プルートーの胤裔

ゆさひろみ

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窒息に震える男

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「死ぬ気もないのに、首にロープを回しただって?」
 加藤は、大きく肩を落として、首を振った。そう来たか、と、幻滅した様子だった。羽賀は、この無礼な態度に、美咲の顔をちらちら見ていたが、努めて注意はしなかった。無理もない、とわたくしは思う。一体どこのどいつが、死ぬ気もないのに自分の首にロープを回すというのだろうか。冗談半分、相手を笑わそうと思ってやった事にしても、首吊り自殺という、人の闇の部分に触れるブラックジョークは、笑うに笑えない。そんな事をする奴は、まずいない。とまあ、今回の美咲の説明は、残念ながら我々の賛同は得られなかった。
「この、首吊りロープの着用方法については、皆さん納得がいっていない様子ですね。それは当然の事だと思います」
 美咲は、タッチパネルに人差し指を伸ばして、動画を停止させた。
「人の命を絶つ、それ以外の目的に、首にロープを回す事なんて、通常わたしたちの感覚では考えられません。そういった真似でさえ、映画やドラマなど架空なものを除いては、一度も見た事がありません。そこで、もう少し詳しく、この問題となる行動について、お話して行きたいと思います」
 このとき美咲は、心の中で何かを確認するように、うんと頷いて、しっかりと目を上げた。その直向きな眼差しと、リフトの上で真剣に悩む彼女の目が、ピタリと一致した。
〝宗村さん、少し静かにしてもらえますか。もう少しで何かが分かりそうなんです〟
 様々な機材を持ち込んで、江口の死の真相について調査していた時のこと。
〝宗村さん、今、なんて言いました?〟
 何かのヒントになればと思って。
〝そうじゃなくて。江口の遺体の古傷がどうのって〟
 江口の遺体には、長期間拷問でも受けたような、おびただしい数の古傷が見られた。それらは、風俗情報誌の取材時に見た、極度のマゾヒストの古傷とそっくりだった。
〝風俗?〟
 きれいに眉が寄った。
 取材中わたくしが見た男は、加虐被虐性愛に傾倒している性的嗜好者だった。同好の士が集まる密室の店内で、スパンキング音が鳴り響く。取材していた男は、連日店に通う極度のマゾヒストで、ボトムからトップへのセーフワードを決して口にしないで有名だった。拷問や処刑を受けながら、凌辱し尽くされ殺されたいという、猟奇的なレベルの被虐願望がすさまじく、鞭や貫通や切り裂き、打撃などによる苦痛を与えられなければ絶頂に至らない、と、自らの性的マゾヒズム障害を語っていた。このため、全身の至る所におびただしい数の傷が生まれた。彼は、精神障害の一つ、
「パラフィリアと呼ばれた」
 思わず口に出して、顔を上げた。そこで、待っていたかのような、美咲の目と合った。
「江口サダユキの遺体には、無数の古傷が見られました。火傷や切り傷、タバコ痕、ここにいる皆さんは、ご存じかと思います。これは、今回の変死によって生まれたものではありません。皮膚に隆起した傷が残っている状態から、もっと以前に、ひどい拷問を受け、執拗に、身体に傷を負ったものと考えられます。そしてこの傷、実はこちらの宗村さんが、以前ある取材中に見た、極度のマゾヒストの男性の古傷と酷似していた、との情報もあります」
「マゾヒスト?」
 加藤は、ゆっくりと羽賀と目を合わせた。羽賀は、大きな目をしていた。
「江口サダユキは、加虐被虐性愛、つまりSMを愛好する性的嗜好者だったのです。特に、苦痛系と呼ばれる、痛みや苦痛を性的快楽に転化されるタイプで、それが、他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている場合、性的マゾヒズム障害と診断されます。いわゆるパラフィリアと呼ばれる性的嗜好障害者です。最近、世間でもよく言われるようになった、過去の性的虐待やいじめ、暴力などにより、心的トラウマに身体的な快楽が結びつき、強いマゾヒズムや被虐願望、性的な自己破壊願望や自虐自傷などへ発展してまった、という実例に近いかも知れません」
「マゾ男だから、首にロープを回して、緊縛プレイ?」
 相変わらず、小馬鹿にするような加藤。
「犯人は、江口の正体がパラフィリアだという事について、熟知しており、しかも、ジョン・クーラの著書にある『絞殺や絞首刑のように、頸動脈が圧迫され、脳への酸素供給が止まり、二酸化炭素が蓄積する事で、めまい、意識朦朧、喜びの感情を増大させ、その全てが自慰の興奮を高める』とあるように、彼が窒息性愛だった情報をも突き止め、あらかじめ用意してあったハングマンズノットのロープを彼の首に回した。また、犯人は、自分の身分を明かした上で、難なく、江口を呼び出している事から、この江口の行動を性依存症患者の行動と考え、このような自己発情窒息 BCPについて、二人は共通の認識を有していた可能性も考えられます」
「共通の認識だって?」
 加藤は右の眉を上げた。
「あの、すいません」
 羽賀が小さく手を挙げた。
「証拠はあるのでしょうか。今の話は全て、江口の遺体の古傷が、マゾヒストの古傷と酷似している、ただそれだけで、想像をふくらませているのではないでしょうか」
 美咲が答える前に、敷島が口を挟んだ。
「証拠はある。犯行当時、密室と変わらぬリフト上において、犯人と江口の間に、加虐被虐性愛を満たす行為が行われた。また、それと同等の行為が行われた。この事実を証明する証拠は、すでに押さえてある。ただ、細々したその内容について、この場での詳しい説明は控えたい。理由については二つ。一つ目は、聞いていてあまり気持ちの良い話ではない、という事と、二つ目は、被害者の偏った性的嗜好について、その具体的な内容は、いたずらに暴露するものではない、との考えだ」
「はあ」
「君の上司である石動も、同じ意見で一致している。石動、ご苦労だったな、誰もが嫌がる仕事を頼んでしまって」
 話の意外な展開に、羽賀は汗を飛ばすように、隣にいる石動の顔を見た。
「んー、まあ、そうですね。大変な苦労はしました。それでも、DNA型鑑定の結果を聞いて、その苦労も吹っ飛びました」
〝(敷島レナは)まあ人使いの荒いのなんのって。下手をすれば公務員職権乱用罪で刑事の首が飛びそうな、法外な依頼を平気で電話してきます。江口の件だって、もうとんでもない事を依頼してきましたよ〟
 昨日、車内で頭を悩ませた石動。
〝他言無用ですから言えませんがね。さあてどうしたものやら、動きやすい本庁ならいざ知らず、こんな地方の所轄では、一体誰に頼めばいいものやら〟
 あの時すでに、加虐被虐性愛を立証するDNA型鑑定について、敷島から依頼が入っていたという事か。
「どういった内容の、鑑定だったのですか?」
 石動と敷島の二人が、裏でこっそり手を組んでいた事について、羽賀は、冷ややかとしか言いようのない口調を使った。
「ですからさっき、細々した内容について説明は控えたいと、敷島さんは言っています。僕だって、わけも分からず依頼を受けて、どうにか対応したまでです。
 とは言え、君らだってもう想像はつくでしょう。二〇〇五年に起きた、K市の強盗致傷事件で、現場に落ちていたタバコの吸い殻、これに付着した唾液から採取したDNA型との一致により、容疑者を特定し逮捕したという事例があります。今回はタバコの吸い殻ではなかったが、これと同様の手法で、江口の遺体から、本人以外のDNA型が検出された、という事です」
 法科研ですか、と加藤は、くしゃくしゃと髪を掻き乱して、
「という事は、江口は、性的嗜好障害者、いわゆるパラフィリアという奴で、リフト上の密室の空間を利用して、犯人と加虐被虐性愛を満たすような行為に及んだ。その手始めに、自分の首にロープを回して、縄で首を絞められ快楽を得る、窒息性愛という猟奇的な被虐願望を満たしていた。その後も犯人は、自分のDNAが遺体の体に残る、まあ唾液だろうが、そういう行為が続いた。これで、良いですか?」
 敷島は、大きく息を吸い込んだ。
「そうだな、大筋には合っている。が、ニュアンスが少し違う、微妙にな」
「ニュアンスですか?」
 加藤は、掻いていた頭の手を止めた。
「そうだ。今回の事件が、刑事事件の一例と位置づけられている限り、江口は、自殺に見せかけられ殺害された被害者の一人だ。本件において、加害者が存在する限り、法に基づく刑事上の裁判において、彼は被害者として扱われて、それはゆるぎない。
 だが、犯行当時の江口は、そう単純に被害者という立場ではなかった。彼は、晦冥会では花形の幹部、芸能界では人気お笑い芸人として、多方面で活躍する一方、その裏ではチンロンと呼ばれ、晦冥会の暗殺者の一人として、脱走した幹部の行方を追って、背教者の息の根を止めて回った。
 したがって今回、晦冥会から脱走して一年半も逃避行にあった不知火は、チンロンにとって暗殺対象となる元幹部という身分。犬の嗅覚のように鋭い彼らの追跡力から、息を潜め、始末されないよう日本全国どこへでも逃げ回らなければならなかった。その劣位の境遇を考えれば、犯行当時の江口の立場は、単純に被害者という弱者ではなかったはずだ。結果的には被害者となってしまったものの、江口は背教者不知火に対して、捕食者のような優位な立ち位置にあり、例の、犯人との密会に快諾し、快く応じたのも、この力関係があったからに相違ない。
 こういった背景を改めて考えた時に、今回の犯人は、密会当初から江口に銃を突き付けられるくらいの事は想定していたはず。彼女の全行動は支配され、その後の運命をも全ては江口が握っている。そういった極限の状況にもかかわらず、犯人は、言葉巧みに、使えるものは使って、リフト乗り場まで江口を誘い出した。周囲の人からは見えない所で、銃を突き付けられ、少しでも奇妙な行動や、言動に不可解な点があれば、即座に撃ち殺される、こういった、今から考えればどちらが被害者だが冠履転倒の有様だった。
 まあ、考えてもみてくれ。江口の隣にいたのは、あの、伝説のバイフーだ。その、完全無敗の戦績と、類稀なる暗殺スキルの卓犖さは、江口だってうんざりするほど分かっていただろうし、そんなバケモノを相手に、暗殺の同業他社みたようだった江口が、何ら手も打たずに、身体的虐待を受けて性的快感を味わう、というのは、あまりにハイリスクだ。そんな命知らずな行為を繰り返しては、死と隣合わせの暗殺者として、失格であるし、今まで生き残って来たとは信じられない。バイフーに隙を見せてはならない。殺られる前に、殺る。このように犯行当時の江口は、犯人の頭部に銃口を突き付けて、被虐願望を満たしていた事に間違いはないだろう。
 また、もう一歩進んで考えた時に、一つ思うのが、ひょっとしたら江口は、一人の人間がサディズムとマゾヒズムを併せ持った状態、サドマゾヒズムと言われるパラフィリアだったのかも知れない、という事だ。サディズムとマゾヒズムは本質的な部分において完全に同質な存在である、と説いたのが、ドイツの精神分析学者フロムだ。マゾヒズムの語源となったザッヘル・マゾッホは、妻に、マゾ役を命じていたというのだから、あってもおかしくはない。江口は、拳銃を使用して相手の行動を支配する加虐性淫乱症と、ロープによって頸動脈が圧迫され肉体的精神的苦痛を与えられる被虐性欲を同質なものとして、性的倒錯に溺れていた」
 しんと静まり返った祠の中で、敷島は、動画を再生させた。
 首に丸い輪を回したブルーのモデルが、ピンクのモデルの頭に向かって、拳銃らしきL字の棒を押し当てた。殺られる前に、殺る、というやつだ。そして、ピンクのモデルは、相手から頭部をねじ伏せられるようにして、ブルーの胴体へと引き寄せられた。座席の前面がフードでカバーされているとは言え、これら性的嗜好障害者による異常な行為が、公の場で行われている。コンピュータ・シミレーションのポリゴンの世界だとしても、目を背けたくなるような映像だった。
「おい、いま、何かしたぞ」
 犬が吠えるように、加藤は画面を指差した。
「ピンクの左の手だ」
 美咲は動画を停止させて、
「説明も何も無く、一回で気が付くとは、驚きです」
 そして、ブルーのモデルの首の辺りを指で差し、
「今ご指摘のあった通り、ピンクの犯人は、江口の背中に細工を施しました。一瞬の事ですので、コマ送りで解説しなければならなかったのですが、さすが刑事さんです。犯人は江口から銃口を突き付けられて、奇妙な行動は禁物です。もしもその細工の存在や、奇妙な左手の動きに、気が付かれれば、間違いなく命はありません。それでもなお、犯人は相手の背後に腕を回して、こっそりと、実に巧妙に、ウェアのフードにフックを掛けたのです」
 美咲は、タッチパネルに二本指を当て、ピンチアウトという機能で、ブルーのモデルを拡大した。その、フックと呼ばれる映像は、アルファベットの〝J〟のような一本の線でしかなかった。
「これは、サークルフックと呼ばれる、いわゆる釣り針です。犯人は、バラムツ釣りなどで使用する大型のサークルフックを、ウェアのフードに掛けました」
「釣り針?」
 想定外の言葉に、加藤は大声で聞き返した。
「そうです、サイズは号数で8/0を仮定しています。形状は、一般的な釣り針を思い浮かべてもらえれば良いと思います。針先と呼ばれる針の先端には、カエシと呼ばれる、針先の向いている方向とは逆に、小さく尖った部分があり、これは、釣った魚の口から釣り針が外れるのを防ぐ役割があります。今回の場合では、針先が江口のウェアのフードに食い込んで、カエシが生地に引っ掛かり、一度こうなってしまえば、いくら足掻いても、引き抜こうとしても、正しい針の抜き方をしない限りは、フックは外れないようになっています」
〝この短いロープの切断された先の部分は、一体どこにあるのでしょうか〟
 故障したリフトの上で、必死に考えていた美咲。
〝未だ発見されていないロープの先端にこそ、バイフーの犯行のヒントが隠されているのではないでしょうか〟
 失われたロープの先端部分。その答えが、大型の釣り針だったという事か?
「もう、お分かりかと思います。リフトの背もたれに結ばれた、もう一本のロープの先端に結ばれていたのが、このサークルフックだったのです」
 加藤は、あ、という顔をして、ひざを叩いた。
「じゃあ、赤く点滅した三つのリフトには、あらかじめサークルフックが用意されていたという事か」
「その通りです。犯人は、サークルフックが用意してあった座席、それは連続して三つ並んだリフトの座席ですが、このいずれかに江口と乗る事で、事前に企てていた暗殺計画の通りに、彼のウェアのフード部分に、このような細工が出来たというわけです。サークルフックの現物については、これは、残念ながら現地から発見できていません。なぜならこのフック、そのまま警察の手に渡る事があれば、江口の他殺説の重要な手掛かり、糸口となり、捜査本部は、江口は何者かによって殺害されたと発表する可能性が高いからです。この展開は、犯人は望んでおらず、したがって、最低限フックだけは回収しなければ、と犯人は、その深夜にでも、人影の失せた現場へ舞い戻って、ナイフか何か鋭利な刃物で、ロープの先端部分だけを切り落として、二つのサークルフックを持ち去った。そして、リフトの背もたれのパイプには、短くなったロープだけが、いかり結びという結び方で、残っていた」
 話は合っている。短いロープの先端は、ナイフか何か鋭利なもので、切り刻むように切断されていた、リフトの背もたれのパイプには、いかり結びで短いロープが結ばれていた。三つのリフトの座席に用意されたフックの、犯行後に持ち去ったのが二つの、というのは、もう一つは、実際に犯行に使用され、犯人が逃走時に持ち去ったと見ていいだろう。
「石動、今さらだが」
 と敷島は、石動に顔を向けて、
「江口の遺留品、これが残っているのであれば、今一度、確認してみてくれないか? ウェアのフードの部分に、いま言ったような破損部がないかどうか」
 目を上にあげて、少し考えてから、石動は頷いた。そして、何やら羽賀に耳打ちをした。羽賀は目を動かし、あー、と声を漏らして、手にした拳銃を腰のホルダーへ差し、一度スマートフォンを確認してから、すぐに上着の内ポケットをさぐって、IP無線機を取り出した。
「いま、確認しています」
 石動は羽賀を指差して見せた。変な口をして、これらを見ていた加藤は、手持ぶさたの様子で、
「江口のウェアにフックが掛けられた、として、それがいったい何なんですかね? リフト降り場でリフトから降りようとして、フックが引っ掛かって、江口一人だけリフトから降りられない、そのまま空中にぶらぶらっていうイタズラですか? そんなの、どっきり番組のネタみたいなもので、笑って終わりじゃないですか? 俺には、サークルフックの細工が、江口殺害に繋がるとは思えんのですが」
 確かに、わたくしもそこが引っ掛かった。サークルフックの役目は、リフトと江口を繋ぐだけだ。繋いだだけでは、江口を首吊りに見せかけて殺害する事はできない。
 美咲は、それには答えないで、ウェアのポケットから木の枝を取り出した。その枝は、直径七〇ミリメートルほどの、やや太い落葉高木の枝に見えた。ノコギリか何かで両端を切り落としている。
「あらかじめ結ばれた、短いロープの役割は、きっかけに過ぎません。そう、それは、江口を殺すためのものではなかった。この木の枝の傷が、全てを物語っています」
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