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暗闇の影で
とある町で、三つの人影が暗い裏路地を歩いていた。唯一裏路地を照らしているのは、空をぼんやりと照らしている月だけだ。三つの人影は一番背の高い青年を中心にして歩いている。
一つ目の人影は、長髪の青年だ。青年は整った顔立ちで、冷ややかな瞳を持ち、無表情。瞳は氷のようなマリンブルー。淡々と進んでいるように見えて、ゆっくり、そしてじっくりとあたりを観察している。
腰に紐を巻いていて、その紐で袋を固定している。袋は左右で下げていて、必要最低限のものを持っているようだった。その袋も上着に隠れている。
上着は薄手で袖も含め長く、足首のあたりまでの長さだ。服は質素なもので、特に目立つ点はない。強いて言えば、額に布を巻いていて、シンプルに後ろで結んでいるところだろう。髪はそのまま下ろしていて、時々吹く風にふわりとなびいている。色は紺に近い青色で、暗い夜空のようにも見える。
二人目の人影は、十歳にも満たない幼い少女だ。
少女は整った可愛らしい顔つきで、白銀の少し長めな髪をしている。前髪は、右目を隠すように流しているため、右目が隠れている。見えている方の左目は、鮮やかなエメラルド色で、暗闇の中でもわずかな光にも反射し、柔らかく輝いている。服はワンピース型の服で、着色なし。
素材の色がそのまま活かされている。襟の周りには、赤い糸でシンプルな刺繍がされていて、それがまた可愛らしい。荷物は肩がけのバッグをかけていて、軽い足取りからそんなに重くないものが入っているのがわかる。顔立ちは幼いのに、どこか深い表情をしている。興味深そうにあたりを見渡しているように見えているが、警戒もしているような様子だ。
そして三人目は、三人の中で一番背が高く、赤い瞳に赤い髪の青年だった。
どちらも炎のように明るい色で、髪は毛先の方が若干オレンジ色になっている。所々、ぴょんと髪が跳ねているのが、青年の性格を表しているようだった。
そして、赤とオレンジのグラデーションの、美しい瞳を持っていた。青年は薄く笑っていて、まっすぐ前を向いて一番最初に裏路地を進んでいく。服は動きやすそうな半袖で、もう一人の青年と同じように袋をいくつか下げている。もう一人の青年と違うのは、右の腰にナイフを下げているところだろう。そして、右手には黒いグローブをつけていた。グローブといっても、指先が出るようになっている。使いやすいグローブだ。
三つの足音が、夜道に響いていく。
「……リュレン、つけてきているぞ。」
水色の瞳の青年が口を開いた。リュレンと呼ばれた青年の目を見ながら、他の二人にようやく聞こえる声でそう呟く。
「ルレファさんがそう言うのだったら、気のせいじゃない、ってことですか。やっぱり、見られてたんですね。」
少女は、右目にそっと触れながらため息をついた。
「仕方ないな。街の近くなのに油断したのが失敗だった。次、気をつけよう。セフィネル、相手の数と能力の解析を頼む。ルレファ、セフィネルと相手を気絶させてくれ。」
「わかりました。」
「ああ。」
その返事を聞いたリュレンが、スッとグローブを外すのを合図に、残りの二人も動き始めた。セフィネルは右目にかかっている髪をずらし、右目をあらわにした。だが、まだその目は閉じたままだ。
ルレファは、額の布をするりと解いた。ひらりとその布が揺れ、風になびく。その額には、青白く輝く紋章が刻まれていた。
セフィネルは瞼を開き、瞳が夜道を映す。その瞳は、輝く満月のような金色だった。そして、セフィネルの右の瞳の中には、金色に輝く紋章が刻まれていた。
そして、リュレンの右の手のひらにも、赤く輝く紋章が刻まれていた。
それぞれの紋章が、光を帯びる。リュレンは、ニヤリと笑って、後ろを振り向く。
「いつまで隠れてるんだ?相手してやるよ。」
その言葉に反応したように、暗い影から十人弱の人たちが飛び出してきた。その人たちは、全員左右のどちらかの腕に金のブレスレットを身につけていた。誰も彼もが、険しい目つきをしていて、三人を強く警戒しているようだ。
「気づいていたのか?」
その十人の中で、少し良い身なりをしている人が三人に話しかけてきた。多分、その中のリーダーのような人なのだろう。
「もちろん。ずっと前から気づいていたよ。いつ襲ってくるか待っていたが、どうにも動かないみたいだから、正面から相手してやることにしたんだよ。」
その人は腰に差していた剣を抜き、三人に向かって真っすぐに構えた。
「私たちとしては街に被害を与えたくなかっただけだ。戦うなら街の外のほうがいいと思っていたんでな。」
「なるほど。それは俺も同じだな。できるだけ穏便に済ませたい。」
それを聞くと、相手の顔が怒りで険しく歪んだ。奥歯を噛み締め、リュレンを睨みつける。
「それをお前らが言うか、魔人。」
その言葉と同時に、双方は一瞬消えたように見え、次に二人が現れたかと思えば、相手は剣をすばやく振り下ろしていた。リュレンはそれに対抗するように手のひらに炎をまとわせ、剣にぶち当てた。剣対素手の炎のはずなのに、手は傷ついた様子が欠片もなく、剣の方が溶けて歪んだ。
「っち!」
相手は舌打ちし、一歩引いた。そして、慌てながら後ろの人たちに焦りを含んだ声をかける。
「援護はどうし……は?」
目が、驚愕で大きく見開かれる。それも当たり前。十人ほどいたはずの仲間たちが、たった数十秒で全員倒れていたからだ。その影には、いつの間にか視界から姿を消していたセフィネルとルレファが、こちらを観察するように立っていた。ルレファの額に刻まれている紋章は暗闇の中に青白く光っていたので、不気味だった。
そして、ルレファの手に持っている小さなナイフには、血とはまた別の何かが付着している。
セフィネルは、リュレンたちがこちらを見ていることに気づくと、可愛らしい笑顔で大きく手を振った。
「こちら、全員戦闘不能にさせました!後はその人だけですよ!」
「お、助かる!」
まるで、ただの日常の会話のように信じられないことを言っているのを聞き、相手は混乱した。
「くそっ!」
あいつはもう溶けてしまって使えない剣を構え、右腕に付けていたブレスレットを光らせた。ブレスレットから何かの力が剣に流れ込み、そして剣にその力を纏わせた。剣に纏わせたその力は、剣のなくなった部分を補うかのように、剣の周りを包むようにして光の剣を新たに作り出した。
「これに、対処できるか?」
そう言って、また相手がさっきと同じように正面から剣を振り下ろしてきた。リュレンもさっきと同じように対処しようと剣に向かって手を伸ばした。
「下がれ!!」
その時、ルレファが大声でそれを止めた。リュレンはすぐに反応し、後ろに下がった。すると、行き場をなくした剣がそのまま真下に振り落とされ、地面に叩きつけられた。その瞬間、その剣の振り下ろされた場所を中心に、電気がほとばしった。
リュレンは慌てて飛び退いたおかげで、無事だった。ルレファが声をかけていなかったら、もろに食らっていただろう。
「これで素手では触れないだろう。」
その言葉に反応し、リュレンはニヤリと笑った。
「それはどうかな?」
その自信満々な返事に狼狽えていた僅かな隙に、いつのまにかルレファが背後でナイフを構えていた。
「戦闘に強いのは一人だけじゃないぞ。」
ナイフが相手の腕を掠る。掠めただけなので、少し血が滴るだけで、特に大きな傷にはならなかった。
「所詮、この程……度……」
相手は途中から言葉が途切れ途切れになり、その場にふっと倒れ込んでしまった。あたりが静まり返り、何も聞こえなくなると、ようやく三人は肩の力を抜いた。
「ふぅ!思ったよりバレるのが早かったなぁ。それにしてもセフィネルの薬はすごいな。ナイフがかするだけですぐに眠っちまうんだからな。」
リュレンは体を伸ばしながら、右手に手袋をつけ直した。
「頑張って作った特注品ですからね!あれだけ即効性があって、でも、相手の体に全く後遺症を残さないようにするのは大変でした。でもさっきので、在庫が半分になっちゃったので、また材料集めて作り直します。」
嬉しそうに笑いながら、セフィネルは目を閉じ、髪を右目に被せた。
「ルレファも助かった。俺一人であの数を相手にするとなると、さすがに無傷ですまないからな。」
「……それより、早くあいつらの記憶を抜いたらどうだ?早く抜かないと目を覚ますぞ。」
ルレファはさっきまで外していた布を、再び額に結びつけた。布を結びつける頃には、さっきまで光っていた紋章がすでに光らなくなっていた。
「そうだな。……今日は一日中疲れが残りそうだよ。」
ため息をついて、さっき倒した人たちの所へ、リュレンは近づいていく。
「仕方ない。嫌なら見つからないようにするだけだ。」
「わかってはいるんだが、それほど簡単じゃないんだよな。……『強奪』。」
リュレンがそうつぶやくと、倒れている人たちの頭部から、ぼんやりとした光のようなものが飛び出してきた。
その光はそのままリュレンの胸に向かって集まり、最後には、リュレンに吸い込まれるようにして消えてしまった。
「これで、こいつらは例外なく俺たちを見つけてから今までの記憶をなくした。……くそ、頭がパンパンだ。」
リュレンは自分の頭を手のひらで軽く二、三回叩いた。
「いつもは多くても5人くらいだからな。今回はいつもより負担が大きいんじゃないか?」
「ああ。記憶がごちゃまぜで気持ち悪い。」
「自業自得だぞ、リュレン。」
ルレファにそう睨みつけられて、しゅんとなる。
「……悪い」
「それはともかく、早く行くぞ。他の奴らまで来たら大変だ。」
ルレファがそう急かすと、そこで初めて、そのことを思い出したように二人は顔を上げた。
「そうだな。……はぁ、何もしてねーのに、追われ続けるっていうのは本当に大変だな。」
「仕方ない。それが、『魔人』なのだからな。」
暗い表情で、ルレファは足を動かし始める。
「どうして、魔人なんて存在ができたんでしょうね。」
セフィネルは、俯きながらその背中を追いかけた。
先に歩いて行った二人を、リュレンは小走りで追いかけ、抜かして顔だけ二人の方を振り向いた。
「それを今、探しているんじゃないか。絶対に見つけような。」
「そうだな。」
「はい!」
再び前を向いて、三人はうっすらと朝日が差し始めた裏路地を進んでいく。その背中は、三人で共通の決意を、静かに固めていた。
一つ目の人影は、長髪の青年だ。青年は整った顔立ちで、冷ややかな瞳を持ち、無表情。瞳は氷のようなマリンブルー。淡々と進んでいるように見えて、ゆっくり、そしてじっくりとあたりを観察している。
腰に紐を巻いていて、その紐で袋を固定している。袋は左右で下げていて、必要最低限のものを持っているようだった。その袋も上着に隠れている。
上着は薄手で袖も含め長く、足首のあたりまでの長さだ。服は質素なもので、特に目立つ点はない。強いて言えば、額に布を巻いていて、シンプルに後ろで結んでいるところだろう。髪はそのまま下ろしていて、時々吹く風にふわりとなびいている。色は紺に近い青色で、暗い夜空のようにも見える。
二人目の人影は、十歳にも満たない幼い少女だ。
少女は整った可愛らしい顔つきで、白銀の少し長めな髪をしている。前髪は、右目を隠すように流しているため、右目が隠れている。見えている方の左目は、鮮やかなエメラルド色で、暗闇の中でもわずかな光にも反射し、柔らかく輝いている。服はワンピース型の服で、着色なし。
素材の色がそのまま活かされている。襟の周りには、赤い糸でシンプルな刺繍がされていて、それがまた可愛らしい。荷物は肩がけのバッグをかけていて、軽い足取りからそんなに重くないものが入っているのがわかる。顔立ちは幼いのに、どこか深い表情をしている。興味深そうにあたりを見渡しているように見えているが、警戒もしているような様子だ。
そして三人目は、三人の中で一番背が高く、赤い瞳に赤い髪の青年だった。
どちらも炎のように明るい色で、髪は毛先の方が若干オレンジ色になっている。所々、ぴょんと髪が跳ねているのが、青年の性格を表しているようだった。
そして、赤とオレンジのグラデーションの、美しい瞳を持っていた。青年は薄く笑っていて、まっすぐ前を向いて一番最初に裏路地を進んでいく。服は動きやすそうな半袖で、もう一人の青年と同じように袋をいくつか下げている。もう一人の青年と違うのは、右の腰にナイフを下げているところだろう。そして、右手には黒いグローブをつけていた。グローブといっても、指先が出るようになっている。使いやすいグローブだ。
三つの足音が、夜道に響いていく。
「……リュレン、つけてきているぞ。」
水色の瞳の青年が口を開いた。リュレンと呼ばれた青年の目を見ながら、他の二人にようやく聞こえる声でそう呟く。
「ルレファさんがそう言うのだったら、気のせいじゃない、ってことですか。やっぱり、見られてたんですね。」
少女は、右目にそっと触れながらため息をついた。
「仕方ないな。街の近くなのに油断したのが失敗だった。次、気をつけよう。セフィネル、相手の数と能力の解析を頼む。ルレファ、セフィネルと相手を気絶させてくれ。」
「わかりました。」
「ああ。」
その返事を聞いたリュレンが、スッとグローブを外すのを合図に、残りの二人も動き始めた。セフィネルは右目にかかっている髪をずらし、右目をあらわにした。だが、まだその目は閉じたままだ。
ルレファは、額の布をするりと解いた。ひらりとその布が揺れ、風になびく。その額には、青白く輝く紋章が刻まれていた。
セフィネルは瞼を開き、瞳が夜道を映す。その瞳は、輝く満月のような金色だった。そして、セフィネルの右の瞳の中には、金色に輝く紋章が刻まれていた。
そして、リュレンの右の手のひらにも、赤く輝く紋章が刻まれていた。
それぞれの紋章が、光を帯びる。リュレンは、ニヤリと笑って、後ろを振り向く。
「いつまで隠れてるんだ?相手してやるよ。」
その言葉に反応したように、暗い影から十人弱の人たちが飛び出してきた。その人たちは、全員左右のどちらかの腕に金のブレスレットを身につけていた。誰も彼もが、険しい目つきをしていて、三人を強く警戒しているようだ。
「気づいていたのか?」
その十人の中で、少し良い身なりをしている人が三人に話しかけてきた。多分、その中のリーダーのような人なのだろう。
「もちろん。ずっと前から気づいていたよ。いつ襲ってくるか待っていたが、どうにも動かないみたいだから、正面から相手してやることにしたんだよ。」
その人は腰に差していた剣を抜き、三人に向かって真っすぐに構えた。
「私たちとしては街に被害を与えたくなかっただけだ。戦うなら街の外のほうがいいと思っていたんでな。」
「なるほど。それは俺も同じだな。できるだけ穏便に済ませたい。」
それを聞くと、相手の顔が怒りで険しく歪んだ。奥歯を噛み締め、リュレンを睨みつける。
「それをお前らが言うか、魔人。」
その言葉と同時に、双方は一瞬消えたように見え、次に二人が現れたかと思えば、相手は剣をすばやく振り下ろしていた。リュレンはそれに対抗するように手のひらに炎をまとわせ、剣にぶち当てた。剣対素手の炎のはずなのに、手は傷ついた様子が欠片もなく、剣の方が溶けて歪んだ。
「っち!」
相手は舌打ちし、一歩引いた。そして、慌てながら後ろの人たちに焦りを含んだ声をかける。
「援護はどうし……は?」
目が、驚愕で大きく見開かれる。それも当たり前。十人ほどいたはずの仲間たちが、たった数十秒で全員倒れていたからだ。その影には、いつの間にか視界から姿を消していたセフィネルとルレファが、こちらを観察するように立っていた。ルレファの額に刻まれている紋章は暗闇の中に青白く光っていたので、不気味だった。
そして、ルレファの手に持っている小さなナイフには、血とはまた別の何かが付着している。
セフィネルは、リュレンたちがこちらを見ていることに気づくと、可愛らしい笑顔で大きく手を振った。
「こちら、全員戦闘不能にさせました!後はその人だけですよ!」
「お、助かる!」
まるで、ただの日常の会話のように信じられないことを言っているのを聞き、相手は混乱した。
「くそっ!」
あいつはもう溶けてしまって使えない剣を構え、右腕に付けていたブレスレットを光らせた。ブレスレットから何かの力が剣に流れ込み、そして剣にその力を纏わせた。剣に纏わせたその力は、剣のなくなった部分を補うかのように、剣の周りを包むようにして光の剣を新たに作り出した。
「これに、対処できるか?」
そう言って、また相手がさっきと同じように正面から剣を振り下ろしてきた。リュレンもさっきと同じように対処しようと剣に向かって手を伸ばした。
「下がれ!!」
その時、ルレファが大声でそれを止めた。リュレンはすぐに反応し、後ろに下がった。すると、行き場をなくした剣がそのまま真下に振り落とされ、地面に叩きつけられた。その瞬間、その剣の振り下ろされた場所を中心に、電気がほとばしった。
リュレンは慌てて飛び退いたおかげで、無事だった。ルレファが声をかけていなかったら、もろに食らっていただろう。
「これで素手では触れないだろう。」
その言葉に反応し、リュレンはニヤリと笑った。
「それはどうかな?」
その自信満々な返事に狼狽えていた僅かな隙に、いつのまにかルレファが背後でナイフを構えていた。
「戦闘に強いのは一人だけじゃないぞ。」
ナイフが相手の腕を掠る。掠めただけなので、少し血が滴るだけで、特に大きな傷にはならなかった。
「所詮、この程……度……」
相手は途中から言葉が途切れ途切れになり、その場にふっと倒れ込んでしまった。あたりが静まり返り、何も聞こえなくなると、ようやく三人は肩の力を抜いた。
「ふぅ!思ったよりバレるのが早かったなぁ。それにしてもセフィネルの薬はすごいな。ナイフがかするだけですぐに眠っちまうんだからな。」
リュレンは体を伸ばしながら、右手に手袋をつけ直した。
「頑張って作った特注品ですからね!あれだけ即効性があって、でも、相手の体に全く後遺症を残さないようにするのは大変でした。でもさっきので、在庫が半分になっちゃったので、また材料集めて作り直します。」
嬉しそうに笑いながら、セフィネルは目を閉じ、髪を右目に被せた。
「ルレファも助かった。俺一人であの数を相手にするとなると、さすがに無傷ですまないからな。」
「……それより、早くあいつらの記憶を抜いたらどうだ?早く抜かないと目を覚ますぞ。」
ルレファはさっきまで外していた布を、再び額に結びつけた。布を結びつける頃には、さっきまで光っていた紋章がすでに光らなくなっていた。
「そうだな。……今日は一日中疲れが残りそうだよ。」
ため息をついて、さっき倒した人たちの所へ、リュレンは近づいていく。
「仕方ない。嫌なら見つからないようにするだけだ。」
「わかってはいるんだが、それほど簡単じゃないんだよな。……『強奪』。」
リュレンがそうつぶやくと、倒れている人たちの頭部から、ぼんやりとした光のようなものが飛び出してきた。
その光はそのままリュレンの胸に向かって集まり、最後には、リュレンに吸い込まれるようにして消えてしまった。
「これで、こいつらは例外なく俺たちを見つけてから今までの記憶をなくした。……くそ、頭がパンパンだ。」
リュレンは自分の頭を手のひらで軽く二、三回叩いた。
「いつもは多くても5人くらいだからな。今回はいつもより負担が大きいんじゃないか?」
「ああ。記憶がごちゃまぜで気持ち悪い。」
「自業自得だぞ、リュレン。」
ルレファにそう睨みつけられて、しゅんとなる。
「……悪い」
「それはともかく、早く行くぞ。他の奴らまで来たら大変だ。」
ルレファがそう急かすと、そこで初めて、そのことを思い出したように二人は顔を上げた。
「そうだな。……はぁ、何もしてねーのに、追われ続けるっていうのは本当に大変だな。」
「仕方ない。それが、『魔人』なのだからな。」
暗い表情で、ルレファは足を動かし始める。
「どうして、魔人なんて存在ができたんでしょうね。」
セフィネルは、俯きながらその背中を追いかけた。
先に歩いて行った二人を、リュレンは小走りで追いかけ、抜かして顔だけ二人の方を振り向いた。
「それを今、探しているんじゃないか。絶対に見つけような。」
「そうだな。」
「はい!」
再び前を向いて、三人はうっすらと朝日が差し始めた裏路地を進んでいく。その背中は、三人で共通の決意を、静かに固めていた。
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