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第七章【氷山帝国】
7-2 雪中行軍隊(前)
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………………………………………………
―――出発から5時間後。
魔剣士一行は、ブルーノース・ポートを出発して折り返し地点を過ぎたところまで来ていた。
出発後はすぐに港の大門をくぐり山道へと入り、1時間もしないうちに辺りは雪で覆われ始め、みるみるうちに窓の外は雪化粧へと変化していったことに白姫は歓喜の声をあげていたようだったが、それもつかの間、外はあっという間に何も見えぬような"白き世界"へと包み込まれ、かなり厚い筈の窓からも薄らと冷気すら感じるようになっていた。
話は聞いていたが、天候が崩れだすと止まることは知らず、もしもこの馬車がなければ今頃はその景色の一部となっていたことは嘘でないと調子の良い魔剣士にですらそれはハッキリと理解できていた。
魔剣士「……すぐに雪が降り始めたと思ったらずっとコレかよ」
白姫「ず~っと真っ白だね…!でも、雪は凄く綺麗だと思うよっ」
魔剣士「いや…この量は楽しむとかそういうレベルじゃ」
猛竜騎士「だから言っただろう、お前はこの雪の中を歩くつもりだったのか?」
魔剣士「い、いやいくらなんでもココまで酷いもんだとは」
猛竜騎士「……まぁ、この雪や悪天候だからこそこの土地では錬金術が著しく発展したんだがな」
魔剣士「あん?」
白姫「どういうことですか?」
猛竜騎士「それはな……」
―――錬金術。
人とは切って切れぬ縁となった魔法を、道具へと付与しそれを昇華させた利便性の高い道具のことである。"錬金器具"とも呼ばれ、魔法効果をもつ道具一切を呼ぶことも少なくない。
ただ、その名で呼んだり錬金術が著しく発展しているのは主に北方大地側を主にした北側で、セントラル王城近辺ではまだ魔法用具の名であることも多い。実際、魔剣士らが着用していた魔法衣もそれを錬金道具として呼ぶことはなかったし、猛竜騎士もその時はそう呼んではいなかったことから浸透の低さはよく分かる。
そして、北方側で錬金術が発展した要素としてはこの地形が関係しており……。
猛竜騎士「厳しい天候や、自然に立ち向かうために編み出された魔法用具の数々が錬金術の元祖になったんだ」
魔剣士「…なるほどな」
白姫「なるほどです!」
猛竜騎士「西方大地には大自然の生み出す物に対し、それなりの魔法研究家たちも在住していたのは覚えてるか?」
魔剣士「おう、魔法書が多く安くあるのもそのおかげだっけか」
猛竜騎士「そうだ。しかし北方大地には錬金術を始めとした魔法研究連合とその本部があり、西方に住む研究家たちも元はここから派遣されたものも少なくないんだ」
魔剣士「ほぉ~」
白姫「凄いですね、北方と西方はかなり離れてるのにそんな繋がりがあるなんて…」
猛竜騎士「何を言ってる、この世界は所詮…一人じゃ生きていけない。それぞれの繋がりを大事に、よりみんなが幸せになれるよう努力をしているんだ」
魔剣士「へぇ」
猛竜騎士「冒険者だって、この大地を切り開くために大勢の命を落としたし、今も人知れず人の為に戦っている奴だっている」
猛竜騎士「エルフ族のようなまだ分かち合うことも難しい魔族もいるが、いずれは一丸となって後世のために世界をより良くしていかなくちゃいけないんだよ」
魔剣士「……かっこつけやがって」
猛竜騎士「ハハハ、かっこいいか?」
魔剣士「…全然!つーか、オッサンも俺らを付け狙ってる元バウンティハンターだろうが!」
猛竜騎士「む……」
魔剣士「…そうだ!オッサン、昔の話してくれるんだったんじゃねえのか?」
猛竜騎士「あぁ」
魔剣士「元冒険者だの元バウンティハンターだの、教えろって」
白姫「あ、聞きたいです!」
猛竜騎士「以前もちょっと話をしたが、簡単なもんだ。俺は冒険者であり元バウンティハンターで生活をしていたんだ」
猛竜騎士「ウィッチらも賞金首を捕まえてその土地に差し出すことはあったし、仲間らと別れてからはしばらくそれで過ごしてたというわけだ」
魔剣士「へぇ、それで暫くした後に冒険時代に培った知識で商人やってたと」
猛竜騎士「そーいうこと。手に職も欲しかったし、いつまでも冒険者やっても限界が来る。早い段階で見切りをつけただけだ」
魔剣士「だけど、今もこんなことやってるけどな」
猛竜騎士「本当にな」
魔剣士「ククク、根っからの冒険バカじゃねーか。俺らに世話焼いてたのしーかね?」
白姫「あーっ、魔剣士!折角、猛竜騎士さんが助けてくれてるのにそんな言い方!」
魔剣士「え、あ…いや……!」
魔剣士の一言に、突っ込む白姫。また、猛竜騎士の普段の態度から恐らく「うるさいぞ」と怒鳴るのではないかと思ったが、返ってきた返事は意外にも素直な言葉だった。
猛竜騎士「……楽しいさ」
魔剣士「お…」
白姫「猛竜騎士さん!」
猛竜騎士「正直、魔剣士がいい加減に大人になってくれと、ムカつくこともあるがそこはあえて考えないでおこう」
魔剣士「ぶん殴ってるくせに良く言うぜ」
白姫「魔剣士!」
魔剣士「ハイ」
猛竜騎士「結局、言う通り俺は冒険バカなんだろうな。素直なところ、お前らを守るという他にスリルのためにやってるのかもしれないと思う時がある」
猛竜騎士「しかし、楽しいことは楽しいさ」
猛竜騎士「お前らとバカやって、ちょっと大人ぶったり、先輩風吹かせたりすることも…何もかも」
猛竜騎士「またこうして旅立つなんて思いもしなかったし、ハハ…これからもよろしく頼むぞ…二人とも」
魔剣士「……う、うっせ!分かってるっつーの!」
白姫「はいっ、よろしくお願いします♪」
猛竜騎士「フッ…」
結局は、もう本当の仲間になっているのだろう。今日この瞬間まで、幾度も戦い、旅をし、命を懸けた戦いをしてきた三人はいつしか本音を口にできなくても、互いを互いに想える関係となっていたに違いない。
今、誰が倒れても、きっとその為に命を懸けて戦えるのだから……。
魔剣士「…」
白姫「…」
猛竜騎士「…」
さて、馬車に乗ってからここまでのおおよそ5時間20分が経過しようとしていた。外は猛吹雪のまま、馬車の中は温かく、長い時間揺られてかいよいよ魔剣士と白姫は疲労感に襲われているようだった。
そしてついに。少しずつまぶたが重く、窓からわずかに唸るゴォゴォという風ですら子守唄のように聞こえてくる。
魔剣士と白姫は残像のように残る真っ白な窓の雪を見つめつつ、互いに寄り添って眠りに落ちるかどうかの寸前。すぐ近くに座っていた老婆が「お兄さん」と口を開いた。
老婆「……お兄さんたち、冒険者かい?」
魔剣士「あァ…?」
老婆「近くにいたから話が聞こえてきててね、仲が良いんだなぁと思ってね」
魔剣士「だから何だよ…」
猛竜騎士(ん…?)
老婆「いや何、それだけさ。眠りの邪魔をして悪かったねぇ。お兄さんみたいな若い人らを見るとつい思い出してしまってねぇ……」
魔剣士「何をだよ…」
老婆「雪中行軍のことさ。私の息子もいたんだ……」
魔剣士「あん?」
白姫「せっちゅー…こーぐん……?」
老婆の一言に、二人は反応した。だが、それ以上に猛竜騎士がその言葉にピクリと眉を動かした。
猛竜騎士(何だと…?)
白姫「雪中行軍て何ですか?」
老婆「ハハハ、もうそれを知らない年頃の子どもたちが生まれているとはねぇ……」
魔剣士「知らねぇことは知らねぇんだ、仕方ねーだろうが」
老婆「…そうだねぇ、ごめんなぁ」
魔剣士「んで、その雪中行軍がどうしたんだよ」
老婆「ハハ…。この辺は折り返し地点、港と氷山帝国の折り返し地点…だろう?」
魔剣士「そうなのか」
老婆「そうさ…。息子を含めた兵士たちは、200人以上がこの道を切り開くため、この周辺で亡くなったんだよ……丁度このあたりさ…」
魔剣士「そうか…」
老婆「遺体も回収されず、永遠に氷の中に埋まって…可哀想になぁ……」
魔剣士「…氷の中にか」
老婆「あぁ、そうだよ…そうだよ……」
猛竜騎士(魔剣士…?)
白姫「……その方たちがいたから、今は平和にこうして吹雪の中を走れるんですよね」
白姫「有難うございます……」
猛竜騎士(白姫…?)
老婆「ほぅ…若い子でも息子たちに礼を言ってくれる子がいるんだねぇ…」
魔剣士「そりゃな」
老婆「当時はそりゃあ、必要な犠牲だったと…英雄だったと称えたがねぇ……」
白姫「必要な犠牲なんかありませんから…。それに英雄であっても、家族は嬉しくなかったと思います……」
老婆「お嬢ちゃん……」
白姫「な、生意気言ってごめんなさい…」
老婆「いやいや、嬉しいよ…。本当に、ありがとうねぇ……」
白姫「いえっ…」
老婆「……お礼に、良い事を教えてあげようかねぇ」
白姫「いいことですか?」
魔剣士「宝の在り処とかか!」
老婆「ひひっ…宝かい……」
老婆「確かに、今のアンタらにとっては大きなお宝かもしれないねぇ……」
魔剣士「おっ?マジで!」
老婆「あぁ…。実はねぇ、今年は還る日だからねぇ……」
老婆「準備をしたほうがいいんじゃないかって…そう思ってねぇ……」
魔剣士「"かえる?"」
老婆「そうら、聞こえて来ただろう?彼らの声が……」
魔剣士「声?」
白姫「それって一体……」
何のことかと二人が老婆に対し問いを投げかけた時、それは聞こえ始めた。
"ひし…ひし……"と、馬車の隅から、窓側から、鈍く重い、鈍重なまるで聞いたことがない、不快な音が。
魔剣士「あ…?」
白姫「何、この音……」
その音に対し、疑問を浮かべようとする前に、かなりの速度で強い反応をみせたのは魔剣士と白姫でもない、まさかの猛竜騎士であった。
猛竜騎士「この音はまさかっ!?」
魔剣士「おっ?」
白姫「ど、どうしたんですか!?」
そして、この反応は連鎖的に"それを知っている"冒険者たちが一斉に武器を持って立ち上がるきっかけになった。
それに伴い、旅半ばの深い眠りについていた人々も驚き、目を覚ます。
魔剣士「な、なんだなんだ?」
猛竜騎士「魔剣士、構えろ…。白姫、身を低くしておけ!」
白姫「え、えっ?」
魔剣士「何だどうしたんだオッサン!」
猛竜騎士「危なかった、この音が出てくれるだけ助かった…か」
魔剣士「だからどういうことだよ!?」
猛竜騎士「レイスだ…。まさかこの位置で出るとは、厄介な奴に捕まっちまったな……」
魔剣士「レイス…?」
猛竜騎士「良く聞け、これはちょっと手を焼くぞ……」
―――レイス
いわゆる精霊類だが、浮遊体の魔族だが正体は分かっていない。
その形態は様々で、基本色は白濁色だが、赤に近いほど凶暴性が高く魔法もしくは魔属性のみ触れることが可能である。
主に生物の"体力"をドレインすることで危険種に指定されており、その発生は屍が多くある場所に目撃が多いものの謎が多い。
魔剣士「…んだそれ!?」
白姫「だから冒険者さんたちも焦って立ち上がったんですねっ…」
猛竜騎士「アイツらは普通、音もなく急襲してくるんだ。だが条件は分からんが、発生する時に"ひしひし"っつー鈍重音が聞こえて来ることもあると聞くが…」
魔剣士「聞こえてきてラッキーっつーことか」
猛竜騎士「そういうことだ」
白姫(ん~…発生条件は生き物の屍って、ここは生命が宿りにくい厳しい場所って聞いてたのに発生するのかなぁ?)
白姫(…)
白姫「……あっ!し、屍ってもしかして…!」
猛竜騎士「恐らくはそうだろう。この周辺は、切り開くための雪中行軍隊が多く亡くなっている場所だからな。それに群がってたレイスらだろう」
魔剣士「ちっ、こんな場所で戦いかよ…!魔法を練って攻撃すりゃいいんだな!?」
猛竜騎士「あまり力を入れ過ぎるなよ。闇魔法を扱いきれていない今のお前は自爆する可能性があるんだからな」
魔剣士「分かってるっつーの!」
そこから、猛竜騎士の指示で白姫を含む一般市民や旅行者は床に伏せ、実力のある者はその武器を握った。
そして、それからすぐ。
馬車は停止し、レイスに気が付いたのかワゴン側から慌てた様子で運転手が客室側へと「出たァ!」と肩で息をしながら避難をしてきたようだった。
猛竜騎士「落ち着いてください、運転手さん」
運転手「ひ、ひぃぃっ!なんか前方にフワフワって真っ赤なのがいっぱいで……!」
猛竜騎士「恐らくはレイスです。前兆のひしひしとした音も馬車へと響いていたので…」
運転手「れ、レイスゥ!?聞いたことがある、でもそんなまさか、遺体が多く眠ってる場所とはいえこんなの仕事してて初めてで…!」
猛竜騎士「落ち着いてください。幸い、この馬車にはレイスを存じている冒険者や戦士たちが多いようだ。対処は可能ですので、床へと伏せてていただけますか」
猛竜騎士は、立って武器を構えている冒険者たちに目を向けると、それに伴ってそれぞれが頷いた。
運転手「お、お任せします…!俺ぁまだ死にたくないんだ、大事な家内がいるから、まだ……!」
猛竜騎士「えぇ大丈夫ですよ。ですから、落ち着いて床へと伏せていて頂けますか?」
運転手「わ、分かったぁ…!」
猛竜騎士「ちなみに、退路を取ることはできますか?戦いには身を投じることは極力控えたいのですが」
運転手「む、無理だぁ!魔馬が一度通った道は崩れやすくなって、戻る際は数日を置かないと道が氷り付いて通れないんだぁ!雪崩になるやもしれねぇ…!」
猛竜騎士「分かりました。では、あとはお任せください」
声を荒げることは逆効果になり、運転手がパニックになったら魔馬を動かすことで何をしでかすか分かったものではない。もしかしたら、魔馬を操り一緒に谷底へ落ちてしまうこともないわけでもなく、猛竜騎士は穏やかな表情と口調で運転手を床へと伏せさせた。
魔剣士「しかしアンタ、よくこの前も見えない吹雪の中で敵の位置が分かるもんだな」
運転手「そ、そりゃあ俺らは昔からこの商売してっからなぁ…!目が良くないと道も馬に教えられねぇから……!」
魔剣士「なるほどな。慣れとか、その地方に住むスキルみたいなもんなのか?」
運転手「さ、さぁ……。とりあえず、見えたから逃げて来ただけだぁ…助けてくれぇ……ッ!」
魔剣士「おうよ…任せとけって!」
二人との会話の後、運転手はガクガクと震えながら頭に手を回し、目をつむって恐怖に駆られてか口を開くことはなかった。
猛竜騎士(…よし、運転手に万が一があったり、パニックとなった行動をとられては俺らも巻き込まれてしまう)
猛竜騎士(しばらくはそのまま伏せて黙っていてくれよ…)
猛竜騎士(それと馬も守らねばなるまいし、外へと出たいがどう構えたものか。安価の店舗で購入した防寒具でこの吹雪の中で耐えられるか?)
猛竜騎士(この周辺でのレイスの被害は数百年確認出来ていないし、このタイミングで現れるとは…想定不足だった)
猛竜騎士(しかし、鈍重音が響いただけ良かった。もしこれが音の無い急襲だったら、全滅していたやもしれん……)
猛竜騎士(クッ…!馬が動かない以上、暖房効果も無くなる。時間との勝負にもなるか……)
魔馬が動力となって車内の温度、明かりは保たれていた。つまり、今は運転手が「止まれ」と命令し魔馬は完全に停止している状態において、魔馬の魔力の残りでかろうじて明かりと温度を保持していたが、それが消えるのも時間の問題だった。
猛竜騎士(馬を守るためにも、外で戦うのは得策になる。しかし、相手の数が分からない以上は飛び出すのは危険だ)
猛竜騎士(しかし、いや…!どうするか……っ!)
猛竜騎士(この吹雪で前も見えぬ、外に出たら逆にやられるだろう。だが、馬を守らねばそれこそ全滅する…くそっ……!)
レイスという敵は、そうそう出現するものではないことから猛竜騎士も対する経験は少なかった。とはいえ、この馬車内でそれを経験しているのは唯一彼だけであり、周囲の反応から察しても自身が決断をしなければならないのはハッキリと分かっていた。
だが、猛竜騎士も実力はあっても経験の浅い戦いは難しい。考慮するのに時間をかけ過ぎたのか、それはあっという間に訪れる。
猛竜騎士「む……」
白姫「あれ、なんか……」
魔剣士「少し寒くなって…きたか?」
気が付けば、魔馬の残りも失われたのか窓ガラスが徐々に霜付き、ビシビシと凍結していく音が聞こえていた。
それは暖房の効果が薄くなり始めた証拠で、車内は氷漬けされたものと同じ…あっという間に温度は下がって行く。
白姫「さ、寒いっ……」
魔剣士「大丈夫か!」
白姫「だ、大丈夫…っ」
魔剣士「オッサン、やばいんじゃねぇのかこれ!どうするんだよ!」
猛竜騎士「分かってるよ…!しかし相手はこの吹雪をものともせずに動けるんだ!今の俺らがこの豪雪の中に踏み入っても不利なだけだ!」
魔剣士「そ、そんなことも言ってもよ……!」
白姫「ぅ…あ、あぅ……っ」
魔剣士「し、白姫がっ!」
更に、明かりが一瞬"バチリ"と音を発すると、天井から煌々としていた明かりが消えたと思うと車内は一気に暗闇に包まれた。
外は陽も通さない雲に、手前すら見渡せない豪雪が襲う猛吹雪。ゴウゴウと音を立てる風の轟音に、車内へ響くひしひしという鈍重音が何よりも響く。
そしてついに、恐怖に駆られた一人が堪えることが出来ずに「うわぁぁぁっ!!」と大声で悲鳴を放った。
猛竜騎士(まずい…ッ!!)
集団において、一人の悲鳴はミスのないドミノのように嫌なほど合理的に連鎖して崩れていく。そのたった一人のパニックで、少しの我慢をすれば助かるはずがにバッドエンドを迎えることなんて珍しいことではない。
"……そうだ。そうなるならば、いっそのこと一度全員を気絶させるまでもあるか――……?"
その悲鳴から、猛竜騎士のその考えが及ぶまでおおよそ1秒もかからなかったが、実際にはその悲鳴の瞬間、咄嗟に彼の1秒よりも早く、わずかに早く、「白姫を守るために」馬車の扉から彼は飛び出した――……。
―――出発から5時間後。
魔剣士一行は、ブルーノース・ポートを出発して折り返し地点を過ぎたところまで来ていた。
出発後はすぐに港の大門をくぐり山道へと入り、1時間もしないうちに辺りは雪で覆われ始め、みるみるうちに窓の外は雪化粧へと変化していったことに白姫は歓喜の声をあげていたようだったが、それもつかの間、外はあっという間に何も見えぬような"白き世界"へと包み込まれ、かなり厚い筈の窓からも薄らと冷気すら感じるようになっていた。
話は聞いていたが、天候が崩れだすと止まることは知らず、もしもこの馬車がなければ今頃はその景色の一部となっていたことは嘘でないと調子の良い魔剣士にですらそれはハッキリと理解できていた。
魔剣士「……すぐに雪が降り始めたと思ったらずっとコレかよ」
白姫「ず~っと真っ白だね…!でも、雪は凄く綺麗だと思うよっ」
魔剣士「いや…この量は楽しむとかそういうレベルじゃ」
猛竜騎士「だから言っただろう、お前はこの雪の中を歩くつもりだったのか?」
魔剣士「い、いやいくらなんでもココまで酷いもんだとは」
猛竜騎士「……まぁ、この雪や悪天候だからこそこの土地では錬金術が著しく発展したんだがな」
魔剣士「あん?」
白姫「どういうことですか?」
猛竜騎士「それはな……」
―――錬金術。
人とは切って切れぬ縁となった魔法を、道具へと付与しそれを昇華させた利便性の高い道具のことである。"錬金器具"とも呼ばれ、魔法効果をもつ道具一切を呼ぶことも少なくない。
ただ、その名で呼んだり錬金術が著しく発展しているのは主に北方大地側を主にした北側で、セントラル王城近辺ではまだ魔法用具の名であることも多い。実際、魔剣士らが着用していた魔法衣もそれを錬金道具として呼ぶことはなかったし、猛竜騎士もその時はそう呼んではいなかったことから浸透の低さはよく分かる。
そして、北方側で錬金術が発展した要素としてはこの地形が関係しており……。
猛竜騎士「厳しい天候や、自然に立ち向かうために編み出された魔法用具の数々が錬金術の元祖になったんだ」
魔剣士「…なるほどな」
白姫「なるほどです!」
猛竜騎士「西方大地には大自然の生み出す物に対し、それなりの魔法研究家たちも在住していたのは覚えてるか?」
魔剣士「おう、魔法書が多く安くあるのもそのおかげだっけか」
猛竜騎士「そうだ。しかし北方大地には錬金術を始めとした魔法研究連合とその本部があり、西方に住む研究家たちも元はここから派遣されたものも少なくないんだ」
魔剣士「ほぉ~」
白姫「凄いですね、北方と西方はかなり離れてるのにそんな繋がりがあるなんて…」
猛竜騎士「何を言ってる、この世界は所詮…一人じゃ生きていけない。それぞれの繋がりを大事に、よりみんなが幸せになれるよう努力をしているんだ」
魔剣士「へぇ」
猛竜騎士「冒険者だって、この大地を切り開くために大勢の命を落としたし、今も人知れず人の為に戦っている奴だっている」
猛竜騎士「エルフ族のようなまだ分かち合うことも難しい魔族もいるが、いずれは一丸となって後世のために世界をより良くしていかなくちゃいけないんだよ」
魔剣士「……かっこつけやがって」
猛竜騎士「ハハハ、かっこいいか?」
魔剣士「…全然!つーか、オッサンも俺らを付け狙ってる元バウンティハンターだろうが!」
猛竜騎士「む……」
魔剣士「…そうだ!オッサン、昔の話してくれるんだったんじゃねえのか?」
猛竜騎士「あぁ」
魔剣士「元冒険者だの元バウンティハンターだの、教えろって」
白姫「あ、聞きたいです!」
猛竜騎士「以前もちょっと話をしたが、簡単なもんだ。俺は冒険者であり元バウンティハンターで生活をしていたんだ」
猛竜騎士「ウィッチらも賞金首を捕まえてその土地に差し出すことはあったし、仲間らと別れてからはしばらくそれで過ごしてたというわけだ」
魔剣士「へぇ、それで暫くした後に冒険時代に培った知識で商人やってたと」
猛竜騎士「そーいうこと。手に職も欲しかったし、いつまでも冒険者やっても限界が来る。早い段階で見切りをつけただけだ」
魔剣士「だけど、今もこんなことやってるけどな」
猛竜騎士「本当にな」
魔剣士「ククク、根っからの冒険バカじゃねーか。俺らに世話焼いてたのしーかね?」
白姫「あーっ、魔剣士!折角、猛竜騎士さんが助けてくれてるのにそんな言い方!」
魔剣士「え、あ…いや……!」
魔剣士の一言に、突っ込む白姫。また、猛竜騎士の普段の態度から恐らく「うるさいぞ」と怒鳴るのではないかと思ったが、返ってきた返事は意外にも素直な言葉だった。
猛竜騎士「……楽しいさ」
魔剣士「お…」
白姫「猛竜騎士さん!」
猛竜騎士「正直、魔剣士がいい加減に大人になってくれと、ムカつくこともあるがそこはあえて考えないでおこう」
魔剣士「ぶん殴ってるくせに良く言うぜ」
白姫「魔剣士!」
魔剣士「ハイ」
猛竜騎士「結局、言う通り俺は冒険バカなんだろうな。素直なところ、お前らを守るという他にスリルのためにやってるのかもしれないと思う時がある」
猛竜騎士「しかし、楽しいことは楽しいさ」
猛竜騎士「お前らとバカやって、ちょっと大人ぶったり、先輩風吹かせたりすることも…何もかも」
猛竜騎士「またこうして旅立つなんて思いもしなかったし、ハハ…これからもよろしく頼むぞ…二人とも」
魔剣士「……う、うっせ!分かってるっつーの!」
白姫「はいっ、よろしくお願いします♪」
猛竜騎士「フッ…」
結局は、もう本当の仲間になっているのだろう。今日この瞬間まで、幾度も戦い、旅をし、命を懸けた戦いをしてきた三人はいつしか本音を口にできなくても、互いを互いに想える関係となっていたに違いない。
今、誰が倒れても、きっとその為に命を懸けて戦えるのだから……。
魔剣士「…」
白姫「…」
猛竜騎士「…」
さて、馬車に乗ってからここまでのおおよそ5時間20分が経過しようとしていた。外は猛吹雪のまま、馬車の中は温かく、長い時間揺られてかいよいよ魔剣士と白姫は疲労感に襲われているようだった。
そしてついに。少しずつまぶたが重く、窓からわずかに唸るゴォゴォという風ですら子守唄のように聞こえてくる。
魔剣士と白姫は残像のように残る真っ白な窓の雪を見つめつつ、互いに寄り添って眠りに落ちるかどうかの寸前。すぐ近くに座っていた老婆が「お兄さん」と口を開いた。
老婆「……お兄さんたち、冒険者かい?」
魔剣士「あァ…?」
老婆「近くにいたから話が聞こえてきててね、仲が良いんだなぁと思ってね」
魔剣士「だから何だよ…」
猛竜騎士(ん…?)
老婆「いや何、それだけさ。眠りの邪魔をして悪かったねぇ。お兄さんみたいな若い人らを見るとつい思い出してしまってねぇ……」
魔剣士「何をだよ…」
老婆「雪中行軍のことさ。私の息子もいたんだ……」
魔剣士「あん?」
白姫「せっちゅー…こーぐん……?」
老婆の一言に、二人は反応した。だが、それ以上に猛竜騎士がその言葉にピクリと眉を動かした。
猛竜騎士(何だと…?)
白姫「雪中行軍て何ですか?」
老婆「ハハハ、もうそれを知らない年頃の子どもたちが生まれているとはねぇ……」
魔剣士「知らねぇことは知らねぇんだ、仕方ねーだろうが」
老婆「…そうだねぇ、ごめんなぁ」
魔剣士「んで、その雪中行軍がどうしたんだよ」
老婆「ハハ…。この辺は折り返し地点、港と氷山帝国の折り返し地点…だろう?」
魔剣士「そうなのか」
老婆「そうさ…。息子を含めた兵士たちは、200人以上がこの道を切り開くため、この周辺で亡くなったんだよ……丁度このあたりさ…」
魔剣士「そうか…」
老婆「遺体も回収されず、永遠に氷の中に埋まって…可哀想になぁ……」
魔剣士「…氷の中にか」
老婆「あぁ、そうだよ…そうだよ……」
猛竜騎士(魔剣士…?)
白姫「……その方たちがいたから、今は平和にこうして吹雪の中を走れるんですよね」
白姫「有難うございます……」
猛竜騎士(白姫…?)
老婆「ほぅ…若い子でも息子たちに礼を言ってくれる子がいるんだねぇ…」
魔剣士「そりゃな」
老婆「当時はそりゃあ、必要な犠牲だったと…英雄だったと称えたがねぇ……」
白姫「必要な犠牲なんかありませんから…。それに英雄であっても、家族は嬉しくなかったと思います……」
老婆「お嬢ちゃん……」
白姫「な、生意気言ってごめんなさい…」
老婆「いやいや、嬉しいよ…。本当に、ありがとうねぇ……」
白姫「いえっ…」
老婆「……お礼に、良い事を教えてあげようかねぇ」
白姫「いいことですか?」
魔剣士「宝の在り処とかか!」
老婆「ひひっ…宝かい……」
老婆「確かに、今のアンタらにとっては大きなお宝かもしれないねぇ……」
魔剣士「おっ?マジで!」
老婆「あぁ…。実はねぇ、今年は還る日だからねぇ……」
老婆「準備をしたほうがいいんじゃないかって…そう思ってねぇ……」
魔剣士「"かえる?"」
老婆「そうら、聞こえて来ただろう?彼らの声が……」
魔剣士「声?」
白姫「それって一体……」
何のことかと二人が老婆に対し問いを投げかけた時、それは聞こえ始めた。
"ひし…ひし……"と、馬車の隅から、窓側から、鈍く重い、鈍重なまるで聞いたことがない、不快な音が。
魔剣士「あ…?」
白姫「何、この音……」
その音に対し、疑問を浮かべようとする前に、かなりの速度で強い反応をみせたのは魔剣士と白姫でもない、まさかの猛竜騎士であった。
猛竜騎士「この音はまさかっ!?」
魔剣士「おっ?」
白姫「ど、どうしたんですか!?」
そして、この反応は連鎖的に"それを知っている"冒険者たちが一斉に武器を持って立ち上がるきっかけになった。
それに伴い、旅半ばの深い眠りについていた人々も驚き、目を覚ます。
魔剣士「な、なんだなんだ?」
猛竜騎士「魔剣士、構えろ…。白姫、身を低くしておけ!」
白姫「え、えっ?」
魔剣士「何だどうしたんだオッサン!」
猛竜騎士「危なかった、この音が出てくれるだけ助かった…か」
魔剣士「だからどういうことだよ!?」
猛竜騎士「レイスだ…。まさかこの位置で出るとは、厄介な奴に捕まっちまったな……」
魔剣士「レイス…?」
猛竜騎士「良く聞け、これはちょっと手を焼くぞ……」
―――レイス
いわゆる精霊類だが、浮遊体の魔族だが正体は分かっていない。
その形態は様々で、基本色は白濁色だが、赤に近いほど凶暴性が高く魔法もしくは魔属性のみ触れることが可能である。
主に生物の"体力"をドレインすることで危険種に指定されており、その発生は屍が多くある場所に目撃が多いものの謎が多い。
魔剣士「…んだそれ!?」
白姫「だから冒険者さんたちも焦って立ち上がったんですねっ…」
猛竜騎士「アイツらは普通、音もなく急襲してくるんだ。だが条件は分からんが、発生する時に"ひしひし"っつー鈍重音が聞こえて来ることもあると聞くが…」
魔剣士「聞こえてきてラッキーっつーことか」
猛竜騎士「そういうことだ」
白姫(ん~…発生条件は生き物の屍って、ここは生命が宿りにくい厳しい場所って聞いてたのに発生するのかなぁ?)
白姫(…)
白姫「……あっ!し、屍ってもしかして…!」
猛竜騎士「恐らくはそうだろう。この周辺は、切り開くための雪中行軍隊が多く亡くなっている場所だからな。それに群がってたレイスらだろう」
魔剣士「ちっ、こんな場所で戦いかよ…!魔法を練って攻撃すりゃいいんだな!?」
猛竜騎士「あまり力を入れ過ぎるなよ。闇魔法を扱いきれていない今のお前は自爆する可能性があるんだからな」
魔剣士「分かってるっつーの!」
そこから、猛竜騎士の指示で白姫を含む一般市民や旅行者は床に伏せ、実力のある者はその武器を握った。
そして、それからすぐ。
馬車は停止し、レイスに気が付いたのかワゴン側から慌てた様子で運転手が客室側へと「出たァ!」と肩で息をしながら避難をしてきたようだった。
猛竜騎士「落ち着いてください、運転手さん」
運転手「ひ、ひぃぃっ!なんか前方にフワフワって真っ赤なのがいっぱいで……!」
猛竜騎士「恐らくはレイスです。前兆のひしひしとした音も馬車へと響いていたので…」
運転手「れ、レイスゥ!?聞いたことがある、でもそんなまさか、遺体が多く眠ってる場所とはいえこんなの仕事してて初めてで…!」
猛竜騎士「落ち着いてください。幸い、この馬車にはレイスを存じている冒険者や戦士たちが多いようだ。対処は可能ですので、床へと伏せてていただけますか」
猛竜騎士は、立って武器を構えている冒険者たちに目を向けると、それに伴ってそれぞれが頷いた。
運転手「お、お任せします…!俺ぁまだ死にたくないんだ、大事な家内がいるから、まだ……!」
猛竜騎士「えぇ大丈夫ですよ。ですから、落ち着いて床へと伏せていて頂けますか?」
運転手「わ、分かったぁ…!」
猛竜騎士「ちなみに、退路を取ることはできますか?戦いには身を投じることは極力控えたいのですが」
運転手「む、無理だぁ!魔馬が一度通った道は崩れやすくなって、戻る際は数日を置かないと道が氷り付いて通れないんだぁ!雪崩になるやもしれねぇ…!」
猛竜騎士「分かりました。では、あとはお任せください」
声を荒げることは逆効果になり、運転手がパニックになったら魔馬を動かすことで何をしでかすか分かったものではない。もしかしたら、魔馬を操り一緒に谷底へ落ちてしまうこともないわけでもなく、猛竜騎士は穏やかな表情と口調で運転手を床へと伏せさせた。
魔剣士「しかしアンタ、よくこの前も見えない吹雪の中で敵の位置が分かるもんだな」
運転手「そ、そりゃあ俺らは昔からこの商売してっからなぁ…!目が良くないと道も馬に教えられねぇから……!」
魔剣士「なるほどな。慣れとか、その地方に住むスキルみたいなもんなのか?」
運転手「さ、さぁ……。とりあえず、見えたから逃げて来ただけだぁ…助けてくれぇ……ッ!」
魔剣士「おうよ…任せとけって!」
二人との会話の後、運転手はガクガクと震えながら頭に手を回し、目をつむって恐怖に駆られてか口を開くことはなかった。
猛竜騎士(…よし、運転手に万が一があったり、パニックとなった行動をとられては俺らも巻き込まれてしまう)
猛竜騎士(しばらくはそのまま伏せて黙っていてくれよ…)
猛竜騎士(それと馬も守らねばなるまいし、外へと出たいがどう構えたものか。安価の店舗で購入した防寒具でこの吹雪の中で耐えられるか?)
猛竜騎士(この周辺でのレイスの被害は数百年確認出来ていないし、このタイミングで現れるとは…想定不足だった)
猛竜騎士(しかし、鈍重音が響いただけ良かった。もしこれが音の無い急襲だったら、全滅していたやもしれん……)
猛竜騎士(クッ…!馬が動かない以上、暖房効果も無くなる。時間との勝負にもなるか……)
魔馬が動力となって車内の温度、明かりは保たれていた。つまり、今は運転手が「止まれ」と命令し魔馬は完全に停止している状態において、魔馬の魔力の残りでかろうじて明かりと温度を保持していたが、それが消えるのも時間の問題だった。
猛竜騎士(馬を守るためにも、外で戦うのは得策になる。しかし、相手の数が分からない以上は飛び出すのは危険だ)
猛竜騎士(しかし、いや…!どうするか……っ!)
猛竜騎士(この吹雪で前も見えぬ、外に出たら逆にやられるだろう。だが、馬を守らねばそれこそ全滅する…くそっ……!)
レイスという敵は、そうそう出現するものではないことから猛竜騎士も対する経験は少なかった。とはいえ、この馬車内でそれを経験しているのは唯一彼だけであり、周囲の反応から察しても自身が決断をしなければならないのはハッキリと分かっていた。
だが、猛竜騎士も実力はあっても経験の浅い戦いは難しい。考慮するのに時間をかけ過ぎたのか、それはあっという間に訪れる。
猛竜騎士「む……」
白姫「あれ、なんか……」
魔剣士「少し寒くなって…きたか?」
気が付けば、魔馬の残りも失われたのか窓ガラスが徐々に霜付き、ビシビシと凍結していく音が聞こえていた。
それは暖房の効果が薄くなり始めた証拠で、車内は氷漬けされたものと同じ…あっという間に温度は下がって行く。
白姫「さ、寒いっ……」
魔剣士「大丈夫か!」
白姫「だ、大丈夫…っ」
魔剣士「オッサン、やばいんじゃねぇのかこれ!どうするんだよ!」
猛竜騎士「分かってるよ…!しかし相手はこの吹雪をものともせずに動けるんだ!今の俺らがこの豪雪の中に踏み入っても不利なだけだ!」
魔剣士「そ、そんなことも言ってもよ……!」
白姫「ぅ…あ、あぅ……っ」
魔剣士「し、白姫がっ!」
更に、明かりが一瞬"バチリ"と音を発すると、天井から煌々としていた明かりが消えたと思うと車内は一気に暗闇に包まれた。
外は陽も通さない雲に、手前すら見渡せない豪雪が襲う猛吹雪。ゴウゴウと音を立てる風の轟音に、車内へ響くひしひしという鈍重音が何よりも響く。
そしてついに、恐怖に駆られた一人が堪えることが出来ずに「うわぁぁぁっ!!」と大声で悲鳴を放った。
猛竜騎士(まずい…ッ!!)
集団において、一人の悲鳴はミスのないドミノのように嫌なほど合理的に連鎖して崩れていく。そのたった一人のパニックで、少しの我慢をすれば助かるはずがにバッドエンドを迎えることなんて珍しいことではない。
"……そうだ。そうなるならば、いっそのこと一度全員を気絶させるまでもあるか――……?"
その悲鳴から、猛竜騎士のその考えが及ぶまでおおよそ1秒もかからなかったが、実際にはその悲鳴の瞬間、咄嗟に彼の1秒よりも早く、わずかに早く、「白姫を守るために」馬車の扉から彼は飛び出した――……。
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