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第九章【セントラル】
9-46 即位式
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―――30分後。
剣技同士の争いとしては、異例の長さだった。
たかがタイマンだけで、これほどの戦いが続くことを誰が予想しただろうか。
魔剣士「これでッ!!」
リッター「ぬぅッ!!」
しかし、熾烈で互いに譲らなかった戦いにもいよいよ終わりが見える。
リッター「ハッ、ハァッ…!ハァッ……!」
正直に言えば、魔剣士は幾度かリッターの傷を受け、それを考えれば敗北していたに等しい。だが、リッターはそれを卑怯とも呼ぶことなく、自らの怪我を押しても戦い続けた。
リッター「ぐぅっ!!」
やがて、以前受けていた火傷の傷口が開き、皮膚が裂けて血がにじむ。魔剣士の魔力と共鳴した傷は酷く燃えるように痛み、いよいよ膝をついた。
リッター「く、くぅあっ…!」
魔剣士「リッター、もう止めろ…。お前は俺に勝つことはできねぇんだ……」
リッター「ブ、ブリレイじゃあないが…本当に歳を恨むことがあるんだな…!俺が若ければ、このくらいは……!」
魔剣士「…」
リッター「斬っても傷すらつかない、奪われるのは俺の体力ばかり…!終わりがない戦いに、恐怖すら覚える……!」
魔剣士「お前の負けだ。リッター……」
リッター「はぁ、はぁ……!」
ついに大剣を手放す。膝をついて体勢を維持しているのがやっとのようで、もはや戦える状態ではない。
魔剣士「これは勝負だ。お前を従わせたい、仲間にしたいだけだ…悪く思うな……」
リッター「誰が…、思うものか……!」
魔剣士は右腕に力を振り絞り、背後へと回って後頭部を掴み、そのまま床へと顔面を叩きつけた。
速度のある状態で強く顔面を打ち付けられ、鼻血を吹き出し苦い顔をするが、魔剣士は容赦なくもう一撃を加えた。
リッター「ぐ…ふぁっ……!」
魔剣士「俺だってこんなことはしたくねぇよ…!もう、認めろ!」
リッター「まだ…、まだ…まだだ……!」
魔剣士「く、くそがぁぁっ!!」
もう一撃。これ以上戦えないリッターを苦しませないためにも、魔剣士は今まで以上に力を込めて頭部を地面へと打ちつけた。
それは勝負を決するには充分過ぎた攻撃で、リッターは白目を剥きながら一言発した。
「お前の勝ちだ……」と。
魔剣士「リッター……!」
勝負を終えたことを確認した白姫らは、魔剣士へと駆け寄る。
白姫「魔剣士!」
バンシィ「勝ったね、お兄ちゃん……!」
リヒト「さすがです魔剣士さん!」
魔剣士「…っ」
だが、勝利を収めたはずの魔剣士の顔はどこか曇っていた。
白姫「魔剣士…?」
魔剣士「ちっ、情けねぇ…。つか、そんな喜ぶことじゃねーよ……」
白姫「どうしたの…?」
魔剣士「我ながら暴力的だと思うぜ…。確かに戦いだったから仕方ないっつっても、ほぼ無抵抗の相手をあそこまで痛めつけるのは……」
もう戦うことが出来なかった相手を叩くのは、魔剣士の理に反する行為だった。あれではただの悪役と変わらないと、嘆いていたのだ。
白姫「魔剣士…、魔剣士は本当に優しいよね……」
後ろからそっと抱きしめ、震える魔剣士を包む。バンシィも負けじと、魔剣士を前から抱きしめる。
魔剣士「お、お前らな……」
すると、リヒトは抱きしめることこそしなかったが、魔剣士へと戦士として声をかけた。
リヒト「魔剣士さん、貴方の行動は決して悪いことではないと思います」
魔剣士「気休めはいらねぇ」
リヒト「そうじゃありません。もし魔剣士さんがリッターさんの立場なら、どうしましたか?」
魔剣士「ど、どうしましたかって……」
リヒト「あそこで攻撃を止められていたら、仲間になりましたか?」
魔剣士「い、いや……」
リヒト「そうですよね。中途半端にされることは、戦う者にとって何よりの屈辱ですから」
魔剣士「そ、そうか……」
その行動は正しかったとリヒトは言った。きっと、魔剣士があそこで攻撃を止めていれば、リッターという男は自ら首を刎ねることも辞さなかったかもしれない。
魔剣士「そうか、ありがとよ……」
リヒト「いえ。それより、リッターさんの傷は癒したほうがいいですよね」
魔剣士「頼めるか?」
リヒト「はい、勿論です。それでは……」
魔剣士「頼む」
リヒトは倒れるリッターに向かい、ヒーリングを唱えた。
白姫も慌ててリッターに駆け寄ると、同じようにヒーリングを唱え、彼の傷を癒したのだった。
………
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――10分後。
すっかり傷の癒えたリッターは、目を覚ます。ハっとした様子で周囲を確認すると、玉座に座る魔剣士を見つけ、参ったというように笑いつつその場に胡坐をかいて腰を下ろした。
リッター「ハッハッハッ、俺は負けたのか…!」
魔剣士「約束、守ってくれるんだろうな」
リッター「あぁ、清々しいほどの一撃を受けた。特に最後の一撃は効いたよ」
魔剣士「そうか…」
その言葉に、本当に魔剣士は救われる。
一方、リッターは悔しそうに、だが面白そうに相変わらずの大声で笑った。
リッター「フッ、ククッ…!そうか、俺は負けたのか……!」
彼は笑いながら、玉座の両隣にいる白姫、バンシィ、リヒトを見て「良い仲間だな」と呟く。
リッター「正直、お前が本気で一騎打ちをするとは思ってもいなかった。だが、そこにいる面子はお前がいくら攻撃を受けようとも動かず、何より信頼をしていることが伺えた」
魔剣士「自慢の仲間だ。俺は、本気でお前を仲間にしたいと思っていたからな」
リッター「やれやれ、ここまで敗北を喫しては従わないわけにはいかんだろう……」
魔剣士「良いんだな」
リッター「男に二言はない。今、お前を玉座にいる者として…俺の王として認める他はないだろう」
魔剣士「そ、そうか…!」
この瞬間、非常に心強い仲間を得た。
誰もが知るリッターという男を仲間に出来た今、兵士や騎士の一部も従うに違いない。
リッター「それにしても、お前はどうやって生きていた?陣に飲み込まれ、死んだものと聞いていたが……」
魔剣士「まぁ、ちょっと色々あって陣の世界から戻ってきてな。それも含めて、アンタに話をしたい」
リッター「ふむ」
魔剣士「だから、アンタも俺に教えてくれ。ブリレイはいつ戻るのか、これからの計画について、それと……」
リッター「それと?」
魔剣士「猛竜騎士が今、どうなっているのかを……!」
リッター「……分かった。俺が知っている限りの情報を、お前に教えよう」
魔剣士「恩に着る。じゃあまずは俺から、俺の全てを話す。全てを、包み隠さずに……」
……まず、魔剣士とリヒトは全てを話した。
陣の世界を経て、自分たちがどのようにしてきたのか、世界平和のためにどう立ち回って来たのかを。
ウィッチの感知能力が覚醒しつつあった魔剣士は、リッターが既に悪意なく味方になっていることを把握したうえでの行動であり、リッターも信頼されていると分かって真剣に話を聞いた。
リッター「何と、お前の中にエルフ族の心が…。それに闇魔法とはそういう……」
魔剣士「変に興味は持つなよ。良いモンじゃねーし、結局のところ陣が発動しようが死ねるもんじゃなかった。三段階目の発動をしたら、本当に人として戻れなく…なる……」
白姫「…っ」
白姫は苦い顔で、魔剣士を見つめる。そう、彼女だけは知っているから。魔剣士が得た強さの裏で悩み続けていることを。
リッター「闇魔法か…。神が望むのならば、俺は今後その力を得ることになるだろうが、そんなことは許さないだろう」
魔剣士「リッター…」
リッター「だが、羨むべき部分があるのは事実だ」
魔剣士「そうか…。だけど、結局のところ俺はアンタにゃ実力じゃ勝てなかった。普通の人間だったなら、俺はアンタに何度も殺されて……」
リッター「何?お前は普通の人だろう?」
魔剣士「へ?」
キョトン顔で、リッターは不思議そうに言った。
リッター「肉体が人を超越したとしても、お前は至って心は普通の人間だ。強さを求め、今の今まで生きてこられたのも、お前の実力。それを経て魔法化を手に入れたのだから、別段、俺から見ればただの人間…。強き人間とは変わらん」
魔剣士「ア、アンタ……!俺はバーサーカーだぞ!」
リッター「そんなことを言えば、俺は冒険者として周囲の人間は化け物と言った。お前から見たら、俺は化け物か?」
魔剣士「い、いや…!アンタは立派な人間だよ…。己のために精進してきて手に入れた力なんだから、それを化け物なんて……」
リッター「ハッハッハッ!!俺も…同じだ。お前を見たって、その気持ちをそのまま返そう」
魔剣士「ッ!!」
周りから見れば、どちらも"化け物"の会話だったのかもしれないが、魔剣士にとってリッターを人として好意を持つのには充分な一言だった。
魔剣士「リッター、アンタって本当に気持ちのいい男だよな」
リッター「なんだ男が好きなのか?」
魔剣士「そ、そうじゃねーよ!!」
リッター「ハッハッハッ!!冗談だ、お前の隣にいる二人の女性は、お前のコレなんだろう?」
クイッと小指を立たせ、嫌らしく口角をあげる。
魔剣士「そんなんじゃねーわ、バカ!!」
白姫「ふぇっ!」
バンシィ「えっ……」
慌てて否定すると、二人はシュンと落ち込み、魔剣士は「そ、それも違う!お前らのことは大好きでその!!」とまた慌てるが、どうにもこうにも回答に困る展開になるだろうと、話を無理やり流す。
魔剣士「そ、そんなことよりリッター!アンタの話を聞かせてくれ!」
リッター「んむ、そうだったな」
魔剣士「これからブリレイはどう動く?猛竜騎士のことは知っているのか!?」
リッター「……今は西方大地への戦いに動き、その猛竜騎士、ハイルと前線に出向いているはずだ」
魔剣士「やっぱりか!」
リッター「とはいえ、王城をいつまでも留守にしてはセントラルの維持に関わる。明確な日数は聞いていないが、数日後にハイルを統治者として一旦、こちら側へ戻ってくるというのは聞いている」
魔剣士「と、すると…それまでに王城を完全に奪取しておく必要があるということか……」
リッター「王城を奪うことは容易だ。現に、今の玉座についているのは……」
―――魔剣士である。
魔剣士「いや、しかしな……」
リッター「どうした?」
王城を陥落するということは、兵士全てを従わせるということ。果たして、リッターと自分だけの存在で兵士全てが着いてくるものだろうか。
魔剣士「それに、兵士の中には幻惑にかかってるやつもいる。セントラルの広大な土地の民たちを信じさせることだって……」
わずか数日の間に、ハイルやブリレイの支配から民たちを解放することは出来るのだろうか。
そもそも、セントラル王城を落とすということは、国を支配してこそ完成するのではないだろうか。
すると、リッターが首を傾げて言った。
リッター「……まぁ、油断だろうな」
魔剣士「油断?」
リッター「ブリレイは、あくまでも研究者としての知恵しかない。魔法化であるお前が、陣に消えたことで殺したと完全に思っていた」
魔剣士「ふむ…」
リッター「お前が10日もいなかったのは逆に幸いだった。南方戦争が始まっても現れず、白姫たちが囚われても動きをせず。お前が完全に死ぬと思うには充分すぎる時間だった」
魔剣士「それで…」
リッター「だから俺だけを王城に残した。まさかお前が生きているとは、ブレイダーまで裏切るとは思わんだろう」
魔剣士「まぁそうだろうが…、何が言いたいんだ…?」
リッター「数日もあれば充分過ぎる。いっそのこと、そこの姫様に"戴冠式"をやってみてはどうだ?」
魔剣士「……はい?」
白姫「た、戴冠式ですか!?」
戴冠式とは、以前に砂国でも行った"即位"である。
分かりやすくいえば、白姫を女王としてしまおうと言っているのだ。
リッター「聖職者がいなければ戴冠式とはならんが、即位式のあとに俺か何かが戴冠式をすれば充分だろう」
魔剣士「ち、ちょっと待て。白姫を女王にしてどうするんだよ!」
リッター「セントラルは元々、人権を失った者や最近の圧迫される暮らしに嫌気がさしている。勿論、騎士団の存在などもっての他だ」
魔剣士「あぁ、それは知ってるが」
リッター「お前はさっき、砂国と氷山帝国の君主と知り合いだと言っていたな?」
魔剣士「おう」
リッター「なら、国民を納得させるのには充分だ。ブリレイが西方大地からセントラルへの移動手段を考えても1週間以上はかかるはず、その間に即位をさせればいい」
魔剣士「何を言ってんだ?もっと詳しく説明を……」
その時、魔剣士の身体に光。内なる語りが、ウィッチの声が響いた。
ウィッチ(魔剣士、私を出せ。この者と話をしたい)
魔剣士(ウィッチ!目が覚めたのか?)
ウィッチ(あぁ。とはいえ、まだ意識が持たん。小さいままでいいから、早く出してくれるか)
魔剣士(分かった……)
目を閉じ、ウィッチのイメージを強くして具現化する。眩い輝きのあと、彼女は現れる。
リッター「うむ…!?」
白姫「あ、ウィッチさん!」
ウィッチ「よし……」
あまり回復していないのか、ややフラついて様子でダルそうにして口を開く。
ウィッチ「リッター、私はウィッチ。話は…、聞いているな」
リッター「内なるもう一人か…。やれ、本当に具現化できるとは…聞いていたが驚いたぞ……」
ウィッチ「雑談もしたいが、私には時間がない。簡単に話を進めさせてもらう……」
リッター「何だ?」
ウィッチ「正直、お主が仲間になるとは思わなかった。何よりも心強き味方、感謝する」
リッター「魔剣士に負けた以上、二言なく強さに惚れた迄」
ウィッチ「そうか…。では、お前の言ったさっきの話なのじゃが……」
即位式について、ウィッチは気になったらしい。
ウィッチ「西方大地とセントラルの往復、正確な時間はどのくらいか分かるか?」
リッター「出発が2日前、到着予定まであと1日ある。最短ルートでもあと4日後、しかし戦いも含めれば1週間は余裕があるはずだ」
ウィッチ「ならば、陣のゲートを使い魔剣士とリヒトを氷山帝国、砂国へ飛ばし即位を認めさせるサインをもらう。期日は本日より2日後まで、3日目には即位式を行おう」
リッター「成る程…、時間まできっかりと決めるか」
ウィッチ「確かに妙案ではあるが、計画性が低く、しっかり詰めるが良い……」
リッター「助言、感謝する」
ウィッチ「う、む……」
限界だったのか、ウィッチはガクリと膝を落とし、光に包まれる。
魔剣士「ウィッチ!」
白姫「ウィッチさん!」
ウィッチ「この男…、リッターは信用に…値する……。期日は2日後までに…、最低でも3日目に即位じゃが、早ければ…早い程良い……。国民を納得…させるには充分…で……」
ついに彼女は力尽き、光と共に魔剣士の身体へと消える。
話の途中ではあったものの、魔剣士はしっかりと彼女が言いたかったことを理解した。
白姫「魔剣士、本当に……」
魔剣士「大胆すぎる作戦だが、リッターやウィッチが言うなら間違いもないんだろう……」
白姫「私、女王になるの?王に、なるの……?」
魔剣士「覚悟はあるか。突然すぎる話だが、俺は出来る限りのことはする!」
白姫「ほ、本当に…でも…!わ、私……」
戸惑うのも無理はない。誰も考えなかった展開が、唐突に重なって起きているのだ。
当初こそ王城でブリレイを強襲する程度の予定だったというのに、どうして彼女が女王になる話になったのか。
白姫「いずれ…こうなったかもっては……分かってたけど……」
いずれは、いつかは来るのだと思っていた。
しかし、彼女が見据えていた未来は、戦いが終わり平和が訪れ、誰もが笑顔で祝福すべき世界だったはずなのに。
そして隣には、笑う魔剣士がずっと私を見てくれて――……。
白姫「…ッ!」
"ハッ"とする。白姫は、今。隣にいる魔剣士が、自分を"笑顔"で見てくれていることに気づいたのだ。
魔剣士「白姫……」
白姫「魔剣士……」
魔剣士「……お前なら出来るさ。辛い役目だったり、とんでもない話かもしんねーけど、きっと…!」
白姫「…ッ」
やっぱり、魔剣士が見てくれることはとても嬉しかった。
いつも傍で守り続けていてくれた彼に対して、その笑顔と言葉は何よりの力になった。
白姫「ま、魔剣士……」
魔剣士「あぁ…」
白姫「私、頑張る…。頑張るから……!」
魔剣士「……分かってる。俺もお前を支えるぜ」
彼女に片腕を回し、抱き寄せる。今回に限ってはバンシィは何も言わず、寧ろ、白姫が強くあろうとしたことを嬉しそうにも見ていた。
リッター「では、どうするか」
魔剣士「とにかく俺は氷山帝国と砂国へ行かねーと。しかしどうして、あいつらのサインが必要なんだ?」
リッター「氷山帝国、砂国、ともに大地を代表する位置づけの国家であり、その指導者が認めるサインがあれば国民は納得するだろう」
魔剣士「そ、そーいうことか」
リッター「しかも国民は今の方針に嫌気がさしている。嘘をつくことになるが、姫はハイルとブリレイの陰謀で国を追われて亡命していたことにするといい」
魔剣士「何!?」
リッター「ハイルの陰謀によって追われた姫と、その従者。世界を旅し、彼女が今こそ世界に立つ者として即位させれば…国民だけでなく兵士すらも納得するだろう」
魔剣士「で、出来るのかそんなことが……」
リッター「お前たちの話が本当ならば、氷山帝国と砂国にはそれだけの価値はある。ついでに言えば、エルフ族であるウィッチだったか…、彼女を具現化して即位式の時に挨拶もさせればエルフ族の同意も得たことになるだろう」
エルフ族はそもそも人間と敵対関係だったため、彼女の声があれば国民もより納得しやすくなる。また、その時点で西方、北方、東方大地の同意を得たことになり、白姫の地位は絶対なものとなる可能性が高い。
白姫「セージさんと、テイル…。私のことを認めてくれるかな……」
魔剣士「お前のことをよく知っている二人が、お前を認めないわけがねぇ。俺が認めているんだ、誰も認めないなんて言わねぇよ!!」
白姫「そ、そっか…!うん、魔剣士がそう言ってくれるなら……!」
リッター「ど、どんな理論だ…」
さすがのリッターも苦笑する。
しかし、これほどの強気な姿勢があれば大丈夫だろうとすぐに声を出して笑った。
リッター「ハッハッハッ!!まぁ大丈夫だろう、俺も出来る限りのことはしよう!!」
魔剣士「当たり前だ、お前のマスターは俺なんだろう?つか、俺一人でも全部やってたけどな!」
リヒト「僕も精いっぱい手伝います!ブリレイに泡を吹かせましょう!」
バンシィ「僕も、お姉ちゃんの手伝いをいっぱいするから……」
白姫「み、みんな……っ!」
思わず潤んだ白姫は、裾でゴシゴシと顔を拭く。
今はまだまだ現実感もないが、この面子なら誰にも負けないだろうと思えた。
魔剣士「ククク、すぐ泣きやがって!そんじゃ、これからすぐにでも行動をしたほうがいいよな?」
リッター「そのほうが良いだろう。ブレイダー…ではないか、リヒトも共に行動をしたほうが良さそうだがどうするんだ?」
リヒト「え、えっと!僕はどうしましょうか魔剣士さん!」
魔剣士「正直、このくらいの仕事は俺一人でできるからな…。1日も留守にする可能性が高ぇし、白姫たちの守りについていてくれるか?」
リヒト「はいっ!」
リッター「ふむ、そうか。それでは……」
リッターは立ち上がり、王室の扉へと向かう。
リッター「姫様と、えー…バンシィだったか、あとはブレイダー…じゃなくてリヒト。お前たちは王城で魔剣士の帰りをしばし待つと良い」
白姫「えっ、お城で過ごしていいんですか!?」
リッター「驚くことか。元々は姫様の家だったのだろう?」
白姫「そ、それはそうなんですけど……」
元は我が家とはいえ、長い家出に敵として決意した父である王が居城していた王城。
突拍子もない女王という話に加え、まさか自宅で再び夜を明かせる日が来ることにも、どうにも言い表せない気持ちになった。
リッター「……どうする?」
白姫「え、えっと……」
言葉に詰まる。
白姫「……私の部屋って、まだあるんでしょうか」
リッター「それは分からんな」
正直、見るのが怖い。
いくら敵視したとはいえ、父親である王が「部屋」を残していたのなら、私の帰りを心の内で待っていたということになる。
もしそれを見たら、気持ちが揺らいでしまうかもしれなくて。
魔剣士「……白姫、一緒に見に行くか?」
白姫「魔剣士…」
魔剣士「どうする」
白姫「……ううん。私ひとりで行く」
魔剣士「確か、お前の部屋はこの近く、廊下の曲がり角を行ってすぐだったな。敵がいないとは限らんし、曲がり角前までは付き合うぜ」
白姫「うん、ありがとう」
二人は、静かに王室から出て行った。
一方で残された三人の中で、最初に口を開いたのはやはりリッターであった。
リッター「しかしブレイ…リヒトよ。お前は心全てがリヒトそのものなのか?」
リヒト「はい。ブレイダーは陣の世界で完全に消滅したらしく……」
リッター「そうか…。バンシィはこれを受け入れたのか?」
バンシィ「受け入れる他はないから…。だけど、僕はブレお兄ちゃんを敵対したし、別に悲しいことはない……」
リッター「ハッハッハ、そうか。お前は強い子だな」
バンシィ「強い子…」
何気ないちょっとした会話だったが、リヒトは"兄"の名を出された時にバンシィを見て薄っすらと苦い表情を浮かべたが、誰にも気づかれることはなかった。
バンシィ「私は強くない…。本当に強いのは、魔剣士お兄ちゃんだよ……」
リッター「お前は本当に魔剣士が好きなんだな。以前、騎士団の選考会の時もベタベタとしていたのが印象的すぎた」
バンシィ「うん…、大好き……」
リッター「確かに強いが、そんな惹かれる部分があるのか?…いや、俺も男として惹かれる部分はあるが、お前は異性として見ているのだろう?」
バンシィ「えっと…、魔剣士お兄ちゃんは私の手を握ってくれたから…。全部知っても、私も守ってくれようとして、全部、全部が…好き……」
リッター「ふむ、それは深いな…。しかし気を付けたほうがいい」
バンシィ「何が…?」
リッター「いくら強くて優しくても、魔剣士はどうやらバカっぽいところがありそうでなー……」
"…ゴツンッ!!"
急に、リッターの後頭部に金属で殴られたような痛みが走った。
リッター「うぬっ!?」
魔剣士「……お前、俺のことバカっつっただろコラァ!」
バンシィ「あ、お兄ちゃん……」
いつの間にか、魔剣士は白姫を連れて王室に戻っていた。
リッター「早い帰りだな。で、どうだったんだ」
魔剣士「……あったよ。部屋はあった」
リッター「あったのか」
魔剣士「だけどな、まぁ…その、なんだ。ちょっと予想してた通りだったんだが……」
部屋は存在していた。
しかし、彼女の個室は"倉庫"としてぞんざいに扱われており、嫌らしくも埃にまみれたゴミのような物ばかりが積み上げられていた。
白姫「……あ、あはは。そんなことだろうとは思っていました…」
魔剣士「白姫…」
白姫「大丈夫だよ!分かっていたことだし、本当は私の部屋がなくなっちゃったのは寂しいところもあるけど、大丈夫!!」
魔剣士「……おう。そうだな、俺は何も言わないぜ」
白姫「うんっ。それで、リッターさん!」
ぴょん!と跳ねて、リッターの元へと近づく。
リッター「何だ?」
白姫「魔剣士がいない間、一晩だけかもしれないですけど私とバンシィ、リヒトさんと大部屋で泊まってもいいですか?」
リッター「大部屋だと?」
白姫「はい。やっぱりまだ戦いの状態ですし、固まっていたほうが安全だと思うんです」
リッター「……そうかもしれないな。部屋は分かるか?」
白姫「確か三階の東館側にあったはずです」
リッター「了解した。晩飯やらの準備は、俺が客が来たと行って準備させよう」
白姫「ありがとうございますっ!」
小さく頭を下げ、微笑んで見せる。屈託のない笑顔に、リッターも思わずニヤけてしまう。
リッター「ふむ、小さいのに可愛らしく、立派なことだ」
白姫「そ、そんなこと!私なんか全然です!」
リッター「小さい身体に強き心。旅を経て成長したのだと思うが、充分に人の上に立つ資格はある。もし足りないのなら、これからの成長と他の者にフォローをしてもらえば良い」
白姫「は、はいっ…!」
リッターの助言を受け、白姫はまた「有難うございます」とお礼を言った。魔剣士はそのやり取りが終えたのを確認すると、再び王室の出口へと向かう。
魔剣士「そんじゃ、俺はサっさと行ってくるわ。セージの陣は通じてるし、砂国の移動もそんな時間がかからんだろうし」
白姫「……待ってるから!」
魔剣士「おうよ、サクっといってくらぁ。リッター、バンシィ、リヒト…、留守の間は白姫のこと頼んだぜ」
親指を立て、グーの合図を出す。
すると、ノリのいい三人は魔剣士に向かって同じように「任せろ!」とポーズを取った。
魔剣士「んじゃ、行ってくるわ!」
元気に挨拶した魔剣士は、陣がある猛竜騎士の自宅へ向かうため、王室から出て行ったのだった。
………
…
―――30分後。
剣技同士の争いとしては、異例の長さだった。
たかがタイマンだけで、これほどの戦いが続くことを誰が予想しただろうか。
魔剣士「これでッ!!」
リッター「ぬぅッ!!」
しかし、熾烈で互いに譲らなかった戦いにもいよいよ終わりが見える。
リッター「ハッ、ハァッ…!ハァッ……!」
正直に言えば、魔剣士は幾度かリッターの傷を受け、それを考えれば敗北していたに等しい。だが、リッターはそれを卑怯とも呼ぶことなく、自らの怪我を押しても戦い続けた。
リッター「ぐぅっ!!」
やがて、以前受けていた火傷の傷口が開き、皮膚が裂けて血がにじむ。魔剣士の魔力と共鳴した傷は酷く燃えるように痛み、いよいよ膝をついた。
リッター「く、くぅあっ…!」
魔剣士「リッター、もう止めろ…。お前は俺に勝つことはできねぇんだ……」
リッター「ブ、ブリレイじゃあないが…本当に歳を恨むことがあるんだな…!俺が若ければ、このくらいは……!」
魔剣士「…」
リッター「斬っても傷すらつかない、奪われるのは俺の体力ばかり…!終わりがない戦いに、恐怖すら覚える……!」
魔剣士「お前の負けだ。リッター……」
リッター「はぁ、はぁ……!」
ついに大剣を手放す。膝をついて体勢を維持しているのがやっとのようで、もはや戦える状態ではない。
魔剣士「これは勝負だ。お前を従わせたい、仲間にしたいだけだ…悪く思うな……」
リッター「誰が…、思うものか……!」
魔剣士は右腕に力を振り絞り、背後へと回って後頭部を掴み、そのまま床へと顔面を叩きつけた。
速度のある状態で強く顔面を打ち付けられ、鼻血を吹き出し苦い顔をするが、魔剣士は容赦なくもう一撃を加えた。
リッター「ぐ…ふぁっ……!」
魔剣士「俺だってこんなことはしたくねぇよ…!もう、認めろ!」
リッター「まだ…、まだ…まだだ……!」
魔剣士「く、くそがぁぁっ!!」
もう一撃。これ以上戦えないリッターを苦しませないためにも、魔剣士は今まで以上に力を込めて頭部を地面へと打ちつけた。
それは勝負を決するには充分過ぎた攻撃で、リッターは白目を剥きながら一言発した。
「お前の勝ちだ……」と。
魔剣士「リッター……!」
勝負を終えたことを確認した白姫らは、魔剣士へと駆け寄る。
白姫「魔剣士!」
バンシィ「勝ったね、お兄ちゃん……!」
リヒト「さすがです魔剣士さん!」
魔剣士「…っ」
だが、勝利を収めたはずの魔剣士の顔はどこか曇っていた。
白姫「魔剣士…?」
魔剣士「ちっ、情けねぇ…。つか、そんな喜ぶことじゃねーよ……」
白姫「どうしたの…?」
魔剣士「我ながら暴力的だと思うぜ…。確かに戦いだったから仕方ないっつっても、ほぼ無抵抗の相手をあそこまで痛めつけるのは……」
もう戦うことが出来なかった相手を叩くのは、魔剣士の理に反する行為だった。あれではただの悪役と変わらないと、嘆いていたのだ。
白姫「魔剣士…、魔剣士は本当に優しいよね……」
後ろからそっと抱きしめ、震える魔剣士を包む。バンシィも負けじと、魔剣士を前から抱きしめる。
魔剣士「お、お前らな……」
すると、リヒトは抱きしめることこそしなかったが、魔剣士へと戦士として声をかけた。
リヒト「魔剣士さん、貴方の行動は決して悪いことではないと思います」
魔剣士「気休めはいらねぇ」
リヒト「そうじゃありません。もし魔剣士さんがリッターさんの立場なら、どうしましたか?」
魔剣士「ど、どうしましたかって……」
リヒト「あそこで攻撃を止められていたら、仲間になりましたか?」
魔剣士「い、いや……」
リヒト「そうですよね。中途半端にされることは、戦う者にとって何よりの屈辱ですから」
魔剣士「そ、そうか……」
その行動は正しかったとリヒトは言った。きっと、魔剣士があそこで攻撃を止めていれば、リッターという男は自ら首を刎ねることも辞さなかったかもしれない。
魔剣士「そうか、ありがとよ……」
リヒト「いえ。それより、リッターさんの傷は癒したほうがいいですよね」
魔剣士「頼めるか?」
リヒト「はい、勿論です。それでは……」
魔剣士「頼む」
リヒトは倒れるリッターに向かい、ヒーリングを唱えた。
白姫も慌ててリッターに駆け寄ると、同じようにヒーリングを唱え、彼の傷を癒したのだった。
………
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―――10分後。
すっかり傷の癒えたリッターは、目を覚ます。ハっとした様子で周囲を確認すると、玉座に座る魔剣士を見つけ、参ったというように笑いつつその場に胡坐をかいて腰を下ろした。
リッター「ハッハッハッ、俺は負けたのか…!」
魔剣士「約束、守ってくれるんだろうな」
リッター「あぁ、清々しいほどの一撃を受けた。特に最後の一撃は効いたよ」
魔剣士「そうか…」
その言葉に、本当に魔剣士は救われる。
一方、リッターは悔しそうに、だが面白そうに相変わらずの大声で笑った。
リッター「フッ、ククッ…!そうか、俺は負けたのか……!」
彼は笑いながら、玉座の両隣にいる白姫、バンシィ、リヒトを見て「良い仲間だな」と呟く。
リッター「正直、お前が本気で一騎打ちをするとは思ってもいなかった。だが、そこにいる面子はお前がいくら攻撃を受けようとも動かず、何より信頼をしていることが伺えた」
魔剣士「自慢の仲間だ。俺は、本気でお前を仲間にしたいと思っていたからな」
リッター「やれやれ、ここまで敗北を喫しては従わないわけにはいかんだろう……」
魔剣士「良いんだな」
リッター「男に二言はない。今、お前を玉座にいる者として…俺の王として認める他はないだろう」
魔剣士「そ、そうか…!」
この瞬間、非常に心強い仲間を得た。
誰もが知るリッターという男を仲間に出来た今、兵士や騎士の一部も従うに違いない。
リッター「それにしても、お前はどうやって生きていた?陣に飲み込まれ、死んだものと聞いていたが……」
魔剣士「まぁ、ちょっと色々あって陣の世界から戻ってきてな。それも含めて、アンタに話をしたい」
リッター「ふむ」
魔剣士「だから、アンタも俺に教えてくれ。ブリレイはいつ戻るのか、これからの計画について、それと……」
リッター「それと?」
魔剣士「猛竜騎士が今、どうなっているのかを……!」
リッター「……分かった。俺が知っている限りの情報を、お前に教えよう」
魔剣士「恩に着る。じゃあまずは俺から、俺の全てを話す。全てを、包み隠さずに……」
……まず、魔剣士とリヒトは全てを話した。
陣の世界を経て、自分たちがどのようにしてきたのか、世界平和のためにどう立ち回って来たのかを。
ウィッチの感知能力が覚醒しつつあった魔剣士は、リッターが既に悪意なく味方になっていることを把握したうえでの行動であり、リッターも信頼されていると分かって真剣に話を聞いた。
リッター「何と、お前の中にエルフ族の心が…。それに闇魔法とはそういう……」
魔剣士「変に興味は持つなよ。良いモンじゃねーし、結局のところ陣が発動しようが死ねるもんじゃなかった。三段階目の発動をしたら、本当に人として戻れなく…なる……」
白姫「…っ」
白姫は苦い顔で、魔剣士を見つめる。そう、彼女だけは知っているから。魔剣士が得た強さの裏で悩み続けていることを。
リッター「闇魔法か…。神が望むのならば、俺は今後その力を得ることになるだろうが、そんなことは許さないだろう」
魔剣士「リッター…」
リッター「だが、羨むべき部分があるのは事実だ」
魔剣士「そうか…。だけど、結局のところ俺はアンタにゃ実力じゃ勝てなかった。普通の人間だったなら、俺はアンタに何度も殺されて……」
リッター「何?お前は普通の人だろう?」
魔剣士「へ?」
キョトン顔で、リッターは不思議そうに言った。
リッター「肉体が人を超越したとしても、お前は至って心は普通の人間だ。強さを求め、今の今まで生きてこられたのも、お前の実力。それを経て魔法化を手に入れたのだから、別段、俺から見ればただの人間…。強き人間とは変わらん」
魔剣士「ア、アンタ……!俺はバーサーカーだぞ!」
リッター「そんなことを言えば、俺は冒険者として周囲の人間は化け物と言った。お前から見たら、俺は化け物か?」
魔剣士「い、いや…!アンタは立派な人間だよ…。己のために精進してきて手に入れた力なんだから、それを化け物なんて……」
リッター「ハッハッハッ!!俺も…同じだ。お前を見たって、その気持ちをそのまま返そう」
魔剣士「ッ!!」
周りから見れば、どちらも"化け物"の会話だったのかもしれないが、魔剣士にとってリッターを人として好意を持つのには充分な一言だった。
魔剣士「リッター、アンタって本当に気持ちのいい男だよな」
リッター「なんだ男が好きなのか?」
魔剣士「そ、そうじゃねーよ!!」
リッター「ハッハッハッ!!冗談だ、お前の隣にいる二人の女性は、お前のコレなんだろう?」
クイッと小指を立たせ、嫌らしく口角をあげる。
魔剣士「そんなんじゃねーわ、バカ!!」
白姫「ふぇっ!」
バンシィ「えっ……」
慌てて否定すると、二人はシュンと落ち込み、魔剣士は「そ、それも違う!お前らのことは大好きでその!!」とまた慌てるが、どうにもこうにも回答に困る展開になるだろうと、話を無理やり流す。
魔剣士「そ、そんなことよりリッター!アンタの話を聞かせてくれ!」
リッター「んむ、そうだったな」
魔剣士「これからブリレイはどう動く?猛竜騎士のことは知っているのか!?」
リッター「……今は西方大地への戦いに動き、その猛竜騎士、ハイルと前線に出向いているはずだ」
魔剣士「やっぱりか!」
リッター「とはいえ、王城をいつまでも留守にしてはセントラルの維持に関わる。明確な日数は聞いていないが、数日後にハイルを統治者として一旦、こちら側へ戻ってくるというのは聞いている」
魔剣士「と、すると…それまでに王城を完全に奪取しておく必要があるということか……」
リッター「王城を奪うことは容易だ。現に、今の玉座についているのは……」
―――魔剣士である。
魔剣士「いや、しかしな……」
リッター「どうした?」
王城を陥落するということは、兵士全てを従わせるということ。果たして、リッターと自分だけの存在で兵士全てが着いてくるものだろうか。
魔剣士「それに、兵士の中には幻惑にかかってるやつもいる。セントラルの広大な土地の民たちを信じさせることだって……」
わずか数日の間に、ハイルやブリレイの支配から民たちを解放することは出来るのだろうか。
そもそも、セントラル王城を落とすということは、国を支配してこそ完成するのではないだろうか。
すると、リッターが首を傾げて言った。
リッター「……まぁ、油断だろうな」
魔剣士「油断?」
リッター「ブリレイは、あくまでも研究者としての知恵しかない。魔法化であるお前が、陣に消えたことで殺したと完全に思っていた」
魔剣士「ふむ…」
リッター「お前が10日もいなかったのは逆に幸いだった。南方戦争が始まっても現れず、白姫たちが囚われても動きをせず。お前が完全に死ぬと思うには充分すぎる時間だった」
魔剣士「それで…」
リッター「だから俺だけを王城に残した。まさかお前が生きているとは、ブレイダーまで裏切るとは思わんだろう」
魔剣士「まぁそうだろうが…、何が言いたいんだ…?」
リッター「数日もあれば充分過ぎる。いっそのこと、そこの姫様に"戴冠式"をやってみてはどうだ?」
魔剣士「……はい?」
白姫「た、戴冠式ですか!?」
戴冠式とは、以前に砂国でも行った"即位"である。
分かりやすくいえば、白姫を女王としてしまおうと言っているのだ。
リッター「聖職者がいなければ戴冠式とはならんが、即位式のあとに俺か何かが戴冠式をすれば充分だろう」
魔剣士「ち、ちょっと待て。白姫を女王にしてどうするんだよ!」
リッター「セントラルは元々、人権を失った者や最近の圧迫される暮らしに嫌気がさしている。勿論、騎士団の存在などもっての他だ」
魔剣士「あぁ、それは知ってるが」
リッター「お前はさっき、砂国と氷山帝国の君主と知り合いだと言っていたな?」
魔剣士「おう」
リッター「なら、国民を納得させるのには充分だ。ブリレイが西方大地からセントラルへの移動手段を考えても1週間以上はかかるはず、その間に即位をさせればいい」
魔剣士「何を言ってんだ?もっと詳しく説明を……」
その時、魔剣士の身体に光。内なる語りが、ウィッチの声が響いた。
ウィッチ(魔剣士、私を出せ。この者と話をしたい)
魔剣士(ウィッチ!目が覚めたのか?)
ウィッチ(あぁ。とはいえ、まだ意識が持たん。小さいままでいいから、早く出してくれるか)
魔剣士(分かった……)
目を閉じ、ウィッチのイメージを強くして具現化する。眩い輝きのあと、彼女は現れる。
リッター「うむ…!?」
白姫「あ、ウィッチさん!」
ウィッチ「よし……」
あまり回復していないのか、ややフラついて様子でダルそうにして口を開く。
ウィッチ「リッター、私はウィッチ。話は…、聞いているな」
リッター「内なるもう一人か…。やれ、本当に具現化できるとは…聞いていたが驚いたぞ……」
ウィッチ「雑談もしたいが、私には時間がない。簡単に話を進めさせてもらう……」
リッター「何だ?」
ウィッチ「正直、お主が仲間になるとは思わなかった。何よりも心強き味方、感謝する」
リッター「魔剣士に負けた以上、二言なく強さに惚れた迄」
ウィッチ「そうか…。では、お前の言ったさっきの話なのじゃが……」
即位式について、ウィッチは気になったらしい。
ウィッチ「西方大地とセントラルの往復、正確な時間はどのくらいか分かるか?」
リッター「出発が2日前、到着予定まであと1日ある。最短ルートでもあと4日後、しかし戦いも含めれば1週間は余裕があるはずだ」
ウィッチ「ならば、陣のゲートを使い魔剣士とリヒトを氷山帝国、砂国へ飛ばし即位を認めさせるサインをもらう。期日は本日より2日後まで、3日目には即位式を行おう」
リッター「成る程…、時間まできっかりと決めるか」
ウィッチ「確かに妙案ではあるが、計画性が低く、しっかり詰めるが良い……」
リッター「助言、感謝する」
ウィッチ「う、む……」
限界だったのか、ウィッチはガクリと膝を落とし、光に包まれる。
魔剣士「ウィッチ!」
白姫「ウィッチさん!」
ウィッチ「この男…、リッターは信用に…値する……。期日は2日後までに…、最低でも3日目に即位じゃが、早ければ…早い程良い……。国民を納得…させるには充分…で……」
ついに彼女は力尽き、光と共に魔剣士の身体へと消える。
話の途中ではあったものの、魔剣士はしっかりと彼女が言いたかったことを理解した。
白姫「魔剣士、本当に……」
魔剣士「大胆すぎる作戦だが、リッターやウィッチが言うなら間違いもないんだろう……」
白姫「私、女王になるの?王に、なるの……?」
魔剣士「覚悟はあるか。突然すぎる話だが、俺は出来る限りのことはする!」
白姫「ほ、本当に…でも…!わ、私……」
戸惑うのも無理はない。誰も考えなかった展開が、唐突に重なって起きているのだ。
当初こそ王城でブリレイを強襲する程度の予定だったというのに、どうして彼女が女王になる話になったのか。
白姫「いずれ…こうなったかもっては……分かってたけど……」
いずれは、いつかは来るのだと思っていた。
しかし、彼女が見据えていた未来は、戦いが終わり平和が訪れ、誰もが笑顔で祝福すべき世界だったはずなのに。
そして隣には、笑う魔剣士がずっと私を見てくれて――……。
白姫「…ッ!」
"ハッ"とする。白姫は、今。隣にいる魔剣士が、自分を"笑顔"で見てくれていることに気づいたのだ。
魔剣士「白姫……」
白姫「魔剣士……」
魔剣士「……お前なら出来るさ。辛い役目だったり、とんでもない話かもしんねーけど、きっと…!」
白姫「…ッ」
やっぱり、魔剣士が見てくれることはとても嬉しかった。
いつも傍で守り続けていてくれた彼に対して、その笑顔と言葉は何よりの力になった。
白姫「ま、魔剣士……」
魔剣士「あぁ…」
白姫「私、頑張る…。頑張るから……!」
魔剣士「……分かってる。俺もお前を支えるぜ」
彼女に片腕を回し、抱き寄せる。今回に限ってはバンシィは何も言わず、寧ろ、白姫が強くあろうとしたことを嬉しそうにも見ていた。
リッター「では、どうするか」
魔剣士「とにかく俺は氷山帝国と砂国へ行かねーと。しかしどうして、あいつらのサインが必要なんだ?」
リッター「氷山帝国、砂国、ともに大地を代表する位置づけの国家であり、その指導者が認めるサインがあれば国民は納得するだろう」
魔剣士「そ、そーいうことか」
リッター「しかも国民は今の方針に嫌気がさしている。嘘をつくことになるが、姫はハイルとブリレイの陰謀で国を追われて亡命していたことにするといい」
魔剣士「何!?」
リッター「ハイルの陰謀によって追われた姫と、その従者。世界を旅し、彼女が今こそ世界に立つ者として即位させれば…国民だけでなく兵士すらも納得するだろう」
魔剣士「で、出来るのかそんなことが……」
リッター「お前たちの話が本当ならば、氷山帝国と砂国にはそれだけの価値はある。ついでに言えば、エルフ族であるウィッチだったか…、彼女を具現化して即位式の時に挨拶もさせればエルフ族の同意も得たことになるだろう」
エルフ族はそもそも人間と敵対関係だったため、彼女の声があれば国民もより納得しやすくなる。また、その時点で西方、北方、東方大地の同意を得たことになり、白姫の地位は絶対なものとなる可能性が高い。
白姫「セージさんと、テイル…。私のことを認めてくれるかな……」
魔剣士「お前のことをよく知っている二人が、お前を認めないわけがねぇ。俺が認めているんだ、誰も認めないなんて言わねぇよ!!」
白姫「そ、そっか…!うん、魔剣士がそう言ってくれるなら……!」
リッター「ど、どんな理論だ…」
さすがのリッターも苦笑する。
しかし、これほどの強気な姿勢があれば大丈夫だろうとすぐに声を出して笑った。
リッター「ハッハッハッ!!まぁ大丈夫だろう、俺も出来る限りのことはしよう!!」
魔剣士「当たり前だ、お前のマスターは俺なんだろう?つか、俺一人でも全部やってたけどな!」
リヒト「僕も精いっぱい手伝います!ブリレイに泡を吹かせましょう!」
バンシィ「僕も、お姉ちゃんの手伝いをいっぱいするから……」
白姫「み、みんな……っ!」
思わず潤んだ白姫は、裾でゴシゴシと顔を拭く。
今はまだまだ現実感もないが、この面子なら誰にも負けないだろうと思えた。
魔剣士「ククク、すぐ泣きやがって!そんじゃ、これからすぐにでも行動をしたほうがいいよな?」
リッター「そのほうが良いだろう。ブレイダー…ではないか、リヒトも共に行動をしたほうが良さそうだがどうするんだ?」
リヒト「え、えっと!僕はどうしましょうか魔剣士さん!」
魔剣士「正直、このくらいの仕事は俺一人でできるからな…。1日も留守にする可能性が高ぇし、白姫たちの守りについていてくれるか?」
リヒト「はいっ!」
リッター「ふむ、そうか。それでは……」
リッターは立ち上がり、王室の扉へと向かう。
リッター「姫様と、えー…バンシィだったか、あとはブレイダー…じゃなくてリヒト。お前たちは王城で魔剣士の帰りをしばし待つと良い」
白姫「えっ、お城で過ごしていいんですか!?」
リッター「驚くことか。元々は姫様の家だったのだろう?」
白姫「そ、それはそうなんですけど……」
元は我が家とはいえ、長い家出に敵として決意した父である王が居城していた王城。
突拍子もない女王という話に加え、まさか自宅で再び夜を明かせる日が来ることにも、どうにも言い表せない気持ちになった。
リッター「……どうする?」
白姫「え、えっと……」
言葉に詰まる。
白姫「……私の部屋って、まだあるんでしょうか」
リッター「それは分からんな」
正直、見るのが怖い。
いくら敵視したとはいえ、父親である王が「部屋」を残していたのなら、私の帰りを心の内で待っていたということになる。
もしそれを見たら、気持ちが揺らいでしまうかもしれなくて。
魔剣士「……白姫、一緒に見に行くか?」
白姫「魔剣士…」
魔剣士「どうする」
白姫「……ううん。私ひとりで行く」
魔剣士「確か、お前の部屋はこの近く、廊下の曲がり角を行ってすぐだったな。敵がいないとは限らんし、曲がり角前までは付き合うぜ」
白姫「うん、ありがとう」
二人は、静かに王室から出て行った。
一方で残された三人の中で、最初に口を開いたのはやはりリッターであった。
リッター「しかしブレイ…リヒトよ。お前は心全てがリヒトそのものなのか?」
リヒト「はい。ブレイダーは陣の世界で完全に消滅したらしく……」
リッター「そうか…。バンシィはこれを受け入れたのか?」
バンシィ「受け入れる他はないから…。だけど、僕はブレお兄ちゃんを敵対したし、別に悲しいことはない……」
リッター「ハッハッハ、そうか。お前は強い子だな」
バンシィ「強い子…」
何気ないちょっとした会話だったが、リヒトは"兄"の名を出された時にバンシィを見て薄っすらと苦い表情を浮かべたが、誰にも気づかれることはなかった。
バンシィ「私は強くない…。本当に強いのは、魔剣士お兄ちゃんだよ……」
リッター「お前は本当に魔剣士が好きなんだな。以前、騎士団の選考会の時もベタベタとしていたのが印象的すぎた」
バンシィ「うん…、大好き……」
リッター「確かに強いが、そんな惹かれる部分があるのか?…いや、俺も男として惹かれる部分はあるが、お前は異性として見ているのだろう?」
バンシィ「えっと…、魔剣士お兄ちゃんは私の手を握ってくれたから…。全部知っても、私も守ってくれようとして、全部、全部が…好き……」
リッター「ふむ、それは深いな…。しかし気を付けたほうがいい」
バンシィ「何が…?」
リッター「いくら強くて優しくても、魔剣士はどうやらバカっぽいところがありそうでなー……」
"…ゴツンッ!!"
急に、リッターの後頭部に金属で殴られたような痛みが走った。
リッター「うぬっ!?」
魔剣士「……お前、俺のことバカっつっただろコラァ!」
バンシィ「あ、お兄ちゃん……」
いつの間にか、魔剣士は白姫を連れて王室に戻っていた。
リッター「早い帰りだな。で、どうだったんだ」
魔剣士「……あったよ。部屋はあった」
リッター「あったのか」
魔剣士「だけどな、まぁ…その、なんだ。ちょっと予想してた通りだったんだが……」
部屋は存在していた。
しかし、彼女の個室は"倉庫"としてぞんざいに扱われており、嫌らしくも埃にまみれたゴミのような物ばかりが積み上げられていた。
白姫「……あ、あはは。そんなことだろうとは思っていました…」
魔剣士「白姫…」
白姫「大丈夫だよ!分かっていたことだし、本当は私の部屋がなくなっちゃったのは寂しいところもあるけど、大丈夫!!」
魔剣士「……おう。そうだな、俺は何も言わないぜ」
白姫「うんっ。それで、リッターさん!」
ぴょん!と跳ねて、リッターの元へと近づく。
リッター「何だ?」
白姫「魔剣士がいない間、一晩だけかもしれないですけど私とバンシィ、リヒトさんと大部屋で泊まってもいいですか?」
リッター「大部屋だと?」
白姫「はい。やっぱりまだ戦いの状態ですし、固まっていたほうが安全だと思うんです」
リッター「……そうかもしれないな。部屋は分かるか?」
白姫「確か三階の東館側にあったはずです」
リッター「了解した。晩飯やらの準備は、俺が客が来たと行って準備させよう」
白姫「ありがとうございますっ!」
小さく頭を下げ、微笑んで見せる。屈託のない笑顔に、リッターも思わずニヤけてしまう。
リッター「ふむ、小さいのに可愛らしく、立派なことだ」
白姫「そ、そんなこと!私なんか全然です!」
リッター「小さい身体に強き心。旅を経て成長したのだと思うが、充分に人の上に立つ資格はある。もし足りないのなら、これからの成長と他の者にフォローをしてもらえば良い」
白姫「は、はいっ…!」
リッターの助言を受け、白姫はまた「有難うございます」とお礼を言った。魔剣士はそのやり取りが終えたのを確認すると、再び王室の出口へと向かう。
魔剣士「そんじゃ、俺はサっさと行ってくるわ。セージの陣は通じてるし、砂国の移動もそんな時間がかからんだろうし」
白姫「……待ってるから!」
魔剣士「おうよ、サクっといってくらぁ。リッター、バンシィ、リヒト…、留守の間は白姫のこと頼んだぜ」
親指を立て、グーの合図を出す。
すると、ノリのいい三人は魔剣士に向かって同じように「任せろ!」とポーズを取った。
魔剣士「んじゃ、行ってくるわ!」
元気に挨拶した魔剣士は、陣がある猛竜騎士の自宅へ向かうため、王室から出て行ったのだった。
………
…
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