玄愛-genai-

槊灼大地

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玄愛Ⅲー文化祭編ー《雅鷹side》

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地獄とは―…?



地獄は、宗教的死生観において、複数の霊界(死後の世界)のうち、悪行を為した者の霊魂が死後に送られ罰を受けるとされる世界。厳しい責め苦を受けるとされる。素朴な世界観では地面のはるか下に位置することが多い。



【山田雅鷹脳内辞典より】



「神威さーん、打ち合わせー!」


「まぁ頑張れよ。いま行くー」



「…」



思ってもみない回答。



いや、もしかしたら冗談かもしれないよね。アヤちゃんのことだし。



「ルイちゃん、総合司会って楽…」
「大変ですよ」



ルイちゃんは俺の言葉を遮り続ける。



「自分のクラスの出し物には参加できませんし、休み時間も無いので司会にのみ全力を注いでください」


「え…」


笑顔で淡々と大変さを語るルイちゃん。



ルイちゃんが言うってことは、本当に大変じゃん。



「うちのクラスのハロウィン…」
「参加できません」
「バスケ部の出し物…」
「見学も不可です」


何度も何度も言葉を被せてくる。



目は笑ってるけど、その目の奥からは大変だよって伝わってくる。



「えー!女装できないじゃーん!」


「女装をして総合司会をすればいいと思いますが…」


「あ!そっか!頭いい!」



逆に総合司会だと皆に見られるから、めっちゃ可愛い俺を見てもらって哀沢くんに嫉妬してもらえるかも。



楽しみになってきた。



「私、山田くんの女装手伝いたーい」


「私も」


「毎年楽しみにしてるんだよぉ」



俺の話を聞いていた女子たちがワクワクしながら俺の周りに集まってきた。



そんな女子からも俺の女装を期待されているとは…



「皆が俺を待っている」


「女装をですけどね」


「みんなー!俺を綺麗にしてねー!」



哀沢くんに会えなくなる時間は増えるけど、哀沢くんに可愛いと思ってもらえるならいいか。



楽しみになってきたぁ。



「哀沢くん喜んでくれるかなぁ?」


「哀沢さん中心なんですね」


「もちろん!可愛い俺を見てもらって抱きしめてもらって可愛いって言ってもらおー」



哀沢くんと正式に付き合ってもう半年以上経つのに、好きとか可愛いとか言ってくれないんだよね。



キスしたりエッチしたりはしてくれてるから、俺のこと好きだとは思うけど。



これは女装をして可愛さアピールして愛を深めるいいチャンスなのでは。



「充分だと思いますけど?」


「え?」


「充分可愛いと思いますよ、今のままで」


「…ルイちゃん、何が欲しいの?金かな?」


「いりませんよ。あるので」



ありがとうルイちゃん。



俺可愛い自覚はあるけど、愁ちゃんみたいな綺麗な人を好きな君が俺を可愛いというのなら…自信でてきたよ。





―昼休み―




「哀沢くーん」



教室でお弁当を食べてる哀沢くんの元に駆け寄った。


哀沢くんの机の目の前に立って、両手を自分の頬に当てて最大限の可愛さで問いかけた。



「俺、可愛い??」


「…」



哀沢くんはその姿を見て少し黙り、目線をお弁当に戻して言った。



「…普通」



その発言で、俺の心臓に鋭利な刃物がクリティカルヒットしてHPは1になった。



俺の予想はこうだった。


1→可愛いよ


2→さぁな


3→男なのに可愛いって言われたいのか?


4→知らねぇ



【普通】は俺の哀沢くん攻略辞典には載っていなかった。



最新版にアップデートしなくては。



「なんだよ急に。それだけ言いに来たのか?」



っていうか、ルイちゃんのうそつき。



アップデートする前に足利槞唯を成敗する。



今のままで充分可愛いって言ってたくせに。
俺を嵌めたな?
あの極悪裏表メガネめ。



「雅鷹さん、お昼終わりましたか?職員室までこのまま一緒に行って打ち合わせ…」

「あー!極悪裏表メガネルイちゃん!ちょうど良かったとりあえず殴らせて!」



俺を嵌めた張本人のお出座しだ。



俺はルイちゃんの元に怒りながら駆け寄った。



「なぜですか」


「もうAB型の言うことは信用しない!」


「雅鷹さんもAB型じゃないですか」


「俺はいーのっ。じゃあジュースおごって。今俺のHP1だから。ルイちゃんのせいで」


「なぜですか」


「じゃ殴らせて」


「だからなぜですか…」



俺の理不尽な怒りにどう対処していいか分からないルイちゃん。



職員室での用事が終わり、生徒会室まで歩きながらルイちゃんに経緯を全て話した。



「だから怒ってたんですか」


「傷ついたよ俺は!!」


「普通ってなに?すっごい中途半端!」


「まぁ確かに…」


「マジでへこむ。早退しようかな」



生徒会室に着いても俺は怒っていた。



怒りながらもルイちゃんと打ち合わせを続けた。




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