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第九章【セントラル】
9-55 命の幻惑
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―――セントラル広場。
広場上空に到達していた魔剣士とブリレイは、魔法による戦いを繰り広げていた。
地上では多くの国民たちがそれを見上げ、指を差し、華麗なる魔法の技術に圧巻の声をあげていた。
「見ろ、何だあれは!」
「さっきの即位式で見たぞ!片方は確か、白姫様の従者だったはずだ」
「相手は…誰だ?王の新しい側近で噂だが、名前が分からんな」
「騎士団を率いていたのを見たぞ。名前は確か…ブリレイだ!」
ハイル王側のブリレイと、新王政の魔剣士。
その応援の声は、即位式に出た人間から伝わり始め、やがて巨大な声となる。
「魔剣士、頑張れェ!!よく分からんが、騎士団を潰そうとしているんだろ!?」
「そうだ!白姫様のために戦ってるなら頑張ってくれ!!」
国民たちの声は、上空で戦う魔剣士たちに届く。
戦いのさ中、魔剣士は笑いながら言う。
魔剣士「おいブリレイ!国民たちはお前の退場を願っているぞ!」
ブリレイ「……愚民だ。俺が光になるための導となれる喜びも分からんのだ」
魔剣士「お前が英雄になれることはない!お前の喜びのために、白姫が望む平和な未来を潰させはしない!!」
片腕を伸ばし、火炎を飛ばす。ブリレイは瞳で防御壁を展開し、爆発を防ぐが、それでも熱風は傷ついたブリレイにとって痛手となる。
ブリレイ「ぐっ…!」
魔剣士「もう諦めろ!」
ブリレイ「諦める…ものか……!」
魔剣士「どうしてだ!何そこまで、お前を……」
ブリレイ「あと一歩。あと少しなんだ…。お前はどこまで邪魔をする…!お前がいなければ、全ては上手く行っていたはずなのに…!」
瞳に込めた魔力で、風の刃を作り出して射出する。魔剣士は瞬時に魔法化してそれを受け切り、ブリレイの背後に移動した。
ブリレイ「ッ!」
魔剣士「……お前が世界を掌握することはねぇんだよ!」
ブリレイ「いいや、俺が決めることだ!」
魔剣士「い、いい加減に……!」
背後を取った魔剣士は、脚の付け根に"風と炎"の二属性を展開して噴射させた。その場でグルリと回転し、それはブリレイも想定外の速度を作り出した。
魔剣士「いい加減にしろォッ!!!」
空中での大回転から繰り出された蹴りは、ブリレイの背中に直撃し地面へとぶっ飛ばした。
かなりの高度から落下し、抵抗もままならず、激痛に意識は保てても、地面に着地する受け身まで身体が動かない。
ブリレイ(不味い…ッ!!)
ブリレイの落下地点は、広場の壇上だった。"ドゴォンッ!!"と爆音が響く。たまたま壇上には人が上っていることはなく、椅子に腰かけていた人が風圧で吹き飛ばされたが、大事には至らなかった。
魔剣士「やったか…!?」
空中から見下ろした壇上には、血を吐いてうな垂れる姿のブリレイがあった。魔剣士は「よし!」と言いながら、自分も壇上へと降りる。
魔剣士「ブリレイ、てめぇの負けだ。今度こそ諦めろ」
ブリレイ「ぐ…!ぐっ……、ぐぅっ…!」
魔剣士とは違い、彼の肉体は人間そのもの。冒険者として培った強靭な肉体は即死を抑えたが、それでも彼は痛みと血反吐をまき散らし、悔しそうに魔剣士を見上げた。周囲を魔剣士の名を呼ぶ民たちが囲むが、二人の世界に他の声は入らない。
ブリレイ「お、俺は……!魔剣士…!俺を…見下ろすなぁ……!!」
魔剣士「もうお前の時代じゃない。潔く諦めろ。この時代に生きようとしたアサシンも、結局は運命に逆らえなかった」
ブリレイ「お前が…英雄になるというのか……!」
魔剣士「誰が興味があるか。俺は、俺が幸せならそれでいい」
ブリレイ「お前の…幸せとは……!」
魔剣士「俺の幸せ?俺の幸せは……」
ふと、王城から聞きなれた声で魔剣士を誰かが呼んだ。
白姫「魔剣士ーっ!!!」
リヒト「魔剣士さん!」
バンシィ「お兄ちゃん…、勝ったんだ…!」
三人がこちらに手を振っていた。そして、その奥からは肩を組んだ彼らも。
リッター「ゲホッ…、ゴホッ……!ま…、魔剣士……」
猛竜騎士「すまなかった…。お前の一撃が目を覚まさせてくれたんだ。魔剣士、本当にすまないことをした……」
世界の未来を望む全ての戦士が、今揃った。
魔剣士「……俺の幸せは、白姫が笑顔の世界だ。みんなが幸せな世界だ」
ブリレイ「ざ、戯言を…!!」
魔剣士「戯言じゃない。本心からそう思っている」
ブリレイ「……ッ!」
民たちは、魔剣士を呼ぶ戦士たちのために壇上への道を開いた。
既に魔剣士が悪を倒したというのは明白で、多くの民たちは魔剣士と白姫、その戦士たちを祝福する。
「な、なんか分からないがやったんだよな!?」
「すげぇぞ、これで白姫様が女王になるのか!?」
「取り敢えずスゲェ場面に立ち会ってるってのは分かるぜ……」
歓喜の声に包まれる広場。
そして、壇上でブリレイを抑える魔剣士に、猛竜騎士はリッターと共に支え合い、よろめきながら近づいた。
猛竜騎士「ま、魔剣士……」
魔剣士「よーオッサン。酒の酔いは醒めたか?」
猛竜騎士「悪酔いだ。お前たちには迷惑をかけた。これ以上のない…最低な酔いだった。本当にすまない……」
魔剣士「いいよいいよ。白姫を想ってくれて堕ちちまったんだし、文句は言わねー」
猛竜騎士「そうか…。それじゃ、あとはお前の役目だ……」
猛竜騎士は背中に隠し持っていた"軽剣"を、魔剣士に投げた。
魔剣士「お…、こ、これは!?」
それは魔剣士がいつか、陣に吸い込まれた時に落とした、ずっと傍にあった剣であった。
猛竜騎士「地下室で…拾ったんだ…。魔剣士、あとは…お前の仕事だ……。出来るか……?」
抑えられたブリレイは、目を血走らせる。
魔剣士「……やるしかないんだろう?」
剣を、抑えたブリレイに突きつけた。それに白姫、リヒト、バンシィ、猛竜騎士、リッターと、国民たち全員の注目が集まる。
ブリレイ「き、貴様ら…!こんなことをして……!」
魔剣士「ただで済むと思うなよ…!ってか?」
ブリレイ「……馬鹿にしたような言い方をするなァ!!」
魔剣士「これで終わりだ。あんなに諦めろと言ったのに、許しを請わなかったことを後悔するんだな」
ブリレイ「…………諦めるわけがない。諦められるわけがないだろう!!」
この期に及んでも、まだ彼の熱は冷めない。だが、その憤怒を消すように、ポツ…ポツ…と小雨が舞い始めた。
魔剣士「……終わりだ。諦めろ」
ブリレイ「ッ!!」
魔剣士「時間は与えない。その首、刎ねさせてもらう」
使い慣れた剣を、高く、高く、構えた。
ブリレイ「…」
そして、一番高く構えられたと同時に、ブリレイは沈黙する。
いよいよ観念したのかと思ったが、ブリレイはここで"ニヤリ"と笑った。
ブリレイ「……なぁ、魔剣士と革命の戦士様たちよ。一つ、助言をしてやる」
魔剣士「助言なんて必要ねぇよ」
ブリレイ「いやいや聞いたほうが良い。お前が俺の首を刎ねれば、大変なことが起きるぞ」
魔剣士「神様の怒りでも買うってのか」
ブリレイ「クク、俺は魔法研究者だ。頭が良い。もしこうなった時のために、保険をかけていたとしたら…どうする?」
"ザァァアッ!!"
彼の不気味な言葉に呼応するように、小雨は一気に強くなった。
魔剣士「どんな保険だろうと、お前の居る世界よりはマシだろう」
ブリレイ「もう1度言う。俺を殺すな」
魔剣士「……地獄で会おう」
"ヒュオッ…!ザンッ!!"
聞く耳など無く、魔剣士は剣を振り下ろした。ごろりと壇上に首が転がり、血が大雨に流されて周囲が赤く赤く染まっていく。魔剣士の剣も大雨で穢れた血は流され、これで全てが終わったのだと思った。
魔剣士「終わったのか……」
偉大なる魔法戦士ブリレイは死んだ。最期に残した不気味な遺言も、魔剣士は「結局、嘘だったな」と壇上を降り、仲間たちの祝福を受けようとしたのだが、それがどういう意味だったのか、すぐに分かることになる。
ブリレイ「……だから言ったんだ、止せ…とな…」
魔剣士「……何ッ!!?」
壇上に転がった彼の頭部が、こちらを睨んで笑ったのだ。魔剣士だけでなく、白姫たちも、国民たちも驚愕の声を上げる。
白姫「あ、あれ…まだ……!?」
リヒト「有り得ない!」
バンシィ「首だけで…生きてるの……?」
ブリレイ「お前は…どこまで……」
猛竜騎士「信じがたいな……」
魔剣士「この野郎ォ!全員、下がれ!!」
頭部は動くが、身体は動く気配がない。魔剣士は全員の前に立ち、剣を構える。
ブリレイ「せ、生命体は……死ぬ瞬間こそ…一番の生命が燃える…。俺は闇の幻惑で…自らを……意識の…復活を……自分じゃない自分だとしても…するために……!!」
信じがたいことだが、ブリレイは自分が死を迎える瞬間、最期の行動を取るよう"命じていた"らしい。恐らく彼の意識は、ウィッチと同じ記憶のもの。彼のものではないだろうが、彼が目論む"あること"をするには充分だった。
ブリレイ「魔剣士ィ!!俺がいない世など、破滅に導いてくれる!!!」
魔剣士「首だけのお前に、出来ることがあるっつーのかよ!!」
ブリレイ「生命燃え尽きる時、最も魔力の輝きが満ちる…!王城に仕掛けた陣が発動するのには、充分だ……!」
ブリレイの頭がフワリと浮き、宙で緑色に輝き始める。
リヒトは魔剣士の前に出て、貴方のすることは無駄です!と言った。
リヒト「王城の陣は、門へ仕掛けられていた闇魔法を吸収する陣でしょう!それはもう、僕が破壊しています!」
ブリレイ「……ククク、それはご苦労」
リヒト「ご苦労?どういうことですか!」
ブリレイ「お前なんかより、俺は優れている。もし、陣の形式を変更することで発動する陣があったとしたら……どうする……!?」
リヒト「ま、まさか!?」
ブリレイの輝きは一層増し、魔剣士は「不味い!」と剣を振った。肉体を持たないブリレイは避けることも出来ず、宙で"パァン!"と剣撃を受けて更に真っ二つにされたが、彼の命尽きる炎が燃えながら言ったのは、「ざまぁみろ」という一言であった。
魔剣士「ざまぁみろ…だと……?」
リヒト「一体、彼は何を……」
雨が前も見えないほど、降り注ぐ。ざぁぁっ!という周りの声も聞こえぬ大雨の中で、それに気づくまで時間を要した。
魔剣士「……ん?」
壇上の周囲。
先ほどまで歓喜に沸いていた国民たちが、殴り合いを。武器を持つ者たちは、殺し合いを始めていた。
―――セントラル広場。
広場上空に到達していた魔剣士とブリレイは、魔法による戦いを繰り広げていた。
地上では多くの国民たちがそれを見上げ、指を差し、華麗なる魔法の技術に圧巻の声をあげていた。
「見ろ、何だあれは!」
「さっきの即位式で見たぞ!片方は確か、白姫様の従者だったはずだ」
「相手は…誰だ?王の新しい側近で噂だが、名前が分からんな」
「騎士団を率いていたのを見たぞ。名前は確か…ブリレイだ!」
ハイル王側のブリレイと、新王政の魔剣士。
その応援の声は、即位式に出た人間から伝わり始め、やがて巨大な声となる。
「魔剣士、頑張れェ!!よく分からんが、騎士団を潰そうとしているんだろ!?」
「そうだ!白姫様のために戦ってるなら頑張ってくれ!!」
国民たちの声は、上空で戦う魔剣士たちに届く。
戦いのさ中、魔剣士は笑いながら言う。
魔剣士「おいブリレイ!国民たちはお前の退場を願っているぞ!」
ブリレイ「……愚民だ。俺が光になるための導となれる喜びも分からんのだ」
魔剣士「お前が英雄になれることはない!お前の喜びのために、白姫が望む平和な未来を潰させはしない!!」
片腕を伸ばし、火炎を飛ばす。ブリレイは瞳で防御壁を展開し、爆発を防ぐが、それでも熱風は傷ついたブリレイにとって痛手となる。
ブリレイ「ぐっ…!」
魔剣士「もう諦めろ!」
ブリレイ「諦める…ものか……!」
魔剣士「どうしてだ!何そこまで、お前を……」
ブリレイ「あと一歩。あと少しなんだ…。お前はどこまで邪魔をする…!お前がいなければ、全ては上手く行っていたはずなのに…!」
瞳に込めた魔力で、風の刃を作り出して射出する。魔剣士は瞬時に魔法化してそれを受け切り、ブリレイの背後に移動した。
ブリレイ「ッ!」
魔剣士「……お前が世界を掌握することはねぇんだよ!」
ブリレイ「いいや、俺が決めることだ!」
魔剣士「い、いい加減に……!」
背後を取った魔剣士は、脚の付け根に"風と炎"の二属性を展開して噴射させた。その場でグルリと回転し、それはブリレイも想定外の速度を作り出した。
魔剣士「いい加減にしろォッ!!!」
空中での大回転から繰り出された蹴りは、ブリレイの背中に直撃し地面へとぶっ飛ばした。
かなりの高度から落下し、抵抗もままならず、激痛に意識は保てても、地面に着地する受け身まで身体が動かない。
ブリレイ(不味い…ッ!!)
ブリレイの落下地点は、広場の壇上だった。"ドゴォンッ!!"と爆音が響く。たまたま壇上には人が上っていることはなく、椅子に腰かけていた人が風圧で吹き飛ばされたが、大事には至らなかった。
魔剣士「やったか…!?」
空中から見下ろした壇上には、血を吐いてうな垂れる姿のブリレイがあった。魔剣士は「よし!」と言いながら、自分も壇上へと降りる。
魔剣士「ブリレイ、てめぇの負けだ。今度こそ諦めろ」
ブリレイ「ぐ…!ぐっ……、ぐぅっ…!」
魔剣士とは違い、彼の肉体は人間そのもの。冒険者として培った強靭な肉体は即死を抑えたが、それでも彼は痛みと血反吐をまき散らし、悔しそうに魔剣士を見上げた。周囲を魔剣士の名を呼ぶ民たちが囲むが、二人の世界に他の声は入らない。
ブリレイ「お、俺は……!魔剣士…!俺を…見下ろすなぁ……!!」
魔剣士「もうお前の時代じゃない。潔く諦めろ。この時代に生きようとしたアサシンも、結局は運命に逆らえなかった」
ブリレイ「お前が…英雄になるというのか……!」
魔剣士「誰が興味があるか。俺は、俺が幸せならそれでいい」
ブリレイ「お前の…幸せとは……!」
魔剣士「俺の幸せ?俺の幸せは……」
ふと、王城から聞きなれた声で魔剣士を誰かが呼んだ。
白姫「魔剣士ーっ!!!」
リヒト「魔剣士さん!」
バンシィ「お兄ちゃん…、勝ったんだ…!」
三人がこちらに手を振っていた。そして、その奥からは肩を組んだ彼らも。
リッター「ゲホッ…、ゴホッ……!ま…、魔剣士……」
猛竜騎士「すまなかった…。お前の一撃が目を覚まさせてくれたんだ。魔剣士、本当にすまないことをした……」
世界の未来を望む全ての戦士が、今揃った。
魔剣士「……俺の幸せは、白姫が笑顔の世界だ。みんなが幸せな世界だ」
ブリレイ「ざ、戯言を…!!」
魔剣士「戯言じゃない。本心からそう思っている」
ブリレイ「……ッ!」
民たちは、魔剣士を呼ぶ戦士たちのために壇上への道を開いた。
既に魔剣士が悪を倒したというのは明白で、多くの民たちは魔剣士と白姫、その戦士たちを祝福する。
「な、なんか分からないがやったんだよな!?」
「すげぇぞ、これで白姫様が女王になるのか!?」
「取り敢えずスゲェ場面に立ち会ってるってのは分かるぜ……」
歓喜の声に包まれる広場。
そして、壇上でブリレイを抑える魔剣士に、猛竜騎士はリッターと共に支え合い、よろめきながら近づいた。
猛竜騎士「ま、魔剣士……」
魔剣士「よーオッサン。酒の酔いは醒めたか?」
猛竜騎士「悪酔いだ。お前たちには迷惑をかけた。これ以上のない…最低な酔いだった。本当にすまない……」
魔剣士「いいよいいよ。白姫を想ってくれて堕ちちまったんだし、文句は言わねー」
猛竜騎士「そうか…。それじゃ、あとはお前の役目だ……」
猛竜騎士は背中に隠し持っていた"軽剣"を、魔剣士に投げた。
魔剣士「お…、こ、これは!?」
それは魔剣士がいつか、陣に吸い込まれた時に落とした、ずっと傍にあった剣であった。
猛竜騎士「地下室で…拾ったんだ…。魔剣士、あとは…お前の仕事だ……。出来るか……?」
抑えられたブリレイは、目を血走らせる。
魔剣士「……やるしかないんだろう?」
剣を、抑えたブリレイに突きつけた。それに白姫、リヒト、バンシィ、猛竜騎士、リッターと、国民たち全員の注目が集まる。
ブリレイ「き、貴様ら…!こんなことをして……!」
魔剣士「ただで済むと思うなよ…!ってか?」
ブリレイ「……馬鹿にしたような言い方をするなァ!!」
魔剣士「これで終わりだ。あんなに諦めろと言ったのに、許しを請わなかったことを後悔するんだな」
ブリレイ「…………諦めるわけがない。諦められるわけがないだろう!!」
この期に及んでも、まだ彼の熱は冷めない。だが、その憤怒を消すように、ポツ…ポツ…と小雨が舞い始めた。
魔剣士「……終わりだ。諦めろ」
ブリレイ「ッ!!」
魔剣士「時間は与えない。その首、刎ねさせてもらう」
使い慣れた剣を、高く、高く、構えた。
ブリレイ「…」
そして、一番高く構えられたと同時に、ブリレイは沈黙する。
いよいよ観念したのかと思ったが、ブリレイはここで"ニヤリ"と笑った。
ブリレイ「……なぁ、魔剣士と革命の戦士様たちよ。一つ、助言をしてやる」
魔剣士「助言なんて必要ねぇよ」
ブリレイ「いやいや聞いたほうが良い。お前が俺の首を刎ねれば、大変なことが起きるぞ」
魔剣士「神様の怒りでも買うってのか」
ブリレイ「クク、俺は魔法研究者だ。頭が良い。もしこうなった時のために、保険をかけていたとしたら…どうする?」
"ザァァアッ!!"
彼の不気味な言葉に呼応するように、小雨は一気に強くなった。
魔剣士「どんな保険だろうと、お前の居る世界よりはマシだろう」
ブリレイ「もう1度言う。俺を殺すな」
魔剣士「……地獄で会おう」
"ヒュオッ…!ザンッ!!"
聞く耳など無く、魔剣士は剣を振り下ろした。ごろりと壇上に首が転がり、血が大雨に流されて周囲が赤く赤く染まっていく。魔剣士の剣も大雨で穢れた血は流され、これで全てが終わったのだと思った。
魔剣士「終わったのか……」
偉大なる魔法戦士ブリレイは死んだ。最期に残した不気味な遺言も、魔剣士は「結局、嘘だったな」と壇上を降り、仲間たちの祝福を受けようとしたのだが、それがどういう意味だったのか、すぐに分かることになる。
ブリレイ「……だから言ったんだ、止せ…とな…」
魔剣士「……何ッ!!?」
壇上に転がった彼の頭部が、こちらを睨んで笑ったのだ。魔剣士だけでなく、白姫たちも、国民たちも驚愕の声を上げる。
白姫「あ、あれ…まだ……!?」
リヒト「有り得ない!」
バンシィ「首だけで…生きてるの……?」
ブリレイ「お前は…どこまで……」
猛竜騎士「信じがたいな……」
魔剣士「この野郎ォ!全員、下がれ!!」
頭部は動くが、身体は動く気配がない。魔剣士は全員の前に立ち、剣を構える。
ブリレイ「せ、生命体は……死ぬ瞬間こそ…一番の生命が燃える…。俺は闇の幻惑で…自らを……意識の…復活を……自分じゃない自分だとしても…するために……!!」
信じがたいことだが、ブリレイは自分が死を迎える瞬間、最期の行動を取るよう"命じていた"らしい。恐らく彼の意識は、ウィッチと同じ記憶のもの。彼のものではないだろうが、彼が目論む"あること"をするには充分だった。
ブリレイ「魔剣士ィ!!俺がいない世など、破滅に導いてくれる!!!」
魔剣士「首だけのお前に、出来ることがあるっつーのかよ!!」
ブリレイ「生命燃え尽きる時、最も魔力の輝きが満ちる…!王城に仕掛けた陣が発動するのには、充分だ……!」
ブリレイの頭がフワリと浮き、宙で緑色に輝き始める。
リヒトは魔剣士の前に出て、貴方のすることは無駄です!と言った。
リヒト「王城の陣は、門へ仕掛けられていた闇魔法を吸収する陣でしょう!それはもう、僕が破壊しています!」
ブリレイ「……ククク、それはご苦労」
リヒト「ご苦労?どういうことですか!」
ブリレイ「お前なんかより、俺は優れている。もし、陣の形式を変更することで発動する陣があったとしたら……どうする……!?」
リヒト「ま、まさか!?」
ブリレイの輝きは一層増し、魔剣士は「不味い!」と剣を振った。肉体を持たないブリレイは避けることも出来ず、宙で"パァン!"と剣撃を受けて更に真っ二つにされたが、彼の命尽きる炎が燃えながら言ったのは、「ざまぁみろ」という一言であった。
魔剣士「ざまぁみろ…だと……?」
リヒト「一体、彼は何を……」
雨が前も見えないほど、降り注ぐ。ざぁぁっ!という周りの声も聞こえぬ大雨の中で、それに気づくまで時間を要した。
魔剣士「……ん?」
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