蜜色キャンバス〜御曹司とオメガの禁断主従〜

霜月@如月さん改稿中&バース準備中

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25話 『進化論:あるまげどん完全体』

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 少しばかり仮眠をとって、昼を過ぎた頃には、冷えた体温もすっかり元に戻っていた。人の声で賑わうプライベートプールが気になり、ゲストルームを出る。


 プライベートプールに顔を見せると、菫が心配そうに声をかけてきた。


「お身体はもう大丈夫なんですか??」
「はい! あ、お風呂ありがとうございました。菫さんがお風呂を準備してくれたから……」
「いえいえ。私はお二人がご無事で本当に良かったです」
「本当に、ご心配をおかけーーうわぁあぁあ!!!」


 どーーん!!!


 突然、ゴールデンレトリバーが目を輝かせて、飛びついて来た。ア、アルマゲドン?!?! 尻尾を高くあげ、小刻みに振っている。アルマゲドンの勢いに負け、尻餅をついた。


「はっはっはっはっ…わうっ!!」
「もしかして、さびしくなって俺のところに来たの?? 可愛いやつめ!!」


 俺の胸に突っ込んで来るアルマゲドンを、両手を広げて抱きしめる。なでなでなで。背中を優しく撫でていると、綾明がそばに来た。


「僕と居ても元気なくてさ」
「それは綾明さんがお世話しないからでしょ」
「餌あげてるよ?」
「たま~~にでしょ。そういうのお世話って言いません!」


 俺の隣にしゃがみ、頬を少し膨らませ、アルマゲドンの顎の下を撫でる綾明を見て、ぷっと笑ってしまう。


「綾明さんは俺のお世話で手一杯ですもんね~~!」
「そうだよ! 全く、手のかかる恋人だ!!」
「へっ?」


 後ろから綾明の脚の間に引きずり込まれ、頭がぐしゃぐしゃと撫でられた。


「このこのこの~~っ」
「わぁあっ!!! あはっちょっ!! 綾明さんっやめっ!! あはっ!」


 俺は綾明さんの腕の中に居て、俺の腕の中には愛犬が居て。重なり合う身体の幸せと、触れ合う心地よさを感じる。


「もぉ~~っ! 犬みたいに撫でないで!」
「だってアルマゲドンで水都まで元気になっているのが妬けるから。僕が元気にしてあげたかったのに」
「どんな嫉妬ですか~~」


 綾明の手が俺の腹部を抱きしめた。こ、こんなところで!!! これじゃあ、みんなに付き合ってますって言っているようなもの!!!


 そんなのだめだめ!!! 立場上、あくまで秘密なんだから!!! 抱きしめる綾明の手を叩いた。


「ちょっと!!! 綾明さん!! 離れてください!! ペットごっこ(?)は終わりですよ!!」
「……僕がそんな変な遊びしているとでも?」
「あ~~っ!! 綾明さんの分からずや!!! 俺、アルマゲドンと遊ぶフリスビー持って来ます!!!」


 無理やり地面から立ち上がり、アルマゲドンの前に立った。手のひらを犬の方に向け、「シット」と声をかける。


「アルマゲドン、俺、今からフリスビー取りに行ってくるから大人しく待ってるんだよ?」
「わうっ!」
「ステイ! じゃ、綾明さん! 俺ちょっと取りに行ってきますね!!」
「……うん」


 アルマゲドンが動かずに待っているのを確認しながら、部屋に向かった。


 ーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーー
 ーーーー
 *


 水都の指示を聞き、大人しく待っているアルマゲドンを見つめる。水都がアルマゲドンに夢中だと思うと、愛犬が憎らしい。


「アルマゲドンのくせに」
「レオン、カム!!!」


 父の声が背後から聞こえ、振り返る。しかし、今、愛犬レオン(アルマゲドン)はステイ中だ。おそらく、僕よりカーストの低い父の言うことなど聞かないだろう。


 そもそも、名前が間違っている!!! 僕は父に、レオンから偉大なるアルマゲドンに変わったことを知らしめることにした。


「あれ? おかしいなぁ……前は言うこと聞いたのに」
「父さん、もうレオンじゃないんだよ。アルマゲドンなんだ!」
「は?」
「レオンはね、アルマゲドン完全体に進化したのさ!!!」
「綾明……頭大丈夫か?」


 父が僕を白く濁った目で見てくるが、僕は至って正常。そして、これは事実!! 僕はアルマゲドンのネームプレートを手のひらで指し、口を開いた。


「みよ!!! このネームプレートを!!! 『あるまげどん』って書いてあるだろう!! もうレオンじゃないんだよ、父よ!! この事実を受け入れるんだ!!!」
「受け入れられるか!!! そんな最終決戦みたいな名前!!! 誰が付けたんだよ!!! 重た過ぎるわ!!! しかも上から平仮名で書くな!!!」


 後ろから「オーケー!!」と、元気な声が聞こえると同時に、アルマゲドンが走り出した。振り向いて、声の主を見る。水都だ。両腕を広げ、アルマゲドンを待ち構えている。


 アルマゲドンには負けたくない。


 謎の対抗心から、僕は大きな声で叫んだ。


「アルマゲドン、シット!!」


 愛犬がぴたりと足を止め、その場に座った。父の言うことを聞かなかったのは、名前が間違っていたからかもしれない。僕はアルマゲドンを追い越して、水都の両腕の中に入った。


「なんで綾明さんが来るんですか」
「グッドでしょ? 水都」
「恐れ多くてそんなこと言えません!!!」


 小さな水都の両腕が、僕の大きな背中をギュッと抱きしめた。僕の胸に埋まっている水都の顔は赤くて。愛しさで額に頬擦りをする。


 僕の指示から、動こうとしない愛犬を横目で見つめ、名前を呼んだ。


「アルマゲドン、カム」
「わうっ!!」


 愛犬がしなやかに地面を蹴って飛び上がる。その体は空中で弧を描きながら、僕たちの元へ突っ込んできた。


 地面に腰を落として、愛犬と水都を両腕で抱き止める。腕の中で無邪気な喜びと、笑顔を見せる愛犬と水都に、思わず、笑みが溢れた。


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