演技派なふたり

豆きなこ

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1章「ふたり」

2話

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 どれくらい経っただろう。その後30分か40分ほど経った頃、お疲れ様でーす、と言う若い女性スタッフの明瞭めいりょうな声が響いた。撮影場所の白ホリゾントから離れたモデルの雪が、すぐ傍に立つマネージャーの大槻へと歩み寄った。

「これで終わりよね?」
「お疲れ様です、雪さん」
「お疲れ様、あー…この髪、鬱陶うっとうしい」

声を掛けてきたマネージャーの彼に応えるなり、雪は自身の頭頂部に触れると、ガッと髪の毛を掴んだかと思えば、ズリっと頭から剥ぎ取った。目を丸くしたのはその『事実』を知らなかった3人ほどの周囲いたスタッフ。遠巻きに不意を食らって見えた彼女の姿に、コソコソと話し込む声が聞こえた。

「『ウイッグ』、暑いですもんね…」

大槻が苦笑する。
 一部のスタッフのヒソヒソ声が聞こえたが、まるでそんな事に関心がないとばかりに髪全体を覆っていたネットも脱ぐ雪。するとネットに押さえつけられていた彼女の茶色い地髪がフワッと現れた。ボブの長さの茶髪は軽くフワッとウェーブしており、それは柔らかく繊細な印象を与える。
 彼女の口から不愉快げな息が漏れ出た。

「あー、スッとした。野池さん、使います?」

乱雑に、掴んだウイッグをはい、と差し出した雪。話を振られたのはディレクターの野池。彼は、あはは、とこれまた快活な笑い声を上げた。

「雪ちゃん、誰が使うかいな!」
「でも、寂しいでしょ?その頭じゃ」

彼の頭頂部は、どことなく薄い。一度、彼は自ら頭頂部に触れる。

「いや、せやったら貰ぉとこか…」

一瞬真顔になる彼に、今度は彼女の方が軽く笑い声を漏らした。途端、野池ディレクターがにこりと笑む。ツボにでもハマったのかクスクスと笑い続ける雪に、大槻が「雪さん、失礼ですよ」と指摘をしたが。

「えぇねん、オモロいやんか」

そう答えて、特に気を害したわけでもない様子で、野池は歯を見せて笑んでいた。
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