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荷物を運んで、毛を剃る 3
しおりを挟む挨拶に現れた弟は、賢也といい、二十六歳とのことで、いかにも不正や偽善が嫌いそうな硬い面構えであった。淡からぬ若者の匂いを放ち、立っていても座っていてもピタリと止まっている感じだった。
美那子のことをじっと見つめていた。品定めしているというよりも、品定めしているんだぞと知らしめる意図を、隠す気もさらさらないようなそれは純粋のメンチであった。命子が色々話しかけては、自分のほうを見させようとするらしかったが、しばらくは視線を貼り付けていた。
しかし美那子がおあいそにほほ笑んだ顔のままずっと見つめ返し続けていると、じわじわと目に鋭さがなくなって行き、顔の筋肉がこわばり、目元へ妙なむくみすら現れて来て、遂には老け込んだようになった。
「姉がご迷惑をおかけします」だとか、「とつぜん来てすみません」だとか、口ごもっていた。全体として大したやり取りも為されず、ねっとりした短時間が過ぎて、最初からその頃合いを見計らい続けていた命子がさっさと帰してしまった。
遠くからはるばる来たのが、結果的にたいそうあっさり帰って行った。命子は気疲れの汗に上着を脱いで、いくら姉思いでもコヤンキーで困ると言い、代わって無礼を謝った。
「だけどやっぱりワルはカッコイイね。命子ちゃんに似て男前で」
「他人事だからですよ。姉としては恥ずかしいだけです」
「最初のほうの眼力には気圧されちゃったわ。ガン飛ばすっていうの? 私ずっと、股のへんが冷や冷やしてたの」
「最後はお爺さんみたいになってましたね」
そう言うと自分でも笑い出した。せっかく来てくれた弟に対してひどいことを言うけれども、本当にその通りだったし、それにしてもそんなことを言う姉はひどかったので。
流しの上の棚へ茶葉を戻すのに命子が腕を上げた時、半袖の隙間から美那子は目撃した。
それで、左のわきも同様か確かめようと、そのように体勢が運ぶよう手を尽くしていると、とうとう怪しまれたので、正直にもくろみを打ち明ければ、命子はどちらのわきもぴったり閉じてしまった。
美那子が剃ったげようかと提案した。
「お風呂お風呂。ぜんぶ洗い流そう!」
じっさい美那子は憲司との差し向かいの際に、命子は弟の訪問に際して、双方イヤな汗をかいていた。
まごつく命子の小ささに、美那子はいっそう拍車がかかって、よし入ろう、すぐ入ろうと急き立て、ぽんぽん脱いで一緒に入った。
左はきれいなのがかえって恥ずかしいらしかった。けれども命子は全体的に体毛が薄かった。足など剃刀を入れたこともないそうな。そう言われて見やれば、どこもかしこもようやく桃のようなかすかな和毛があるばかりで、剃る人にとっては剃らるべき一等の箇所においても、やわく、短く、狭かった。
別に届かないことはないんですよと、猿のポーズのようにして右手で右わきへ持って行く危なっかしさをダメダメと奪い取った。
美那子はわりあい容姿に羨望を浴びて来たし、裸体には輪をかけて浴びるものがあったけれども少し毛深いのが悩みであった。対して命子のわきなんぞは憎らしいような淡さ。手ごたえもなにもなく、毛並みに沿うて軽く一回なでただけできれいにいなくなってしまうやわらかさ……
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