魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

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第九章【セントラル】

9-3 危機

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――1時間後。
説明を終えたブリレイは、空気を察してか
「部屋へ戻りますね」と挨拶をすると、廊下へと出て行った。
そして、魔剣士たちは彼から聞いた政策に関して、苦い表情で会話を続けていた。

猛竜騎士「……分かっていたことだったが」
魔剣士「戦争をするつもりだってのは分かってた。だけど、ここまで非道な準備をするっていうのかよ……」
猛竜騎士「ブリレイという男に出会えたことは感謝せねばならないな。遥かに時間を稼ぐことが出来た」
魔剣士「時間?」
猛竜騎士「さすがに何も知らずに特攻するほど馬鹿じゃない。南方港ならセントラルの話も聞けただろうが、そんな聞き込みの必要はなくなったということだ」
魔剣士「あ、なるほどな」
猛竜騎士「あまり表で動くのは危険だ。腕利きたちが集まっているのなら、魔剣士と白姫を狙う面子も領地内にはウヨウヨいるだろうからな」
魔剣士「…ちっ」

セントラルに集まっている腕利きたちは、当然ながら魔剣士たちの顔を知っているだろう。

魔剣士「南方港へ着いたらどうする?」
猛竜騎士「到着予定は二日後。昼過ぎに到着したら、道中村まで突き進むか…その辺を考えてる」
魔剣士「分かった、いくらでも歩いてやるよ」
白姫「分かりました」
猛竜騎士(……こいつらは)

いつか世界へと飛び出した南方港。当初、道中村で出会ってから暫くは足も弱く、何かと文句ばかり言っていた。
しかしどうだろう。今は、一日をかけて歩き続けたとしても、それを強いられたとしても、敵がどのような相手であっても、弱みを見せることはないはずだ。
わずかな期間だったが、これほどの成長を見守れたことを本当に嬉しく思えた。

魔剣士「そういえば…道中村か。白姫、宿の…ほら、覚えてるか?」
白姫「…あっ!うん!」
魔剣士「宿場のオッサン、元気かねぇ……」
白姫「うんうんっ!私も覚えてる!」
魔剣士「妙に夢満ちたオッサンだったよな」
白姫「うん。私ってば怪我しちゃって、魔剣士におんぶしてもらったんだよね……」
魔剣士「あー…あったな……」

二人が出会い、家出を決めてすぐのこと。
足を怪我し、疲労に倒れそうになった白姫を抱えて魔剣士は走り続け、そこで助けてもらったのが宿屋の店主だった。

魔剣士「なんか遠い日のようなことに思えるな」
白姫「もし顔出しが出来たら、寄りたいねっ」
魔剣士「時間があったり、宿泊になったらそこでいいんじゃねえか」
白姫「あの時はきちんと一緒にお風呂に入れなかったねー……」
魔剣士「も、もういいっつーの!そんな話してる場合じゃねーし!」

魔剣士は椅子から立ち上がるとベッドへ"ボスン!"と横になった。

魔剣士「…」

静かに天井を見上げ、ベッドに沈んでいく身体。わずかに波に揺れるせいか、強い眠気が襲った。
フワフワとした感覚の中で、魔剣士のまぶたは重くなっていく。

魔剣士「難しい話ばっかでちょっと疲れたか…。少し、寝るかねぇ……」

政治、怒り、旅。体力とは別に精神的な疲労が蓄積していた魔剣士は、ベッドの中でゆっくりと目を閉じ、眠りに落ちようとしたのだが、その時。

白姫「魔剣士っ!」

薄れていく意識の中、目の前に白姫の顔が現れ、「うおっ!?」身体を起こし、勢いよく"ゴチンッ!"お互いの額が良い音をたててぶつかった。

白姫「あぅっ!?」
魔剣士「あだっ!?」

二人はそれぞれ赤くなった額を抑えつつ、最初に発した言葉。

白姫「ま、魔剣士…大丈夫!?」
魔剣士「白姫、大丈夫か!?」

それぞれ別の心配に、猛竜騎士は「似たアホだ」と呟いたが、聞こえてはいない様子だった。

白姫「あうぅ、大丈夫だよ!」
魔剣士「俺だって大丈夫だ」
白姫「びっくりしたー…、ごめんね」
魔剣士「急に顔出すからビックリしたぜ。…何したんだよ」
白姫「んっとね、ちょっと気になったことがあって」
魔剣士「何だ?」

白姫は魔剣士が寝転がるベッドへと腰を降ろし、「さっきのことなんだけど!」と続けた。

白姫「さっき、ハンターがいたでしょ?」
魔剣士「おー…チビデカか……」
白姫「もしかして、その選抜試験を受けにいくのかなーって……」
魔剣士「あ?」
白姫「もしそうだったら、私たちのこと先にバレちゃうんじゃないかな……」
魔剣士「何…!」

すっかりブリレイの話で抜けていたが、考えてもみればアイツらがセントラル行きの船へ乗っていることはその可能性があった。

魔剣士「そりゃ…確かに情報が抜けていたら不味いじゃねえか」
白姫「うん、だから……」
魔剣士「お前はココにいろ。色々走り回って調べてくるわ」
白姫「気を付けてね」
魔剣士「余裕余裕!」

魔剣士は飛び起きると、クローゼットに仕舞っていた冒険服を取り出した。
しかし、大体の察しがついていた猛竜騎士はそれに何の助言もする様子はなく。

猛竜騎士「……魔剣士、お茶は飲むか?淹れておくぞ」
魔剣士「アッツイの頼むぜ。白姫、お前もオッサンと一緒に一息ついてろ」
白姫「うん。お茶菓子とかも用意しておくね」
魔剣士「冷める前には帰ってくるっての。ちょっくら行ってくるわ」

あまり一般客のいる場所で剣を抜きたくはなかったが、万が一に備え剣を抜きやすいように装備し直すと、魔剣士は「うしっ!」と気合を入れ、廊下へと飛び出して行った。

猛竜騎士「白姫、お茶菓子を準備しておいてくれるか。こんな時だから、落ち着くことも必要だ」
白姫「慌てたところで何も変わらないのなら、という感じですね」
猛竜騎士「よく分かっている。お前も少しずつ大人になっていると感じるよ」
白姫「えへへ、そうでしょうか」
猛竜騎士「俺はいつまでも子どもだがな」
白姫「えぇっ!?」
猛竜騎士「ハハハ、男なんざみんな…いつまでたっても子どものままなんだよ」
白姫「ふふっ、そうなんですね」

…………
……


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――20分後。

"ゲシィッ!!"
日が暮れ始めた頃、甲板にいたハンターのビーグゥを見つけた魔剣士は、奇襲を仕掛けて一旦気絶させ、人に見られないよう船内の倉庫へと蹴飛ばし入れたのだった。

ビーグゥ「いてて…!ンな乱暴しなくてもいいじゃねぇか……!」
魔剣士「どの口が言ってんだテメェは、あぁん?」
ビーグゥ「くっそ、まさかお前がこんなに強いとは思わなかったぜ…」
魔剣士「仲間のクソチビはどこいった?」
ビーグゥ「部屋で寝てるんじゃねぇか……」
魔剣士「あっそう…」
ビーグゥ「つ、つーかテメェ!俺をどうするつもりだ、殺す気か!?それともこんな狭い部屋で、まさか男同士…そういう趣味が!」
魔剣士「ねぇよ!!っざけんなクソ野郎!!」
ビーグゥ「あら、そう?」
魔剣士「調子の狂う…!お前にゃ聞きたいことがあっただけだ、ボケ!」
ビーグゥ「聞きたいことだと?」

腕を伸ばし、魔法を構えるように脅してそれを聞く。

魔剣士「お前は、セントラルの選抜隊の試験を受けにいくのか」
ビーグゥ「……分からなかったのか?」
魔剣士(ちっ、やっぱりか……)
ビーグゥ「つーか、俺だけじゃねぇだろ。この船には、割と多くのハンターが乗ってるぜ?」
魔剣士(おいおい……)
ビーグゥ「……ん!待てよ、ってこたぁ…俺をここに連れて来たってのはアレか。他のハンターやセントラルにお前らが中央大地に乗り込んだのを教えないでーっていうこと…か?」
魔剣士(この野郎……)

何も言っていないというのに、思えばさっきの甲板での戦いの時も…この筋肉男は意外にもキレるらしい。

ビーグゥ「……ビンゴだな」

"にたり"と笑う。

魔剣士「別に言ったって良いぜ。ただ、それなりの覚悟はしろよ…」
ビーグゥ「…ほぉ?」
魔剣士「次は拳だけじゃすまねぇぞ。命は奪いたくないが、お前の手足を落とすくらいは容易なことだからな」
ビーグゥ「…」
魔剣士「そうなりたくなけりゃ、俺らのことは黙っててもらおうか」
ビーグゥ「……ククッ」

また、不敵な笑いを見せた。

魔剣士「何笑ってやがる」
ビーグゥ「お前に一つ聞くが、俺がそうやって聞いて"黙ってる"と言ったら信じるのか?」
魔剣士「何?」
ビーグゥ「あぁ良いぜ、黙ってやるよ。顔見知りのハンターにも、道中にいる兵士たちや選抜隊の試験会場のセントラルの面子にも…な」
魔剣士「……てめぇ」

明らかに舐められている。実力的にも相手は自分より弱いと分かっているのに。猛竜騎士なら、もっと上手くやったのだろうか。

ビーグゥ「だからといって殺せねぇよなぁ?お前の口調からはそう…、易々と人を殺すことは出来ないはずだ」
魔剣士「ッ!」

やはりキレる。この男。

魔剣士「…くそが」

今、真実を知らない人々が敵視しているのは間違いなく魔剣士たちであり、それを追うハンターはどちらかというとヒーローのようなもの。ここで口封じで殺しては、それこそ本当に犯罪者となるやもしれない。

ビーグゥ「……で、魔剣士クン。俺は黙っているから、見逃してくれないか?」
魔剣士「ざけんなよ、コラ」
ビーグゥ「じゃあ殺すか?腕を落とすか、脚を落とすか?…お?」
魔剣士「てめぇ…!」
ビーグゥ「どうするんだ、おー?」

いちいち癇に障る言葉を、魔剣士の額がピクピクと動く。

魔剣士「じゃ、じゃあどうしたら黙っててくれるのか…?」
ビーグゥ「あー?」
魔剣士「お前の要件を聞いてやる…。どうしたら、俺らのことを黙ってるのか教えろ……」

ぴくぴく、ぴくぴく……。

ビーグゥ「そーだなー。本当は何もしなくても黙っててやるが、お前がどうしてもっていうならー……」
魔剣士「なら……!?」
ビーグゥ「白姫と一発やらせ」
魔剣士「……ざっけんなオラァー!!!!」

"バキッ、ドゴォンッ!!"
魔剣士の蹴り飛ばしはビーグゥの顔面を捉え、脇にあった荷物に顔を突っ込んだのだった。

ビーグゥ「い、いってぇぇっ!あにすんだ、はなぢが出たじゃねーか!」
魔剣士「この頑丈野郎が…!もう一度言ってみろ、マジでテメェの全身を氷漬けのオブジェクトにしてやるぞオラァ!!」
ビーグゥ「そ、その剣幕は本気……?」
魔剣士「ったりめぇだ!白姫のためならお前の命くらい、本気で奪うつってんだよ!!」
ビーグゥ「ぬ、ぬぐっ…!」
魔剣士「もう良い…、お前の望み通りにしてやるよ……」

白姫のことになると周りのことが見えなくなる魔剣士は、氷属性、青白い魔力で片腕を発光させた。
考えてみれば、この男一人を口止めして危険がなくなるなら安いものだ。

ビーグゥ「ほ、本気かテメェ!?」
魔剣士「うるせぇ肉達磨。永久凍結して海の奥底に沈めてやれば誰も文句は言わねぇ」

完璧に目が据わっている。

ビーグゥ(やべぇ、こいつ本気……!!)

……殺される!!
ビーグゥは恐怖に涙を浮かべ、頭を下げて必死に謝りを見せる。

ビーグゥ「ご、ごめーーーんっ!!」
魔剣士「あ?」
ビーグゥ「すまなかった、本当に!悪かった、悪かったゴメン!もう言わないから許せ、なっ!?」
魔剣士「うるせぇ」
ビーグゥ「本当だって、マジマジマジで!!お前らのことは絶対に言わないから、マジでぇーーーーっ!!」
魔剣士「もう遅ぇ」
ビーグゥ「ひ……!?」

魔剣士は片腕から発した氷結魔法を、いよいよ射出した。ビーグゥは叫びをあげ、迫りくる氷に恐怖のあまり、"プツリ"と意識が途切れたのだった。

ビーグゥ「…っ」

氷の弾丸はビーグゥの脇へと着氷し、地面を"ぱきぱき"と凍らせたものの、実際にはビーグゥの肉体には一切触れることがなかった。

魔剣士「……本当に殺すわけねぇだろ、馬鹿が」

ぺっとツバを吐き捨て、気絶したビーグゥを見下した時、彼が倒れた衝撃でポケットから"206号室"と部屋番号のかかれた鍵がチャラリと音を立てて転がった。

………


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――20分後。
すっかり気絶していたビーグゥは、チィビィの呼ぶ声に暗闇から目を覚ました。
だが、そこは自分の客室で、隣には同じく先ほどの部屋にあった鉄の鎖で縛られたチィビィの姿があった。
そしてもちろん、目の前には椅子に座ってこちらを睨む、魔剣士の姿……。

ビーグゥ「う、うむ……?」
チィビィ「兄貴!」
ビーグゥ「ここは…俺たちの部屋……?俺は、どうして…魔剣士が……」
チィビィ「しっかりしてください兄貴!そこの魔剣士が、寝ていた俺や兄貴を運んできて鎖で縛ったんですよ!」
ビーグゥ「んむ……」
チィビィ「兄貴ッ!!」
ビーグゥ「うーんむ…?んー……、ん…、んっ……、ん…………、んっ、んんんっ!!?」

ハッとした表情、ようやく事態を飲みこめたらしい。

魔剣士「よー、おはよーさん」
ビーグゥ「お前っ!!」
魔剣士「暴れるなよ。良かったじゃねーか、生きててな」
ビーグゥ「バカにしやがって……!!」
魔剣士「おっとっと、俺はお前に何をするってこともねぇ。ただ、お前の部屋に運んでやったってだけだぜ」
ビーグゥ「この状況で、俺らに拷問でもするつもりじゃーねのか?おー?」
魔剣士「そういう気はねぇよ。つか、人の魔法で恐怖の余り気絶したクセによく強気だな、弱虫クン」
ビーグゥ「う、うるせぇっ!」
魔剣士「…そこのチビと一緒に凍らせてやるか。二度目は本気だぜ」
ビーグゥ「…ッ!」

勘の鋭いビーグゥは、白姫の名を出さない。あの時に感じた冷たさと据わった感覚は、魔剣士にとって"本気"にさせる一言だと分かったからだ。

魔剣士「で、だ…。話をしようか」
ビーグゥ「なんだ」
魔剣士「お前にもう一度だけ問う。チャンスをやる」
ビーグゥ「だからなんだ……」
魔剣士「俺らのことは…黙っているな。子分の前で、その本音を言えば誓いにもなるだろう?」
ビーグゥ「……っ!」
魔剣士「言えよ。さぁ、どうするか」
ビーグゥ「魔剣士ぃぃ……!!」
魔剣士「言えと言っている」
ビーグゥ「うっ!?」

再び、ゾクリとするような本気の目。この男、まださっきの"怒り"を忘れてはいないと理解。ここは従う他ない。

ビーグゥ「……わ、分かった…よ…!」
チィビィ「兄貴!?」
魔剣士「…」
ビーグゥ「お前に従う…。今度は本気だ、俺の目を見てくれ……。お前の言う通り、黙っている…からよ……」
魔剣士「嘘はないな」
ビーグゥ「本気だ…。もう、おちょくったり変なことはいわねぇ。他の面子にも黙っておく……!」
魔剣士「…フン」

こんな時、白姫ならば彼の目を見てどう思っているのか分かるのだろうと、あの直感が羨ましく思った。

魔剣士「…」

正直な話で言えば、ここで口を封じておけば全て解決するのだろう。
しかし手をあげることはない。こんなところで人殺しなど、出来る訳がない。今は本気にも聞こえたこの声を、信じるしかない。

魔剣士「ちっ…。分かった……」
ビーグゥ「おっ…?」
魔剣士「お前の言葉を信じてやる」
ビーグゥ「ほ、本当か!?」

魔剣士は"パチン"と指を鳴らすと、小さい風刃魔法を二人を縛る鎖へ発生させ、鎖は千切れ二人は自由を取り戻した。

チィビィ「あ、あれ…。自由になった……」
ビーグゥ(……な、何て精度の魔法だ…)

両腕をブラブラと動かし、手足が着いていることを確認すると改めて魔剣士へと明言する。

ビーグゥ「分かったぜ魔剣士。俺ぁ、お前の言うことに従うぜ」
魔剣士「信じるぞ」
ビーグゥ「そんなおっかない顔して言われたら、実力的に勝てない俺が従わないわけにゃいかねぇだろ…」
魔剣士「分かった。その言葉だけでもう十分だ」

それを聞いた魔剣士は振り返ると、部屋から静かに出て行った。
ビーグゥは彼が出て行ったあとに部屋からそっと廊下へ顔を覗かせ、右良し左良し、天井良し。魔剣士がいないことを確認し、部屋の中央へと足を運んで「クソ野郎が!」と机を強く蹴飛ばした。

チィビィ「あ、兄貴ぃ……」
ビーグゥ「俺に恥じをかかせやがって、あのガキッ!ガキッ、ガキィッ!!」
チィビィ「どうするんですか…?」
ビーグゥ「ぶち殺す…と言いたいが、あの男にゃ俺とお前の力でも勝てねぇだろう……」
チィビィ「じゃ、諦めるんです…?」
ビーグゥ「ンなわけねぇだろう!ここまで煮え湯を飲まされといて、今さら引き下がれるかってんだよ!」
チィビィ「で、ですが……」
ビーグゥ「安心しろ。まあ、いい考えがないわけじゃない」
チィビィ「へ?」

ビーグゥは不敵に笑う。

ビーグゥ「この船にゃ、試験を受けに来てる面子がゴロゴロいる。そいつらに魔剣士の情報を伝えてやるんだよ……」
チィビィ「良いんですか?あの男、兄貴にそれはするなって…かなり怖い顔で忠告を……」
ビーグゥ「関係あるか。大勢で行けば問題もねぇさ。俺だけの儲けにはならないが、魔剣士と白姫だと聞いて動かないハンターはいねぇはずだ!」
チィビィ「……でも、客室も分かりませんぜ?」
ビーグゥ「あの馬鹿が置いて行った、コレだ」

魔剣士の砕いていった鎖を拾い上げ、机に置いた。

チィビィ「この鎖が何かあるんで?」
ビーグゥ「試験を受けに来たバウンティハンターの中に、あの男がいた。アイツなら魔剣士の放った魔力を追って部屋も分かるはずだ」
チィビィ「……どなたです?」
ビーグゥ「シュトライトって男だ」
チィビィ「はて、シュトライト……」
ビーグゥ「何故か"丸眼鏡に変なベスト、研究者みてぇなナリをしてた"が俺には分かったぜ。元優秀な魔法使いのバウンティハンター、シュトライト……」
チィビィ「無知ですんませんが、あまり聞いたことが……」
ビーグゥ「そりゃーお前が俺に誘われてハンターになる前の話だからな。冷酷な魔法使いシュトライトっていえば、有名だったもんよ。以前、別の町で大量の女ぁ連れて馬鹿笑いしてた顔を見たことある。間違いなく、恰好はその時と似つかないがあれはシュトライトだ」
チィビィ「へぇー、そうなんですねぇ」
ビーグゥ「一応、警戒がてらに後ろを着いて行って部屋の場所も抑えてある。魔剣士の話には絶対に食いつくはずだぜ」
チィビィ「ほほー、じゃあ早速!」
ビーグゥ「いや待て。まだ早すぎる。魔剣士の奴も、まだ警戒は解いてないはずだ」
チィビィ「ほ……?」

熱は籠っていたが、至って冷静に分析し、魔剣士を倒す方法を模索する。

ビーグゥ「そうだな…、やはり夜だ。深夜に奇襲を仕掛けるのはアリだろう」
チィビィ「ですが、先に情報を伝えたほうが良いのでは?」
ビーグゥ「バカ野郎!先に情報を教えて、夜になる前に勝手に行動されたらどうする!」
チィビィ「……兄貴、やっぱり頭良いや!」
ビーグゥ「ふっへっへ、じゃあ決まりだ。シュトライトに場所を聞いて、騒ぎ立てて他のハンターに情報をバラ撒いてやる…。覚悟しろよ、クソ魔剣士がぁ!!」

舌なめずりをしたビーグゥは、用意周到、深夜行動のためにベッドへ横になって眠りについたのだった。

チィビィ「へっへっへ、楽しみになってきましたねぇ…。俺も早く寝よっと……」

…………
……


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