プルートーの胤裔

ゆさひろみ

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袋の鼠

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 駐車された車の間から湯気が上がっていた。後から聞いた話では、駐車場の消雪パイプに温泉の湯を引いて流しているとの事だった。何とも贅沢な話である。
 隙間無く降り注ぐ雪が、音も無く駐車場の水の上に落ちて跡形もなく消えて行く。湯畑の畔を歩くような、仄かな硫化水素臭から顔を上げると、そこにはわたくしの想像を遥かに凌ぐ、三階建ての大型アミューズメント施設が、両手一杯に広がっていた。
 正面玄関には、船の柱に張って風を受けて船を進ませる帆に、『かまくらカフェ』と書道パフォーマンスで書かれたような、和モダンなモニュメントが、訪れる者の目を驚かせた。
 わたくしは水の浅い所を歩きながら、先を行く石動の背中に追いついた。
「石動さん、不知火忍の目的とは、一体何なんでしょうか? 晦冥会でも花形だった現役の幹部と、無名に等しい一般的な信者だった高田の、この二名を自殺に見せかけて暗殺し、かと思えばこんな大勢の人目に付くような公の場で、悪質なハッキング行為を繰り返す。彼女はこれから一体何をしようとしているのでしょうか?」
 スライドドアを閉めて、車の鍵を掛けた羽賀が、早足で我々に追いついた。石動は駐車場内を移動しながら、背中で答えた。
「その質問に対して、我々警察は今の所、正式に答えられるだけの情報が得られていません。彼女の暗殺の事実でさえ、間接証拠を継ぎ合わせた犯罪事実に過ぎませんし、今も頻繁に行われている悪質なハッキング行為でさえ、椎名さんの晦冥会の社員カードを悪用しているという事実から、現在このネットカフェに潜伏しているハッカーが、椎名さんの社員カードを所持していると思しき人物、不知火忍であると、そう仮説を立てて極秘捜査を展開しているのが、我々の正直な所です」
 駐車場の入口に立ったコートの男に向かって、石動は挙手の敬礼を見せた。黒い大きな傘を動かして、男も返礼をした。
「ご覧通り、管轄区域外の刑事たちに協力要請を出した、その捜査令状の罪名も、不正アクセス禁止法違反です。ブラックハッカーによるサイバー犯罪の取り締まりが、今回の極秘捜査の表の顔なんです。兎にも角にも不知火の身柄を拘束する、それから我々は彼女に対して徹底的に余罪を追及する方針です」
 彼ら警察は、昨日リフト上で行われた江口殺害の方法について、未だ手つかずと言う事か。
「従って我々は、不知火が警察の裏をかいて暗躍するその目的について、皆目見当さえついていません。ただ、今後も連続殺人を繰り返す恐れのある容疑者として、我々は血眼になって彼女の行方を追っています。
 僕個人の意見としては、不知火のこれからの行動をある程度予想してはいます。彼女は昨日から繰り返し不正なハッキングをしている。その被害を受けている企業の名前が、非常に重要なんです。宗村さん、警察に対して不正アクセスの被害届を提出している企業は、一体どこだと思います?」
 すぐ横を歩いていた加藤が、ふいに腰を屈めて雪玉を作ったかと思うと、西側の駐車場入口に立っている男へ向かって遠投した。雪玉は男の足元で砕け散った。すぐに体育会系の大学生のような大声が返って来た。
「どこの企業? さあ、全く想像さえつきませんが」
 駐車場を横切る車を待って、石動はバルマカンコートに両手を突っ込んだ。
「不知火が現在も不正アクセスを繰り返している相手の企業、それは、敷島探偵グループのサーバーです」
「え?」
 我々は、アミューズメント施設『かまくらカフェ』の正面玄関の自動ドアを開けた。
「ご苦労様です、警部補」
 施設内への吹雪の侵入を防ぐ為だろう、二重扉になった内側のスペースに、刑事らしき私服の男が二人、入店者に鋭い目を光らせていた。わたくし以外は全員返礼をした。
「ご苦労様です。特に変わった様子はありませんか?」
 石動は肩の雪を払い、ブラシマットでブーツの雪を落とした。
「はい。駐車場の入口に、営業終了の立看板を設置してからは、入店者はほとんどありません。身分証明のできない人もありませんし、二十代女性に限っては、重要参考人である羽田さんの恋人くらいだったでしょうか」
 黒縁眼鏡をかけた若そうな男が、わたくしに対しても鋭い目を光らせた。
 重要参考人の羽田。そうか、昨日の朝に勝手に江口の携帯電話に出た彼は、偶然にも不知火の声を聞いてしまった。不知火の顔を目撃したわたくしと、彼女の声を聞いた羽田が、今回重要参考人として捜査協力の要請が出たというわけか。
「そうですか。秋津巡査、いよいよこれからが本番です。正面玄関の警備をがっちり固めて下さい」
 二枚目の自動ドアを抜けると、音の反響が変わった。頭上を見上げると、三階分の高さの吹き抜けとなっていた。オーガスタやストリチアの観葉植物が配置された正面には、ホテルフロントを思わせるラグジュアリーな受付があり、キャビンアテンダントのような制服を着た若い女性スタッフが、入店して来た我々に頭を下げながら、受話器を持って斜めに体の向きを変えた。
 石動、加藤、羽賀は、一斉にコートを脱いで腕にまとめた。手持無沙汰からわたくしは、駐車場に面した右手の窓辺に顔を出した。モーニング、ランチ、バータイムに対応した、木の温もりのある軽食店と、地元特産の苺ジェラートの出店が、丸テーブルに椅子を並べたロビーに幟を立てていた。入店を制限された事もあり、利用客は疎らだった。
 石動と加藤の立ち話を横切って、次にわたくしは受付から見て左手へ顔を出した。目隠しの赤煉瓦の壁があり、その上にインターネットカフェの名前『ターザンロープ』と言うカルプ文字が、下からライトアップされていた。入口には、IТソリューションを思わせるタッチパネルが設置され、駅の自動改札のような無人入場ゲートが、ICセキュリティキー、チェックインチケットの認証を自動で行っている。地元企業が経営しているとは到底思えない現代的な造りだった。
 店内の様子を窺いながらわたくしは、受付へと進む石動の背中に近づいた。
「石動さん、さっきの話の続きですが、不知火が不正なハッキングを繰り返している相手先が、敷島探偵グループのサーバーって、一体どういう事なんですか? なぜ不知火はSTGのサーバーを標的にしているんですか?」
 石動はカウンターに右腕を乗せて、女性スタッフの電話が終わるのを待った。
「昨日吹雪のゲレンデで発生したスノーボーダー同士の衝突事故で、椎名さんと不知火のカードが見事にすり替わってしまった。それによって椎名さんは、そのカードが晦冥会の会員証であり、不知火忍と言う晦冥会の幹部の物だと知った。しかしそれは同時に、不知火も敷島探偵グループの社員、椎名美咲と言う名前を知る事となった」
『美咲さんは、江口サダユキの首吊り自殺について、深く追求し過ぎています。生前の江口サダユキが、天道さんの心中事件を調べていたのと同じです』
『バイフーが江口の自殺を予告した時も、彼についての質問がとても多かったと言います。携帯電話の番号、スノーボードのウェアの細かい質問など。そして、今度は美咲さんの質問がとても多いのです』
 不知火は、STGサーバーをハッキングして、美咲の経歴などの情報を引き出そうとしている?
「僕はね宗村さん、不知火忍と言う連続殺人犯をこう想像しているんです。晦冥会の暗殺者、バイフーとして彼らの犬であった彼女は、或る日突然、晦冥会と言う鎖を食いちぎって、主人の手から脱走した。そして、地方の個人ペンションで潜伏生活を続けた。しかし四週間前に自ら心中自殺を起こして、潜伏中に使用した女の名前、天道葵が死んだと思わせて、我々警察や飼い主の目を欺き、晦冥会で培った暗殺スキルを利用して、江口や高田をあっさりと暗殺、この次にはとんでもない大犯罪を企てて、現在も暗躍を続けている」
「大犯罪って」
 わたくしの言葉を遮るように、右手のロビーから聞き覚えのある声が聞こえた。
「ああ、宗村さん、やっと来はりましたか。まったく待ちくたびれましたよ。ひょっとして東京まで帰っとったんとちゃいますか?」
 下半身だけウェア姿の羽田が、ロビーのテーブルから両手を振った。
「羽田さん、やっぱり」
 羽田は頭にタオルを巻いて、木の椅子に胡坐をかいていた。その同じテーブルには、やはり下半身だけウェア姿の大島典子が、携帯電話から顔を上げた所だった。
 石動は揉み手をしながら、ロビーに靴音を響かせた。
「羽田さん、どうもお待たせしました。椎名さんに連絡した所が、どうも繋がりが悪くて、結局僕ら宗村さんの部屋の前まで迎えに行ってしまいました」
 頭のタオルを巻き直しながら、羽田はロビーに大声を響かせた。
「せやろ? 宗村さんならもうとっくにペンションへ戻っている頃とちゃうかって、ゆうたやないですか。ここからペンションまで、ゆうても結構あるねんから、大変なタイムロスやったで。
 よっしゃ、じゃあもうぼちぼちおっ始めてもええのんとちゃいますか? 典ちゃんももうここに飽き飽きしてますねん。早よう帰ってひとっ風呂浴びたいゆうて、さっきからごねてますねんて」
 大島はタオルを振り回して羽田の肩を叩いた。
「バカじゃない? なんでそんなコト大声で言うの」
 羽田はテーブルに置いてあった缶ビールをぐいっと飲み干した。これから警察の捜査に協力すると言うのに、酒を飲んでいるのか?
「本当の事やねんから、ええやんか。なあ石動はん」
 石動は腕時計に目を落とした。
「まあとにかく、お待たせして申し訳ない。今すぐ捜査を開始します」
 羽賀が走って行って、受付の女性スタッフに警察手帳を見せながら、ネットカフェの方角を指差した。
「石動はん、あれですか? 今からあんたらに協力したあかつきには、どっかでウマいモン食べさせてくれまっか?」
「ちょっと太一」
 大島が羽田の顔目がけてポップコーンを投げた。
「お酒が飲める所がええなあ」
 石動は首の後ろを掻いて、苦笑いを見せた。
「羽田さんには敵いませんね。分かりました、今回の極秘捜査によって不知火の身柄が拘束できれば、どこへでも好きな所へ連れて行ってあげますよ」
「ほい来たあ! やっぱ本庁の人間はちゃいますな。もろうとる金がちゃうから、気前もええ!」
 加藤の渋い顔がわたくしを捉えた。
 早足で羽賀が戻って来て、石動の手にICセキュリティキーを渡したのと同時に、背後の自動ドアが開き、数人の男たちが敬礼をしながら入って来た。
「それでは羽田さん、宗村さん、これより本店舗に於いてサイバー犯罪の取り締まりを開始します。容疑者の特定の際には、どうかご協力をお願いします」
 男たちがぞろぞろと移動を開始した。羽田の恋人、大島典子に関しては、不知火が逃走の際に、凶器を振り回す恐れもある事から、ロビーでの待機となった。先頭に立った石動は、女性スタッフに案内されながら、ネットカフェの入場ゲートにICセキュリティキーを当てて、ゲートを通過した。同じようにして我々もゲートを抜け、窓一つない薄暗い廊下へ入った。防音カーペットを使用しているようで、男たちの靴音が消えた。
 わたくしの隣りになった羽田が、酒臭い息で話かけて来た。
「宗村さん。あんた不知火忍っちゅう殺し屋の顔を見たって話やけど、どんな顔やった?」
「は?」
 片手で口の端に仕切りを作るように、
「殺し屋の女なんて、実際映画でしか見た事ないやろ? 実際にそんな女が世の中におるゆうこと自体が信じられんて。なあ、どんな顔しとったん?」
 斜め前を歩く無線インカムを着用した男が、こちらに鋭い目を向けた。
「どんな顔って、吹雪のゲレンデでしたから、ちゃんと見えたわけではないですよ。化粧は濃かった印象がありますけど」
「美人やった?」
 前を歩く羽賀が振り返った。
「まあ、遠目ですけど、そうだったような」
「よっしゃ。そう来なあかん。宗村さん、どうせ殺されるんなら、美人がいいなって、思わへん? あんたも男なら、分かるんとちゃうこの気持ち? 汚ったねえおばはんに格好つけられて殺されるより、ボディコンの姉ちゃんの色仕掛けで殺される方が、なんぼなんでも増しやねんて」
 インテリア要素の強いウォールライトのみの暗い狭い通路で、羽田は顎を突き出して笑った。一つ羽賀が咳払いをした。
「そうですかね。殺されるのだから、相手を選ぶ余裕はない気がしますけど」
「人生最期に見る顔やで? だったら美人の方が増しちゃうか?」
 この分では、羽田は平気で浮気を繰り返す男に違いない。
 石動は、丁字路となった廊下の突き当たりで、ぴたりと足を止めた。そこから先の廊下には、左右互い違いにドアが並んでいた。
「さて、ここからがネットカフェの部屋となります。いくら袋の鼠とは言え、さすがにこの部屋数を一部屋一部屋回っては、日が暮れてしまいます。今から我々は二手に分かれて、サイバー犯罪を取り締まります。僕の予想では、身の危険を察知した不知火は、何等かの方法を使って、逃亡を図ろうとするはずです。その時は廊下の先で待機している捜査員が、本領を発揮するわけです」
 石動は首の関節を鳴らして、我々の顔を指差して、六人を二班に分けた。わたくしの班はわたくしを含め加藤と羽賀。羽田の班はインカムの男、木島と太田の二人だった。
「では、お願いします。ここからの廊下は二手に分かれていますが、実の所一周すればまたここへ戻る構造になっています。反対側には非常階段もありますが、そこにも警備があります。室内にも廊下にも窓はありませんから、奴はまさに袋の鼠と言う事です」
 誰の頭にも、以下のような光景が浮かんだと思う、不知火が慌てて部屋から飛び出して来て、待ち構えていた刑事によって押し倒され、その身柄が拘束される。そうなれば、今回の件は一件落着となるのだろうが、そううまく行く話だろうか。
「すいません、警察です」
 101号室の部屋のドアをノックして、加藤は早速不知火探しを開始した。内側からドアは音もなく開いた。
「お取り込み中すいません、ただいま置き引き犯の捜査していまして、少しお話を聞かせてもらえないでしょうか?」
 置き引き犯とは、一時的に不知火を油断させるカモフラージュなのだろう。我々は廊下で待機し、加藤と羽賀のみが室内に上半身を入れていた。果たしてこの調子で、晦冥会の暗殺者バイフーの身柄を拘束できるのだろうか。
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