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江口の怒り
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羽田は、雪の上に胡坐をかいて、のんきに煙草を吹かし始めた。両目を閉じて煙を吐くと、次に片目だけ開けて、
「ああ、宗村さんも、一本吸いますか?」
突き出されたマルボロのメンソール煙草を見て、わたくしはすぐには手を出さなかった。と言うのもわたくしは、強い刺激のハッカが好みではなかったからだ。しかし、わざわざ差し出されたものを断って、自分のものを取り出すのも、その場の空気にそぐわない気がして、取り敢えず美咲の顔を見た。
「いちいちわたしに確認しなくても」
「そう、だよね」
大島の目がわたくしと美咲を交互に捉えた。わたくしは羽田から煙草とライターの火をもらって、大きく煙を吸い込んだ。寒空にメンソールは鼻の奥が痛く感じた。
「典ちゃん、続きや。その元カレが目撃した、炎上した車の中から救出された女と、翌日の朝刊の記事の内容が、全くちゃうゆう話やな」
羽田がスノーパンツの膝に肘をついて、煙草の手を振った。
「元カレじゃないってば。もう」
ハンドゲーターから出した手先で、大島は左腕の小物ポケットから煙草を取り出して、我々と同じように火を点けた。そう言えば、このスキー場は喫煙可能だっただろうか? 今さら美咲に確認してももう遅いと思って、わたくしは黙っていた。
「確か新聞には、二人の遺体が車内から見つかったと」
美咲はグローブで内腿を摩った。その後で大島から煙草を一本勧められたが、これは当然、両手を振って断った。
「そうなんです。消防の仲間内では、あの女だけは何とか助かるぞって、自分たちのがんばりが報われると思っていた所を、翌朝の新聞には『車内から男女の遺体が見つかった』だなんて、おかしな記事が書かれていたものだから、タカシは新聞記者の取材ミスだと思って、M新聞社へ電話を入れたらしいです」
『バイトの女の遺体は損傷が激しく即死の状態、翌日の新聞にはこの焼身自殺が小さく掲載された』
ペンションに到着したばかりのわたくしに敷島は、今回の心中事件についてこう説明していた。そして岸本も、
『葵の遺体はすぐに検死に回されたそうだ。歯科診断結果、服装、身体的特徴、遺留品、彼女の部屋の髪の毛と遺体のDNA鑑定などから、天道葵と断定している』
こう天道葵の身元が分からなくなる程の遺体の損傷を語っていた。これらを含めて考えてみても、消防団が消火活動中に目撃した、天道葵の救出時の息のある状態と、即死だったと言う新聞の記事は、全く話が合っていない。
「それで、その新聞社は、何て回答を?」
森の中から白い雪煙が立ち上がったかと思うと、再び強風が背中を打った。我々の吸っている煙草の灰が、吹き回す強風でどこかへ飛んでいった。
「新聞社の受付の女性は、少し待つようにタカシに言って、そのまま電話を保留にすると、長い時間待たされた挙句に、今度は別の年配の男が電話に出て、この件に関しては、我々は一切コメントができない、そうきっぱりと断られたんですって」
「断られた?」
わたくしは大島の目を見つめた。ハーフカラーコンタクトを着用した目で、彼女もわたくしを見つめ返した。その見つめ合う時間は思いのほか長く、わたくしがもう目を逸らそうかと意識し始める程、彼女はわたくしから目を離さなかった。
「その話を聞いた消防団のみんなは、お互い変な顔をしていたそうです。そして、今でも酒の席になると決まって、納得の行かない消火活動の一件として、みんな口ぐちに愚痴をこぼしているんだそうです」
『何だか警察もおかしいんだ。今回の焼死事件について、彼らが事情聴取に来たかと思えば、やたら葵と木原の素性について聞いてくる。それに、何だか不機嫌だった』
岸本の初日の言葉だ。警察はひょっとして、今回の天道葵の生存の事実を知っていたのではないだろうか? 知っていながら、事実と異なる捜査をやらされて、携帯電話の相手にしきりに抗議していたのではないか? わたくしは自然と美咲の顔へ視線が向かった。
「どうですか? 変な話ですやろ? 俺もその時には、当時の新聞の切り抜きを見せてもろうたんですけど、確かに、消防団の目撃談と新聞の記事は、全く食い違っていたんですわ。そんで典ちゃんの元カレは、あのペンションは呪われているって、こう言いよるんですわ。心中自殺から無傷で助かったはずの女が、翌日には一変して即死と報道された。それが落ち着いたかと思うたら、今度は江口サダユキがセンセーショナルな自殺で世間を騒がせる。挙句の果てには、ペンションの従業員の高田はんが、警察署でわけの分からん自殺をしよる。俺らもこれは、本当に呪われているんと違うかって、だんだん怖なってきた所ですわ」
羽田は、わたくしの吸殻を回収して、自分の吸殻と一緒に携帯用の灰皿の中へ入れた。
「確かに、お二人の話を伺った限りでは、わたしたちが宿泊しているペンションが、地元の人間に、呪われていると噂されていても、仕方がない事かと思います。通常一人でも自殺者が出れば、その物件はいわく付きとして、地元住民から忌み嫌われるものですから、それが現在の所、四人もの死者が出ているというのですから、全く弁明のしようがありませんね」
慎重に言葉を選ぶように、美咲は二人の意見に同意した。
「宗村さんたちも、明日にはチェックアウトの口でっしゃろ? せやったら、今夜はくれぐれも自殺せんでおいて欲しいものですわ。そないなったら俺ら、夜逃げも同然に、急いで東京へ帰らにゃならんのですから」
羽田は後ろに手をついて、片目を瞑るように笑った。バイフーの存在の確かな事を知るわたくしは、それに同調する形で笑う事ができなかった。
「そうですね。まあお互い、ロープと飲み物には手をつけないようにしておきましょうか」
と、わたくしは悪い冗談を受け流して、
「ところで話は変わりますけど、昨日の朝の話、羽田さんと江口サダユキとで、何か大きな声で話し合っていたようですけど?」
首の後ろを手でぼりぼりと掻いて、
「ああ、あれな。そうか、宗村さんたちも見とったんですかあ。そりゃまあ、見てますわな。へへ、あれは、まあ、江口の野郎がいきなり俺の胸倉を掴んで来たんですわ」
「なに言ってんのよ! あれは全部太一が悪いんでしょう⁉ 勝手に他人のケータイに出てさあ!」
大島は左手を雪の上について体を伸ばすと、パンと良い音を立てて羽田のスノーパンツを叩いた。
「携帯電話に出たって、まさか、江口サダユキの?」
わたくしは、昨日の江口と羽田の口論の理由が、まさか江口の携帯電話にあったとは、あまりに意外に思った。
「そうなんですよ宗村さん、ちょっと聞いて下さい、ホント非常識なんですよねこの人。他人のケータイに普通勝手に出ます? あたしのケータイにもほいほい出ちゃうんですよまったく。ほら、やっぱり宗村さんたちも引いているじゃない。もうこんな事絶対にやめてよね。それなのに太一ったらあの時逆ギレしてさあ」
羽田は右手をぶらぶらと振って、
「そんなん、あの状況やったら普通出るやろ? 誰もいないテーブルの上で、ケータイがずっと鳴っているんやから。それをあないに怒る江口の方が、ちょっと頭おかしいゆうとんねん。なあ宗村さん、そう思いませんか?」
わたくしは右手を口に当てたまま、思うとも思わないとも、何とも答えなかった。すると美咲は、雪の上に座っているのも限界を感じたのか、ボードをお尻の下に敷いて、両膝を抱えた。
「じゃあ羽田さんは、その時江口サダユキの携帯電話に出て、それが切っ掛けであんなに口論になったと言うわけですね?」
「そうや。あの野郎不動明王のような怖い顔してガンギレしやがって、あやうく尼崎のジムで鍛えたこの拳闘の拳が、江口の顔面に火を噴く所やったで」
「傷害事件だけは起こさないでよね」
羽田の携帯灰皿に手を伸ばして、大島は自分の煙草を揉み消した。
「あの、それで、江口サダユキの携帯電話が鳴っていた時、画面には何て相手の名前が表示されていたんですか?」
美咲が両方の素手に息を吹きかけた。
「相手の名前? はて、誰って言われても、ケータイの画面もろくに見んと電話に出てもうたからな。よう分からへんな」
羽田はこめかみの辺りを指で掻いた。
「では、羽田さんが江口の携帯電話に出て、相手はなんて言ってきたんですか? その電話の相手は男性ですか、それとも女性ですか?」
美咲はウェアのチャックを顎まで上げた。何でも出てくるヒップパックの中には、さすがに暖を取るツールは入っていないようだった。
「声は女やったで。若い女の声で『江口さんですか?』そう向こうから聞いて来たんや。それから、『わたしです、シノブです』って、相手が言って来た所で、俺の右肩を背後から江口がど突いて来たんやで。ひどい話ですやろ?」
わたくしと美咲は同時に顔を合わせた。
「シノブ? 忍? もしかして!」
「ああ、宗村さんも、一本吸いますか?」
突き出されたマルボロのメンソール煙草を見て、わたくしはすぐには手を出さなかった。と言うのもわたくしは、強い刺激のハッカが好みではなかったからだ。しかし、わざわざ差し出されたものを断って、自分のものを取り出すのも、その場の空気にそぐわない気がして、取り敢えず美咲の顔を見た。
「いちいちわたしに確認しなくても」
「そう、だよね」
大島の目がわたくしと美咲を交互に捉えた。わたくしは羽田から煙草とライターの火をもらって、大きく煙を吸い込んだ。寒空にメンソールは鼻の奥が痛く感じた。
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「元カレじゃないってば。もう」
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「確か新聞には、二人の遺体が車内から見つかったと」
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「そうなんです。消防の仲間内では、あの女だけは何とか助かるぞって、自分たちのがんばりが報われると思っていた所を、翌朝の新聞には『車内から男女の遺体が見つかった』だなんて、おかしな記事が書かれていたものだから、タカシは新聞記者の取材ミスだと思って、M新聞社へ電話を入れたらしいです」
『バイトの女の遺体は損傷が激しく即死の状態、翌日の新聞にはこの焼身自殺が小さく掲載された』
ペンションに到着したばかりのわたくしに敷島は、今回の心中事件についてこう説明していた。そして岸本も、
『葵の遺体はすぐに検死に回されたそうだ。歯科診断結果、服装、身体的特徴、遺留品、彼女の部屋の髪の毛と遺体のDNA鑑定などから、天道葵と断定している』
こう天道葵の身元が分からなくなる程の遺体の損傷を語っていた。これらを含めて考えてみても、消防団が消火活動中に目撃した、天道葵の救出時の息のある状態と、即死だったと言う新聞の記事は、全く話が合っていない。
「それで、その新聞社は、何て回答を?」
森の中から白い雪煙が立ち上がったかと思うと、再び強風が背中を打った。我々の吸っている煙草の灰が、吹き回す強風でどこかへ飛んでいった。
「新聞社の受付の女性は、少し待つようにタカシに言って、そのまま電話を保留にすると、長い時間待たされた挙句に、今度は別の年配の男が電話に出て、この件に関しては、我々は一切コメントができない、そうきっぱりと断られたんですって」
「断られた?」
わたくしは大島の目を見つめた。ハーフカラーコンタクトを着用した目で、彼女もわたくしを見つめ返した。その見つめ合う時間は思いのほか長く、わたくしがもう目を逸らそうかと意識し始める程、彼女はわたくしから目を離さなかった。
「その話を聞いた消防団のみんなは、お互い変な顔をしていたそうです。そして、今でも酒の席になると決まって、納得の行かない消火活動の一件として、みんな口ぐちに愚痴をこぼしているんだそうです」
『何だか警察もおかしいんだ。今回の焼死事件について、彼らが事情聴取に来たかと思えば、やたら葵と木原の素性について聞いてくる。それに、何だか不機嫌だった』
岸本の初日の言葉だ。警察はひょっとして、今回の天道葵の生存の事実を知っていたのではないだろうか? 知っていながら、事実と異なる捜査をやらされて、携帯電話の相手にしきりに抗議していたのではないか? わたくしは自然と美咲の顔へ視線が向かった。
「どうですか? 変な話ですやろ? 俺もその時には、当時の新聞の切り抜きを見せてもろうたんですけど、確かに、消防団の目撃談と新聞の記事は、全く食い違っていたんですわ。そんで典ちゃんの元カレは、あのペンションは呪われているって、こう言いよるんですわ。心中自殺から無傷で助かったはずの女が、翌日には一変して即死と報道された。それが落ち着いたかと思うたら、今度は江口サダユキがセンセーショナルな自殺で世間を騒がせる。挙句の果てには、ペンションの従業員の高田はんが、警察署でわけの分からん自殺をしよる。俺らもこれは、本当に呪われているんと違うかって、だんだん怖なってきた所ですわ」
羽田は、わたくしの吸殻を回収して、自分の吸殻と一緒に携帯用の灰皿の中へ入れた。
「確かに、お二人の話を伺った限りでは、わたしたちが宿泊しているペンションが、地元の人間に、呪われていると噂されていても、仕方がない事かと思います。通常一人でも自殺者が出れば、その物件はいわく付きとして、地元住民から忌み嫌われるものですから、それが現在の所、四人もの死者が出ているというのですから、全く弁明のしようがありませんね」
慎重に言葉を選ぶように、美咲は二人の意見に同意した。
「宗村さんたちも、明日にはチェックアウトの口でっしゃろ? せやったら、今夜はくれぐれも自殺せんでおいて欲しいものですわ。そないなったら俺ら、夜逃げも同然に、急いで東京へ帰らにゃならんのですから」
羽田は後ろに手をついて、片目を瞑るように笑った。バイフーの存在の確かな事を知るわたくしは、それに同調する形で笑う事ができなかった。
「そうですね。まあお互い、ロープと飲み物には手をつけないようにしておきましょうか」
と、わたくしは悪い冗談を受け流して、
「ところで話は変わりますけど、昨日の朝の話、羽田さんと江口サダユキとで、何か大きな声で話し合っていたようですけど?」
首の後ろを手でぼりぼりと掻いて、
「ああ、あれな。そうか、宗村さんたちも見とったんですかあ。そりゃまあ、見てますわな。へへ、あれは、まあ、江口の野郎がいきなり俺の胸倉を掴んで来たんですわ」
「なに言ってんのよ! あれは全部太一が悪いんでしょう⁉ 勝手に他人のケータイに出てさあ!」
大島は左手を雪の上について体を伸ばすと、パンと良い音を立てて羽田のスノーパンツを叩いた。
「携帯電話に出たって、まさか、江口サダユキの?」
わたくしは、昨日の江口と羽田の口論の理由が、まさか江口の携帯電話にあったとは、あまりに意外に思った。
「そうなんですよ宗村さん、ちょっと聞いて下さい、ホント非常識なんですよねこの人。他人のケータイに普通勝手に出ます? あたしのケータイにもほいほい出ちゃうんですよまったく。ほら、やっぱり宗村さんたちも引いているじゃない。もうこんな事絶対にやめてよね。それなのに太一ったらあの時逆ギレしてさあ」
羽田は右手をぶらぶらと振って、
「そんなん、あの状況やったら普通出るやろ? 誰もいないテーブルの上で、ケータイがずっと鳴っているんやから。それをあないに怒る江口の方が、ちょっと頭おかしいゆうとんねん。なあ宗村さん、そう思いませんか?」
わたくしは右手を口に当てたまま、思うとも思わないとも、何とも答えなかった。すると美咲は、雪の上に座っているのも限界を感じたのか、ボードをお尻の下に敷いて、両膝を抱えた。
「じゃあ羽田さんは、その時江口サダユキの携帯電話に出て、それが切っ掛けであんなに口論になったと言うわけですね?」
「そうや。あの野郎不動明王のような怖い顔してガンギレしやがって、あやうく尼崎のジムで鍛えたこの拳闘の拳が、江口の顔面に火を噴く所やったで」
「傷害事件だけは起こさないでよね」
羽田の携帯灰皿に手を伸ばして、大島は自分の煙草を揉み消した。
「あの、それで、江口サダユキの携帯電話が鳴っていた時、画面には何て相手の名前が表示されていたんですか?」
美咲が両方の素手に息を吹きかけた。
「相手の名前? はて、誰って言われても、ケータイの画面もろくに見んと電話に出てもうたからな。よう分からへんな」
羽田はこめかみの辺りを指で掻いた。
「では、羽田さんが江口の携帯電話に出て、相手はなんて言ってきたんですか? その電話の相手は男性ですか、それとも女性ですか?」
美咲はウェアのチャックを顎まで上げた。何でも出てくるヒップパックの中には、さすがに暖を取るツールは入っていないようだった。
「声は女やったで。若い女の声で『江口さんですか?』そう向こうから聞いて来たんや。それから、『わたしです、シノブです』って、相手が言って来た所で、俺の右肩を背後から江口がど突いて来たんやで。ひどい話ですやろ?」
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