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「いやー、メリアの子が聖女に選ばれるなんてね。皮肉というか、アルテシオン神も粋な計らいをするというか……」
ヴェリエが唐突に自分の亡くなった母親の名を口にしているのを聞いて思わずコーデリアは彼女に聞き返していた。
「ヴァリエさん、なんでわたくしの母の名を知っておられるのですか?」
「え? だって、貴方の父親が神殿にいたメリアを気に入ってお持ち帰りしちゃったんだもの。確かにあの時のエドガーはいい男だったわね。私も旦那が居なかったら惚れてたかも」
ヴァリエから明かされた父と母の出会いについての話に、頭を鈍器で殴られるほどの衝撃を受けていた。
父に何度も母のことを尋ねたが、ついに自分には一度も母の素性を語ってくれることはなく、家の者に聞いても詳しく知る者はいなかったのだ。
前妻と結婚後、一年で生まれたフェルディナンドが二四歳であることを考えれば、討伐隊が派遣された三〇年前は、父はまだ独身であったはず。
そうなると、自分の母の立場はどういったものであったのだろうかとコーデリアは勘繰ってしまった。
「あー、大丈夫。奥さんとしてじゃなくて、秘書官としてね。連れてちゃったの。メリアは頭のいい子だったからね。仕事が出来過ぎてエドガーが重宝しててね。給金を弾むからと連れて行ったのよ。その後はずっと秘書官をしてたはずよ。それで奥さん亡くなって沈んでいたエドガーの後妻になって、貴方が生まれたわけ」
ヴェリエはコーデリアが自分の出生に疑問を抱いたことを察したのか、彼女の母のことを丁寧に話してくれていた。
要するに出生不明とされていたコーデリアの母は、このアルテシオン神殿に仕えていた勇者と聖女の血を引く神官であったらしい。
その説明を受けたことで、コーデリアは自分が『聖女』に選択された理由がはっきりと理解できた。
「つまり、ここはわたくしの母の実家ということですね……。それに、わたくしも勇者と聖女の血を引く者だったと……」
「貴方の父親からは母親のことを黙っておくようにと頼まれてたからね。それに貴方がこの神殿に追放されてくるなんて思ってもみなかったことだし。言わない方がいいかもって思ってただけよ」
「そう……でしたか……」
母の出生地が秘密されていた理由が今となってようやく理解できていた。
父の秘書官をしていたとはいえ、貴族でもなく、ましてやアルガン王国の国民ですらない女性が公爵夫人だったと知られたら大問題に発展しかねない。
公式での母の出生地はアルガン王国となっており、輿入れ前に父の知り合いだったレジューム侯爵の養女とされ、父に輿入れしてきていたとは古い執事から聞いていたのだ。
父が母のこと対し、口が重かったのは、このような裏事情があったからだと判明していた。
「まさか、コーデリアが『聖女』に選ばれるとは思ってなかったの。黙っててごめんね」
「ここが母の実家だったとは……。どおりでわたくしも馴染むのが早いわけですね……。居心地も良いですし」
追放された地が母の実家だったことに驚いていたコーデリアであったが、居心地の良さと人々の温かさに触れたことで感謝をしている自分がいた。
そして、その母の実家で『聖女』という希少な役を担うことになったことへ、コーデリアとしても感慨深い物を感じている。
そんなコーデリアを見ていたヴァリエがパンと手を打つと、何かを思い出したように肩に手を置いて微笑む。
「そうだ。忘れる所だったけど、『聖女』に選ばれたなら早いところ守護騎士たちを呼ばないとね。活動期も近づいてきてるようだし、忙しくなるわよ」
「え!? ええ、はいっ!?」
「じゃあ、まずは『聖女』様のお召し物作らないと。これで公然とコーデリアの豪華衣装を着飾せることができちゃうわ」
フロースがニヤニヤとした顔をしてコーデリアを見ていた。
周囲にいた神官の女性たちも同じようにニヤニヤとした顔をして彼女を見ており、コーデリアはこれから聖女として何をするべきかを知らずにいる自分に少しだけ不安を感じていた。
「み、皆様、お手柔らかにお願いしますね……」
---------------
ストック無くなりましたので不定期更新とさせてもらいます<m(__)m>
ヴェリエが唐突に自分の亡くなった母親の名を口にしているのを聞いて思わずコーデリアは彼女に聞き返していた。
「ヴァリエさん、なんでわたくしの母の名を知っておられるのですか?」
「え? だって、貴方の父親が神殿にいたメリアを気に入ってお持ち帰りしちゃったんだもの。確かにあの時のエドガーはいい男だったわね。私も旦那が居なかったら惚れてたかも」
ヴァリエから明かされた父と母の出会いについての話に、頭を鈍器で殴られるほどの衝撃を受けていた。
父に何度も母のことを尋ねたが、ついに自分には一度も母の素性を語ってくれることはなく、家の者に聞いても詳しく知る者はいなかったのだ。
前妻と結婚後、一年で生まれたフェルディナンドが二四歳であることを考えれば、討伐隊が派遣された三〇年前は、父はまだ独身であったはず。
そうなると、自分の母の立場はどういったものであったのだろうかとコーデリアは勘繰ってしまった。
「あー、大丈夫。奥さんとしてじゃなくて、秘書官としてね。連れてちゃったの。メリアは頭のいい子だったからね。仕事が出来過ぎてエドガーが重宝しててね。給金を弾むからと連れて行ったのよ。その後はずっと秘書官をしてたはずよ。それで奥さん亡くなって沈んでいたエドガーの後妻になって、貴方が生まれたわけ」
ヴェリエはコーデリアが自分の出生に疑問を抱いたことを察したのか、彼女の母のことを丁寧に話してくれていた。
要するに出生不明とされていたコーデリアの母は、このアルテシオン神殿に仕えていた勇者と聖女の血を引く神官であったらしい。
その説明を受けたことで、コーデリアは自分が『聖女』に選択された理由がはっきりと理解できた。
「つまり、ここはわたくしの母の実家ということですね……。それに、わたくしも勇者と聖女の血を引く者だったと……」
「貴方の父親からは母親のことを黙っておくようにと頼まれてたからね。それに貴方がこの神殿に追放されてくるなんて思ってもみなかったことだし。言わない方がいいかもって思ってただけよ」
「そう……でしたか……」
母の出生地が秘密されていた理由が今となってようやく理解できていた。
父の秘書官をしていたとはいえ、貴族でもなく、ましてやアルガン王国の国民ですらない女性が公爵夫人だったと知られたら大問題に発展しかねない。
公式での母の出生地はアルガン王国となっており、輿入れ前に父の知り合いだったレジューム侯爵の養女とされ、父に輿入れしてきていたとは古い執事から聞いていたのだ。
父が母のこと対し、口が重かったのは、このような裏事情があったからだと判明していた。
「まさか、コーデリアが『聖女』に選ばれるとは思ってなかったの。黙っててごめんね」
「ここが母の実家だったとは……。どおりでわたくしも馴染むのが早いわけですね……。居心地も良いですし」
追放された地が母の実家だったことに驚いていたコーデリアであったが、居心地の良さと人々の温かさに触れたことで感謝をしている自分がいた。
そして、その母の実家で『聖女』という希少な役を担うことになったことへ、コーデリアとしても感慨深い物を感じている。
そんなコーデリアを見ていたヴァリエがパンと手を打つと、何かを思い出したように肩に手を置いて微笑む。
「そうだ。忘れる所だったけど、『聖女』に選ばれたなら早いところ守護騎士たちを呼ばないとね。活動期も近づいてきてるようだし、忙しくなるわよ」
「え!? ええ、はいっ!?」
「じゃあ、まずは『聖女』様のお召し物作らないと。これで公然とコーデリアの豪華衣装を着飾せることができちゃうわ」
フロースがニヤニヤとした顔をしてコーデリアを見ていた。
周囲にいた神官の女性たちも同じようにニヤニヤとした顔をして彼女を見ており、コーデリアはこれから聖女として何をするべきかを知らずにいる自分に少しだけ不安を感じていた。
「み、皆様、お手柔らかにお願いしますね……」
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