【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん

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23:弟の報告

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 兄さんの報告を聞いた後、今度は僕が調査したことを報告した。まぁ、兄さんの話のように刺激的なものはないが。

「まずヘレナ嬢。ここは伯爵共々問題ない」

ティナとヘレナ嬢は割と懇意にしていたようだし、スヴェント伯爵も娘のことはノータッチだ。特に娘を婚約者に推すという行動も今までなかったからここはこれ以上調べなくても大丈夫だろう。領地の管理に関してもやり手ではあるがあくどいことは一切していないようだ。

「ソフィア嬢はね…ソフィア嬢に限っては白だけど…ランタラ侯爵がティナとは関係ないところでグレーかな」

ソフィア嬢は王太子妃になることを決定事項のように押し付けられ育ってきたためそれを信じ貫いているようだ、が。正義感が甚だ強く誰かを痛めつけたりはできない性格だ。ティナのことも何だかんだ気にかけていたようだし彼女自身は悪い人ではない。

ソフィア嬢が階段から落ちた時はティナを排除できるチャンスだと思ったのだろう、ランタラ侯爵はそれを利用しようと乗っただけだと思う。
ただし、ティナのこととは関係なく病院経営に関することで怪しい噂が出てきた。この辺りは陛下に指示を仰いだ方が良さそうだ。

「エルヴィ嬢はダメ。あれはダメ。レフトラ伯爵もダメ。真っ黒」
「海での件はここか?」
「うん、間違いなく」

大人しそうな顔してとんでもなかった。一番最初にティナの命を奪おうとしたのはこの女だ。
どうして気がついたのかは知らないがそこにユーリアが近づき結託した。二年間の私文書偽造のやり取りに関してもエルヴィ嬢が関わっている。ティナを利用し、あわよくばソフィア嬢が命に関わる状態になっていたとしたら…有利なのは自分だと思ったのだろう。そう上手くはいかなかったが。

「ティナに手を出したレフトラ伯爵家の私兵を探してる」
「いけそうか?」
「絶対にぶち込んでやる」

そう冷たく言い放つと兄さんも頷いた。レフトラ伯爵に関しては国の政治に関わることだからこちらも陛下の耳に入れておくとする、と言ってももう気づいているだろうが。

「シルキア伯爵には会った?」
「いや、会ってないな」
「何か考えがあったんだと思うんだよねぇ…」

最愛の娘を一切信用せずに屋敷から放りだした。あの伯爵と夫人がそんなことするなんてとても考えられなかった。ティナを追放するというのはただのポーズだったのだろうけど…何も知らないティナ本人は相当傷ついていると思う。

そこでコンコン、と扉がノックされて兄さんの護衛であるトピアスが入ってきた。
…トピアス、本当に頑張ったな、と心の中で褒め称えた。僕だったら…うん、ショックでもうお婿にいけないかも。

「殿下、シルキア伯爵の執事が先ほど来られ手紙を渡して帰られました」
「手紙?」

兄さんは急いで封を開けて読むと僕にもそれを寄越した。手紙には一連の騒動に関する形式的な謝罪と屋敷の近況が淡々と述べられているだけだ。

「…メイドを全員クビにした?温厚な伯爵にしてはずいぶん思い切ったね」
「害虫が入り込んだか、害虫になったかだな」
「ふーん…となるとティナの命が危険にさらされるのを危惧してたってことだね」

一丸となってカルミ子爵の命を奪ったような連中だ。何を仕掛けてくるかわからなかったのだろう。シルキア伯爵の妻であるメリヤ夫人はカルミ子爵の妻、ミンナ夫人の姉であるしユーリアを養子に迎えた時から何かわかっていたのかもしれない。もしもの時のためにティナを逃がす準備をしていたのだろう。
イヴァロンという管理がまだ行き届いていない田舎に行かせたことでティナは問題点を目の当たりにし改善しようと動いている。ユーリアの件が片付けば退学、追放という汚名を返上できるし、イヴァロンが変わっていけば領地管理ができる才能がある令嬢だと評価がプラスに傾く。シルキア伯爵がそこまで見込んでいたかどうかはわからないが…。

「まぁ問題は…ティナがユーリアのことをすっかり忘れてるってことだよね」
「今やあの女のことは何っにも考えてないな。ティナは今、アレクシや村のことで頭がいっぱいだ」

いつも本ばかり読んで退屈そうにしていた彼女は今、人が変わったように生き生きとしている。何というか…本来のティナ自身を見ているようで僕は前よりもっと惹き付けられている。

「蒸し返す意味あんのかなとも思う。ティナも楽しそうだし僕らも会いに行きやすいしもう止めとく?」
「うーん……いやいや、待て待て!」
「うん?」

大事なことに気がついたのか兄さんが慌てだした。うーん、残念。

「このままいったら俺ヘレナ嬢かソフィア嬢と婚約になるだろうが!」
「チッ 気づいたか」

僕が子供の頃からティナに惹かれていたことは兄さんも気づいてたはずだ。だからといって僕のために婚約者候補から外すというようなことはしなかったが、兄さんがティナにも僕にも抜け道を作ってくれていたことは確かだ。その証拠に僕がティナに近づいても甘えても嫌な顔ひとつ見せなかった。…兄さんが本当のところどう思っているかはわからないが。
 
「僕は遠慮しないよ?」
「む」
「これからは全力でいくから」
「…わかってる」

兄さんは僕と違って優しい…優しすぎる。だからこそ厄介だと、僕は思う。

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