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第二章 セレスティアの伝承
第三十話 #『静謐の書架に、甘い罠を』
しおりを挟む「……触れても、いいか?」
囁きとは違う、抑えきれない感情が滲んだ声に、思わず息を止める。
「……はい」
言葉を返した瞬間、リアム殿下の瞳に淡い熱が帯びた。腰へと伸びた指先が、衣服の上から優しくなぞり、肩が小さく跳ねた。
「ん……っ」
身体の中がどこか疼くような感覚に、甘い吐息が漏れる。書架に囲まれた密室で、息遣いだけが空間を満たしていく。
裾から滑り込んだ指先が、筋肉の動きを確かめるように腹部をゆっくり撫で上げる。指先が胸元に触れ、ひときわ甘い震えが走った。
「や……っ、あっ……」
「……弱いんだな、ここ」
そっと首筋に口づけられ、指が胸の突起を優しく摘まんだ。ぞくりと震えた体に、快感がじんわりと広がる。
「ぁっ、やっ、だめっ……声、出ちゃいます……っ」
「……君の頭から、あの伝承の影を追い出して、私のことしか考えられなくしよう」
耳元で囁かれ、身じろぎすると、書架の影に身体が押し寄せられた。重なる身体のあいだが熱を持つ。
「殿下、ここ……書庫なんですよ……」
「誰も来ないよ、ルイス。ここは私専用の閲覧室だから」
「っ……でも、エリオットが……すぐ外に……」
耳の裏をなぞる舌に、びくりと反応してしまう。首筋が強く吸われたかと思えば、甘く熱い感覚が一気に腰へ落ちた。
「っ、で、でんかっ……!」
「ほら、首に赤い花が咲いた。私の印だ」
「~~~っ、こ、困ります……っ、これ、消えるんですか……?!」
思わず、さっと首筋を手で隠す。リアム殿下がクスリと笑うと、手が下腹部へと滑り込んできた。
「……やぁ……っ、そ、そこ……っ」
「……触って欲しい?」
「ちがっ……でもっ……っ、ぁ……っ」
「ん~~?」
熱を持った指が、硬く張り詰めた幹を包み込み、擦る。溢れる蜜が殿下の手を滑らせた。気持ち良さで、もう言葉が出てこなくて。ただ、甘い痺れに身を任せ、涙が滲む。
「……この音、聴こえる? こんなに濡らして、いやらしい子だね」
「あっ……やだっ、やめっ、はあっ……」
ねちゃ、にちゃと、静かな書架にいやらしい水音が響き、頬がかあっと熱くなる。
「……さあ、私に天へと咲く瞬間を見せてくれ、ルイス」
「っ、あっ、ぁあっ、やっ……あっ、だ、めっ……っ、でんかっ……!」
容赦なく責め立てる手に、肩がびくびくと震える。自分のすべてを委ねたとき、快感が背筋を駆け抜けた。
「ぁああっ……」
肩を抱かれて、リアム殿下の胸元に顔を埋める。甘い余韻の残る身体を気遣うように、そっと髪を撫でてくれるのが、たまらなく優しかった。
「……っ、う~~っ……こんなところで……もう……顔向けできない……っ」
「君だけじゃない。私の手も、同じだよ。ほら」
白濁でどろりとした手のひらを見せられて、ますます顔が赤くなる。けれど、リアム殿下は俺の前髪を掻き上げて、微笑むと、額に口づけた。
「……君を書庫で見つけられて、よかった」
「……リアム殿下……」
少し衣服を直し、ふたりで書庫の扉へと向かった。まだ甘い痺れが残り、歩き方がぎこちなくなってしまう。扉を開けると、すぐ外に立っていたエリオットと目が合った。
「……ご調査は、実りあるものとなりましたか?」
いつもと変わらない穏やかな微笑み。なのに、その声の響きに、びくりと肩が跳ねる。
「っ、あ……えっと……」
答えに詰まると、エリオットが一歩、俺たちに歩み寄った。
「殿下、ルイス様。……書庫で調べた内容については、後ほど改めてご報告を」
「~~っっっ!」
『報告』という言葉に、恥ずかしさで耳まで真っ赤になり、顔を伏せる。背後からリアム殿下が、くすっと笑いながら言った。
「……エリオット、報告は君の推測に任せるよ」
「殿下。お身体の『調査』は、夜中にお願いします。声が響きますので」
淡々とそう言い残し、静かに去っていくエリオットの背中を見送る。堪えきれず顔を覆い、うずくまった。
「……ほんと、もう……恥ずかしすぎます……っ」
俺の動きに合わせるように、リアム殿下がしゃがみ込む。そして、優しく俺の手を包み込んだ。
「……次は、どこを調べようか?」
「も、もう調べませんからっ……っ!」
気づけば、不安も迷いも、すべてどこかへ消えていた。
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