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第九章【セントラル】
9-45 燃焼
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魔剣士「リッター、てめ……!」
リッター「ん?」
魔剣士「別の大地の制圧戦に行ってたんじゃねーのか!」
リッター「ハッハッハ、残念ながらな!」
彼は裾をめくり、太い腕にきつく巻き付いた包帯を見せた。
魔剣士「怪我か…?」
リッター「誰かの大火傷は闇魔力による干渉が強くてな、回復までかなり時間を要している。それよか、魔剣士こそ死んだと聞かされていたのだが?」
魔剣士「へっ、俺は死なないんでね!」
リッター「そうかそうか。俺は騎士団を制圧戦へ送る管理や、兵士たちを束ねる者として俺は残っていたんだが、どうやらラッキーだったようだ」
背負う大剣をゆっくりと抜き、魔剣士と同じように地面へと"ドン!!"と突き刺す。大怪我を負っているはずが、その強靭たる雰囲気は怪我を微塵も感じさせない。
魔剣士「戦う気か…!」
リッター「知ってしまった以上、抜いた剣を納めることは無い」
魔剣士「テメェ、俺に勝てると思ってるのか」
リッター「……ハハッ!」
魔剣士「何がおかしい」
リッター「まるで滑稽だ。何とも言えない光景に、笑ってしまっただけだよ」
魔剣士「何ィ…!?」
リッター側から見れば、玉座に座り剣を突き刺し睨み付ける真黒なローブを着た男。両脇には美しい女性二人を従え、その台詞は「俺に勝てると思っているのか」である。
リッター「さながら魔王、そのものじゃあないか。そんな男と戦えるのなら、冒険者冥利…この命を捨てても構わんッ!」
魔剣士「一度、俺の豪炎に焼かれてながらよく言えるな」
リッター「強い奴と戦えることは本望。よもや、お前の実力を見て俺はお前に勝ちたいとすら思っている」
魔剣士「なるほど、冒険者そのものだな」
リッター「俺はお前を認めている。認めざるを得ないからな!」
魔剣士「本当にやる気か」
リッター「抜いた剣、納めぬといったはずだ」
魔剣士「避けられないのか」
リッター「避けて何になる」
魔剣士「アンタ…」
魔剣士が何かを言いかけた時、勢いよく再び王室のドアが開く。
リッターはそれに素早く反応し、大剣を薙ぎ払うが、"ギィン!!"と音をたてて相手はそれを弾いた。
リヒト「ぐぅっ!!?」
相手はリヒトだったこともあり、何とか防御したがあまりの衝撃にその身体は壁へと叩きつけられた。
リッターはブレイダーの顔を見て声をかけるが、魔剣士たちの呼ぶ名前でそれを察する。
魔剣士「リヒト!」
白姫「リヒトさんっ!」
バンシィ「リヒトお兄ちゃん…!」
リッター「何…?」
不思議そうにブレイダーの名を違う名で呼び、心配している声色にリッターは「ほほう」笑った。
リッター「……ブレイダーが裏切ったか、それが本名なのか…?」
魔剣士「何っ!?」
リッター「隠さずとも分かる。リヒトという名、心配に近い声色、すぐに出たその行動からお前らの仲間になったことは分かる」
魔剣士「…ッ!」
さすが、旧時代を生きた冒険者で現役なだけはある。昨日の友は今日の敵であると、いつでも覚悟が出来ているらしく、混乱することなく理解をした。
リヒト「ぐっ…!ゲホゲホッ…!」
リッター「フハハッ、お前とも戦いたいと思っていた。俺と同等ではないが、剣技も十分に楽しめそうだからな!」
リヒト「リ、リッター…!油断しました……!」
リッター「……ハハハッ!!」
倒れるリヒトに対し、リッターは目の前に近づき手を伸ばす。
魔剣士は「やべぇ!」と援護しようとしたのだが、その手は殺意なく、ただ彼を起き上がらせるために差し出した手であった。
リヒト「え…?」
リッター「早く立て。準備なく戦っても面白くはないだろう!」
リヒト「あ、は…はぁ……」
攻撃する意志はないようで、リヒトも素直に従う。
実際にもただフォローされただけで、全くもって攻撃を仕掛ける様子はなかった。
魔剣士「お、お前…!」
リッター「さて、どちらから相手をするか。どちらでも良いぞ、もしくは二人同時でも、そこのお嬢ちゃんたちも全員でも……」
魔剣士「ちょっと待て…、お前、リッター!まさかとは思うが……」
リッター「何だ?」
この優しさやマナーすら重んじるような一連の行動から、魔剣士は「まさか」と言いつつ、そうなのではないかと確信をもって尋ねる。
魔剣士「お前、洗脳が解けてるんじゃ…ないのか……!」
リヒト「!」
白姫「!」
バンシィ「!」
リッター「……ほう!」
一同が驚く中、リッターは面白そうに返事をした。
魔剣士「いや、聞くまでもない。以前戦った時にあった殺意より、会場設営の時に感じた優しさのほうを強く感じる…。ブリレイの闇魔法、解けてるだろ…アンタ……!」
リッター「さぁてな、そうだとしても関係がないことだ」
魔剣士「ど、どうしてだ!アンタ、本当はこんなことするような人間じゃないだろう!?」
リッター「どうしてそう思う」
魔剣士「ブリレイの闇魔法は、洗脳をしても本質まで変えることはできねぇって知ってるからだ。それに、長い時間ブリレイから離れるとなると、必然的に幻惑は解除されるはずだ!」
リッター「ふむ、なるほど。それならば、そうなのかもしれんな」
魔剣士「だったら戦う理由は尚更に無い!」
恐らく、これは真実。
もしかすると、もしかするかもしれない。
リッター「つまり、何が言いたい?」
魔剣士「……頼む!本当にそうなら、アンタが仲間になってくれれば怖いモノはねぇ!!」
―――仲間に出来るのではないか、と。
リヒト「魔剣士さん…!」
バンシィ「お兄ちゃん、リッターを仲間にって……」
白姫「ほ、本当にそうなら……」
魔剣士「あぁ、絶対にこの戦いを終わらせることが出来る!リッター、頼む!!」
彼の本質は、戦いの他に優しさが眠っている。こればかりは、絶対であると確信し、魔剣士は平和のためにと懇願した。
リッター「やれ、困ったことだ」
魔剣士「頼むリッター!お前だって、世界戦争は望んじゃいないんだろう!」
リッター「……さぁてな?」
魔剣士「さぁてなって…」
リッター「ンまぁ、確かに言えば俺はブリレイの幻惑から解き放たれているんだが」
魔剣士「や、やっぱりか!?」
立ち上がり、鬼気迫る勢いでリッターへと詰め寄る。
リッター「しかし、俺はブリレイに従う。いや、決して戦争を楽しんでいるわけじゃあない」
魔剣士「だったらよ!」
リッター「だが、ブリレイに負けたのは事実。俺は俺のプライドで、負けたら服従をせねばならないということは絶対だ」
魔剣士「そんな古い考えを……」
リッター「俺は旧時代の人間だ。この話は、あの男もしていることだろう?」
魔剣士「……あ、頭が固すぎるだろう!」
リッター「いやいや、逆に考えれば単純なことだとは思わないか?」
魔剣士「何だって?」
突き刺していた大剣を軽々と片手で持ち上げ、魔剣士へと向ける。
リッター「今の俺は、王なき王城に従うばかりで、その玉座についているのは何故かお前だろう?」
魔剣士「そうだな」
リッター「その玉座を奪うというのなら、俺はお前に従う。だとすれば、その玉座に本来ついている王を守るのが俺の仕事であり、俺を納得させてからの話だ」
魔剣士「どのみち、戦う以外はないってことかよ……」
魔剣士は突き刺していた剣を抜き、同じようにリッターへと向ける。
お互いに交差させ、金属音がギン!ギン!と何回か鳴り響き、その剣先から互いに本気で殺し合うのだと分かる。
リヒト「バ、バンシィさん、白姫さん…こちらへ……!」
脇をそそくさと走り、リヒトは手を引いて部屋の隅に彼女たちを避難させる。
リヒトも念の為に剣を抜くが、邪魔をするなという魔剣士のオーラから援護に回ることなく白姫たちの守衛にだけ着いた。
バンシィ「リヒトお兄ちゃん、魔剣士お兄ちゃんは大丈夫だよね……」
白姫「リヒトさん、魔剣士は大丈夫ですよね!」
リヒト「……大丈夫ですよ、魔剣士さんなら…!それに、闇魔法は使えるように解除しておきましたから!」
リヒトは既に城門の呪文キーを改良し、魔法が発動できるよう解除していた。それを遠くで聞いていた魔剣士は、残念だなとリッターに向かって言う。
魔剣士「リッター、お前の負けは確定だ。陣が解除された以上、俺は自由に闇魔法を使えるようになっちまった」
リッター「ならば精神を砕くまで切り刻むだけだ。しかし残念なのは、お前があの地下室で見せたような派手な火炎魔法を使えぬことだな」
魔剣士「元々、今は攻撃的に闇魔法を使うつもりはない。純粋に剣技だけでお前と戦うつもりだった」
リッター「その意気は称賛するが、本気で来ないのなら俺は仲間になるつもりはない」
魔剣士「後悔すんぞ」
リッター「見せてみろ、お前の魔法化を」
魔剣士「……はァッ!!」
全身を紅蓮の炎が包み込み、身体は燃え上がる。常人なら燃えてしまうような熱風を前にしても、リッターは余裕の笑みを見せた。
リッター「それで抱き着いてみるか?俺は死なない、俺はお前に勝ちたいと決めた」
魔剣士「どこまでも冒険者な野郎だなテメェは……」
リッター「俺は勝つ。だが、お前が勝って認めさせてみろと思っている自分もいる」
魔剣士「戦う必要がないんじゃねえのか」
リッター「フハハッ!!お前とて、ここまで来て戦わないという選択肢を持ち合わせているのか?俺は戦いたいと心底思っているぞ」
魔剣士「ちっ…!奇遇だな、オイッ!!」
先に仕掛けたのは、魔剣士。交差していた剣を弾き飛ばし、懐へと入り込み、左手で火炎のアッパーを繰り出した。
リッター「甘いぞォ!!」
上体を逸らし、軽々とかわす。だが、魔剣士はそれを予測しており連撃として更に剣撃を股下へと繰り出した。
魔剣士「真っ二つに…してやるぜぇぇっ!」
リッター「それはどうかな!」
魔剣士「…うぉっ!?」
リッターは人差し指と中指に魔力を込め、剣撃を二本指で挟んで止めた。驚いているのもつかの間、大剣を握る腕が鞭のようにしなり超速で脳天へと振り下ろされる。
魔剣士「やっべ!!」
以前に受けた、十字撃クロイツシュナイデンを思い出し、身体を回転し軸をずらす。振り下ろされた大剣は大理石の床を破壊し、粉々になったいくつかの小石が部屋の隅にいた白姫たちを襲う。
リヒト「……させませんっ!!」
片腕を伸ばし、防御壁で全て弾き返すリヒト。彼女たちには怪我一つなく、魔剣士はそれを見て安心する。
魔剣士「……やるじゃねえか!」
リッター「今のは不可抗力だ。別に彼女たちを攻撃するつもりはなかったとだけ言っておこう」
魔剣士「そんなの分かってるから言わなくていい!!次、行くぞォ!!」
リッター「来いッ!!!」
再び交差し、力強く弾ける金属音、暴走する魔力の爆音、あまりの速さに遅れて聞こえる風切りの音。
二人の戦いは、長く、長く、続いたのだった……。
………
…
魔剣士「リッター、てめ……!」
リッター「ん?」
魔剣士「別の大地の制圧戦に行ってたんじゃねーのか!」
リッター「ハッハッハ、残念ながらな!」
彼は裾をめくり、太い腕にきつく巻き付いた包帯を見せた。
魔剣士「怪我か…?」
リッター「誰かの大火傷は闇魔力による干渉が強くてな、回復までかなり時間を要している。それよか、魔剣士こそ死んだと聞かされていたのだが?」
魔剣士「へっ、俺は死なないんでね!」
リッター「そうかそうか。俺は騎士団を制圧戦へ送る管理や、兵士たちを束ねる者として俺は残っていたんだが、どうやらラッキーだったようだ」
背負う大剣をゆっくりと抜き、魔剣士と同じように地面へと"ドン!!"と突き刺す。大怪我を負っているはずが、その強靭たる雰囲気は怪我を微塵も感じさせない。
魔剣士「戦う気か…!」
リッター「知ってしまった以上、抜いた剣を納めることは無い」
魔剣士「テメェ、俺に勝てると思ってるのか」
リッター「……ハハッ!」
魔剣士「何がおかしい」
リッター「まるで滑稽だ。何とも言えない光景に、笑ってしまっただけだよ」
魔剣士「何ィ…!?」
リッター側から見れば、玉座に座り剣を突き刺し睨み付ける真黒なローブを着た男。両脇には美しい女性二人を従え、その台詞は「俺に勝てると思っているのか」である。
リッター「さながら魔王、そのものじゃあないか。そんな男と戦えるのなら、冒険者冥利…この命を捨てても構わんッ!」
魔剣士「一度、俺の豪炎に焼かれてながらよく言えるな」
リッター「強い奴と戦えることは本望。よもや、お前の実力を見て俺はお前に勝ちたいとすら思っている」
魔剣士「なるほど、冒険者そのものだな」
リッター「俺はお前を認めている。認めざるを得ないからな!」
魔剣士「本当にやる気か」
リッター「抜いた剣、納めぬといったはずだ」
魔剣士「避けられないのか」
リッター「避けて何になる」
魔剣士「アンタ…」
魔剣士が何かを言いかけた時、勢いよく再び王室のドアが開く。
リッターはそれに素早く反応し、大剣を薙ぎ払うが、"ギィン!!"と音をたてて相手はそれを弾いた。
リヒト「ぐぅっ!!?」
相手はリヒトだったこともあり、何とか防御したがあまりの衝撃にその身体は壁へと叩きつけられた。
リッターはブレイダーの顔を見て声をかけるが、魔剣士たちの呼ぶ名前でそれを察する。
魔剣士「リヒト!」
白姫「リヒトさんっ!」
バンシィ「リヒトお兄ちゃん…!」
リッター「何…?」
不思議そうにブレイダーの名を違う名で呼び、心配している声色にリッターは「ほほう」笑った。
リッター「……ブレイダーが裏切ったか、それが本名なのか…?」
魔剣士「何っ!?」
リッター「隠さずとも分かる。リヒトという名、心配に近い声色、すぐに出たその行動からお前らの仲間になったことは分かる」
魔剣士「…ッ!」
さすが、旧時代を生きた冒険者で現役なだけはある。昨日の友は今日の敵であると、いつでも覚悟が出来ているらしく、混乱することなく理解をした。
リヒト「ぐっ…!ゲホゲホッ…!」
リッター「フハハッ、お前とも戦いたいと思っていた。俺と同等ではないが、剣技も十分に楽しめそうだからな!」
リヒト「リ、リッター…!油断しました……!」
リッター「……ハハハッ!!」
倒れるリヒトに対し、リッターは目の前に近づき手を伸ばす。
魔剣士は「やべぇ!」と援護しようとしたのだが、その手は殺意なく、ただ彼を起き上がらせるために差し出した手であった。
リヒト「え…?」
リッター「早く立て。準備なく戦っても面白くはないだろう!」
リヒト「あ、は…はぁ……」
攻撃する意志はないようで、リヒトも素直に従う。
実際にもただフォローされただけで、全くもって攻撃を仕掛ける様子はなかった。
魔剣士「お、お前…!」
リッター「さて、どちらから相手をするか。どちらでも良いぞ、もしくは二人同時でも、そこのお嬢ちゃんたちも全員でも……」
魔剣士「ちょっと待て…、お前、リッター!まさかとは思うが……」
リッター「何だ?」
この優しさやマナーすら重んじるような一連の行動から、魔剣士は「まさか」と言いつつ、そうなのではないかと確信をもって尋ねる。
魔剣士「お前、洗脳が解けてるんじゃ…ないのか……!」
リヒト「!」
白姫「!」
バンシィ「!」
リッター「……ほう!」
一同が驚く中、リッターは面白そうに返事をした。
魔剣士「いや、聞くまでもない。以前戦った時にあった殺意より、会場設営の時に感じた優しさのほうを強く感じる…。ブリレイの闇魔法、解けてるだろ…アンタ……!」
リッター「さぁてな、そうだとしても関係がないことだ」
魔剣士「ど、どうしてだ!アンタ、本当はこんなことするような人間じゃないだろう!?」
リッター「どうしてそう思う」
魔剣士「ブリレイの闇魔法は、洗脳をしても本質まで変えることはできねぇって知ってるからだ。それに、長い時間ブリレイから離れるとなると、必然的に幻惑は解除されるはずだ!」
リッター「ふむ、なるほど。それならば、そうなのかもしれんな」
魔剣士「だったら戦う理由は尚更に無い!」
恐らく、これは真実。
もしかすると、もしかするかもしれない。
リッター「つまり、何が言いたい?」
魔剣士「……頼む!本当にそうなら、アンタが仲間になってくれれば怖いモノはねぇ!!」
―――仲間に出来るのではないか、と。
リヒト「魔剣士さん…!」
バンシィ「お兄ちゃん、リッターを仲間にって……」
白姫「ほ、本当にそうなら……」
魔剣士「あぁ、絶対にこの戦いを終わらせることが出来る!リッター、頼む!!」
彼の本質は、戦いの他に優しさが眠っている。こればかりは、絶対であると確信し、魔剣士は平和のためにと懇願した。
リッター「やれ、困ったことだ」
魔剣士「頼むリッター!お前だって、世界戦争は望んじゃいないんだろう!」
リッター「……さぁてな?」
魔剣士「さぁてなって…」
リッター「ンまぁ、確かに言えば俺はブリレイの幻惑から解き放たれているんだが」
魔剣士「や、やっぱりか!?」
立ち上がり、鬼気迫る勢いでリッターへと詰め寄る。
リッター「しかし、俺はブリレイに従う。いや、決して戦争を楽しんでいるわけじゃあない」
魔剣士「だったらよ!」
リッター「だが、ブリレイに負けたのは事実。俺は俺のプライドで、負けたら服従をせねばならないということは絶対だ」
魔剣士「そんな古い考えを……」
リッター「俺は旧時代の人間だ。この話は、あの男もしていることだろう?」
魔剣士「……あ、頭が固すぎるだろう!」
リッター「いやいや、逆に考えれば単純なことだとは思わないか?」
魔剣士「何だって?」
突き刺していた大剣を軽々と片手で持ち上げ、魔剣士へと向ける。
リッター「今の俺は、王なき王城に従うばかりで、その玉座についているのは何故かお前だろう?」
魔剣士「そうだな」
リッター「その玉座を奪うというのなら、俺はお前に従う。だとすれば、その玉座に本来ついている王を守るのが俺の仕事であり、俺を納得させてからの話だ」
魔剣士「どのみち、戦う以外はないってことかよ……」
魔剣士は突き刺していた剣を抜き、同じようにリッターへと向ける。
お互いに交差させ、金属音がギン!ギン!と何回か鳴り響き、その剣先から互いに本気で殺し合うのだと分かる。
リヒト「バ、バンシィさん、白姫さん…こちらへ……!」
脇をそそくさと走り、リヒトは手を引いて部屋の隅に彼女たちを避難させる。
リヒトも念の為に剣を抜くが、邪魔をするなという魔剣士のオーラから援護に回ることなく白姫たちの守衛にだけ着いた。
バンシィ「リヒトお兄ちゃん、魔剣士お兄ちゃんは大丈夫だよね……」
白姫「リヒトさん、魔剣士は大丈夫ですよね!」
リヒト「……大丈夫ですよ、魔剣士さんなら…!それに、闇魔法は使えるように解除しておきましたから!」
リヒトは既に城門の呪文キーを改良し、魔法が発動できるよう解除していた。それを遠くで聞いていた魔剣士は、残念だなとリッターに向かって言う。
魔剣士「リッター、お前の負けは確定だ。陣が解除された以上、俺は自由に闇魔法を使えるようになっちまった」
リッター「ならば精神を砕くまで切り刻むだけだ。しかし残念なのは、お前があの地下室で見せたような派手な火炎魔法を使えぬことだな」
魔剣士「元々、今は攻撃的に闇魔法を使うつもりはない。純粋に剣技だけでお前と戦うつもりだった」
リッター「その意気は称賛するが、本気で来ないのなら俺は仲間になるつもりはない」
魔剣士「後悔すんぞ」
リッター「見せてみろ、お前の魔法化を」
魔剣士「……はァッ!!」
全身を紅蓮の炎が包み込み、身体は燃え上がる。常人なら燃えてしまうような熱風を前にしても、リッターは余裕の笑みを見せた。
リッター「それで抱き着いてみるか?俺は死なない、俺はお前に勝ちたいと決めた」
魔剣士「どこまでも冒険者な野郎だなテメェは……」
リッター「俺は勝つ。だが、お前が勝って認めさせてみろと思っている自分もいる」
魔剣士「戦う必要がないんじゃねえのか」
リッター「フハハッ!!お前とて、ここまで来て戦わないという選択肢を持ち合わせているのか?俺は戦いたいと心底思っているぞ」
魔剣士「ちっ…!奇遇だな、オイッ!!」
先に仕掛けたのは、魔剣士。交差していた剣を弾き飛ばし、懐へと入り込み、左手で火炎のアッパーを繰り出した。
リッター「甘いぞォ!!」
上体を逸らし、軽々とかわす。だが、魔剣士はそれを予測しており連撃として更に剣撃を股下へと繰り出した。
魔剣士「真っ二つに…してやるぜぇぇっ!」
リッター「それはどうかな!」
魔剣士「…うぉっ!?」
リッターは人差し指と中指に魔力を込め、剣撃を二本指で挟んで止めた。驚いているのもつかの間、大剣を握る腕が鞭のようにしなり超速で脳天へと振り下ろされる。
魔剣士「やっべ!!」
以前に受けた、十字撃クロイツシュナイデンを思い出し、身体を回転し軸をずらす。振り下ろされた大剣は大理石の床を破壊し、粉々になったいくつかの小石が部屋の隅にいた白姫たちを襲う。
リヒト「……させませんっ!!」
片腕を伸ばし、防御壁で全て弾き返すリヒト。彼女たちには怪我一つなく、魔剣士はそれを見て安心する。
魔剣士「……やるじゃねえか!」
リッター「今のは不可抗力だ。別に彼女たちを攻撃するつもりはなかったとだけ言っておこう」
魔剣士「そんなの分かってるから言わなくていい!!次、行くぞォ!!」
リッター「来いッ!!!」
再び交差し、力強く弾ける金属音、暴走する魔力の爆音、あまりの速さに遅れて聞こえる風切りの音。
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