囚愛-shuai-

槊灼大地

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囚愛Ⅲ《エリックside》

囚愛Ⅲ《エリックside》4

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これからの1ヶ月どうなってしまうのだろうかと思ったが、日中私は執事学校の講師、雅様はダンスの練習をしに出掛けている。



雅様達と顔を合わせるのは朝食と夕食を共にするぐらい時ぐらいだった。






「《テリー相変わらず、お肉好きだねぇ》」 



「《ソフィア様が肉は食わないからなぁ。食えるときに食っておかないと》」




そして―…



「《アル…毎日のように来るな》」




仕事帰りにアルが来るのが日常茶飯事になっていた。




「《いいでしょテリーもいるし。たくさんいたほうが楽しいし。ねぇ雅、動画サイトで君のダンスを見たけどとても素敵だね》」


「《ありがとう、アル》」



なぜかテリー、アル、雅様は仲良くなっており、おかげで私たちの会話はドイツ語から英語中心に代わっていた。



私の友人の中に雅様が溶け込んでいる不思議な生活。



でもテリーとアルがいてくれてよかった。



雅様とも自然に会話が出来るし、雅様も日本時代と変わらない接し方をしてくれている。






―…あぁ、これだけで幸せだ















「“エリック、最近ネックレス着けてないんだね”」




ある日、執事学校で着替えをしていると、いつも身に付けていたネックレスをしていないことにアルが気付いた。





「“―…あぁ。1ヶ月間は冬眠したいと言ってて、外している”」



「“ははっ。君のネックレスは熊か何かなのかな?”」




雅様達と出会う前に念のためネックレスを外しておいてよかった。




だってもう雅様には恋人がいるのだから、あれを身につけているのが知られたら迷惑でしかない―…




それから1週間が経った。



休暇が被り、4人で観光と買い物をしに出掛けることになった。



基本的に雅様はアルと共に行動していて、アルは執事心が働くのか雅様が購入した荷物を持ちながら買い物を楽しんでいた。




1日中歩き回り、ディナーのためレストランへと入る。



食事を堪能しながら歓談し、デザートが届いたところでアルが話し始めた。




「《そうだエリック、言い忘れてたことがあった》」


「《なんだ?》」



そしてアルは私の左手を取り、手の甲にキスをして言う。




「《プロポーズの返事、楽しみにしているよ》」




その言葉に、アル以外の全員が驚いた。



もちろん私も。



「《アル!》」



なぜ急にこんな場所でこんな話しを…




「《さぁ皆、デザートが溶けてしまうよ。食べよう》」



そう言ってアルは何事も無かったかのようにデザートを食べ始めた。




帰宅後アルと別れ、自宅に戻るとテリーがニヤニヤしながらこちらを見ていた。





「《お前、アルにプロポーズされてたのか?》」


「《―…私は友人としてしか見ていない。交際すらしていないのに》」


「《アルは優良物件だぞ。金はあるし、性格もいい。そして昔からお前をすごく愛している》」



アルと恋人同士?
アルと結婚?




いや、やはりアルは友人としてしか見れない。



私にはもう恋愛は向いていないのだ。



誰も好きにならないほうが楽だし、一人でいいんだ。




私の中途半端な気持ちでアルの人生を無駄にさせたくない。



数日間、何度考えてもアルと結婚するなど考えられなかった。




そう思いながら夕食後に書斎からリビングへ移動すると、雅様がソファーで眠っていた。




「雅様…?」



今日の練習が相当疲れたのだろうか。




日本にいた頃もこうやってよくソファーで眠ってしまって起こしていた懐かしい記憶が甦る。



「雅様」



しかしこんな場所で眠ったら体が休まらない。



「雅様…起きてください」



ただでさえ練習で疲労しているのだ。



私は少しかがんで、寝ている雅様を起こそうと優しく体を揺らした。



「雅様!みや―…」



その瞬間、手を引っ張られ背中に圧力を感じ、気付くと雅様の顔が目の前にあった。



抱き寄せられたのだ、と瞬時に脳が理解した。




「―…うるさいよ」




雅様は眠たそうな目をうっすらと開けて私を見て言った。



「起きていたのですか?」


「いや…人の気配を感じたから。うるさいから抱き寄せたらエリックだった」



彼は私を抱き寄せたまま、ふっと笑って見せる。




あぁもうその笑顔だけで胸が高鳴ってしまう―…




「私じゃなくてテリーでも同じことをしましたか?」



「いや、テリーだったら…俺の本能が抱き寄せたら危険だって拒否してると思う」



その発言でお互い笑い合い、雅様は私を抱き寄せていた腕を放し、再び目を閉じた。



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