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高田の恐怖
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玄関ドアの隙間から強風に顔を突き出した。横殴りの風と雪に前髪が逆立った。わたくしは慌ててドアベルを手で押さえた。
玄関に横付した美咲の車のヘッドライトが、激しい降雪の動きを照らしていた。わたくしはコートの襟を立てて、小走りに車の助手席に乗り込んだ。
「案外遅かったですね。岸本さんと何か?」
一瞬のドアの開閉でも車内に雪が吹き込んだ、それを手で払ってフロアマットに落とした。
「ん? ああ、酔っ払いにからまれていた」
わたくしはシートベルトを締めて、ヘッドレストに頭を預けた。
「そうですか。何だかんだで仲が良いですね」
美咲はアクセルを踏んだ。
「あいつとは学生の頃からの友人だからね」
二本の轍を雪に描いて、車はペンションの門を出た。
「何年振りになるんですか? お二人が会うのは」
ハンドルを大きく切りながら、美咲は横目を見せた。
「十年振りだな。あいつの娘の成長は、毎年の年賀状で陰ながら見守っていたが、実際に会う事はなかった」
わたくしは頭の後ろで手を組んだ。
「お二人も、天道葵の死によって、十年振りに再会する事になったんですね」
「そうだな」
わたくしは何となく美咲の横顔を見た。
「わたしも、天道葵の死によって、宗村さんと出会う事ができた」
「?」
暗い車内で美咲の顔がやけに白く見えた。
「不思議だと思いませんか? みんな何かに引き寄せられるようにして、このペンションに集まって来ているような。天道葵の死によって」
夜も遅いとあって、ハイビームに照らされた道の遠くに、人の気配も車の気配もなかった。
「言われてみれば、敷島もやけに天道の死にこだわっていたな。江口サダユキだって、彼女の死の真相を調べていて、殺された? 今回の事件の中心には、必ずと言っていいほど、天道葵の名が出てくる」
「お気づきになりましたか?」
四週間前のこんな吹雪の夜、炎を巻き上げて燃え盛る一台の車が、ありありと頭に浮かんだ。
「天道葵は、やっぱり晦冥会のバイフーに暗殺されたんだろうな。晦冥会を脱走して、一年半の逃亡生活の果てに」
わたくしの言葉を最後に、しばらく二人の会話が途切れた。我々の車は、天道と木原が心中をしたという、廃業中の商店の脇道を通過した。二人とも首を動かして、その方角を見送った。
「ここでまた、事実を整理したいと思います」
「待ってました」
わたくしは大きく腕を組んで、目を閉じた。
「天道葵が、岸本さんの経営するペンション『アルプホルン』に勤め始めたのが、約一年半前のこと。仕事の合間には、元プロスノーボーダーの倉石留美と、ゲレンデに出てスノーボードを楽しむなど、悠々自適な住み込みバイト生活を送っていた。
それから一年半が過ぎた十二月十日、彼女の恋人である木原正樹が、宿泊客としてペンションに現れた。そして、三日後の十二月十三日の深夜、天道と木原は連れ立ってペンションを出た後、先程通り過ぎた廃業中の商店の前に車を停車させ、二人で焼身自殺を図った。天道葵は即死の状態で発見され、木原については、全身に火傷を負い、その後N県立中央病院で死亡が確認された。彼の遺体の顔写真を元に、ペンション『アルプホルン』に宿泊していた木原正樹本人と断定、本件はカップルによる男女の心中事件として、地方新聞に掲載された」
わたくしが神妙に頷くのを横目に、美咲は続けた。
「ところが、ペンションの経営者である岸本さんは、この報道に対して大きな疑問を抱いた。そして、今から一週間前、古い友人である宗村さんと敷島さんに電話で相談を持ち掛けた。岸本さんは、心中した天道葵と不倫関係にあり、彼女が木原と交際していたという事実に、どうしても納得がいかなかった。更には、彼女と同僚だった高田さんも、仕事が良く出来て頭の良い天道が、こんな愚かな行為をするなどとても考えられないと、警察の捜査に懐疑的だった。
そして、天道の心中から三週間が経過した昨日、お笑い芸人で晦冥会の幹部である江口サダユキが、突然岸本さんのペンションに現れたかと思うと、高田さんを待ち伏せして、天道葵についてあれこれ質問をしてきた。そのやり取りの中で江口は、天道の恋人であった木原正樹と、以前から面識があるような口ぶりをした」
美咲のよくこれだけ多くの正確な情報を何も見ずにすらすらと口頭で説明できるなとわたくしは今さらながら感心せずにはいられなかった。
「STGサーバーの二人のデータの存在がない事から、天道と木原の二人は、晦冥会と何らかの繋がりがあり、偽名を使って晦冥会から逃亡していた可能性が非常に高い。また、江口サダユキは晦冥会の幹部であり、状況から考えて、彼は晦冥会の地位や立場から、天道の死の真相について、確認に来ていたものと考えられる。
しかし本日午後二時頃、スノーボードをしにスキー場へ訪れていた江口サダユキは、一人でペアリフトに乗った後、リフトの手すりに巻付けたロープで、首を吊って死亡しているを発見された。リフト乗り場の関係者の話では、彼は一人でペアリフトに乗った事を記憶しており、また、警察が関係者に聞き込みを繰り返しても、江口の死に事件性が見られない為、江口サダユキはリフト上で自ら首吊りを図ったものと、またしても警察は自殺と発表した」
美咲は赤信号に向かって、ゆっくりとブレーキを踏んだ。
「警察による江口の変死の事情聴取の際、ペンション従業員の高田さんは、身の安全を保障して欲しいと自ら申し出て、現在警察署に保護されている。更に本日午後六時頃、岸本さんが江口の部屋を訪れた際に、警察の調べが終わった後のベッドの下に、死亡した江口の携帯電話が落ちているのを発見、慌てて警察に届け出た」
わたくしは暖房の風を弱めた。
「こうやって客観的に事件のあらましを聞くと、まあ不審な点はいくつかあるが、たまたま三人は自殺したという感じもするね」
美咲と目が合った。
「おそらく、現在ペンションに宿泊している久慈親子と江口と喧嘩したカップルは、そう思っているでしょう。でなかったら、即時に荷物をまとめてチェックアウトしているはずです」
わたくしは深く頷いた。
「江口の死が自殺と発表されているから、みんな安心しているという事か」
「ただ一人、高田さんを除いては」
シーズン中のリゾート地とは言え、夜の十時を過ぎると、どの街道にも人や車の姿は見られなかった。
「高田さんは、この三人の死者を自殺とは思っていなかった。次はきっと自分が殺される番だと、慌ててペンションから逃げ出したんだと俺は思う。やっぱり彼女は晦冥会の関係者?」
「そう考えるべきでしょうね」
美咲は外出着の格好はしていたが、髪は髪留めで結っただけの、簡単なおさげにしていた。
「だったら、高田さんは晦冥会の幹部である江口とも面識はあったのかな?」
「そこは大いに疑問です。晦冥会とは、紀瑛総連と月宗冥正会という二つの宗教団体が合併して誕生した大規模な宗教団体です。全国に無数の支部、分会が存在していて、いくら江口が本体の幹部でも、地方の一信者の顔を全て把握しているとは思えません」
わたくしはまた深く頷いた。
「じゃあ、高田さんは江口を幹部だと知っていたが、当の江口は彼女をただのペンションの従業員の一人として見ていた」
国道に入ると数台のトラックとすれ違った。
「そして、江口はあっという間に自殺をした。高田さんは天道木原に続き、江口までもあっさり自殺してしまって、ひどく恐怖したのではないでしょうか?」
美咲はそう言って、対向車のヘッドライトに照らされた。改めて見直すと、端正で上品な顔のつくりは、どことなく兄の石動に似ていた。
『敷島レナはあなたには渡しませんよ。彼女は誰にも渡さない』
「宗村さん?」
「あ、えっと、ところで高田さんは、天道と木原が晦冥会の関係者だと知っていたのかな?」
「そこも疑問です。STGサーバーでも天道と木原の素性は知れず、晦冥会の関係者の可能性が非常に高い、という憶測の域を出ません。ですから、高田さんが天道木原の二人を晦冥会の関係者と知っていた可能性は極めて低いです。しかし、晦冥会の幹部である江口が、天道の心中事件を調べている事と、彼が木原と以前から面識があるような口ぶりを聞いた高田さんは、二人を晦冥会の関係者ではないかと、気が付くには十分だったのではないでしょうか。そして、ひょっとしたら、晦冥会の暗殺者『バイフー』の存在もどこか小耳に挟んでいて、二人は晦冥会の脱走者で、バイフーによって暗殺されたのではないかと、いよいよ想像を膨らませていった可能性は大いにあると思います」
わたくしは深く腕を組んだ。
「これは直接、高田さんに会って聞くしかないな」
「それは不可能です」
美咲は真っ直ぐ前方を向いていた。
「なんで」
わたくしは笑いそうで笑わない口元を見つめた。
「高田さんは、わたしたちを犯人だと思っているからです」
玄関に横付した美咲の車のヘッドライトが、激しい降雪の動きを照らしていた。わたくしはコートの襟を立てて、小走りに車の助手席に乗り込んだ。
「案外遅かったですね。岸本さんと何か?」
一瞬のドアの開閉でも車内に雪が吹き込んだ、それを手で払ってフロアマットに落とした。
「ん? ああ、酔っ払いにからまれていた」
わたくしはシートベルトを締めて、ヘッドレストに頭を預けた。
「そうですか。何だかんだで仲が良いですね」
美咲はアクセルを踏んだ。
「あいつとは学生の頃からの友人だからね」
二本の轍を雪に描いて、車はペンションの門を出た。
「何年振りになるんですか? お二人が会うのは」
ハンドルを大きく切りながら、美咲は横目を見せた。
「十年振りだな。あいつの娘の成長は、毎年の年賀状で陰ながら見守っていたが、実際に会う事はなかった」
わたくしは頭の後ろで手を組んだ。
「お二人も、天道葵の死によって、十年振りに再会する事になったんですね」
「そうだな」
わたくしは何となく美咲の横顔を見た。
「わたしも、天道葵の死によって、宗村さんと出会う事ができた」
「?」
暗い車内で美咲の顔がやけに白く見えた。
「不思議だと思いませんか? みんな何かに引き寄せられるようにして、このペンションに集まって来ているような。天道葵の死によって」
夜も遅いとあって、ハイビームに照らされた道の遠くに、人の気配も車の気配もなかった。
「言われてみれば、敷島もやけに天道の死にこだわっていたな。江口サダユキだって、彼女の死の真相を調べていて、殺された? 今回の事件の中心には、必ずと言っていいほど、天道葵の名が出てくる」
「お気づきになりましたか?」
四週間前のこんな吹雪の夜、炎を巻き上げて燃え盛る一台の車が、ありありと頭に浮かんだ。
「天道葵は、やっぱり晦冥会のバイフーに暗殺されたんだろうな。晦冥会を脱走して、一年半の逃亡生活の果てに」
わたくしの言葉を最後に、しばらく二人の会話が途切れた。我々の車は、天道と木原が心中をしたという、廃業中の商店の脇道を通過した。二人とも首を動かして、その方角を見送った。
「ここでまた、事実を整理したいと思います」
「待ってました」
わたくしは大きく腕を組んで、目を閉じた。
「天道葵が、岸本さんの経営するペンション『アルプホルン』に勤め始めたのが、約一年半前のこと。仕事の合間には、元プロスノーボーダーの倉石留美と、ゲレンデに出てスノーボードを楽しむなど、悠々自適な住み込みバイト生活を送っていた。
それから一年半が過ぎた十二月十日、彼女の恋人である木原正樹が、宿泊客としてペンションに現れた。そして、三日後の十二月十三日の深夜、天道と木原は連れ立ってペンションを出た後、先程通り過ぎた廃業中の商店の前に車を停車させ、二人で焼身自殺を図った。天道葵は即死の状態で発見され、木原については、全身に火傷を負い、その後N県立中央病院で死亡が確認された。彼の遺体の顔写真を元に、ペンション『アルプホルン』に宿泊していた木原正樹本人と断定、本件はカップルによる男女の心中事件として、地方新聞に掲載された」
わたくしが神妙に頷くのを横目に、美咲は続けた。
「ところが、ペンションの経営者である岸本さんは、この報道に対して大きな疑問を抱いた。そして、今から一週間前、古い友人である宗村さんと敷島さんに電話で相談を持ち掛けた。岸本さんは、心中した天道葵と不倫関係にあり、彼女が木原と交際していたという事実に、どうしても納得がいかなかった。更には、彼女と同僚だった高田さんも、仕事が良く出来て頭の良い天道が、こんな愚かな行為をするなどとても考えられないと、警察の捜査に懐疑的だった。
そして、天道の心中から三週間が経過した昨日、お笑い芸人で晦冥会の幹部である江口サダユキが、突然岸本さんのペンションに現れたかと思うと、高田さんを待ち伏せして、天道葵についてあれこれ質問をしてきた。そのやり取りの中で江口は、天道の恋人であった木原正樹と、以前から面識があるような口ぶりをした」
美咲のよくこれだけ多くの正確な情報を何も見ずにすらすらと口頭で説明できるなとわたくしは今さらながら感心せずにはいられなかった。
「STGサーバーの二人のデータの存在がない事から、天道と木原の二人は、晦冥会と何らかの繋がりがあり、偽名を使って晦冥会から逃亡していた可能性が非常に高い。また、江口サダユキは晦冥会の幹部であり、状況から考えて、彼は晦冥会の地位や立場から、天道の死の真相について、確認に来ていたものと考えられる。
しかし本日午後二時頃、スノーボードをしにスキー場へ訪れていた江口サダユキは、一人でペアリフトに乗った後、リフトの手すりに巻付けたロープで、首を吊って死亡しているを発見された。リフト乗り場の関係者の話では、彼は一人でペアリフトに乗った事を記憶しており、また、警察が関係者に聞き込みを繰り返しても、江口の死に事件性が見られない為、江口サダユキはリフト上で自ら首吊りを図ったものと、またしても警察は自殺と発表した」
美咲は赤信号に向かって、ゆっくりとブレーキを踏んだ。
「警察による江口の変死の事情聴取の際、ペンション従業員の高田さんは、身の安全を保障して欲しいと自ら申し出て、現在警察署に保護されている。更に本日午後六時頃、岸本さんが江口の部屋を訪れた際に、警察の調べが終わった後のベッドの下に、死亡した江口の携帯電話が落ちているのを発見、慌てて警察に届け出た」
わたくしは暖房の風を弱めた。
「こうやって客観的に事件のあらましを聞くと、まあ不審な点はいくつかあるが、たまたま三人は自殺したという感じもするね」
美咲と目が合った。
「おそらく、現在ペンションに宿泊している久慈親子と江口と喧嘩したカップルは、そう思っているでしょう。でなかったら、即時に荷物をまとめてチェックアウトしているはずです」
わたくしは深く頷いた。
「江口の死が自殺と発表されているから、みんな安心しているという事か」
「ただ一人、高田さんを除いては」
シーズン中のリゾート地とは言え、夜の十時を過ぎると、どの街道にも人や車の姿は見られなかった。
「高田さんは、この三人の死者を自殺とは思っていなかった。次はきっと自分が殺される番だと、慌ててペンションから逃げ出したんだと俺は思う。やっぱり彼女は晦冥会の関係者?」
「そう考えるべきでしょうね」
美咲は外出着の格好はしていたが、髪は髪留めで結っただけの、簡単なおさげにしていた。
「だったら、高田さんは晦冥会の幹部である江口とも面識はあったのかな?」
「そこは大いに疑問です。晦冥会とは、紀瑛総連と月宗冥正会という二つの宗教団体が合併して誕生した大規模な宗教団体です。全国に無数の支部、分会が存在していて、いくら江口が本体の幹部でも、地方の一信者の顔を全て把握しているとは思えません」
わたくしはまた深く頷いた。
「じゃあ、高田さんは江口を幹部だと知っていたが、当の江口は彼女をただのペンションの従業員の一人として見ていた」
国道に入ると数台のトラックとすれ違った。
「そして、江口はあっという間に自殺をした。高田さんは天道木原に続き、江口までもあっさり自殺してしまって、ひどく恐怖したのではないでしょうか?」
美咲はそう言って、対向車のヘッドライトに照らされた。改めて見直すと、端正で上品な顔のつくりは、どことなく兄の石動に似ていた。
『敷島レナはあなたには渡しませんよ。彼女は誰にも渡さない』
「宗村さん?」
「あ、えっと、ところで高田さんは、天道と木原が晦冥会の関係者だと知っていたのかな?」
「そこも疑問です。STGサーバーでも天道と木原の素性は知れず、晦冥会の関係者の可能性が非常に高い、という憶測の域を出ません。ですから、高田さんが天道木原の二人を晦冥会の関係者と知っていた可能性は極めて低いです。しかし、晦冥会の幹部である江口が、天道の心中事件を調べている事と、彼が木原と以前から面識があるような口ぶりを聞いた高田さんは、二人を晦冥会の関係者ではないかと、気が付くには十分だったのではないでしょうか。そして、ひょっとしたら、晦冥会の暗殺者『バイフー』の存在もどこか小耳に挟んでいて、二人は晦冥会の脱走者で、バイフーによって暗殺されたのではないかと、いよいよ想像を膨らませていった可能性は大いにあると思います」
わたくしは深く腕を組んだ。
「これは直接、高田さんに会って聞くしかないな」
「それは不可能です」
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