地獄で捧げる狂死曲(ラプソディー)~夢見る道化は何度死んだって届けたい、笑顔を君に~

norikurun

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地獄体験~あれ? 思ったよりも~

死んでからの体験(真) 3

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「………おぉう……」

 艶めかしい円錐状の、見上げるように大きな鍾乳石。
 感嘆の声がもれるも……これには度肝を抜かれすぎて言葉にならなかった。

 その巨像を真っ赤に染め上げるのは、足元にある、ほんの小さなクラックから噴き出す炎。
 地面から天に突き上がる、逆つららが踊るのも、足元から照らすその炎が揺れ動くからだ。

 ボクが髪を触られたと感じたのも、たまに起こる無音の小爆発――その爆風が、こちらに届いたからだ。

「……いや、そんなことはどうだっていいよ」

 眼の前の大自然が創り上げた壮大な芸術作品は、ボクの心の琴線で、ガシャガシャヘヴィメタルを奏でて続けているのだ。いや、弦に歯を立てて音を出してる気もしてきたのだ。

「……こんなの人には作れっこない!」

 このパッションとの出逢いを、何をおいてでも存分に楽しまないといけない。
 雑念はもったいない! そんなことを思ったにもかかわらず――

「あの硬質の大鍾乳石が、まるでお好み焼きのかつお節のごとく……ゆらゆらユラユラ……。
 あたかも、たこ焼きのかつお節のようだ……」

(……ボクの表現力は、スケールの違いなんてものともしないよっ!)

 真っ向から対抗意識を燃やすも、さすがに相手が悪いと、どこか悔しさが滲む。

(……大自然の猛威の前には……負けるが勝ちだ)

 この場はひとまず軍配を譲ることにし、今は純粋にこの光景に刮目した。

 ひとたび炎が揺らめけば、たちまちに感動が湧きたつ。
 その一瞬であらゆる感情が、凌駕された。

 絶えず揺らめき続ける炎と陰に、不覚にもどれだけ心を奪われていたのか……。
 一目で視界に収まりきらない程に巨大なつらら。
 その威容を前にして、緊張の糸を緩めること一切、能わず。
 風雲急を告げ続けられる状況に、自分が石像になったかのごとく、ずっと立ちすくんでしまった。

 今度こそ、数十メートル先に出向くだけで、簡単に触れられた。
 ぴょんぴょん跳ねまわる必要すらない。
 なのに、その光景は魅入る以外のすべてを忘れさせたのだった。
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