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糖度8*ハイスペック彼氏
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今日から4月。
桜も散りはじめた中、新入社員が今日から出社して来た。
新入社員の歓迎会を来週に控え、社員達は気持ちがソワソワしている。
『広告部に入った子が可愛い』とか、
『歓迎会でもっと親密になりたい』とか、春らしく心躍る恋話も聞こえてくる。
そんな中、私も例外なく気持ちがソワソワしているのだ。
社員食堂の掲示板に"辞令"として、
【取締役副社長に花野井 有澄を任命する】とあった。
有澄が社長の息子だから、出来レースで当たり前のポジションを最初から獲得していたんだと思われる。
今まで副社長のポジションがあったのかどうかは定かではない。
現社長が有澄に会社を譲る為に副社長というポジションを用意したのかもしれないし・・・。
私は掲示板の前で立ち尽くしていた。
「…有澄って、ゆかりの彼氏だよね?でも名字が違う?」
「…うん、多分、有澄の事だね」
綾美が通りかかり、私に話かけるが衝撃的過ぎて上手く言葉が見つからない。
以前、系列の"いろはCafe"で働いていたのも、社内で会ったのも全ては副社長になる為。
そうだっ!
有澄の事を教えてくれた日下部さんは以前から辞令を知っていたのだろうか?・・・だとしても、何故、私と有澄の関係まで知っていたんだろうか?
「綾美…私、日下部さんに聞きたい事があるから先に戻るね!」
「えー?何いきなり?急用?」
「後から話すよ!」
日下部さんは食事交代中の留守番で企画開発部に居るハズ。
綾美を置き去りにして、私は急いで企画開発部へと向かう。
「日下部さんっ!」
日下部さんはデスクに座り、一人で仕事をしていた。
私は駆け寄った勢いでデスクを手のひらで思い切り叩き、怒られた。
「お前、うるさい!一体何なんだ!?」
「ねぇ日下部さん教えて下さい!」
今は日下部さん一人キリだから丁度良い。
思い切って、勢いのまま聞いてしまおう。
「日下部さんって何で香坂君を知ってたの?」
「………」
「ねぇってばっ!」
パソコン用のブルーライトカットの眼鏡をしながら仕事している日下部さん。
答えようとしないので、手を伸ばして外す。
「はぁっ…。教えたら、何かメリットある?」
渋々とパソコンを閉じて私の方を見てくれた。
「えと…飴ちゃんあげます」と言って、ポケットからフルーツのど飴を差し出したが却下。
「じゃあ何したら教えてくれるの?」
「…逆に聞くけど何してくれるの?」
真っ直ぐに目を見て話すから、私は咄嗟に目を反らした。
何してくれるの?って聞かれても困る。
「…社員食堂のランチ奢ります」
「却下」
「…じゃあランチに好きな物プラスします」
「却下」
「綾美と高橋さん連れて飲みに行きましょ。私持ちで!」
「却下」
思い付く事をことごとく却下されて、私は困り果てて苦し紛れに思いついた。
「…仕方ない!取って置きの切り札です!日下部さんの超怖い運転練習に付き合います!」
「超怖いって何だよ。まぁ、いいや、それで決まり」
「日下部さんに命預けるんですからね、何かあったら責任とってよね!」
「そうだな、責任とるよ」
「やだ、やっぱりやだ。責任取られるの怖い…」
根負けした様で日下部さんは笑ってる。
「俺の昼交代の時間になったら、誰にもバレない様に時間ずらして社食に来い」
「分かりました」
日下部さんとの話が終わったので再び社員食堂に戻ると綾美と高橋さんが二人で話をしていたので、邪魔しない様にその場を去った。
綾美と高橋さんの交際お試し期間は終了して、本当の彼氏彼女になったらしい。
社員食堂を出ようとした時に忘年会で同じテーブルだった女の子に会った。
「副社長の花野井さんって秋葉さんの彼氏ですよね?」
「…うん」
きっと掲示板を見て知ったのだろう。
忘年会で初めて会話をしただけで、今まで存在も知らなかった私の様な人の彼氏の話までも覚えているとは恐るべし。
4ヶ月も前の話なのに・・・。
「副社長になる前から付き合ってたみたいですけど、御曹司って知ってたから付き合ったんですか?きっとそのうち飽きられて浮気しそうじゃないですかぁ?」
何が言いたい?
「御曹司だなんて知らなかったんだよ。そうだね、私の方が年上だから仕方ないのかもね?」
「男はみーんな若い子がいいに決まってます。私、日下部さん狙ってるんです。協力してくれませんか?」
私に傷つける様な物言いをしたくせに頼み事までしてくるとは、本当に強者だ。
さぁ、どうやって切り抜けよう?
「日下部さんは企画開発部に一人で残ってますので行ってみたらいかがです?」
「えー!?一人で行きずらいから秋葉さん行きましょうよ~」
私の休憩時間を嫌味な会話で奪っただけではなく、付き合ってとはどれだけ図々しいんだ。
桜も散りはじめた中、新入社員が今日から出社して来た。
新入社員の歓迎会を来週に控え、社員達は気持ちがソワソワしている。
『広告部に入った子が可愛い』とか、
『歓迎会でもっと親密になりたい』とか、春らしく心躍る恋話も聞こえてくる。
そんな中、私も例外なく気持ちがソワソワしているのだ。
社員食堂の掲示板に"辞令"として、
【取締役副社長に花野井 有澄を任命する】とあった。
有澄が社長の息子だから、出来レースで当たり前のポジションを最初から獲得していたんだと思われる。
今まで副社長のポジションがあったのかどうかは定かではない。
現社長が有澄に会社を譲る為に副社長というポジションを用意したのかもしれないし・・・。
私は掲示板の前で立ち尽くしていた。
「…有澄って、ゆかりの彼氏だよね?でも名字が違う?」
「…うん、多分、有澄の事だね」
綾美が通りかかり、私に話かけるが衝撃的過ぎて上手く言葉が見つからない。
以前、系列の"いろはCafe"で働いていたのも、社内で会ったのも全ては副社長になる為。
そうだっ!
有澄の事を教えてくれた日下部さんは以前から辞令を知っていたのだろうか?・・・だとしても、何故、私と有澄の関係まで知っていたんだろうか?
「綾美…私、日下部さんに聞きたい事があるから先に戻るね!」
「えー?何いきなり?急用?」
「後から話すよ!」
日下部さんは食事交代中の留守番で企画開発部に居るハズ。
綾美を置き去りにして、私は急いで企画開発部へと向かう。
「日下部さんっ!」
日下部さんはデスクに座り、一人で仕事をしていた。
私は駆け寄った勢いでデスクを手のひらで思い切り叩き、怒られた。
「お前、うるさい!一体何なんだ!?」
「ねぇ日下部さん教えて下さい!」
今は日下部さん一人キリだから丁度良い。
思い切って、勢いのまま聞いてしまおう。
「日下部さんって何で香坂君を知ってたの?」
「………」
「ねぇってばっ!」
パソコン用のブルーライトカットの眼鏡をしながら仕事している日下部さん。
答えようとしないので、手を伸ばして外す。
「はぁっ…。教えたら、何かメリットある?」
渋々とパソコンを閉じて私の方を見てくれた。
「えと…飴ちゃんあげます」と言って、ポケットからフルーツのど飴を差し出したが却下。
「じゃあ何したら教えてくれるの?」
「…逆に聞くけど何してくれるの?」
真っ直ぐに目を見て話すから、私は咄嗟に目を反らした。
何してくれるの?って聞かれても困る。
「…社員食堂のランチ奢ります」
「却下」
「…じゃあランチに好きな物プラスします」
「却下」
「綾美と高橋さん連れて飲みに行きましょ。私持ちで!」
「却下」
思い付く事をことごとく却下されて、私は困り果てて苦し紛れに思いついた。
「…仕方ない!取って置きの切り札です!日下部さんの超怖い運転練習に付き合います!」
「超怖いって何だよ。まぁ、いいや、それで決まり」
「日下部さんに命預けるんですからね、何かあったら責任とってよね!」
「そうだな、責任とるよ」
「やだ、やっぱりやだ。責任取られるの怖い…」
根負けした様で日下部さんは笑ってる。
「俺の昼交代の時間になったら、誰にもバレない様に時間ずらして社食に来い」
「分かりました」
日下部さんとの話が終わったので再び社員食堂に戻ると綾美と高橋さんが二人で話をしていたので、邪魔しない様にその場を去った。
綾美と高橋さんの交際お試し期間は終了して、本当の彼氏彼女になったらしい。
社員食堂を出ようとした時に忘年会で同じテーブルだった女の子に会った。
「副社長の花野井さんって秋葉さんの彼氏ですよね?」
「…うん」
きっと掲示板を見て知ったのだろう。
忘年会で初めて会話をしただけで、今まで存在も知らなかった私の様な人の彼氏の話までも覚えているとは恐るべし。
4ヶ月も前の話なのに・・・。
「副社長になる前から付き合ってたみたいですけど、御曹司って知ってたから付き合ったんですか?きっとそのうち飽きられて浮気しそうじゃないですかぁ?」
何が言いたい?
「御曹司だなんて知らなかったんだよ。そうだね、私の方が年上だから仕方ないのかもね?」
「男はみーんな若い子がいいに決まってます。私、日下部さん狙ってるんです。協力してくれませんか?」
私に傷つける様な物言いをしたくせに頼み事までしてくるとは、本当に強者だ。
さぁ、どうやって切り抜けよう?
「日下部さんは企画開発部に一人で残ってますので行ってみたらいかがです?」
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