糖度高めな秘密の密会はいかが?

桜井 響華

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【番外編】

何気ない幸せ(side:有澄)

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「お父さん、お父さん!紫が彼氏を連れで来たわよ!早く、早く~」
「そう慌てるな…」

ゆかりの御両親に挨拶に行くと玄関先まで、バタバタと走り回る音と声が聞こえた。ゆかりが小さな声で「ごめん、騒がしくて…」と言った。

緊張しながら玄関先で待って居た時、勢い良くドアが開いた。

「ようこそ、秋葉家へ。あれ?違った?」

ゆかりのお母さんがドアを開けてくれた。ゆかりがそのまま年齢を重ねた感じの方で笑顔が可愛らしかった。

「初めまして、お付き合いさせて頂いています花野井  有澄です」

「話は聞いてるわよ、どうぞ、上がって!」

お義母さんが誘導してくれて、ソファーに座らされる。目の前には寡黙なお義父さんとお兄さんの姿があった。「結婚前させて下さい」と挨拶をすると直ぐにビールやらご馳走やらがテーブルに並び始めた。

「有澄君が紫を貰ってくれるなら、こんなに有難い事はないよ。仕事ばっかりして、男っ気もないから、見合いでもさせようかと思ってたんですよ」

お義父さんはビールを飲みながら、朗らかに笑っている。お義母さんは「紫の周りにはイケメン揃いなのね。あの上司さんもカッコイイものね」と言ってはしゃいでいたので、義理の兄だと伝えると喜んでいた。

ゆかりはと言うとお兄さんと言い争いをしていた。

「何よ、自分だって3つ下の奥さんじゃないの!」
「俺は良いけど、有澄君が可哀想だ」
「そんなの、はる兄(にい)が決めることじゃないでしょ!」

それを見守るお兄さんのお嫁さん。途中、二人にお義父さんが喝を入れたら、言い争いは収まった。御両親は俺に気を使って、話をしてくれている。ゆかりの子供の頃の話とか、アルバムを見せてくれたりだとか。ゆかりの家は賑やかで楽しいな。初めてなのに暖かくて、居心地が良い。

挨拶が済んだ帰り道、駅までの道程にゆかりが通った小学校があった。

「ここね、私が通った小学校だよ」

校門は施錠してあり、入る事が出来なかったが俺が通っていた私立小学校とは雰囲気が違った。

「今思うと体育館とか校庭とか、小さくく見えるよね」

先程見せてもらったアルバムの中の写真を思い出す。運動会や発表会の写真。ゆかりはどの写真も良い顔をしていたな。一緒に過ごせなかった時間だけれど、楽しそうな瞬間が目に浮かぶ様だった。

「いつの日か、子供が産まれたら、お義母さんがしてくれてたみたいに沢山写真を残したりしてあげたいな。見る度に何度でも思い出が蘇るって良いよね」

「そうだね。でも、思い出も大切だけど…有澄と過ごしている今もとても大切だよ」と言って、俺の手をそっと繋いて顔を覗きこまれた。ゆかりの不意打ちに思わず、顔が赤くなる。

「あー、ゆかりが可愛すぎる……!」

「有澄こそ、顔が赤くて可愛いよ。今日は実家に挨拶に来てくれて有難う」

素直に言葉を伝えてくれた後にクスクスと笑う彼女が可愛すぎて、早く家に帰って二人きりを堪能したくなった。

「今日は何食べる?ずっと家ごはんだったから、好きな物食べに行こ?」

「………たまにはテイクアウトしない?」

「良いけど、どうして?」

昨日からゆかりが外食したがってたのは知っていたが、誰にも邪魔されず、尚且つ、ゆかりが御飯を作らなくて良い方法はテイクアウトだった。

「………ゆかりと二人きりで過ごしたいから!駄目……?」

「駄目じゃないよ、じゃあ、そうしよ。お酒も買って行こ!」

テイクアウトと聞いて曇りがちだった表情は、二人きりで過ごしたいとの答えによって晴れ晴れとした表情になった。

"思い出も大切だけど…有澄と過ごしている今もとても大切だよ"、ゆかりの言う通り、俺も今が大切だよ。一緒に過ごせなかった時間よりも、何倍も一緒に過ごしたら良いんだ。

───その後はテイクアウトをし、一緒に泡風呂に入ったりした。

「あのね、お風呂に一緒に入るとは言ってなかったんだけど…!」

「ずっと一緒に入ってなかったし、たまには良いでしょ?」

「仕方ないな…」

ブツブツ言いながら、ゆかりは泡を手に取り、口で吹き飛ばしたりしていた。

どんな仕草も表情も可愛く思える。ゆかりの間近に居られるだけで幸せ。

いつまでも、この幸せが続きますように願うばかり───……

♡oEND。+..:*♡



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みんなの感想(1件)

里芋コロッケ

桜井様

はじめまして、よろしくお願いします。

p12の後半、文章がダブってます。
日下部さんの台詞「お前の頭の中は一体…」〜私はチラシを作るだけだから…。 迄です。ご確認ください。

2021.08.28 桜井 響華

>里芋コロッケさん

初めまして、桜井と申します。
御指摘ありがとうございます(*^^*)
確かに二重に投稿していましたので、早速、直しました( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)

解除

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