囚愛-shuai-

槊灼大地

文字の大きさ
40 / 99
囚愛Ⅱ《エリックside》

囚愛Ⅱ《エリックside》2

しおりを挟む

帰宅をし、自分の部屋のデスクに座り、先ほどあったことを整理した。



私は竜に嫉妬していた。
雅様の想い人が私で良かったと感じてしまった。
雅様を親心としてではなく、一人の男性として好きだと気付いてしまった。



―…そんな感情、絶対に持ってはいけないのに


   

雅様が私を愛しているなら尚更。












「ソフィア様。私の執事契約は雅様が18になり高校を卒業するまででしたよね?」



テリーが席を外している間、一人でいるソフィア様に話しかけた。



「ええ」



雅彦様は生前、万が一自分が亡くなった時のために契約書を用意していた。



自分が死んだら執事契約を雅様の高校卒業まで延長するというような内容だ。



私はそれにサインしていた。



「雅様が卒業をしたら契約終了し、私は日本から離れます」


「え?」


「L.A.校の講師として働こうかと思います。あちらも人員不足のようなので」




もしこの気持ちが薄れるようなことがあれば、契約の延長をしよう。



「…まだあと8ヶ月あるわ。よく考えて、2ヶ月後に気持ちの再確認をさせて。雅はあなたを必要としているから」


「はい」





雅様を心から愛しているこの感情が薄まれば。





逆に深まるようなことが、あればその時は迷わず―…








―9月 文化祭当日―



「エリックー!母さん、テリーも!みんな来てくれてありがとう」


3人で雅様のダンスを見るために文化祭へ来た。



髪の毛をセットして、衣装を着て、久しぶりに見る雅様に心がざわつく。



「あと30分でJEESのライブとダンスだから」


「楽しみにしているわ」


「テリー、母さんがナンパされないように守ってね」


「もちろんです」



そう言って雅様は本番に備えるためその場を離れた。




用意された関係者席に座り、ライブを待った。




「いやー、若い子いっぱい」


「お前はすぐに手を出しそうだなテリー。私は生徒をテリーから守らないと」


「うるさいなぁエリック。あ、始まるぞ」




場内が暗くなり、JEESのライブが始まった。



幼い頃からずっと見てきた雅様のダンス。



今は一段と輝いて見える。



それと同時に、やはり私なんかではなく、年の近い人を好きになって幸せになって欲しいと思った。




「エリック、俺たちは先に帰るから」


「ああ」




ライブが終わり、テリーとソフィア様は帰宅した。



私はこの後、雅様の打ち上げが終わるまではフリータイム。



その間に、この気持ちを落ち着かせたいと思い何も考えず校内を歩いていた。




「エリック?」



聞き覚えのある声に呼ばれ、振り返るとヒカリがいた。



「どうした…そんな…《泣きそうな顔して》」



気を遣ったのか、周りの生徒にバレないように途中から英語で会話をしてくれた。



「《泣いてなどいませんよ。喉が渇いて飲み物を探していました》」


「《じゃあ一緒に行こう》」



そう言って生徒の出し物へと私を案内してくれた。



危なかった。



あのまま一人でいたら、色んな感情が溢れて泣いてしまっていたかもしれない。




「おー、お前ら。サボらずやってんだな」


「哀沢先生ー!あー!誰その金髪の美人さんは?雅鷹先生に言いつけるよー?」


「めんどくせぇから止めろ。エリック、何飲む?」


「―…冷たいコーラを」


「コーラ2つ」



そして休憩スペースに座り、ヒカリとの雑談を楽しんだ。



ヒカリに出会ったのは彼がまだ10歳の頃。



雅彦様の屋敷の隣が、ヒカリの祖父で雅彦様の担当医の家だった。



たまにアメリカに来るヒカリにスケジュールを合わせ、遊ぶのを楽しみにしていた雅彦様を思い出す。




「《ヒカリは…マサタカと付き合って長いのですか?》」



ヒカリはこの学園の英語教師である山田雅鷹という青年と、学生時代から付き合っていると雅様が言っていたのを思い出した。




「《もうすぐ10年かな》」


「《なぜマサタカを好きだと気付いたのですか?》」


「《俺は…ずっと三科雅彦が好きだったから。あいつが死んでから誰も好きにならないって決めたんだけど》」



やはりヒカリは雅彦様を好きだったのか。



雅彦様からしたら、ヒカリは弟のような子供のような存在だったと思う。



でもヒカリの目線は雅彦様の心の奥深くを欲しがっているのを感じていた。



「《だから山田のことも好きになる予定はなかった。告白も断った。それなのにずっと俺を想っててくれて、気付いたらあいつがいないと寂しいなと思うようになったんだ》」



雅彦様が死んでいなければ、私が守れていれば、別の未来があったかもしれない。



きっとヒカリに恋人が出来たことを祝福したいから、パーティーを開こうと仰るはずだ。



そんな未来を創れなかった、私の責任―…




「《山田からの好きって言葉が、俺の精神安定剤だから》」


「《愛しているのですね、マサタカを》」


「《あぁ。誰よりも愛してるよ。俺はこれが最後の恋だから》」


「《もしマサタカが何も言わずヒカリの元を去ったらどうしますか?》」



自分がしようとしていることを、マサタカに置き換えて質問するなどなんて最低なのだろうか。



これ以上ないくらい恋人を愛しているヒカリを、雅様だと置き換えて。




「《誰かを好きになって幸せなら追わないけど…俺を好きなのに離れたのなら、見つけ出して、離れようと思えないぐらいに愛すよ》」




私は幸せにはなれない。
なってはいけない。



「《幸せですね、マサタカは》」



ふと笑うヒカリが可愛かった。



「《ヒカリ、どうかマサタカと幸せに》」


「《もちろん》」




雅彦様の死を乗り越えたあなたが、マサタカといつまでも幸せでいられますように。



そう願いながら、生徒に呼ばれたヒカリと別れ、ライブが終わった雅様の元へと向かった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人気作家は売り専男子を抱き枕として独占したい

白妙スイ@1/9新刊発売
BL
八架 深都は好奇心から売り専のバイトをしている大学生。 ある日、不眠症の小説家・秋木 晴士から指名が入る。 秋木の家で深都はもこもこの部屋着を着せられて、抱きもせず添い寝させられる。 戸惑った深都だったが、秋木は気に入ったと何度も指名してくるようになって……。 ●八架 深都(はちか みと) 20歳、大学2年生 好奇心旺盛な性格 ●秋木 晴士(あきぎ せいじ) 26歳、小説家 重度の不眠症らしいが……? ※性的描写が含まれます 完結いたしました!

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

処理中です...