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第七章【氷山帝国】
7-3 雪中行軍隊(後)
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"ガタァン!!"
猛竜騎士「魔剣士ッ!?」
白姫「あっ、ま…魔剣士ィッ!!」
暴動の前に魔剣士は馬車の扉を開くことで暴風がなだれ込み、その轟音は悲鳴をかき消した。
恐らくは、猛竜騎士のように「ショックの連鎖」などと考えることはなく、そんな白姫のために本能的に動いたことだっただろうが、結果的に人々の暴動の連鎖を静めたので行動としては大正解であった。
しかも、この吹雪の中。彼自身が気づかぬうちに己の「闇魔法」が発動し、習得していないはずの氷耐性を強く持ったのはあとから気づいたことだったのだが。
魔剣士「うらぁぁあっ!!オッサン、何してんだぁぁぁあああっ!!」
猛竜騎士「魔剣士ッ!!」
魔剣士「魔馬を動かさねぇとみんな死んじまうだろうが!!レイスぶっ倒せばいいんだろ!!」
猛竜騎士「あ、あぁ……!」
魔剣士「オッサン、早くしろぉぉ!戦い方を、前方に真っ赤なフヨフヨしたやつがいっぱいいるぞ!馬とか食われるんじゃねぇのかこれ!!」
猛竜騎士「……あいつとの旅はこうも波乱ばかりかね!今行く!」
どのみち魔馬を守るためにも動かねばならなかったが、魔剣士がそれより早く行動したことに猛竜騎士は思わず「俺も歳をとったか」と苦笑を浮かべた。
そして猛竜騎士は外へ出ると、予想通り前も見えぬ大雪と暴風の嵐で、隣にいるはずの魔剣士ですらその顔を見ることが出来ないほどだった。
猛竜騎士「魔剣士、どこだぁっ!!」
魔剣士「アァ!?隣にいるだろうが!」
猛竜騎士「この雪の中、俺が分かるのか!?」
魔剣士「逆に見えねぇのかよ!つーか、あの真っ赤でフヨフヨしてるのが魔馬に近いんだけど大丈夫なのか!?」
猛竜騎士(赤…攻撃的な証拠だが。周りは白一色に、本来なら見えてもいいかもしれんが吹雪の中でまったく見えん…!)
猛竜騎士(闇魔法の影響なのか、自己強化が著しく進んでるってわけか……)
猛竜騎士(本人の気づかないうちに予想しないようなパワーを得るのはよろしくないことなんだが、今はその力に甘える他はないか……ッ!)
魔剣士「オッサン、どうすりゃいいんだ!オイッ!!」
猛竜騎士「…魔剣士!今、俺の目にそれは映ってない!見えるのはお前だけだ!」
魔剣士「はァ!?」
猛竜騎士「本来なら、ギリギリまで引きつけるハズだったが…前が見えない以上、これでは俺が戦えない!どれくらいの数がいるか分かるか!?」
魔剣士「か、数ってな…!」
猛竜騎士「レイスは赤は攻撃的な他、見えにくいだろうが白や黄色もいる!浮遊体だとすれば分かるはずだ!」
魔剣士「ま、待てよ!今、目を凝らして見る……!」
猛竜騎士(少なければいいのだが、最悪な事態は……考えうる最悪なことは……!)
猛竜騎士が考える、最悪な事態。
今も充分に最低最悪な事態には陥っているのだが、それ以上に至極最低なことは……。
魔剣士「…」
魔剣士「……お、オッサン?」
猛竜騎士「どうした!」
魔剣士「…悪い」
猛竜騎士「なんだっ!?」
魔剣士「数えきれねぇわ……」
猛竜騎士「なっ……!」
至極、最低。
とどのつまり、ここが「行軍」の安住の地だとした時、生命の屍に群がるレイスらがその数だけいることであり――…。
魔剣士「しかも真っ赤なのばっかだしよ、どうなってんだこれ……」
猛竜騎士「おいおい……」
魔剣士「100…200以上なんじゃねぇのこれ……」
猛竜騎士「嫌な予感は当たるもんなんだよなぁ」
魔剣士「どうすんだよこれ……」
猛竜騎士「どうするってまぁ…分かってるだろ……!」
魔剣士「やるしかねぇんだろ……」
猛竜騎士「他の奴は使いモンにならねぇし、俺も一緒だ。今はお前に頼る他はないぞ、やれることはやらせてもらうがな」
魔剣士「全部オレがやれってか!?」
猛竜騎士「この程度で泡を吹くのか?」
魔剣士「コノヤロー…!無事に氷山帝国に着いたらな、あったかい風呂に旨い料理!分かったな!?」
猛竜騎士「大サービスだ」
魔剣士「約束だぞコラ…ッ!はぁぁぁあぁぁああっ!!」
魔剣士は剣を抜き、それを構えると魔力を練って力を込めた。
すると、魔剣士の得意技である火炎を片手剣へと纏い、その一瞬で足元や周囲にあった雪はジュワリと音を立てて溶け始めたのだが、魔力によるオーラのせいなのか一帯の雪解け水は魔剣士を囲むように浮いたままそこで静止していた。
魔剣士「はぁぁぁっ…!」
そして、猛竜騎士はまたある点に驚愕していたのが、魔剣士を調子づかせないためにもそれは口にしなかった。
猛竜騎士(氷の大地で、炎の魔力が少ない状態で炎をこうも簡単に練るのか…っ!)
猛竜騎士(意識をしていないだけだろうが、お前が今やっていることはもう…闇魔法そのものに近いものがあるというのに…!)
魔剣士が練った魔法は、言わずもがな炎魔法。
しかしそれは、特級である魔術師ならば余裕で扱うことも出来るだろうが、この氷の大地では適さず、それを発動するには恐らく……。
猛竜騎士(魔術を学びし歴戦の学士が、数十年の練磨の果てに出来ることだぞ……ッ!)
だが、魔剣士はそんなことはつゆ知らずに具現化させた炎魔法を剣に装填したかと思うと、西方大地を長らく歩いて培った体力のおかげか雪が溶ける前の豪雪を何のその、踏み切りながらレイスへと立ち向かっていった。
猛竜騎士(やれやれ、イレギュラーな存在になっちまったお前だが……)
猛竜騎士(相手を倒すのは魔法を練るだけでいいんだ。この大地ならば、利は氷。それを利用すればレイスの軍団へと一瞬で対処できたというのに)
まだ経験不足が伺えることに、猛竜騎士はふぅとため息をついた。無論、それも魔剣士はそれを知る様子もなく。
魔剣士「らぁぁぁあああっ!!!」
前方へと飛び出した魔剣士は、炎を振り回しながら真っ赤なレイスを紅蓮の炎で包み込み、次々とそれを切り刻んでいった。
危険種とはいえ、レイス自体は触れなければ攻撃対象と出来ないようで、魔法による微妙な距離感はそれに対して絶妙で、魔剣士はレイスを意図も簡単に打破していく。
真っ白な暴風の中、燃え上がる魔剣士の炎は猛竜騎士の目にかろうじて映り、問題なくレイスを倒していく魔剣士に安堵してか、彼は別の行動を取り始めた。
猛竜騎士「魔剣士ィ!!俺は車内のほうに、レイスの討伐に問題がないことを伝えるッ!!」
猛竜騎士「お前には俺の声が聞こえているだろうが、お前の声は俺に聞こえんッ!!」
猛竜騎士「前は任せた、後ろの安全は俺が取るッ!!」
魔剣士「お……ぅ……!」
暴風だろうが、強化された魔剣士にはその声がはっきりと聞こえているようだった。
猛竜騎士には魔剣士の返事がほんのわずかしか聞こえなかったが、それでも歴戦の戦士、彼が「おう」と口にしたことで馬車へと戻り、立ち尽くす人々と動ける者に対し言葉を放つ。
猛竜騎士「動ける者がいたら、手伝ってくれ!」
猛竜騎士「俺は魔力が弱い!それでも、全員の魔力を合せればここで暖を取るくらいのことは出来るハズだ!」
凍土での炎魔法を扱うことは難しいが、全員で力を合わせれば。
猛竜騎士は暗闇の中、リュックサックから購入していた"小型の魔法ランプ"を取り出すと、魔石の導線部分を引きちぎり直接魔力をねじ込み始めた。
猛竜騎士(ぐっ…!元々魔力がねぇっつーのに、枯渇すら危ういことをやるなんてなっ…!)
猛竜騎士(ただのランプだけでは暖も取れないが、せめてこのランプが過剰魔力で点火すればこの車内には炎の魔力が少しでも停滞し熱を持つはずっ!)
輝く魔力は薄らと暗がりの車内を照らし、言葉に反応した冒険者たちや一部の人々も近づき、一斉に魔力を練り始めた。
せめて、ほんの少しでも暖かさを取れなければこの温度では凍りついてしまうのだから当然のことではあるのだが。
猛竜騎士「みんな、ありがとうっ…!」
二等魔道「お、俺は二等魔導…!外で戦ってるのはアンタの仲間だろ!これくらいしか出来ないが、力を貸すぞッ!」
銀魔術師「私は銀術師!あなたは猛竜騎士っていうんだっけ…その行動力、素敵だと思うわよ!」
幻豪兵士「僕は幻豪兵士だ!まだ死にたくねぇもんな!魔力の全てを使ってやるぜ!!」
本来、この凍土においての炎魔法は必要以上の練り方に技量がいるし必要以上の魔力が必須となって予想以上の消費量となる。
ところが、猛竜騎士の購入していた小型ランプには元々「魔力を炎へと変換する」サポートの変換導線のようなものがあったことで技量はいらずに魔力の消費に集中できたことが幸いした。
わずか数秒で炎は点火し、予想以上の魔力を受けた炎は"ゴォゴォ"と燃え、車内の気温は一気に上昇した。
猛竜騎士「おし!」
二等魔導「おォッ!!」
銀魔術師「おぉじゃない!魔力を停滞させるには、もっと注入しないと!すぐに炎は消えて気温が下がる!」
二等魔導「あ、わ…分かってるッ!頑張るってのっ!」
幻豪兵士「他の者でも、動ける者は適度に頼む!俺らだけでは魔力が持たないッ!」
車内で凍えていた人々は、ようやく暖かさが戻ったことで筋肉の硬直が解け、次々とランプの周りへと集まると命を留める炎のため、魔力を練り始めた。
そして、猛竜騎士は交代を重ねることで炎が安定し始めたのを確認すると、白姫のもとへと近づいた。
猛竜騎士「……っと、白姫!」
白姫「猛竜騎士さんっ…」
猛竜騎士「良かった、無事か!寒くないか!」
白姫「はいっ…!大丈夫です、私も炎を照らすのを手伝います!」
猛竜騎士「すまない…頼む。魔法の練り方は一緒であのランプへ向かって放てばいい」
白姫「はいっ!」
猛竜騎士「俺は、魔剣士の様子を見に行ってくる!」
そう、いくら強化体とはいえ心配をしてしまう。今の魔剣士は本能的な行動だけで、いつそれが崩壊し雪山に倒れるか分かったものではなかった。猛竜騎士はまた外へと飛び出すと、槍を構え、すかさず魔剣士の名を呼んだ。
猛竜騎士「魔剣士~~っ!!」
―――すると。
魔剣士「……っせぇんだよ、オッサン」
既に彼は、馬車の付近に片手剣をトントンと肩に叩きながら炎に身を包んで歩いて来ていた。つまり、それは。
猛竜騎士「お前、まさか…」
魔剣士「約束だぜ。高級ホテルであったけー風呂と、旨い飯だからな?」
猛竜騎士「……大した奴だよ本当に」
魔剣士「今さら気づいたのか?」
猛竜騎士「フッ…」
…………
……
…
猛竜騎士「魔剣士ッ!?」
白姫「あっ、ま…魔剣士ィッ!!」
暴動の前に魔剣士は馬車の扉を開くことで暴風がなだれ込み、その轟音は悲鳴をかき消した。
恐らくは、猛竜騎士のように「ショックの連鎖」などと考えることはなく、そんな白姫のために本能的に動いたことだっただろうが、結果的に人々の暴動の連鎖を静めたので行動としては大正解であった。
しかも、この吹雪の中。彼自身が気づかぬうちに己の「闇魔法」が発動し、習得していないはずの氷耐性を強く持ったのはあとから気づいたことだったのだが。
魔剣士「うらぁぁあっ!!オッサン、何してんだぁぁぁあああっ!!」
猛竜騎士「魔剣士ッ!!」
魔剣士「魔馬を動かさねぇとみんな死んじまうだろうが!!レイスぶっ倒せばいいんだろ!!」
猛竜騎士「あ、あぁ……!」
魔剣士「オッサン、早くしろぉぉ!戦い方を、前方に真っ赤なフヨフヨしたやつがいっぱいいるぞ!馬とか食われるんじゃねぇのかこれ!!」
猛竜騎士「……あいつとの旅はこうも波乱ばかりかね!今行く!」
どのみち魔馬を守るためにも動かねばならなかったが、魔剣士がそれより早く行動したことに猛竜騎士は思わず「俺も歳をとったか」と苦笑を浮かべた。
そして猛竜騎士は外へ出ると、予想通り前も見えぬ大雪と暴風の嵐で、隣にいるはずの魔剣士ですらその顔を見ることが出来ないほどだった。
猛竜騎士「魔剣士、どこだぁっ!!」
魔剣士「アァ!?隣にいるだろうが!」
猛竜騎士「この雪の中、俺が分かるのか!?」
魔剣士「逆に見えねぇのかよ!つーか、あの真っ赤でフヨフヨしてるのが魔馬に近いんだけど大丈夫なのか!?」
猛竜騎士(赤…攻撃的な証拠だが。周りは白一色に、本来なら見えてもいいかもしれんが吹雪の中でまったく見えん…!)
猛竜騎士(闇魔法の影響なのか、自己強化が著しく進んでるってわけか……)
猛竜騎士(本人の気づかないうちに予想しないようなパワーを得るのはよろしくないことなんだが、今はその力に甘える他はないか……ッ!)
魔剣士「オッサン、どうすりゃいいんだ!オイッ!!」
猛竜騎士「…魔剣士!今、俺の目にそれは映ってない!見えるのはお前だけだ!」
魔剣士「はァ!?」
猛竜騎士「本来なら、ギリギリまで引きつけるハズだったが…前が見えない以上、これでは俺が戦えない!どれくらいの数がいるか分かるか!?」
魔剣士「か、数ってな…!」
猛竜騎士「レイスは赤は攻撃的な他、見えにくいだろうが白や黄色もいる!浮遊体だとすれば分かるはずだ!」
魔剣士「ま、待てよ!今、目を凝らして見る……!」
猛竜騎士(少なければいいのだが、最悪な事態は……考えうる最悪なことは……!)
猛竜騎士が考える、最悪な事態。
今も充分に最低最悪な事態には陥っているのだが、それ以上に至極最低なことは……。
魔剣士「…」
魔剣士「……お、オッサン?」
猛竜騎士「どうした!」
魔剣士「…悪い」
猛竜騎士「なんだっ!?」
魔剣士「数えきれねぇわ……」
猛竜騎士「なっ……!」
至極、最低。
とどのつまり、ここが「行軍」の安住の地だとした時、生命の屍に群がるレイスらがその数だけいることであり――…。
魔剣士「しかも真っ赤なのばっかだしよ、どうなってんだこれ……」
猛竜騎士「おいおい……」
魔剣士「100…200以上なんじゃねぇのこれ……」
猛竜騎士「嫌な予感は当たるもんなんだよなぁ」
魔剣士「どうすんだよこれ……」
猛竜騎士「どうするってまぁ…分かってるだろ……!」
魔剣士「やるしかねぇんだろ……」
猛竜騎士「他の奴は使いモンにならねぇし、俺も一緒だ。今はお前に頼る他はないぞ、やれることはやらせてもらうがな」
魔剣士「全部オレがやれってか!?」
猛竜騎士「この程度で泡を吹くのか?」
魔剣士「コノヤロー…!無事に氷山帝国に着いたらな、あったかい風呂に旨い料理!分かったな!?」
猛竜騎士「大サービスだ」
魔剣士「約束だぞコラ…ッ!はぁぁぁあぁぁああっ!!」
魔剣士は剣を抜き、それを構えると魔力を練って力を込めた。
すると、魔剣士の得意技である火炎を片手剣へと纏い、その一瞬で足元や周囲にあった雪はジュワリと音を立てて溶け始めたのだが、魔力によるオーラのせいなのか一帯の雪解け水は魔剣士を囲むように浮いたままそこで静止していた。
魔剣士「はぁぁぁっ…!」
そして、猛竜騎士はまたある点に驚愕していたのが、魔剣士を調子づかせないためにもそれは口にしなかった。
猛竜騎士(氷の大地で、炎の魔力が少ない状態で炎をこうも簡単に練るのか…っ!)
猛竜騎士(意識をしていないだけだろうが、お前が今やっていることはもう…闇魔法そのものに近いものがあるというのに…!)
魔剣士が練った魔法は、言わずもがな炎魔法。
しかしそれは、特級である魔術師ならば余裕で扱うことも出来るだろうが、この氷の大地では適さず、それを発動するには恐らく……。
猛竜騎士(魔術を学びし歴戦の学士が、数十年の練磨の果てに出来ることだぞ……ッ!)
だが、魔剣士はそんなことはつゆ知らずに具現化させた炎魔法を剣に装填したかと思うと、西方大地を長らく歩いて培った体力のおかげか雪が溶ける前の豪雪を何のその、踏み切りながらレイスへと立ち向かっていった。
猛竜騎士(やれやれ、イレギュラーな存在になっちまったお前だが……)
猛竜騎士(相手を倒すのは魔法を練るだけでいいんだ。この大地ならば、利は氷。それを利用すればレイスの軍団へと一瞬で対処できたというのに)
まだ経験不足が伺えることに、猛竜騎士はふぅとため息をついた。無論、それも魔剣士はそれを知る様子もなく。
魔剣士「らぁぁぁあああっ!!!」
前方へと飛び出した魔剣士は、炎を振り回しながら真っ赤なレイスを紅蓮の炎で包み込み、次々とそれを切り刻んでいった。
危険種とはいえ、レイス自体は触れなければ攻撃対象と出来ないようで、魔法による微妙な距離感はそれに対して絶妙で、魔剣士はレイスを意図も簡単に打破していく。
真っ白な暴風の中、燃え上がる魔剣士の炎は猛竜騎士の目にかろうじて映り、問題なくレイスを倒していく魔剣士に安堵してか、彼は別の行動を取り始めた。
猛竜騎士「魔剣士ィ!!俺は車内のほうに、レイスの討伐に問題がないことを伝えるッ!!」
猛竜騎士「お前には俺の声が聞こえているだろうが、お前の声は俺に聞こえんッ!!」
猛竜騎士「前は任せた、後ろの安全は俺が取るッ!!」
魔剣士「お……ぅ……!」
暴風だろうが、強化された魔剣士にはその声がはっきりと聞こえているようだった。
猛竜騎士には魔剣士の返事がほんのわずかしか聞こえなかったが、それでも歴戦の戦士、彼が「おう」と口にしたことで馬車へと戻り、立ち尽くす人々と動ける者に対し言葉を放つ。
猛竜騎士「動ける者がいたら、手伝ってくれ!」
猛竜騎士「俺は魔力が弱い!それでも、全員の魔力を合せればここで暖を取るくらいのことは出来るハズだ!」
凍土での炎魔法を扱うことは難しいが、全員で力を合わせれば。
猛竜騎士は暗闇の中、リュックサックから購入していた"小型の魔法ランプ"を取り出すと、魔石の導線部分を引きちぎり直接魔力をねじ込み始めた。
猛竜騎士(ぐっ…!元々魔力がねぇっつーのに、枯渇すら危ういことをやるなんてなっ…!)
猛竜騎士(ただのランプだけでは暖も取れないが、せめてこのランプが過剰魔力で点火すればこの車内には炎の魔力が少しでも停滞し熱を持つはずっ!)
輝く魔力は薄らと暗がりの車内を照らし、言葉に反応した冒険者たちや一部の人々も近づき、一斉に魔力を練り始めた。
せめて、ほんの少しでも暖かさを取れなければこの温度では凍りついてしまうのだから当然のことではあるのだが。
猛竜騎士「みんな、ありがとうっ…!」
二等魔道「お、俺は二等魔導…!外で戦ってるのはアンタの仲間だろ!これくらいしか出来ないが、力を貸すぞッ!」
銀魔術師「私は銀術師!あなたは猛竜騎士っていうんだっけ…その行動力、素敵だと思うわよ!」
幻豪兵士「僕は幻豪兵士だ!まだ死にたくねぇもんな!魔力の全てを使ってやるぜ!!」
本来、この凍土においての炎魔法は必要以上の練り方に技量がいるし必要以上の魔力が必須となって予想以上の消費量となる。
ところが、猛竜騎士の購入していた小型ランプには元々「魔力を炎へと変換する」サポートの変換導線のようなものがあったことで技量はいらずに魔力の消費に集中できたことが幸いした。
わずか数秒で炎は点火し、予想以上の魔力を受けた炎は"ゴォゴォ"と燃え、車内の気温は一気に上昇した。
猛竜騎士「おし!」
二等魔導「おォッ!!」
銀魔術師「おぉじゃない!魔力を停滞させるには、もっと注入しないと!すぐに炎は消えて気温が下がる!」
二等魔導「あ、わ…分かってるッ!頑張るってのっ!」
幻豪兵士「他の者でも、動ける者は適度に頼む!俺らだけでは魔力が持たないッ!」
車内で凍えていた人々は、ようやく暖かさが戻ったことで筋肉の硬直が解け、次々とランプの周りへと集まると命を留める炎のため、魔力を練り始めた。
そして、猛竜騎士は交代を重ねることで炎が安定し始めたのを確認すると、白姫のもとへと近づいた。
猛竜騎士「……っと、白姫!」
白姫「猛竜騎士さんっ…」
猛竜騎士「良かった、無事か!寒くないか!」
白姫「はいっ…!大丈夫です、私も炎を照らすのを手伝います!」
猛竜騎士「すまない…頼む。魔法の練り方は一緒であのランプへ向かって放てばいい」
白姫「はいっ!」
猛竜騎士「俺は、魔剣士の様子を見に行ってくる!」
そう、いくら強化体とはいえ心配をしてしまう。今の魔剣士は本能的な行動だけで、いつそれが崩壊し雪山に倒れるか分かったものではなかった。猛竜騎士はまた外へと飛び出すと、槍を構え、すかさず魔剣士の名を呼んだ。
猛竜騎士「魔剣士~~っ!!」
―――すると。
魔剣士「……っせぇんだよ、オッサン」
既に彼は、馬車の付近に片手剣をトントンと肩に叩きながら炎に身を包んで歩いて来ていた。つまり、それは。
猛竜騎士「お前、まさか…」
魔剣士「約束だぜ。高級ホテルであったけー風呂と、旨い飯だからな?」
猛竜騎士「……大した奴だよ本当に」
魔剣士「今さら気づいたのか?」
猛竜騎士「フッ…」
…………
……
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