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続章【夢の後先】
禁断の血脈編(中編)
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フランメ「……はぁ?」
意を決して伝えた言葉に、フランメは呆けた顔をした。
フランメ「ちょっとちょっと、ジイちゃん」
オルデン「ん…」
フランメ「さすがにその冗談は面白くないって。面白くなさすぎて笑っちゃうよ?」
あはは!と腹を抱えて笑う。
そうか、それを伝えたところで信じるわけがなかった。
オルデン「やれやれ、信じられないのは仕方がないことだがな」
テーブルにあった灰皿と煙草を取ると、西日が差す窓際のスペースにそれを置いて、ロッキングチェア座りながら火を点けた。
フランメ「普通は信じないって!信じられるわけないじゃん!」
オルデン「まぁそうだろうな。だが、お前にはその血が流れている理由があるんだ」
言いづらそうに、白い煙を吐きながら話す。止めていたタバコの煙が、言葉のストレスの発散になる。
オルデン「フランメ・・・お前は、俺のやっていた仕事は知っているな」
フランメ「そりゃね、ジイちゃんはセントラル聖騎士団の元団長だろ?」
オルデン「そうだ。俺はお前の母親…もといシュヴァン女王と旅をしたから抜擢されたんだ」
フランメ「ん……」
そういえば、シュヴァン女王は昔、旅を経て世界の平和を実現したと聞いていた。いや、しかし…まさかそんな筈は。
オルデン「当時、俺は35歳。お前の母親は15歳。そして親父が18歳の頃に旅をしたんだ」
フランメ「……そうやって年齢を出して言っても、信憑性は無いからな」
オルデン「まぁ聞け。俺と、お前の両親の冒険譚だ。これをいつか話すことを、俺は覚悟をしていたんだ……」
深く深く煙草を吸って、緊張と恐怖を減らす。それを伝えることがどのような変化をもたらすかが怖かった。しかし、何よりもフランメは女王の"優しさ"を秘めている。それを知っていたから、旅を終え、父母と同じように"世界の冒険"という意味を知った今だからこそ、全てを伝えた。
オルデン「あれは20年前にも遡る。俺は冒険者を引退して、市場商人として暮らしていた時期だった……」
荒れ狂った冒険者時代。あの男との出会いは、再び刺激的な日々の訪れだった。
世界を旅し、世界を知り、世界を救い、世界に平和の礎を気づいた全てを、オルデンはフランメに一字一句漏れることなく、話をした。フランメの親父が"災厄と呼ばれた"存在であったことも。
オルデン「―――これが、全てだ」
ハイル、ブリレイ、そしてお前の親父が、国々を救い、世界を救ったこと。そして禁忌と称され、存在すらも消されたこと。シュヴァン女王や世界を納める者たちは、お前の親父が英雄だと信じ続けていること。
フランメ「…」
その話をされたフランメは、ただ呆けていた。だが、ゆっくりと、表情に血の気が戻っていく。
フランメ「……い、今の話は…全部……本当なのか?」
やがて、身体を震わせ、それが真実なのかと何度も尋ねてきた。オルデンは「そうだ」と頷き、真剣な表情のそれから、フランメもいよいよ真実なのだと実感をし始める。
フランメ「本当だとしても……、い、いや…でも!俺って…………」
実はフランメには、人とは比べ物にならないくらい遥かに強力な"魔力"があった。
決して親父のように強力過ぎるものではないが、元団長に教えられた戦闘技術と、父親の血を紡ぐ強力な魔力は、常人のそれを遥かに凌駕していた。
オルデン「お前だって分かっているはずだ。お前の流れる血と肉体は、常人のそれではない」
フランメ「確かに、俺は強いのかもっては思ってたけど…。時々、何か…フっと湧き出たっていうか……」
自身の掌を見つめ、何かを考える。きっとフランメが体験してきた冒険の中で、その血を感じさせる出来事もあったのだろう。
オルデン「……こうして、竜の騎士と呼ばれた俺の冒険は終わった。お前の親父は姿をくらましたが、お前の両親…父と母はとんでもないことをしていたんだ」
いい加減、止めないと思っている煙草にまた火を点ける。そうでもしないと、それを話すのは辛いのだ。
フランメ「と、とんでもないことって何だ?」
オルデン「ふぅ…。ハッキリというが、気を悪くはするなよ……」
煙草の赤く燃え上がる炎の先で、フランメを差して、言った。
オルデン「……お前だよ」
勢い余り、風に触れた煙草の火先が燃え上がる。
フランメ「お、俺が…?とんでもないこと……?」
オルデン「親父が姿を消して1年後、お前が生まれたんだ」
フランメ「どういう…意味だ……?」
それを話すストレスから、火を点けたばかりの煙草を一気に吸い、あっという間に灰にする。
オルデン「禁忌の男と、平和の女王。誰が祝福したと思う……」
フランメ「―――……!」
言葉を無くす。フランメの顔が、これでもないくらいに青ざめた。
フランメ「お、俺…そんなこと……」
オルデン「待て。まだ話は終わっていない、最後まで聞け!」
いよいよ動揺するフランメの肩を掴み、必死に説明した。
オルデン「世間的にはそうかもしれなかったが、俺やシュヴァン、セージ、テイル、裏を知っている者たちは全員がお前の誕生に喜んだんだ!」
これ以上ない声で、フランメに言い聞かせる。反応は薄いが、何となしに分かっては貰えていると信じたい。
オルデン「突然の話に驚いただろうが、お前は……」
ここからは謝罪。今まで黙ってきた事と、お前の未来について、旅の終わりにこんな話をしてしまったことへの償い。殺すつもりなら、それを受け入れることだってした。
オルデン「お前に、黙っていたことを……」
しかし、全てを投げ打ってでも、伝えねばいけなかった真実。
お前の親父は"魔剣士"の名で呼ばれ、悲劇の姫の"白姫"と、この俺"猛竜騎士"が作った世界に認められない存在であることを。
オルデン「お、俺は……」
誰が悪いわけじゃない。誰のせいじゃない。俺が恨むとしたら、この世界に導いた神を恨む。だが、フランメが恨むべきは、恨みを晴らすことが出来るのは、この自分だから―――…。
フランメ「……ンだよ、そういうことかよ!」
そうだったと、思っていたのに。
オルデン「ん……」
全てを聞き終えたフランメの第一声は、軽すぎるものだった。
フランメ「俺さぁ、前々からそんな気はしてたんだよなー」
オルデン「は…」
フランメ「考えてみれば、妙に氷山帝国で歓迎されたこともあったし……」
オルデン「お、おい……」
フランメ「砂国でも然り、限界超えて戦う事も何だか楽しく思えたし!」
―――嗚呼、そうだった。
この男も、魔剣士の血を引き継いでいるんだ。
フランメ「選ばれた人間みたいで恰好いいじゃん!今さら、この話が嘘だとか言うなよジイちゃん!?」
心優しくて、強くて、本当にこの男は……。この、孫は……。
オルデン「馬鹿者、調子に乗るな…。お前は全く……」
フランメ「ふへへっ、しゃーないね!俺ってば強いからな!」
両腕を組んで、偉いだろう!とした恰好でオルデンを見つめた。
オルデン「やれ…、安心したぞ……」
ロッキングチェアに深く座り直し、窓を見ると、話の最中に太陽はすっかりと隠れ、辺りは暗闇に包まれていた。
フランメ「んじゃさぁ、話しは一旦やめようぜ。俺はそろそろ晩飯でも作るぜ。しばらくは家で休憩してのんびり考えるよ」
母親に会いたいだとか、ジイちゃんを憎むとか、誰かを恨むことをしない。全てを理解しているから。オルデンはこれ以上なく、涙が出そうになる。そして、晩飯の準備に取り掛かろうとしたフランメに、オルデンは「待ちなさい」と声をかけた。
フランメ「何だ?」
オルデン「お前に話したことで、大事なことを忘れているぞ」
フランメ「何か忘れてたっけ?」
オルデン「お前の親父が、生きているということだ」
フランメ「……あっ」
オルデン「お前に言ったのは、親父が行方不明になった迄。その先の真実は、未だ教えていないだろう」
フランメ「そ、そうだった。親父はどこへ行ったんだよ……?」
その血を紡いでいるから、この子には親父を追う権利がある。この世界に産まれた、もう1人の"新世界"への旅人に導きを与えるために。
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