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episode3
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「あの者に近づくのは、危険かと存じます」
宮へ戻った途端、ブランカは眉間に深い皺を刻み、私にそう告げた。
お母様とエリーゼの二人も十分に過保護だけれど、ブランカはそのさらに上をいく。
元戦車隊長だった彼は、私をここへ連れてきてすぐ、私専属の騎士団を束ねる私兵長へと転属した。
それ以来、彼は片時も私のそばを離れない。
(街の中でも、気配を消してすぐ近くにいたらしい……全然、気づかなかった)
「危険って……ジークさんが?あの人はいい人に見えるけど。」
ブランカは静かに首を横に振った。
「いいえ。」
理由を求めるように見つめると、彼はわずかに視線を伏せてから続けた。
「これは私の勘ですが」
「……勘?」
思わず、声が尖った。
「あなたの“勘”だけで、あの人を疑うの?」
「出来過ぎているように感じませんか。ベンフィード一家が、あれほど素直に引き下がったことも含めて」
「それは……町の人たちが味方してくれたから」
言葉が、少し強くなる。
「彼はただ、見ていられなかっただけよ。私を守ってくれた。それだけ」
信じたい気持ちが、言葉の語気を強める。
「初対面で街案内を頼むのは、不自然かと」
「不自然?親切にされたら、疑わなきゃいけないの? 助けてくれた人を、裏があるかもしれないって決めつけるの?」
ブランカは一瞬、言葉を詰まらせた。
「……守る立場の者としてご忠告を申し上げているのです。疑うのが仕事です」
「私は、囚われの身じゃない」
思わず、感情が爆発した様にそう言った。
部屋の空気が一瞬だけ凍りつく。
「私はもう、誰かに決めつけられるのは嫌。あの人の事を勝手に“危険”にしないで」
ブランカは目を伏せ、深く一礼した。
謝罪の意を見せるけれど、納得していないことは、はっきりと伝わってくる。
「……ですが」
顔を上げ、まっすぐに私を見た。
「もし再び接触があった場合は、お知らせください。必ずです。それだけは、お約束を」
一瞬迷い、それから顔を背けた。
「……考えておきます。」
本当は、考える気なんてなかった。
あの人は、敵じゃない。
そう信じたい気持ちの方が、ずっと強かった。
宮へ戻った途端、ブランカは眉間に深い皺を刻み、私にそう告げた。
お母様とエリーゼの二人も十分に過保護だけれど、ブランカはそのさらに上をいく。
元戦車隊長だった彼は、私をここへ連れてきてすぐ、私専属の騎士団を束ねる私兵長へと転属した。
それ以来、彼は片時も私のそばを離れない。
(街の中でも、気配を消してすぐ近くにいたらしい……全然、気づかなかった)
「危険って……ジークさんが?あの人はいい人に見えるけど。」
ブランカは静かに首を横に振った。
「いいえ。」
理由を求めるように見つめると、彼はわずかに視線を伏せてから続けた。
「これは私の勘ですが」
「……勘?」
思わず、声が尖った。
「あなたの“勘”だけで、あの人を疑うの?」
「出来過ぎているように感じませんか。ベンフィード一家が、あれほど素直に引き下がったことも含めて」
「それは……町の人たちが味方してくれたから」
言葉が、少し強くなる。
「彼はただ、見ていられなかっただけよ。私を守ってくれた。それだけ」
信じたい気持ちが、言葉の語気を強める。
「初対面で街案内を頼むのは、不自然かと」
「不自然?親切にされたら、疑わなきゃいけないの? 助けてくれた人を、裏があるかもしれないって決めつけるの?」
ブランカは一瞬、言葉を詰まらせた。
「……守る立場の者としてご忠告を申し上げているのです。疑うのが仕事です」
「私は、囚われの身じゃない」
思わず、感情が爆発した様にそう言った。
部屋の空気が一瞬だけ凍りつく。
「私はもう、誰かに決めつけられるのは嫌。あの人の事を勝手に“危険”にしないで」
ブランカは目を伏せ、深く一礼した。
謝罪の意を見せるけれど、納得していないことは、はっきりと伝わってくる。
「……ですが」
顔を上げ、まっすぐに私を見た。
「もし再び接触があった場合は、お知らせください。必ずです。それだけは、お約束を」
一瞬迷い、それから顔を背けた。
「……考えておきます。」
本当は、考える気なんてなかった。
あの人は、敵じゃない。
そう信じたい気持ちの方が、ずっと強かった。
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