104 / 176
第九章【セントラル】
9-2 現状、事実
しおりを挟む
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――それから2日後。
氷山帝国を旅立った三人は、ブルノースポートよりセントラル行きの船に乗船。
現在、広大な海の真上にいた。時刻は夕暮れ、あと3日程の航海ののち、大地へと旅立ったあの"南方港"へと到着する予定である。
魔剣士と白姫は、甲板で様々な想いを馳せながら、沈む夕日を見つめていた。
白姫「ついに、中央大地に戻るんだね。セントラルに……」
魔剣士「あれから数か月。旅立った時にゃ考えられないほど俺ぁ強くなったぜ」
白姫「うんっ。ずっと旅をして来て、やっぱり魔剣士は約束を守ってくれたね」
魔剣士「何?」
白姫「私を守ってくれるってこと。ずーっと、今まで……」
魔剣士「あぁ、当然じゃねぇか。俺はお前の従者だからな」
白姫「うんっ!」
二人は並び、互いに身を寄せ合う。
魔剣士は改めて白姫を見て、潮風に揺れる黒髪に、凛としつつも可愛らしさ、優しさを感じる顔立ちに思わず微笑んだ。
魔剣士「ククッ……」
白姫「なぁに?」
魔剣士「いや、何でもねぇよ」
白姫「うっそだ。今、笑ってたよ!」
魔剣士「何でもないって、ハハハッ」
白姫「あーっ、ほら!やっぱり笑ってる!」
まるで周りからは見るに堪えないそれであったが、誰が二人は命を懸け続けてきて、いや…今も懸けてココへ立っていると信じるだろうか。
だから、どんなわずかな時間でも二人にとっては安らぎを覚える時間であったのだが……。
「……おい、楽しそうだなぁ!」
そんな時でも、必ずといっていいほどに邪魔は入る。
魔剣士「……あ?」
背後から野太い男の声。振り向くと、そこには強靭たる肉体をモリモリと見せつけるような薄着の男と、小柄な男の二人組がニタニタと笑いながらこちらを見ていた。
魔剣士「ンだ、テメェら」
どう見ても、彼らが喧嘩を売ってきているのは明白。安らぎの時間を邪魔され、魔剣士は明らかに苛立つ。
すると、筋肉男は不敵な笑みを見せ、まさかの言葉を名前を口にする。
「お前は、魔剣士と白姫だろう?」と。
白姫「えっ!?」
魔剣士「何っ!?」
名前を出されて驚く二人。その反応を見て、筋肉男は「やはりな」と呟いた。
魔剣士「俺らのことを知ってるってことは……」
少なくとも、面白半分に接触してきた相手ではない。そっと腰へ、剣を抜くように構える。
魔剣士「何モンだ、テメェら……」
眼光鋭く、睨む。筋肉男はそれを見て、「おっと…大人しくしてもらおうか」と、脅しも含めて隆々たる筋力の腕を見せつけた。
ビーグゥ「俺ぁビーグゥ!お前らは賞金首の二人組だろう!!」
魔剣士「ッ!」
なるほど、コイツらの正体は。
魔剣士「バウンティハンターか……!」
既に船はセントラル行き、言うなればセントラル領海内へと入っている。
北方大地の賑わう港より発船している船に、賞金首狩りがいないことは不思議ではない。
ビーグゥ「殺しても大金、何をしても大金、白姫様がこんな可愛いとは思わなかったぜぇ……!?なぁ、チィビィ!」
チィビィ「えぇ、兄貴!」
筋肉達磨に、俊敏そうな小柄な男。
魔剣士「……フン、お互いの弱点を補う存在みたいだな」
ビーグゥ「ほほう…よく分かったな」
チィビィ「俺ぁ兄貴の手足!兄貴はその力の強さで、俺は速度で全てを捻じ伏せるんだぜ!」
魔剣士「速さとパワー、ね」
ビーグゥ「そうだとも!お前は諦めるしか道はない!」
魔剣士「へぇ……」
ビーグゥ「お前らが賞金首になってから、"行方をくらまして"いたようだがココで見つけたが100年目!覚悟するが良いッ!!」
魔剣士「なるほど……」
"行方をくらまして"いた間に、どんな経験でどのような力を身に着けてきたのか知らないことは、彼らにとって不幸に違いない。
魔剣士「白姫、下がってろ」
白姫「うんっ」
前に出ると、剣を構えようとしていた手を離し、片手をチョイチョイと動かして二人を煽った。
魔剣士「ほら、来いよ」
ビーグゥ「その剣を捨て、俺らと戦おうというのか!?」
魔剣士「これで十分だ」
ビーグゥ「ククッ、お前の猛者ぶりは知っている。セントラル王城で兵士相手に暴れたことくらい、知っているぞ!」
魔剣士「で?」
ビーグゥ「実力に自信があるのは良い事だが、慢心は身を滅ぼす。あの頃のセントラル兵士なんざ、冒険者と比べてゴミだったのだからな!」
魔剣士「だから何よ」
ビーグゥ「つまり!それより!強い!俺は!お前を!余裕で!倒せるのだァーーーッ!!」
両手でポーズを取り、筋肉をモリモリと見せつける。
魔剣士「……御託はいらんっつーの。それに、その言葉そのまま返すぜ」
ビーグゥ「何ィ!?」
魔剣士「慢心は身を滅ぼすってことだ」
ビーグゥ「……言っているが良いッ!」
魔剣士「お前から先に攻撃を受けてやる。一番良い技で頼むぞ」
ビーグゥ「おのれっ、どこまでも慢心を…!良かろうッ!この技で海の藻屑となるがいい!!」
天高く両腕を突き上げ、魔力を込めた。多少の時間はかかっている様子だったが、本来この間に小柄な男が敵を翻弄していたりしたのだろう。
魔剣士(……っと、戦況っつーか戦いの読みが出来るようになってきたな。成長してるって気がするぜ)
自信の成長に少し驚いている間に、ビーグゥは全身へのパワーを蓄積が完了し、「いくぞぉっ!」と声をあげた。
ビーグゥ「超…撃…打ァァァッ!!!」
魔力による幻影か、彼の拳は人を簡単に飲みこむ程に巨大化し、魔剣士めがけて打撃が飛んだ。
しかし、魔剣士も白姫も微動だにせず。迫る拳に顔色一つ変えなかった。
ビーグゥ(……な、なんだ!?避けぬ、動かぬのか!?)
諦めたのかとも思ったが、"それは"直前に発動。どこからともなく具現化した"氷結の壁"が、ビーグゥの拳を弾き飛ばしたのだった。
ビーグゥ「ぬぐあっ!!?」
氷壁を殴った痛みか、弾き飛ばされたビーグゥは拳を抑え、魔剣士を睨む。
ビーグゥ「う、うぐっ……!?」
魔剣士「棘型の壁じゃなかっただけ、有り難いと思え。そうしていたらお前の拳はもう使い物にならなかっただろうよ」
ビーグゥ「お、おぉぉ…おのれッ!どこからともなく氷の壁を…!?」
魔剣士「おっと顔色が変わったな」
ビーグゥ「恐らくは無詠唱…、しかもとてつもない早さの魔法の具現化か…!」
魔剣士「ちったぁ頭が回るんだな、筋肉達磨の癖に」
ビーグゥ「ぬぅぅっ……!」
悔しそうな表情に、次にチィビィが動きを見せた。
チィビィ「よ、よくも兄貴を!」
魔剣士「うっせぇぞクソチビ」
チィビィ「くっ…!誰がクソチビだ、俺の動きが見えるかァ!!?」
やはり、もう一人の得意技量は俊敏。チィビィは意外にもかなりの完成度を誇る"縮地"で、辺りから姿を消した。
そして姿を消したチィビィは、どこからともなく「見えるか、殺すぞ!」と恐怖を煽る演出を見せる。
魔剣士「……はぁ」
だが、それを確認した魔剣士は相変わらず面倒くさそうにため息をついた。
魔剣士「一般人、相手ならな」
魔剣士は即座に腕を伸ばしたかと思うと、何もない場所で"グッ…"力を込めて手を握り締めた。
すると、その手先。
チィビィ「うっ、うぐぇああっ!?」
首を絞めつけられたチィビィの姿が現れたのだった。
ビーグゥ「な、何だと!?」
チィビィ「ぐぇっ…!うぐぅうえっ!?」
魔剣士「…返すぜ」
小柄だった彼を、魔剣士はビーグゥ目掛けてぶん投げ、それを受け止めた彼は目を丸くした。
ビーグゥ「そ、そんなバカな……!」
チィビィ「ゲホッ…!ゴホゴホッ!俺の動きを、そんな簡単に……!」
魔剣士「…フン」
それは完成度の誇る"縮地"だったが、あくまでも完成度が高いだけ。そもそも猛竜騎士の縮地や、アサシンの暴風化を見てきた魔剣士にとって、この程度の動きは赤子の手を捻る程度だっただろう。
魔剣士「まだ戦いたいのなら、相手になってやるが?」
ビーグゥ「え…あ……」
チィビィ「あ、兄貴ぃ……」
魔剣士「どうする。今ならまだ見逃してやらんでもないぞ?」
ビーグゥ「ぐ…ぐぐっ……!」
魔剣士「早く決めろっ!!」
ビーグゥ「ひぃーーーーっ!?」
ビーグゥは痛む拳でチィビィを抱え上げると、甲板からあっという間に逃げて行ったのだった。
白姫「……あっという間に逃げちゃった!」
魔剣士「ったく、人の楽しい時間を邪魔しやがって」
白姫「よく忘れちゃうけど、私たちは世間から見たら犯罪者なんだよね……」
魔剣士「一応バウンティハンターの面子は社会的に必要な存在だが、あんな奴らばっかだとどうにもな……」
犯罪者を狩ることこそ、バウンティハンターの生業。加えて、彼らがいることが治安の維持に貢献していることは確かだろう。
「……ですが、その有り余る実力や力を自らの欲望に任せるハンターも多く、ハンター自身が賞金首になり得ることもある、ですよね」
魔剣士「……あ?」
魔剣士が言いかけた言葉を、また、近くに立っていた男がボソリと呟いた。
魔剣士「また、敵か…?」
いい加減面倒になった魔剣士は、腕を伸ばして先に攻撃を仕掛けようとしたが、男は慌てて「敵じゃありませんよ!」と叫んだ。
ブリレイ「僕はブリレイ。元魔法連合の研究者…、今はセージ様とお仕事をさせていただいております」
魔剣士「……あん?」
白姫「セージさんの…、後輩さん?」
ブリレイ「魔剣士さんと、白姫さんですよね?」
…………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――10分後。
元魔法連合の研究者で、現在はセージと共に仕事をしているというその男。
容姿はヒョロヒョロと細長く、白いシャツ、真ん中ボタンでピッタリ留めている茶色の薄いベスト、黒い髪の毛は七三分けの細目、いかにもどこぞの物語に出てきそうな"研究者"の姿に、逆に疑ってしまう程だった。
魔剣士「本当にあんた、セージの仲間なのか?」
本当にセージの遣いだった場合、表向きは話は出来ない。念のため、猛竜騎士を加えた魔剣士たちの客室で彼に話を聞くことにした。
ブリレイ「当然のことで驚かせてしまい、申し訳ありませんでした。…と言っても、セージ様は僕が魔剣士さん達と関わるのは予想外だったでしょうが……」
魔剣士「どういうことだ?」
ブリレイ「恐らくお話しは聞いているでしょうが、現在、我が国からセントラルへ"スパイ"を潜り込ませております」
魔剣士「あぁ……」
ブリレイ「僕は、今この時セントラルへ先に派遣されている研究者と代わる形で派遣される仕事を任されていたんです」
魔剣士「……それで?」
ブリレイ「ですが、出船予定だった4日前の船からこの海域が嵐のために延期。一歩遅れたかたちで乗船し、甲板で休んでいたところ…たまたまハンターとのやりとりを聞いてしまい、折角なので声を駆けさせて頂いた次第になります」
魔剣士「そういうことね……」
セージが情報を漏らすとは思えないし、スパイの話を知っているということは仲間で間違いないだろうが、念のために猛竜騎士は続いて口を開く。
猛竜騎士「……ブリレイさんといったかな」
ブリレイ「えぇ、そうです」
猛竜騎士「裏の事情を知り得るということは、敵じゃないことは認識できた」
ブリレイ「大変嬉しいお言葉です」
猛竜騎士「だったら一つ質問がある」
ブリレイ「何でしょう?」
猛竜騎士「いや、敵だとかそういう質問じゃない。あまりに慌ただしくセントラルへ向かってしまって、現状についてあまり聞くことが出来なかったんだ」
ブリレイ「現状…ですか?」
猛竜騎士「セントラルだ」
ブリレイ「セントラルの現状…なるほど」
時間がなかったため、急いで出発したことによりセントラルの情報をほとんど入手できていないのが現状。もしブリレイが今のセントラルについて何か知っていれば、少しでも情報が欲しかった。
ブリレイ「お答えできる範囲では」
猛竜騎士「魔剣士や白姫の賞金首の状態はどうなっている?」
ブリレイ「変わりはないと思われます」
猛竜騎士「セントラルに大きい変化は?」
ブリレイ「裏側ではありますが、秘密研究所の設立に闇魔法の会得者の可能性がチラホラとセージ様より」
猛竜騎士「君は今までそれに干渉したことはないのか?」
ブリレイ「セージ様の命により、一人が全ての情報を持たぬよう、派遣には交代制を取っております。初期段階の実験には参加致しましたが、今の詳細はまだ……」
猛竜騎士「なら、一般市民も知り得るような表向きの変化はないか?」
ブリレイ「表向きですか…。有名なお話しでご存知の件かとも思いましたが、重ねての情報となる可能性がありますがよろしいでしょうか?」
猛竜騎士「何でも良い。聞かせてくれるか」
長いことセントラルを離れていたため、些細な情報でも求めざるを得なかった。
ブリレイ「それならば。先ず…騎士団が成立致しましたね」
猛竜騎士「騎士団?」
魔剣士「何?」
白姫「騎士団ですか?」
ブリレイ「おっとっと…、この辺はセージ様より伺っていると思っておりましたが……」
猛竜騎士「いや、聞いていない。時間がなかったために、ほとんどの情報は貰ってないんだ」
ブリレイ「……なるほどですね。分かりました、では、お話しをさせていただきます」
猛竜騎士「よろしく頼む」
ブリレイ「えぇ、では……」
魔剣士「…」
白姫「…」
三人は息を呑んでブリレイの話に耳を傾ける。
ブリレイ「簡単に説明すれば、世界から召集されたエリートの冒険者や戦士たちによって結成された軍隊のようなものです」
猛竜騎士「……何?」
ブリレイ「最高の手当てといいますか、セントラルにて高い報酬を与えることで、多くの優秀な戦士たちをセントラルに招いたようでした」
猛竜騎士「そんなことを?」
ブリレイ「また、王城ではそれの選抜テストを行っております。選考会とでも言いますか……」
猛竜騎士「テストだと?」
ブリレイ「えぇ、入隊テストのために割とセントラルへ無名の腕利きたるハンター、戦士の類が集まっているらしく」
猛竜騎士「……集まる、だと」
ここで猛竜騎士が"ピン"と勘が冴えた。
猛竜騎士「待てブリレイ、そのテストや召集はいつからだ?」
ブリレイ「闇魔法の会得前から徐々に行われていたようです。白姫様たちを捕えるために結成されたものかとも思い、こちらの情報は既に知っているものと思っておりましたが……」
猛竜騎士「聞いていない情報だ。そうか、知っていると思い…だからセージもあえて説明しなかったのか……」
ブリレイ「恐らくは」
猛竜騎士「いや、それは良い。それよりも…それならば合点がいくことがある」
ブリレイ「は…」
猛竜騎士「バウンティハンターの少なさだ。いくら俺たちが地方へ逃げていたからといって、俺らを追うハンターの数があまりにも少なすぎていたが、そういうことだったのか……」
魔剣士(あぁ……)
猛竜騎士の言う通り、遊んで暮らせるような金が手に入るというのに、今までバウンティハンターが追ってこなかった理由と結びつく。
ブリレイ「一つの考えではありますが、先ほども申した通り、当初は白姫様たちを捕まえる為に結成されたのが闇魔法の伝達によって目的が変わったのかもしれません」
猛竜騎士「……世界掌握のための騎士団になったということか」
ブリレイ「どのみち、強い者たちを囲うことは脅威です。既に、セントラルの新体制は築かれつつもあります」
猛竜騎士「過去から勤めている兵士たちはどうした?」
ブリレイ「更に選抜された者は騎士団へ。それ以外は、領地内の遠征へ飛ばされているようです」
猛竜騎士「とことん強き者で固めるということか……」
ブリレイ「まるであの再現ですね。時代は繰り返すのでしょうか。今度の敵は、罪のない人々になるというのに……」
猛竜騎士「あの、再現?」
ブリレイ「50年前の、対アサシンとして結成された十字軍政策のそれと一緒だと感じました」
猛竜騎士「!」
魔剣士「なっ…!」
白姫「アサシンて……!」
嫌でも聞きなれていた名前に、思わず反応する。
ブリレイ「お、おやおや……?」
魔剣士「くそがっ!またその名前を聞くことになるとは……!」
ブリレイ「い、如何なさいましたか?」
魔剣士「アサシンには嫌っつーほどに煮え湯を飲まされたからな…!」
ブリレイ「……アサシンと会ったのですか?」
魔剣士「あぁ、だけどその話はやめてくれ。ちょっとイラつくからな……」
ブリレイ「あ…!も、申し訳ありません!」
ブリレイは頭を深々と魔剣士に向かって下げる。どうやら、かなり腰の低い男らしい。
猛竜騎士「気にしないでくれ、ブリレイ」
ブリレイ「そ、そう言っていただけると……」
猛竜騎士「それより話を戻そう。それで…50年前、その政策ではどんな動きがあったんだ?もしかすると対セントラルになる策のヒントがあるかもしれんからな」
ブリレイ「あ、はい…。えぇとですね、しかし対アサシンの話は世界規模で歴史にも刻まれたことで、猛竜騎士さんもご存知でしょうし、重ねての話を聞くことは……」
猛竜騎士「確かに知っている。だが、十字軍が結成されたということと、アサシンが追われたことしか聞いたことはない。君の研究者として知っている情報が欲しいんだ」
ブリレイ「……なるほど。では失礼ながら、説明をさせていただきます」
猛竜騎士「頼む」
"ごほんっ"と咳を払い、ブリレイは静かに語った。
ブリレイ「50年前の政策は、十字軍…聖なる魔法を用いてアサシンを討伐することを目的としたものでした」
魔剣士「…」
ブリレイ「その概要は、当時はそこまで流通しきっていなかった"攻撃的な魔法"の会得者を率いる者を教示者として呼び、魔法書たるもので兵士たちに魔法を習得させることにありました」
猛竜騎士「…」
ブリレイ「結果、魔法の会得者は選抜隊として、ついては"十字軍"となり、アサシンの討伐へと成功したのです」
白姫「…」
ブリレイ「討伐後、脅威は去ったと十字軍は解体。長き平和が訪れ、今の傲慢たる王が支配者となり、市民権を奪う絶対制度を確立させたというわけです」
選抜隊、率いる者、確かにこの政策は……。
猛竜騎士「そうか…!教示者、率いる者。それこそ……!」
ブリレイ「現代の会得者といえば」
魔剣士「や……」
白姫「闇魔法……!」
戦術のレベルが上がり、魔法が当たり前になった今の時代。実力の高い冒険者や戦士といった荒くれ者を抑え、率いる者と支持されるのは決まっている。
失われた魔法、魔力を持つ者。つまり、闇魔法の会得者のみである。
ブリレイ「つまりは十字軍の再現。そして何度も申し上げますが、今度の現代に蘇った十字軍の敵はアサシンではなく……」
魔剣士「つ、罪のない…ただの人々だっていうのか!!」
憤慨のあまりに魔剣士は立ち上がると、歯を軋ませながら壁をドン!と強く叩いた。
魔剣士「ふざけろ…!闇魔法と世界中の力を集め、そんなに恐怖で世界を手に入れたいのかよ!!!」
猛竜騎士「元々考えていたことだったんだろう。あの王は、全てを手に入れることが全てなんだ」
魔剣士「ふざけやがって…!し、白姫っ!!!」
白姫「は、はいっ!」
魔剣士の強い声に、白姫は驚いて身体をビクンと震わす。
魔剣士「世界が掌握されたら、俺やテイルみたいな奴が増えるのは必至だ…。だったら、止めるにはもう……!」
白姫「…」
魔剣士「出来るなら、捕縛で牢に入れることでも、余地も与えられると思った。だけどな……!!」
白姫「うん。分かってる。私も最初からそのつもりだったから」
白姫は魔剣士との目を離さず、強く頷いた。
魔剣士「全力を持って潰す…。絶対に…必ずだ……!」
…………
……
…
―――それから2日後。
氷山帝国を旅立った三人は、ブルノースポートよりセントラル行きの船に乗船。
現在、広大な海の真上にいた。時刻は夕暮れ、あと3日程の航海ののち、大地へと旅立ったあの"南方港"へと到着する予定である。
魔剣士と白姫は、甲板で様々な想いを馳せながら、沈む夕日を見つめていた。
白姫「ついに、中央大地に戻るんだね。セントラルに……」
魔剣士「あれから数か月。旅立った時にゃ考えられないほど俺ぁ強くなったぜ」
白姫「うんっ。ずっと旅をして来て、やっぱり魔剣士は約束を守ってくれたね」
魔剣士「何?」
白姫「私を守ってくれるってこと。ずーっと、今まで……」
魔剣士「あぁ、当然じゃねぇか。俺はお前の従者だからな」
白姫「うんっ!」
二人は並び、互いに身を寄せ合う。
魔剣士は改めて白姫を見て、潮風に揺れる黒髪に、凛としつつも可愛らしさ、優しさを感じる顔立ちに思わず微笑んだ。
魔剣士「ククッ……」
白姫「なぁに?」
魔剣士「いや、何でもねぇよ」
白姫「うっそだ。今、笑ってたよ!」
魔剣士「何でもないって、ハハハッ」
白姫「あーっ、ほら!やっぱり笑ってる!」
まるで周りからは見るに堪えないそれであったが、誰が二人は命を懸け続けてきて、いや…今も懸けてココへ立っていると信じるだろうか。
だから、どんなわずかな時間でも二人にとっては安らぎを覚える時間であったのだが……。
「……おい、楽しそうだなぁ!」
そんな時でも、必ずといっていいほどに邪魔は入る。
魔剣士「……あ?」
背後から野太い男の声。振り向くと、そこには強靭たる肉体をモリモリと見せつけるような薄着の男と、小柄な男の二人組がニタニタと笑いながらこちらを見ていた。
魔剣士「ンだ、テメェら」
どう見ても、彼らが喧嘩を売ってきているのは明白。安らぎの時間を邪魔され、魔剣士は明らかに苛立つ。
すると、筋肉男は不敵な笑みを見せ、まさかの言葉を名前を口にする。
「お前は、魔剣士と白姫だろう?」と。
白姫「えっ!?」
魔剣士「何っ!?」
名前を出されて驚く二人。その反応を見て、筋肉男は「やはりな」と呟いた。
魔剣士「俺らのことを知ってるってことは……」
少なくとも、面白半分に接触してきた相手ではない。そっと腰へ、剣を抜くように構える。
魔剣士「何モンだ、テメェら……」
眼光鋭く、睨む。筋肉男はそれを見て、「おっと…大人しくしてもらおうか」と、脅しも含めて隆々たる筋力の腕を見せつけた。
ビーグゥ「俺ぁビーグゥ!お前らは賞金首の二人組だろう!!」
魔剣士「ッ!」
なるほど、コイツらの正体は。
魔剣士「バウンティハンターか……!」
既に船はセントラル行き、言うなればセントラル領海内へと入っている。
北方大地の賑わう港より発船している船に、賞金首狩りがいないことは不思議ではない。
ビーグゥ「殺しても大金、何をしても大金、白姫様がこんな可愛いとは思わなかったぜぇ……!?なぁ、チィビィ!」
チィビィ「えぇ、兄貴!」
筋肉達磨に、俊敏そうな小柄な男。
魔剣士「……フン、お互いの弱点を補う存在みたいだな」
ビーグゥ「ほほう…よく分かったな」
チィビィ「俺ぁ兄貴の手足!兄貴はその力の強さで、俺は速度で全てを捻じ伏せるんだぜ!」
魔剣士「速さとパワー、ね」
ビーグゥ「そうだとも!お前は諦めるしか道はない!」
魔剣士「へぇ……」
ビーグゥ「お前らが賞金首になってから、"行方をくらまして"いたようだがココで見つけたが100年目!覚悟するが良いッ!!」
魔剣士「なるほど……」
"行方をくらまして"いた間に、どんな経験でどのような力を身に着けてきたのか知らないことは、彼らにとって不幸に違いない。
魔剣士「白姫、下がってろ」
白姫「うんっ」
前に出ると、剣を構えようとしていた手を離し、片手をチョイチョイと動かして二人を煽った。
魔剣士「ほら、来いよ」
ビーグゥ「その剣を捨て、俺らと戦おうというのか!?」
魔剣士「これで十分だ」
ビーグゥ「ククッ、お前の猛者ぶりは知っている。セントラル王城で兵士相手に暴れたことくらい、知っているぞ!」
魔剣士「で?」
ビーグゥ「実力に自信があるのは良い事だが、慢心は身を滅ぼす。あの頃のセントラル兵士なんざ、冒険者と比べてゴミだったのだからな!」
魔剣士「だから何よ」
ビーグゥ「つまり!それより!強い!俺は!お前を!余裕で!倒せるのだァーーーッ!!」
両手でポーズを取り、筋肉をモリモリと見せつける。
魔剣士「……御託はいらんっつーの。それに、その言葉そのまま返すぜ」
ビーグゥ「何ィ!?」
魔剣士「慢心は身を滅ぼすってことだ」
ビーグゥ「……言っているが良いッ!」
魔剣士「お前から先に攻撃を受けてやる。一番良い技で頼むぞ」
ビーグゥ「おのれっ、どこまでも慢心を…!良かろうッ!この技で海の藻屑となるがいい!!」
天高く両腕を突き上げ、魔力を込めた。多少の時間はかかっている様子だったが、本来この間に小柄な男が敵を翻弄していたりしたのだろう。
魔剣士(……っと、戦況っつーか戦いの読みが出来るようになってきたな。成長してるって気がするぜ)
自信の成長に少し驚いている間に、ビーグゥは全身へのパワーを蓄積が完了し、「いくぞぉっ!」と声をあげた。
ビーグゥ「超…撃…打ァァァッ!!!」
魔力による幻影か、彼の拳は人を簡単に飲みこむ程に巨大化し、魔剣士めがけて打撃が飛んだ。
しかし、魔剣士も白姫も微動だにせず。迫る拳に顔色一つ変えなかった。
ビーグゥ(……な、なんだ!?避けぬ、動かぬのか!?)
諦めたのかとも思ったが、"それは"直前に発動。どこからともなく具現化した"氷結の壁"が、ビーグゥの拳を弾き飛ばしたのだった。
ビーグゥ「ぬぐあっ!!?」
氷壁を殴った痛みか、弾き飛ばされたビーグゥは拳を抑え、魔剣士を睨む。
ビーグゥ「う、うぐっ……!?」
魔剣士「棘型の壁じゃなかっただけ、有り難いと思え。そうしていたらお前の拳はもう使い物にならなかっただろうよ」
ビーグゥ「お、おぉぉ…おのれッ!どこからともなく氷の壁を…!?」
魔剣士「おっと顔色が変わったな」
ビーグゥ「恐らくは無詠唱…、しかもとてつもない早さの魔法の具現化か…!」
魔剣士「ちったぁ頭が回るんだな、筋肉達磨の癖に」
ビーグゥ「ぬぅぅっ……!」
悔しそうな表情に、次にチィビィが動きを見せた。
チィビィ「よ、よくも兄貴を!」
魔剣士「うっせぇぞクソチビ」
チィビィ「くっ…!誰がクソチビだ、俺の動きが見えるかァ!!?」
やはり、もう一人の得意技量は俊敏。チィビィは意外にもかなりの完成度を誇る"縮地"で、辺りから姿を消した。
そして姿を消したチィビィは、どこからともなく「見えるか、殺すぞ!」と恐怖を煽る演出を見せる。
魔剣士「……はぁ」
だが、それを確認した魔剣士は相変わらず面倒くさそうにため息をついた。
魔剣士「一般人、相手ならな」
魔剣士は即座に腕を伸ばしたかと思うと、何もない場所で"グッ…"力を込めて手を握り締めた。
すると、その手先。
チィビィ「うっ、うぐぇああっ!?」
首を絞めつけられたチィビィの姿が現れたのだった。
ビーグゥ「な、何だと!?」
チィビィ「ぐぇっ…!うぐぅうえっ!?」
魔剣士「…返すぜ」
小柄だった彼を、魔剣士はビーグゥ目掛けてぶん投げ、それを受け止めた彼は目を丸くした。
ビーグゥ「そ、そんなバカな……!」
チィビィ「ゲホッ…!ゴホゴホッ!俺の動きを、そんな簡単に……!」
魔剣士「…フン」
それは完成度の誇る"縮地"だったが、あくまでも完成度が高いだけ。そもそも猛竜騎士の縮地や、アサシンの暴風化を見てきた魔剣士にとって、この程度の動きは赤子の手を捻る程度だっただろう。
魔剣士「まだ戦いたいのなら、相手になってやるが?」
ビーグゥ「え…あ……」
チィビィ「あ、兄貴ぃ……」
魔剣士「どうする。今ならまだ見逃してやらんでもないぞ?」
ビーグゥ「ぐ…ぐぐっ……!」
魔剣士「早く決めろっ!!」
ビーグゥ「ひぃーーーーっ!?」
ビーグゥは痛む拳でチィビィを抱え上げると、甲板からあっという間に逃げて行ったのだった。
白姫「……あっという間に逃げちゃった!」
魔剣士「ったく、人の楽しい時間を邪魔しやがって」
白姫「よく忘れちゃうけど、私たちは世間から見たら犯罪者なんだよね……」
魔剣士「一応バウンティハンターの面子は社会的に必要な存在だが、あんな奴らばっかだとどうにもな……」
犯罪者を狩ることこそ、バウンティハンターの生業。加えて、彼らがいることが治安の維持に貢献していることは確かだろう。
「……ですが、その有り余る実力や力を自らの欲望に任せるハンターも多く、ハンター自身が賞金首になり得ることもある、ですよね」
魔剣士「……あ?」
魔剣士が言いかけた言葉を、また、近くに立っていた男がボソリと呟いた。
魔剣士「また、敵か…?」
いい加減面倒になった魔剣士は、腕を伸ばして先に攻撃を仕掛けようとしたが、男は慌てて「敵じゃありませんよ!」と叫んだ。
ブリレイ「僕はブリレイ。元魔法連合の研究者…、今はセージ様とお仕事をさせていただいております」
魔剣士「……あん?」
白姫「セージさんの…、後輩さん?」
ブリレイ「魔剣士さんと、白姫さんですよね?」
…………
……
…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――10分後。
元魔法連合の研究者で、現在はセージと共に仕事をしているというその男。
容姿はヒョロヒョロと細長く、白いシャツ、真ん中ボタンでピッタリ留めている茶色の薄いベスト、黒い髪の毛は七三分けの細目、いかにもどこぞの物語に出てきそうな"研究者"の姿に、逆に疑ってしまう程だった。
魔剣士「本当にあんた、セージの仲間なのか?」
本当にセージの遣いだった場合、表向きは話は出来ない。念のため、猛竜騎士を加えた魔剣士たちの客室で彼に話を聞くことにした。
ブリレイ「当然のことで驚かせてしまい、申し訳ありませんでした。…と言っても、セージ様は僕が魔剣士さん達と関わるのは予想外だったでしょうが……」
魔剣士「どういうことだ?」
ブリレイ「恐らくお話しは聞いているでしょうが、現在、我が国からセントラルへ"スパイ"を潜り込ませております」
魔剣士「あぁ……」
ブリレイ「僕は、今この時セントラルへ先に派遣されている研究者と代わる形で派遣される仕事を任されていたんです」
魔剣士「……それで?」
ブリレイ「ですが、出船予定だった4日前の船からこの海域が嵐のために延期。一歩遅れたかたちで乗船し、甲板で休んでいたところ…たまたまハンターとのやりとりを聞いてしまい、折角なので声を駆けさせて頂いた次第になります」
魔剣士「そういうことね……」
セージが情報を漏らすとは思えないし、スパイの話を知っているということは仲間で間違いないだろうが、念のために猛竜騎士は続いて口を開く。
猛竜騎士「……ブリレイさんといったかな」
ブリレイ「えぇ、そうです」
猛竜騎士「裏の事情を知り得るということは、敵じゃないことは認識できた」
ブリレイ「大変嬉しいお言葉です」
猛竜騎士「だったら一つ質問がある」
ブリレイ「何でしょう?」
猛竜騎士「いや、敵だとかそういう質問じゃない。あまりに慌ただしくセントラルへ向かってしまって、現状についてあまり聞くことが出来なかったんだ」
ブリレイ「現状…ですか?」
猛竜騎士「セントラルだ」
ブリレイ「セントラルの現状…なるほど」
時間がなかったため、急いで出発したことによりセントラルの情報をほとんど入手できていないのが現状。もしブリレイが今のセントラルについて何か知っていれば、少しでも情報が欲しかった。
ブリレイ「お答えできる範囲では」
猛竜騎士「魔剣士や白姫の賞金首の状態はどうなっている?」
ブリレイ「変わりはないと思われます」
猛竜騎士「セントラルに大きい変化は?」
ブリレイ「裏側ではありますが、秘密研究所の設立に闇魔法の会得者の可能性がチラホラとセージ様より」
猛竜騎士「君は今までそれに干渉したことはないのか?」
ブリレイ「セージ様の命により、一人が全ての情報を持たぬよう、派遣には交代制を取っております。初期段階の実験には参加致しましたが、今の詳細はまだ……」
猛竜騎士「なら、一般市民も知り得るような表向きの変化はないか?」
ブリレイ「表向きですか…。有名なお話しでご存知の件かとも思いましたが、重ねての情報となる可能性がありますがよろしいでしょうか?」
猛竜騎士「何でも良い。聞かせてくれるか」
長いことセントラルを離れていたため、些細な情報でも求めざるを得なかった。
ブリレイ「それならば。先ず…騎士団が成立致しましたね」
猛竜騎士「騎士団?」
魔剣士「何?」
白姫「騎士団ですか?」
ブリレイ「おっとっと…、この辺はセージ様より伺っていると思っておりましたが……」
猛竜騎士「いや、聞いていない。時間がなかったために、ほとんどの情報は貰ってないんだ」
ブリレイ「……なるほどですね。分かりました、では、お話しをさせていただきます」
猛竜騎士「よろしく頼む」
ブリレイ「えぇ、では……」
魔剣士「…」
白姫「…」
三人は息を呑んでブリレイの話に耳を傾ける。
ブリレイ「簡単に説明すれば、世界から召集されたエリートの冒険者や戦士たちによって結成された軍隊のようなものです」
猛竜騎士「……何?」
ブリレイ「最高の手当てといいますか、セントラルにて高い報酬を与えることで、多くの優秀な戦士たちをセントラルに招いたようでした」
猛竜騎士「そんなことを?」
ブリレイ「また、王城ではそれの選抜テストを行っております。選考会とでも言いますか……」
猛竜騎士「テストだと?」
ブリレイ「えぇ、入隊テストのために割とセントラルへ無名の腕利きたるハンター、戦士の類が集まっているらしく」
猛竜騎士「……集まる、だと」
ここで猛竜騎士が"ピン"と勘が冴えた。
猛竜騎士「待てブリレイ、そのテストや召集はいつからだ?」
ブリレイ「闇魔法の会得前から徐々に行われていたようです。白姫様たちを捕えるために結成されたものかとも思い、こちらの情報は既に知っているものと思っておりましたが……」
猛竜騎士「聞いていない情報だ。そうか、知っていると思い…だからセージもあえて説明しなかったのか……」
ブリレイ「恐らくは」
猛竜騎士「いや、それは良い。それよりも…それならば合点がいくことがある」
ブリレイ「は…」
猛竜騎士「バウンティハンターの少なさだ。いくら俺たちが地方へ逃げていたからといって、俺らを追うハンターの数があまりにも少なすぎていたが、そういうことだったのか……」
魔剣士(あぁ……)
猛竜騎士の言う通り、遊んで暮らせるような金が手に入るというのに、今までバウンティハンターが追ってこなかった理由と結びつく。
ブリレイ「一つの考えではありますが、先ほども申した通り、当初は白姫様たちを捕まえる為に結成されたのが闇魔法の伝達によって目的が変わったのかもしれません」
猛竜騎士「……世界掌握のための騎士団になったということか」
ブリレイ「どのみち、強い者たちを囲うことは脅威です。既に、セントラルの新体制は築かれつつもあります」
猛竜騎士「過去から勤めている兵士たちはどうした?」
ブリレイ「更に選抜された者は騎士団へ。それ以外は、領地内の遠征へ飛ばされているようです」
猛竜騎士「とことん強き者で固めるということか……」
ブリレイ「まるであの再現ですね。時代は繰り返すのでしょうか。今度の敵は、罪のない人々になるというのに……」
猛竜騎士「あの、再現?」
ブリレイ「50年前の、対アサシンとして結成された十字軍政策のそれと一緒だと感じました」
猛竜騎士「!」
魔剣士「なっ…!」
白姫「アサシンて……!」
嫌でも聞きなれていた名前に、思わず反応する。
ブリレイ「お、おやおや……?」
魔剣士「くそがっ!またその名前を聞くことになるとは……!」
ブリレイ「い、如何なさいましたか?」
魔剣士「アサシンには嫌っつーほどに煮え湯を飲まされたからな…!」
ブリレイ「……アサシンと会ったのですか?」
魔剣士「あぁ、だけどその話はやめてくれ。ちょっとイラつくからな……」
ブリレイ「あ…!も、申し訳ありません!」
ブリレイは頭を深々と魔剣士に向かって下げる。どうやら、かなり腰の低い男らしい。
猛竜騎士「気にしないでくれ、ブリレイ」
ブリレイ「そ、そう言っていただけると……」
猛竜騎士「それより話を戻そう。それで…50年前、その政策ではどんな動きがあったんだ?もしかすると対セントラルになる策のヒントがあるかもしれんからな」
ブリレイ「あ、はい…。えぇとですね、しかし対アサシンの話は世界規模で歴史にも刻まれたことで、猛竜騎士さんもご存知でしょうし、重ねての話を聞くことは……」
猛竜騎士「確かに知っている。だが、十字軍が結成されたということと、アサシンが追われたことしか聞いたことはない。君の研究者として知っている情報が欲しいんだ」
ブリレイ「……なるほど。では失礼ながら、説明をさせていただきます」
猛竜騎士「頼む」
"ごほんっ"と咳を払い、ブリレイは静かに語った。
ブリレイ「50年前の政策は、十字軍…聖なる魔法を用いてアサシンを討伐することを目的としたものでした」
魔剣士「…」
ブリレイ「その概要は、当時はそこまで流通しきっていなかった"攻撃的な魔法"の会得者を率いる者を教示者として呼び、魔法書たるもので兵士たちに魔法を習得させることにありました」
猛竜騎士「…」
ブリレイ「結果、魔法の会得者は選抜隊として、ついては"十字軍"となり、アサシンの討伐へと成功したのです」
白姫「…」
ブリレイ「討伐後、脅威は去ったと十字軍は解体。長き平和が訪れ、今の傲慢たる王が支配者となり、市民権を奪う絶対制度を確立させたというわけです」
選抜隊、率いる者、確かにこの政策は……。
猛竜騎士「そうか…!教示者、率いる者。それこそ……!」
ブリレイ「現代の会得者といえば」
魔剣士「や……」
白姫「闇魔法……!」
戦術のレベルが上がり、魔法が当たり前になった今の時代。実力の高い冒険者や戦士といった荒くれ者を抑え、率いる者と支持されるのは決まっている。
失われた魔法、魔力を持つ者。つまり、闇魔法の会得者のみである。
ブリレイ「つまりは十字軍の再現。そして何度も申し上げますが、今度の現代に蘇った十字軍の敵はアサシンではなく……」
魔剣士「つ、罪のない…ただの人々だっていうのか!!」
憤慨のあまりに魔剣士は立ち上がると、歯を軋ませながら壁をドン!と強く叩いた。
魔剣士「ふざけろ…!闇魔法と世界中の力を集め、そんなに恐怖で世界を手に入れたいのかよ!!!」
猛竜騎士「元々考えていたことだったんだろう。あの王は、全てを手に入れることが全てなんだ」
魔剣士「ふざけやがって…!し、白姫っ!!!」
白姫「は、はいっ!」
魔剣士の強い声に、白姫は驚いて身体をビクンと震わす。
魔剣士「世界が掌握されたら、俺やテイルみたいな奴が増えるのは必至だ…。だったら、止めるにはもう……!」
白姫「…」
魔剣士「出来るなら、捕縛で牢に入れることでも、余地も与えられると思った。だけどな……!!」
白姫「うん。分かってる。私も最初からそのつもりだったから」
白姫は魔剣士との目を離さず、強く頷いた。
魔剣士「全力を持って潰す…。絶対に…必ずだ……!」
…………
……
…
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています
木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。
少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが……
陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。
どちらからお読み頂いても話は通じます。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ
鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。
それが約50年前。
聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。
英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。
俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。
でも…英雄は5人もいらないな。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる