異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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二章

76.夢の都

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 【カーシス村】から出発してから半日ほどが経過しようやくハルト達は夢の都【レアルタ】に到着することができた。
 馬車をラムネの家まで案内され近くに止めるとハルトは馬車から降り長旅の疲れをどうにか治そうと両腕を上に伸ばし「んー」っと気持ちよさそうにしていた。

 次にラムネは荷物を持って勢いよく馬車から飛び降りハルトの元へ駆け寄る。
 ハルトはシノが中々降りてこないことに気付き後ろを振り返る。
 するとシノがあの大量に入っている食料の袋をなんとか持って降りようと試みていた。
 どうやらシノはハルトの為に何かをしてあげたいと考えてなら疲れたハルトに重たい物を持たせてはいけないと思い必死にどうにかしようとしていたようだ。
 しかしシノにはあまりにも重すぎた為持ち上げることが出来ず腕がプルプルとしていた。
 そのうち落ちて怪我でもしそうだと思ったハルトはシノの元に駆け寄る。

「俺が持つからシノは先に行っててくれ」

「だめ。私が持つ」

「なんでだよ。シノには重たすぎるし怪我でもしたらどうするんだ」

「疲れてるハルトを余計に疲れさせる方がよくない」

「俺、そんなに疲れてないぞ? 馬車って想像以上に快適だし」

「でもだめ。私がやる」

「はぁ。わかった。一緒に持とう。それならいいよな?」

「うん」

 シノが馬車の荷台から袋を出来るだけ持ち外からハルトがその袋をゆっくり受け取る。
 ハルトが袋を受け取るとシノは荷台にお尻をつけゆっくりと地面に足を触れさせてから降りハルトの持っている袋の反対側を支える。
 その状態でハルトとシノはラムネの元に向かった。

「ハルトさん、早く早くしてください!」

「この状況を見てから言え。それでお前の家はどれなんだ?」

「あれですよ!!」

「……あ?」

 ハルトは困惑してしまった。
 なぜならそこはあの馬小屋に匹敵するほどのボロさで何年も人が住んでおらず手入れがされていない有り様だったのだ。
 家の外壁には理由の分からないツタのような植物に覆われており近くの木はほぼ家にくっついている。
 まさかと思い辺りの家も見渡してみるとやはりラムネの家と同様に人が住んでいるとは思えないほどボロついている。
 おまけに地面は大量の雑草で覆われており長ズボンでも履いていなければ足が痒くなりそうな感じだった。
 もはや夢の都とは到底言い難い場所である。

 ハルトはこの時ここに来るまでの事を思い出す。
 ラムネの指示で薄暗い森の中に連れて行かれ長い事まっすぐ走らされる。
 これだけなら夢の都が他の人間にバレない様にそういった場所に作られているのだろうと考えることも出来るのだがその険しさは進む事に増していき最終的にこの有り様である。
 それに今思えばここに来てから誰一人として住民の姿を見ていない事に気づくハルト。
 
「本当にここ夢の都か?」

「失礼ですね! そうですよ!! ほら早く家の中に荷物を置いてください!!!」

 ラムネが家の扉を開ける。
 恐る恐るハルトは家の中を見た。
 しかし外見からは創造出来ないほどに中は汚れてはおらずむしろ普通の家のような感じだった。
 どうなってんだここはなんて思いながらハルトはシノと一緒に袋を持ちながら家の中に入る。

 するとラムネが人差し指でてきとうな場所に指しながら「そこら辺に荷物は置いといてください。盗まれないので大丈夫ですよ!」と言う。
 ハルトは「わかった」と返事をしシノと息を合わせてせーので床に袋を置いた。
 重いものをしばらく持っていたハルトとシノは疲れている様子だった。
 
「てかここ住人とかはいないのかよ」

「はい! ここにはいませんよ」

「全く夢の都じゃないんだが……」

「ふふ~ん。楽しい事は後に取っておきましょう!!」

「俺達、ラムネが助けて欲しいって言ってたからわざわざ来たんだけど」

「ちょっとまださすがに行けなさそうなのでゆっくりしといてください!」

「どういうことだよ」

 ラムネの言っている事をあまり理解出来なかったハルトはひとまず床に座り込む。
 それを見たシノもハルトの隣に座った。
 その間ラムネは忙しく何かをしている。
 棚から三つのコップを取り出してはさらに棚から謎の容器を持ちそれをコップの中に注ぎ込んでいる。
 ハルト達の方を一度見たラムネはしばらく何かを考えたあと「そう言えば机出してませんでしたね!!」と言い端っこに置かれていた机を引っ張って真ん中に持ってくる。
 そしてラムネは何かを入れていたコップをまず二つ持ってそれを机の上に置く。
 最後の一個のコップを戻って机の近くに座ったラムネはハルト達に「そんな端にいないでこっちに来てくださいよ!」と言う。

 ハルトはめんどくさそうにしながら立ち上がり机の所まで来たらまた座り込んだ。
 シノは立つのが面倒だったようで立ち上がらず両手を同時に前に出し足を引きずるようにしてハルトの元まで移動した。

「んで、この如何にも怪しい毒はなんだ?」

「毒……殺人」

「毒じゃないですよぉ!!! これは名前は忘れましたけどリラックス出来る飲み物なんですぅ!!!」

「牛乳みたいで飲めないことはなさそうだけど、こんなとこにずっと置かれてた飲み物に耐えれるほど俺の腸は最強じゃないぞ?」

 中々信用してくれないハルト達を信用させる為にラムネは「いいですか! 見ててください!」と言い持っていたコップを口に近づけ一気にグビッと流し込んだ。
 そしてコップを机に置き「大丈夫でしょ! ほらお二人も飲んでください!」と言った。
 さすがに目の前で飲んだラムネがなんともなっていないのにまだ難癖をつけるものおかしいと思ったハルトはコップを持ち恐る恐る口に近づける。
 目を瞑ってちょっとだけ中の液体を口の中に入れると懐かしい味が広がった。
 まさに牛乳である。
 少し生ぬるいところが気になるが味は濃厚な牛乳だった。
 ハルトは安全だという事を確信しラムネと同じ様にコップをより傾け一気にグビッと飲み込んだ。
 それを見ていたシノもハルトが飲んでるなら……と思い両手でコップを持ち少しずつそれを飲み始めた。

「それで本題だけど何を助けて欲しいんだ?」

「それはですね~!! 実はここ最近……」

 ラムネは何かを言い始めた途中でいきなり床にバタンと倒れた。
 ハルトは慌てて立ち上がりラムネの元に行き声をかけたり体を強く揺さぶったりしてみるものの全く反応がなかった。
 シノは急いでコップを机に置きハルトに近づく。

「これやっぱ毒だったのか!?」

「ハルト、やられた。ラムネはきっと九神エニアグラムの手先」

「こんな馬鹿がそんな大層な事出来ると思うか?」

「確かに……」

「とりあえずどうにか今飲んだのをはき……」

 その時ハルトもラムネの近くに倒れ込んだ。
 一人残されたシノはハルトの名前を何度も呼んでは体を揺さぶる。
 しかしラムネと同様に何をしてもハルトは反応がなかった。
 シノはハルトの体に抱きつく。

「ハルト……ハルト……」

 シノは名前を呼びながらハルトの顔に自身の顔を近づけ始める。
 その時シノも意識を失い体の力がつけた。


@@


 視界には何も映っておらず真っ暗だった。
 しかし奪われていた感覚が徐々に戻ってきている事に気づいたハルト。
 そして横からはラムネの「ハルトさん!! 早く目を開けてください! シノさんはもう来ましたよ!!」と言っている声が聞こえてくる。
 ハルトはもう来ましたよ? という言葉の理解が出来ず混乱していると今度はシノが「ハルト、すごい」と何やら少しテンション高めに言っている声が聞こえてくる。
 一体どうなっているんだとハルトが思っていると目に眩しい光が差し込んでくる。
 手で目を隠しながら徐々に目を開くとそこには驚くべき光景が広がっていた。

 辺りには沢山の人が行き交っており空には子供が浮かび鬼ごっこのような事をしている。
 そこら中には最初来た時に見た家とは異なりそれはもう立派な家が建っていた。
 さらには家が沢山建っている真ん中に一際大きな鉄で出来た建物が建っているのが見える。
 ハルトは思わず思った。
 まるで夢の世界だと。
 するとラムネがハルトとシノの目の前にぴょんと飛んで現れ手を大きく広げる。

「ハルトさん、シノさん。ようこそ!! 【レアルタ】へ!!!」
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