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糖度4*粉雪舞うクリスマス
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今年のクリスマスイブとクリスマス当日は土日にあたり、二連休になる。
綾美は予定通りに高橋さんとディナーに出かけるらしく、休憩中は通販サイトで洋服選びをしている。
私はと言うと・・・香坂君からはクリスマス関連の連絡が一切ないままなのだ。
クリスマスまで一週間前というのに予定が埋まらずにいるが、毎日のおはよう&おやすみメッセージや電話が何日かに一度あるから、さほど焦りはしていない。
信じて待つ、と決めたんだから!
「秋葉、社内報にインタビューと写真が乗るらしい。年明けに撮影とインタビューがあるからな」
日下部さんと一緒に届いたサンプル品を眺めていたら、突然の一言に唖然とした。
「えーっ!!嫌ですよ、写真嫌い…」
「嫌いでもなんでも決まったんだからしょうがないだろっ!」
クリスマスを頭の片隅に追いやりたい一心で仕事をこなしていた私に、またもや余計な仕事が舞い込んだ。
社内報とは、年に二回印刷されて社員に配布される社内新聞のようなものだ。
本社から地方のカフェ店員、新店舗のカフェや雑貨店などが幅広く掲載される。
あくまで噂だけども、イケメン店員が紹介されると実際に会いに行く人が居るとか居ないとか・・・。
「思い出したっ!日下部さんさぁ、社内報に載った時はまだ新人でカフェに配属されてたよね…。初々しかったなぁ…」
「要らない事は思い出さなくていいから、サンプル品を会議室に運べ!」
「はぁい」
いつどんなタイミングと基準で社内報に載るのかは不明だが、その時その時で社長が気に入った人を載せているという噂もある。
まぁ私の場合は、来春のウェディング参入に向けてのデザイン関係で掲載されるとは思うけれど・・・。
「毎回思いますが、サンプル品を全部運ばなくても良くないですか?色違いとかは写真だけでも…」
サンプルの入ったダンボールを抱えて、会議室へと向かう。
「手に取って見ての個人個人の手触りや色合いの感じ方が違うから、決定会議では大変でも全部の現物を見て貰う。それが俺のモットーだから」
「…そのモットーに私は毎回参加なのですね。新入社員に運ばせたらいーのに!何で毎回毎回、私と日下部さんで運んでるんですか!」
「お前、最近、愚痴が多いぞ。……欲求不満か?」
いきなりの直球ストレートな質問に思わず、
「セクハラ反対!」と言い返し、会議室の机にドサッと置いた。
「セクハラって…いつ俺がそんな事をしたんだよ?」
ダンボールを置いた右手を掴まれ、目と目が合った。
「いつって…さっきの発言とエレベーターの件」
「…全くお前は…人の気も知らないでっ…。本当にセクハラしてやろうか…?」
「どうぞご勝手に!どうせ冗、だ、…」
冗談だと思い発言したのが不味かった。
不意打ちにも、耳たぶを甘噛みされたのだ。
「…っひゃ、や、だ」
身体がゾクゾクして、変な声が出てしまった。
会議室のブライドは閉まっているので、外からも廊下からも見えない。
右手の自由もなく壁際に抑え込まれた私は、ブラウスのボタンを二段目まで外されて、左胸の少し上に唇を押し当てられた。
「…んっ、やだ、離し、て…」
抵抗しようとするのだが、壁際に抑え込まれていて上手く逃げられない。
唇が離れた時、左胸の少し上にキスマークが出来ていた。
「…お仕置き。お前、人の事をからかい過ぎ。弄んでるつもり?それとも本当に欲求不満で、こーゆー事したくて誘ってるの?」
「ち、違う…そんな、つ、も」
『そんなつもりじゃない』───そう言いかけた時にされたキスはとても荒々しいものだった。
「…ずっと手に入れたくて、今が一番仕事が楽しいって知ってたから邪魔しないように我慢してたのに…どこの誰かも知らない男にとられて…。
気がおかしくなりそうなんだよっ!
お前なんて、このアザを見られて彼氏に嫌われたらいいんだ」
日下部さんは再び、唇を左鎖骨の下辺りにあてて、キスマークを残す。
何箇所かキスマークを残し、「ごめん…」と呟いて会議室を去った。
私は今起きた出来事が理解出来ないままに、力が抜けた様に会議室の床に座り込んだ。
日下部さんに酷い事をされたのに、嫌ではなかった事に驚愕した。
嫌ではなかったから、本気で抵抗しなかったのかもしれない。
目からは涙が一粒、また一粒と流れては床に落ちた。
この涙はきっと悲しいからでも、嫌だったからでもなく、ただ単に"自己嫌悪"そのものに対してだった───・・・・・・
綾美は予定通りに高橋さんとディナーに出かけるらしく、休憩中は通販サイトで洋服選びをしている。
私はと言うと・・・香坂君からはクリスマス関連の連絡が一切ないままなのだ。
クリスマスまで一週間前というのに予定が埋まらずにいるが、毎日のおはよう&おやすみメッセージや電話が何日かに一度あるから、さほど焦りはしていない。
信じて待つ、と決めたんだから!
「秋葉、社内報にインタビューと写真が乗るらしい。年明けに撮影とインタビューがあるからな」
日下部さんと一緒に届いたサンプル品を眺めていたら、突然の一言に唖然とした。
「えーっ!!嫌ですよ、写真嫌い…」
「嫌いでもなんでも決まったんだからしょうがないだろっ!」
クリスマスを頭の片隅に追いやりたい一心で仕事をこなしていた私に、またもや余計な仕事が舞い込んだ。
社内報とは、年に二回印刷されて社員に配布される社内新聞のようなものだ。
本社から地方のカフェ店員、新店舗のカフェや雑貨店などが幅広く掲載される。
あくまで噂だけども、イケメン店員が紹介されると実際に会いに行く人が居るとか居ないとか・・・。
「思い出したっ!日下部さんさぁ、社内報に載った時はまだ新人でカフェに配属されてたよね…。初々しかったなぁ…」
「要らない事は思い出さなくていいから、サンプル品を会議室に運べ!」
「はぁい」
いつどんなタイミングと基準で社内報に載るのかは不明だが、その時その時で社長が気に入った人を載せているという噂もある。
まぁ私の場合は、来春のウェディング参入に向けてのデザイン関係で掲載されるとは思うけれど・・・。
「毎回思いますが、サンプル品を全部運ばなくても良くないですか?色違いとかは写真だけでも…」
サンプルの入ったダンボールを抱えて、会議室へと向かう。
「手に取って見ての個人個人の手触りや色合いの感じ方が違うから、決定会議では大変でも全部の現物を見て貰う。それが俺のモットーだから」
「…そのモットーに私は毎回参加なのですね。新入社員に運ばせたらいーのに!何で毎回毎回、私と日下部さんで運んでるんですか!」
「お前、最近、愚痴が多いぞ。……欲求不満か?」
いきなりの直球ストレートな質問に思わず、
「セクハラ反対!」と言い返し、会議室の机にドサッと置いた。
「セクハラって…いつ俺がそんな事をしたんだよ?」
ダンボールを置いた右手を掴まれ、目と目が合った。
「いつって…さっきの発言とエレベーターの件」
「…全くお前は…人の気も知らないでっ…。本当にセクハラしてやろうか…?」
「どうぞご勝手に!どうせ冗、だ、…」
冗談だと思い発言したのが不味かった。
不意打ちにも、耳たぶを甘噛みされたのだ。
「…っひゃ、や、だ」
身体がゾクゾクして、変な声が出てしまった。
会議室のブライドは閉まっているので、外からも廊下からも見えない。
右手の自由もなく壁際に抑え込まれた私は、ブラウスのボタンを二段目まで外されて、左胸の少し上に唇を押し当てられた。
「…んっ、やだ、離し、て…」
抵抗しようとするのだが、壁際に抑え込まれていて上手く逃げられない。
唇が離れた時、左胸の少し上にキスマークが出来ていた。
「…お仕置き。お前、人の事をからかい過ぎ。弄んでるつもり?それとも本当に欲求不満で、こーゆー事したくて誘ってるの?」
「ち、違う…そんな、つ、も」
『そんなつもりじゃない』───そう言いかけた時にされたキスはとても荒々しいものだった。
「…ずっと手に入れたくて、今が一番仕事が楽しいって知ってたから邪魔しないように我慢してたのに…どこの誰かも知らない男にとられて…。
気がおかしくなりそうなんだよっ!
お前なんて、このアザを見られて彼氏に嫌われたらいいんだ」
日下部さんは再び、唇を左鎖骨の下辺りにあてて、キスマークを残す。
何箇所かキスマークを残し、「ごめん…」と呟いて会議室を去った。
私は今起きた出来事が理解出来ないままに、力が抜けた様に会議室の床に座り込んだ。
日下部さんに酷い事をされたのに、嫌ではなかった事に驚愕した。
嫌ではなかったから、本気で抵抗しなかったのかもしれない。
目からは涙が一粒、また一粒と流れては床に落ちた。
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