらもコーデリアは表情を崩さないように気を引き締めて答えていた。
「今日はとても面白いお話をコーデリア様にお聞かせせよとグスタフ様より言付かりましたので、レンフォード公爵様に許可を頂きまかり越しましたのよ」
バーバラは妖しい笑みを浮かべ、手にしていた書類をめくっている。
その様子を見たコーデリアは不意に嫌な予感に襲われていた。
自分の生殺与奪の権限は異母兄やグスタフ王太子に握られているからである。
「グスタフ様からの言付けですか……。わたくしは婚約破棄された身。いまさらそのわたくしに……」
「まぁ、そのように焦らなくてもよろしくてよ。グスタフ様からの言付けは二つあり、ありがたいことにどちらかを選ばせてもらえるそうですわ。さすが、グスタフ様は婚約破棄をした女性にさえお優しい」
バーバラの顔を見るに、あの人の好悪の激しいグスタフ王太子が、諫言をして不興を買った自分を許すとはコーデリアはまったく思えずにいる。
現在、アルガン王国の政務を代行しているグスタフ王太子は実質的最高権力者であった。
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